「このままでは絶対に成功しない」新入社員が立った事業づくりのスタートライン
「本当にやり抜こうとしているの?」
2026年4月1日、ボーダレス・グループでは12名の新入社員を迎える入社式が開かれました。日本、タイ、ミャンマー、バングラデシュなど、さまざまな国や地域から集まった仲間へ歓迎のムードが広がるなか、同時に、新入社員たちは社会課題の解決に挑む担い手としての厳しい問いに向き合う一日になりました。
その舞台となったのが、入社式の前半に行われた「新規事業プラン発表会」。入社前の半年間にわたるグループワークの集大成として、新入社員たちが考えた事業案を発表する場です。
この記事では、入社式当日の様子を通して、ソーシャルビジネスの事業開発の難しさに直面し、そのスタートラインに立った新入社員たちの姿をお届けします。
お題:エシカルブランドの新たな一手を構想せよ

3つのチームに分かれた新入社員たちは、新たなソーシャルビジネスのアイデアを構想。CEOの田口一成をはじめ、各事業の代表たちに向けてプレゼンを行いました。
今回与えられたテーマは、エシカルブランド「LIB」の次なる事業構想です。
レザー製品を起点に、ジュエリーやアパレル、カフェへと少しずつ領域を広げながら、エシカル消費をより身近なものにする挑戦を続けているLIB。その先に、どんな新しい一手がありうるのか。誰のどんな痛みに向き合い、どんな仕組みなら継続可能な事業として成立するのか。
各チームが発表したテーマは次の3つでした。
放置林問題の解決を目指す家具事業(チームA)
小規模生産者を支援するクラウドファンディングプラットフォーム(チームB)
フィリピンの海洋プラスチック問題に取り組む洗剤のリフィルモデル(チームC)
どの案も、今の社会が抱える複雑な課題に目を向けたもの。着眼点は十分に意義があるものでした。
ただ、ボーダレスで問われるのは、問題意識の有無だけではありません。
その課題に対して、本当に社会を変える仕組みになっているのか。そこまで踏み込めているかが問われます。
放置林✖️オフィス家具事業(チームA)
家具を売るだけで、山は変わるのか

チームAが挑んだのは、放置林問題の解決を目指すオフィス家具事業。着眼点や方向性そのものには可能性がある一方で、発表では厳しい問いも投げかけられました。
問われたのは、「家具を売ること」が本当に山の課題の解決につながるのか、ということ。放置林がなぜ問題なのか、その背景にある環境や社会の構造まで含めて捉えられているか。さらに、誰がなぜその家具を買うのか、どんな人に価値を届けるのかという解像度も、もっと深める必要があるとフィードバックされました。
社会課題を扱う事業では、アイデアが面白いだけでは足りません。その仕組みが本当に課題の本質に届いているのか。チームAの発表には、そんな厳しさが突きつけられていました。
小規模生産者支援✖️クラファン(チームB)
“改善案”で終わらせず、社会の仕組みをどう変えるか

チームBが構想したのは、小規模生産者を支えるクラウドファンディングプラットフォームです。けれど、ここで向けられたフィードバックは、とりわけ厳しいものでした。
「このままでは絶対に成功しない」「本当にやり抜こうとしているのか」
そうした言葉とともに問われたのは、構想の中身だけでなく、準備の深さや向き合う姿勢そのものに対する厳しいフィードバックでした。
「手数料を下げる」といった改善だけでは、社会の構造は変わらない。既存サービスより少し良くするだけではなく、この仕組みによって何がどう変わるのか。なぜ大手ではなく、自分たちがやる必要があるのか。本当に解くべき課題は、資金調達の場をつくることなのか、それとも小ロット生産を受け入れられる製造体制そのものなのか。
既存の仕組みを少し便利にしたり、条件を良くしたりするだけでは、社会は大きく変わらない。いまある課題のどこに本質があるのか、もっと根本から問い直す必要があると指摘されました。
海洋プラスチック✖️洗剤リフィル事業(チームC)
分かりやすい構想の先にあった、実装の壁

