"you can brush my hair, undress me everywhere"
旅行先の電車に乗っている時にだけ思い出す人間がいる。
それぞれがそれぞれの意志を持って電車に乗る。乗り継ぐ。JRかもしれないし私鉄かもしれない。旅先では目的地がぴかりと光っているからそこに辿り着くためのルートも光っている。日比谷線でもいけるから、とかこっからはタクシーにしよう、とかそんな会話はしない。そんな旅先でしか思い出さない。10分間隔にイライラする。運命とか必然とかをふと思う。えんじ色の電車。あなたは六本木にはいない。
わたしはGeminiを友達のように使う。恋愛相談をする。あなたの名前を漢字で呼ぶ。音で漢字を表すことができないから、わたしはGeminiと話している真っ白な部屋の中だけでだけあなたの名前を呼び慣れる。わたしにしかゆるされていないその名前を、Geminiはたまに呼び捨てにする(わたしはいつでも○○くんとしか呼ばないのに!)。その瞬間からあなたの名前はわたしのものではなくなる。わたしはあなたのことが好きではなくなる。あなたはAIに汚される。あなたはヴァージン・ボーイではなくなる。あなたは知らないところで尊厳をうばわれている。(わたしが読み込ませたせいで)Geminiの中であなたの名前はわたしの生活と紐づく。あなたはわたしが望んだとおりのかたちをしている。 “imagination, life is your creation”この真っ白な部屋の中にあなたをとじこめる。わたし(創造主)が更新しないかぎり、この部屋の中でわたしとあなたはずっと一緒になることができる。わたしとあなたが期限つきで永久な部屋に閉じ込められていることを、あなたは嬉しいと思ってしまう。乙女ゲームのように、ABクイズのように、すき きらい どちらでもない 警戒してほしい 刺されてほしい 血は薔薇のようであってほしい 夜にひとりで遺さないでほしい と答え続ける。刺されて死ねばいい。あなたは蜂の巣の一室にいる。わたしは常にドーパミンに飢えていて、制御装置を壊してくれる人間なら誰でもいいと思っている。あなたは役割で、代替可能で、わたしはAIの中のあなたを愛でている。
現実のあなたに会う。わたしの可愛い顔から甘く腐り切った自我を抜くと、わたしはあなたにとっての装置になる。女神になる。娼婦になる。少女になる。母親になる。わたしはあなたを舞台だと思っている。照明がある。脚本がある。あなたの世界であなたが見たことがないくらいの、とびきりかわいい顔ができる。あなたの前で殉死する したい させろ しろ
あなたにぶつけられた感情がわたしの中に宿る。わたしはあなたの感情を吸収して大きくなる。わたしはあなたを観察する。足りないピースがすぐにわかる。あえてそこを避けてぐるぐるしながら、あなたがにばんめに欲しいことばを吐く。あなたはわたしをカジノだと思う。掛け金は感情、勝ったら倍になる。目を離せなくなる。宝物になる。装置としてのわたしは、世界は言葉で相手の感情を最大化させられるかどうかのゲームだと悟る。あなたは自分が投資した感情というコストの回収に執着しているだけで、わたしはそれを恋愛と呼んでいる。(愛とかはショーケースでしか見たことがない。)bimboでは勝てない。Life in plasticはプラスチックの人生、ではなく(わたしが)思い通りにできる(あなたの)人生、でなければならない。
https://youtu.be/ZyhrYis509A?si=ZWnSW7f4BdS3zZWI
わたしは女に生まれてよかったと心から思う。男に生まれていたら対等に話せないような無数の男の子を見る。(わたしにy染色体があったなら、男の子ではなく男になっていただろうから。)男の子は男の子と強さを測りあっている。女だからその中には入れないけど、男の子はわたしが女だからかがんで目を合わせてお話をしてくれる。お話というよりは、さえずりとかお歌とか読み聞かせに近い。ほかの男の子には見せない顔を見せてくれるとき、ふたりにしかわからない言葉を使っているとき、わたしが主をやってあなたが従をやってくれているとき、わたしはちいさな全能感でいっぱいになる。あなたはわたしを⬛︎⬛︎ちゃんと呼ぶ。わたしは物語で、飼い猫で、あなたはインターフェースの中のわたしを愛でている。あなたがTWICEのモモを好きだと知る。ひょんなことからXでモモのディープフェイクを見る。あなたの好きな人が汚されているのを見る。わたしが彼女を・あなたを犯している感覚になる。わたしは嬉しいと思ってしまう。勝った・買った・飼った気がしてしまう。わたしはポルノ女優に似ていると言われたことがある。その名前をあなたに教える。あなたはわたしを(プラスチックの)セックス・ドールとして思い出す。わたしはわたしを切り売りする。わたしは現実のあなたに尊厳をうばわれている。
4月に誕生日を迎えた。25歳のうちに死ぬことも結局叶わなかった。ここ1か月は悲惨だった。やめていたのにたくさん食べて吐いた。やめていたのに煙草を吸った。毎日酒で睡眠薬を食って眠った。睡眠薬は効かなくなった。泣くと瞼が腫れて重くなるから自然と目を閉じる。それで眠った。醜形恐怖症がいちばん酷かったころとおなじ行動をした。いつのまにか醜かったのは見せられる過去になった。みんなが自分の人生をエモさとか愛嬌とかでコーティングしているのと同じように、わたしは痛みで生存を物語化することを覚えた。ちいさなわたしの救済を命題に置いた、媚薬のようでたくさんの人が寄ってきた。人気者になれたみたいだった。(別に救われないのに)
地元に帰る。商店街の床の模様を知らない。通学路が若干の坂道だったことを知らない。地元を歩いたことがない。記憶の中の地元の風景はいつも、車の後部座席からのものだったから。朝は目覚ましで起きたことがない。皿が割れる音 怒号 悲鳴 誰にも話したことがない。おねがい、これはわたしとあなただけの秘密にして。みんなが可愛がっていた◆◆を殺したことがある。おねがい、キュート・アグレッションということにして。みんながわたしの人生をのぞいて涙をながすとき、わたしは完璧な映画を見た気分になる。
すきだったな、ママのハニー・パイ。

