『日本三國』を読んで考えた。弱点を克服するより、戦う場所を選ぶ
※この記事には『日本三國』の内容に一部触れる箇所があります。未読の方はネタバレにご注意ください。
何か新しいことを始めようとすると、自分に足りないものばかりが見えてきます。
文章力がない。営業が得意ではない。動画編集もできない。専門資格もない。SNSのフォロワーも少ない。
副業や起業について調べるほど、成功している人の能力が目に入り、「自分にはまだ準備が足りない」と感じてしまいます。
私自身も、つい「次は何を勉強しなければならないか」と考えてしまいます。
そんなことを考えながら『日本三國』を読んでいると、主人公の三角青輝の戦い方が気になりました。
彼は、自分に足りないものをすべて克服してから戦っているわけではありません。
むしろ、
自分にないものを手に入れるより、自分が持っているものが通用する場所で戦っている。
そんなふうに見えました。
もし三角青輝が、剣術の修業ばかりしていたら
『日本三國』の主要人物は、それぞれ違う強さを持っています。
三角青輝は、知識、思考、言葉。
阿佐馬芳経は、武力と行動力。
賀来泰明は、戦略と先読み。
龍門光英は、統率と決断。
誰もが強い。しかし、同じように強いわけではありません。
そして、青輝は阿佐馬のような武人になろうとはしません。
投龍門の試験でも、他の受験者と同じように力で龍門を倒そうとはせず、自分が考えた農政改革案を持ち込みます。
聖夷征西でも、彼が使うのは武力ではありません。
賀来の残した言葉から意図を読み取り、政治の場で論理と言葉を使い、必要な決定を引き出します。
もし青輝が、
「この世界では武力が必要だ。まず阿佐馬のように強くならなければならない」
と考えて、剣術の修業ばかりしていたらどうなっていたでしょう。
阿佐馬を超えられないまま、自分の知識や思考力を使う機会まで失っていたかもしれません。
ここで一つの疑問が浮かびます。
弱点を克服することと、自分が勝てる場所を探すこと。どちらを先に考えるべきなのでしょうか。
なぜか、他人の武器が欲しくなる
副業や起業について調べていると、さまざまな成功事例が目に入ります。
動画で成功した人を見て、動画を始める。
SNSで集客した人を見て、毎日投稿を始める。
ネットショップで成功した人を見て、自分も何かを販売しようとする。
もちろん、成功事例から学ぶことは大切です。
しかし、いつの間にか、
「何を実現したいか」ではなく、「成功した人が何をしているか」で自分の行動を決めてしまう。
そんなこともあります。
青輝と阿佐馬は、同じ側で戦っています。
互いの能力を認めています。
しかし、戦い方はまったく違います。
同じ目的地を目指すからといって、同じ武器を持つ必要はない。
これは、仕事や副業でも同じなのかもしれません。
強みは、一つのすごい能力ではない
「自分の強みを見つけよう」とよく言われます。
しかし、「あなたの強みは何ですか」と聞かれても、私はなかなか答えられません。
強みという言葉が大きすぎるからです。
それよりも、
自分は何を長く見てきたのか。
どんな相談を受けることが多いのか。
他の人が面倒だと思うのに、自分はそれほど苦にならないことは何か。
何度も説明してきたことは何か。
そんなふうに考える方が現実的な気がします。
一つ一つは普通の能力でも、組み合わせれば立ち位置が変わることがあります。
人の話を聞く。
情報を整理する。
新しい道具を試す。
分かりやすく伝える。
それぞれは珍しい能力ではありません。
しかし、
聞く × 整理する × 試す × 伝える
と組み合わせれば、できることは変わります。
青輝も、単に頭がいいだけではありません。
知識を蓄え、政策を考え、言葉にし、危険な相手の前でも伝えることができる。
その組み合わせが、三角青輝の戦い方をつくっています。
自分を変える前に、場所を変えてみる
もちろん、苦手なことをすべて避ければいいという話ではありません。
新しいことを始めれば、勉強も必要です。
最低限、身につけなければならない能力もあります。
ただ、努力の方向は考えてもいいのかもしれません。
自分に向いていない場所で、他人と同じ能力を身につけるために努力するのか。
それとも、自分がすでに持っている経験や知識が、少し有利に働く場所を探すのか。
新しいことを始めようとすると、
「もっと勉強してから」
「資格を取ってから」
「もっと上手になってから」
と考えてしまいます。
しかし、準備を続けているだけでは、自分の持っているものが本当に誰かの役に立つのかは分かりません。
能力を完全にそろえてから始めるのではなく、
自分が持っているものが少し役に立ちそうな場所で、小さく試してみる。
そんな始め方もあるのだと思います。
三角青輝が阿佐馬芳経になろうとしなかったように、誰かと同じ武器を持つ必要はありません。
「自分には何が足りないのか」だけではなく、
「今まで自分がやってきたことの中で、何が使えるだろう」
と考えてみる。
『日本三國』を読みながら、そんなことを考えました。
この記事の内容と関連する考え方・参考資料
この記事は『日本三國』を読んで感じたことをまとめたものですが、内容を整理するうえで、次の考え方も参考にしています。
エフェクチュエーション(Saras D. Sarasvathy)
未来を正確に予測してから行動するのではなく、「自分は何者か」「何を知っているか」「誰を知っているか」といった、現在持っている手段から行動を始める考え方です。今回の記事の「足りないものをそろえる前に、今あるものから始める」という視点と重なります。
ジョブ・クラフティング(Amy Wrzesniewski/Jane E. Dutton)
働く人が、仕事のタスク、人間関係、仕事の捉え方を主体的に変えていくという考え方です。「自分を一方的に仕事へ合わせるのではなく、自分の特性を生かせる形を考える」という点で、今回のテーマと関連します。
資源ベース理論(Jay B. Barney)
企業が持つ固有の資源や能力と、持続的な競争優位の関係を考える経営戦略論です。本来は企業を対象とした理論ですが、この記事では「他者をそのまま模倣するのではなく、自分が持つ経験や能力の組み合わせに注目する」という発想を考える際の参考にしています。
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