チームCが取り組んだのは、フィリピンの海洋プラスチック問題に着目した、洗剤のリフィルシステムです。3チームの中でも、課題の捉え方や発表のわかりやすさには評価の声が上がりました。
一方で、実際に事業として進めるには、まだ多くの壁があることも浮き彫りになりました。たとえば、物流コストの問題や、既存の安価な商品に慣れた生活者が本当に行動を変えるのかという点。社会課題を解決したいという正しさだけでは、生活の習慣は変わらない。
「安いから使う」だけではなく、生活者が本当に切り替えたくなる体験をどう設計するのか。その厳しさが、具体的な事業構想のレベルで突きつけられたプレゼンでした。
チームCは、4人でここまでまとめきったこと自体への前向きな評価も印象的でした。「一人でやる方が早い」は確かにある。でも、大きなことを成し遂げるには、人を巻き込み、チームで進める力が必要になる。事業案の内容だけでなく、そのプロセス自体もまた、新入社員たちにとって大きな学びになっていたことが伝わってきました。
返ってきたのは、本気のフィードバックだった

3チームへ投げかけられた問いに共通していたのは、「良いアイデアかどうか」「熱い思いがある」だけでは終わらない厳しさでした。
もちろん、新入社員だからこそ、経験や知識の面で足りないところがあるのは自然なこと。最初から完璧な事業プランを描けるわけではありません。だからといって「経験がないからできなくて当たり前」で終わらせないのが、ボーダレスの新卒育成。
社会課題を前に本気で考える一人の人間としてどこまで考えたか。どこまで問いに向き合ったか。その根本的な姿勢は、年次や経験に関係なく問われるものです。今回の発表会で向けられていたのも、完成度そのもの以上に、そうした向き合い方だったように感じます。
このプランで社会の何がどう変わるのか。
なぜその構造でなければならないのか。
なぜ自分たちがやるのか。
そして、
そこにどれだけ本気で向き合ってきたのか。
絶対にぶらさないもの = ソーシャルコンセプト

今回の発表で繰り返し出ていたのが、「ソーシャルコンセプト」の弱さに対する指摘でした。
たとえば、小規模生産者を支援するクラウドファンディング案を提案したチームBは、「手数料を5%にする」という改善案が示していました。けれど、それだけでは市場の最適化に留まってしまう。それで、社会の何がどう変わるのか。既存大手ではなく、自分たちがやる理由は何なのか。場をつくるだけで、本当に生産者の課題は解決するのか。そうした問いが次々と突きつけられました。
これは他のチームも同じです。
安い、便利、少し良い。
それだけでは、ボーダレスでいう“社会を変える事業”には届かない。
単なる改良ではなく、構造そのものにどう切り込むのか。目の前の困りごとを緩和するだけでなく、仕組みそのものをどう組み替えるのか。その発想が必要だということを、新卒たちはこの日、身体で受け取ったはず。
「今日、後悔した人も多いと思う。でも、今日がまさにスタート地点。」
そんな総括が象徴していたように、この日は入社を祝う場であると同時に、社会を変える側として立つ覚悟を問われる時間となりました。
12通りのWHY ME STORY

午後は、全社員ともオンラインでつながり、新入社員一人ひとりが「WHY ME STORY」のシェアと決意表明を行いました。
自分はなぜこの社会課題に向き合いたいのか。なぜ、ボーダレスで働くことを選んだのか。世界各地でそれぞれが見てきた景色や経験、そこから育まれた問題意識と決意。その言葉の一つひとつに、その人にしかない原点と、社会をよりよくしたいというまっすぐな思いがにじんでいました。
そして最後は、ボーダレスの事業・LFC(ローカルフードサイクリング)の食事をみんなで囲む時間に。
環境への配慮とおいしさが同居する、目にも楽しい食卓で、会場には自然と笑顔が広がっていきました。緊張感のある時間をともに過ごしたあとだからこそ、食卓を囲む和やかなひとときが、よりあたたかく感じられました。

厳しい問いも、まっすぐな決意も、和気あいあいとした食卓もあった一日。ボーダレスの新入社員たちはこの日、それぞれのスタートラインに立ちました。
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Writer: Michiko Hojo
Editor: Michiko Hojo
