インクルーシブサロンという答え。“はたらく”の再定義から始まったビジネスレザーファクトリーの店舗づくり
“いつか、商店建築に載るような店舗をつくりたい”
その願いが、10年越しに叶った。
『商店建築』2025年5月号に掲載されたのは、ボーダレス・グループの「ビジネスレザーファクトリー」八重洲店と名古屋店。
空間づくりに携わる人なら誰もが知るこの専門誌への掲載は、店舗開発を担う畔上拓也とブランドマネジャーの幣春菜にとって、一つの到達点だった。
「内装の美しさだけでなく、ブランドの思想も含めて評価してもらえた証のようなものなので、今回の掲載はめちゃくちゃうれしかったです」(畔上)
これは、単なる新店舗の立ち上げではない。すべての「働く」を応援してきたビジネスレザーファクトリーが、パンデミックを経て、“はたらく”の意味を問い直す挑戦だった。店舗づくりのコンセプトからコミュニケーションの設計に至るまで細部にこだわった努力の賜物だ。
幣と畔上はどんなコンセプトを掲げ、どんなこだわりを店舗づくりに込めたのか。
ビジネスレザーファクトリーの空間づくりの裏側を聞いた。
“はたらく”を再定義してたどり着いた答え

ビジネスレザーファクトリー(以下、ビジレザ)は、バングラデシュに自社工場を構え、シングルマザーや障がい者などの貧困層をレザー職人として育て、雇用を生み出している。
2015年、福岡・天神に1号店をオープンして以来、バングラデシュの雇用が増えることを最も重要なインパクト指標として掲げながら、国内に19店舗を展開してきた。
しかし19店舗目である名古屋店の新規出店をするにあたり、ブランドは立ち止まる必要があった。きっかけは時代の変化だ。コロナ禍でのリモートワークの普及を始め、副業やフリーランス、さらにはYouTuberなど、画一的だった「はたらく」人の像はこの10年で急速に多様化した。
「働くという価値観が大きく変わっていく中で、ブランドの役割も変わっていかなければいけないと思ったんです」

そう語るのは、ブランドマネージャーの幣。自らも社会の変化を体感する中で、「はたらくとは何か」「ビジレザに何ができるのか」を改めて見つめ直した。
そしてたどり着いたコンセプトが、“インクルーシブサロン”だった。
「スーツを着て会社に通う人だけでなく、家で家事を頑張る人、カフェから働く人、さまざまな“はたらく”がある。どんな職業であれ毎日働いているのは皆おなじ。どんな人たちも受け入れられるようなブランドにしたいと考えていました」(幣)
年齢や性別や国籍を問わず、すべての人を受け入れる「インクルーシブ」な場所でありながら、ヘアサロンやネイルサロンのように明日への活力をもらえる「サロン」の役割も果たす。
幣の提案を聞いた店舗開発チームは、「それだ!」と満場一致。新しいコンセプトを体現した店舗づくりが幕を開けた。

「誰もが自分の居場所と思える空間を」インクルーシブな店舗設計
店舗設計のパートナーとして手を取り合ったのは、Old Kan。「インクルーシブサロン」というコンセプトに共感した彼らが空間づくりに取り入れたテーマは「柔らかさ」だった。
什器の角を落とした丸みのあるフォルム。包み込まれるような柔らかい光。商品が美しく見える上質な空間でありながら、どんな属性の人でも入りやすい明るさも備えること。
性別、年齢、国籍を問わず、多様な「はたらく人」が自分の居場所として感じられる空間を目指した。
また「インクルーシブサロン」を体現する仕掛けは、店舗中央の「コミュニケーションスペース」にも詰まっている。一見何も置かれていない台だが、色味を比較しながら店舗スタッフと一緒に悩んだり、無料のレザーケアを提供するスペースとして利用される。

「営業前に『バッグを磨いてほしい』と立ち寄ってくれるお客様もいらっしゃるし、『このバッグで昇進しました』と報告に来てくれる方も。コミュニケーションスペースでお磨きをしながら、少しお話をしたりする時間がとても大切です。商品を売るだけでなく、お店を出る頃には元気が出るような空間にしたいんです」(畔上)
バングラデシュの雇用は最高の顧客体験から。お客様目線でつくるビジレザの「いい循環」
Old Kanとの共創によって実現した、柔らかな光や丸みのある什器など、空間の心地よさを追求した八重洲・名古屋両店の設計。そこには、ブランドが掲げるインクルーシブサロンの思想が色濃く反映されている。

そして、このコンセプトを「空間デザイン」だけで終わらせないのが、ビジレザの顧客体験だ。
畔上たちが何よりこだわったのが動線だった。フェロー(店舗スタッフ)がどこに立ち、どう動き、どう声をかけるのか。50〜100本近いレイアウト案を書き直しながら、実際の動きを想定して設計していった。
例えば、車椅子でも商品が見やすい什器の高さ。すれ違いやすい通路幅。引き出し式の刻印台など細部に至るまで、徹底的に考え抜かれている。

「僕たちがやっているのはソーシャルビジネス。売上利益はビジネスのけじめとして必要ですが、単に売上利益が伸びればいいわけではありません。じゃあどう売上を上げるか。僕たちが一番大事にしているのはお客様の体験です。お客様が最高の体験をされた結果、数字として出てきた売上がある。それがバングラデシュの雇用につながっている。そんな循環で社会が良くなっていくといいなと思います」(畔上)
売上は、バングラデシュの雇用創出に直結する。しかしその前に、「お客様に笑顔で帰ってもらう」そこに集中しているからこそ、結果がついてくる。

日常に寄り添えるブランドへ、次なる挑戦を支える仲間を募集中
名古屋店の新規出店を経て、同様のコンセプトで八重洲店のリニューアルを完成させた。それらの店舗で得られた感触を手がかりに、今後はビジレザの空間づくりを、さらに追求していく予定だ。
例えば、シューズはビジネス用から普段履きまでラインアップを拡充し、アパレルにも挑戦する。
「“はたらく”という定義を広げただけでなく、もっと日常にも寄り添えるブランドになっていきたいと思っています。その中で、誰が、どんな思いで、どんな素材を使って作ったか。その背景をちゃんと伝え、納得して選ばれるブランドでありたいと思っています」(幣)
その未来を創るために、専任の空間デザイナーを探している。
「図面を描いて終わり、じゃない。実際にお客様の反応を見て、店頭で働くフェローの声を聞いて、また設計に反映していく。社会が良くなっていくために空間づくりにできることを現場の声を聞きながら徹底的に考え抜く。その循環こそがこの仕事の面白さです」(畔上)

急速に変わりゆく時代の中で、新しい店舗を生み出していくには、人々の生き方や価値観を敏感にとらえ、それを空間に落とし込める感性と構想力が必要だ。
目の前のお客様の体験と、遠く離れた国で働く誰かの未来。その両方に責任を持ちたいと願う人にとって、これ以上ない挑戦となることは間違いない。
🎧「ボーダレス・ラジオ」でも二人の想いをお聴きいただけます
二人のプロフィール
▼畔上 拓也(あぜ)
ビジネスレザーファクトリー 店舗開発
1994年生まれ、埼玉出身。東洋大学国際地域学部を卒業後、WEB広告会社・SEOライターを経て、2018年にビジネスレザーファクトリー株式会社へ中途入社(現在はボーダレス・ジャパンの事業部)。事業開発担当として入社し、店舗開発を領域としながら、販促企画やSEOライティング、越境ECなど幅広く経験。現在は全国の店舗拡大を目的に店舗開発&設計を推進。「貧困をなくす店舗開発屋」として、誰もが生まれた環境に左右されずにやりたい事を実現出来る社会をつくるために、今日も全国営業中。
▼ 幣春菜(ハンナ)
ビジネスレザーファクトリー ブランドマネージャー
1996年大阪府生まれ。学生時代に海外でwebデザインを1年学んだ後、友人の社会起業にデザイナーとして携わった経験から、デザインをツールにして新規事業の立ち上げを形にしたいと思い、ボーダレス・ジャパンにデザイナーとして新卒入社。新規事業や採用/コーポレートブランディングに参画し、Webデザインやロゴ制作、紙物、空間といった幅広い領域のデザインに関わるクリエイティブディレクター。2025年よりビジネスレザーファクトリーのブランドマネージャーに就任。
採用情報
現在、「ビジネスレザーファクトリー」では、一緒に働く仲間を募集しています。(2025年6月現在)
・【店舗設計・空間デザイナー】最高の体験を届ける店舗づくり
・【D2Cマーケター】エシカルレザーブランドのEC戦略
・「ビジネスレザーファクトリー」店舗販売スタッフ
ビジネスレザーファクトリー以外にも、ボーダレス・グループでは世界13カ国で50以上のソーシャルビジネスを展開しており、新規事業開発やマーケティング・クリエイティブなど複数ポジションで採用強化中です。
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TOPICS
ビジネスレザーファクトリーの新たな挑戦_世界で通用するブランドになるために
Text:Michiko Hojo
