今週の全米アルバムチャート事情 #274- 2025/2/8付
歴史的な展開を見せた第67回グラミー賞授賞式も無事に終わり、ビヨンセは悲願の最優秀アルバムを取り、ケンドリックはSOYとROYをスイープし、チャペルはLBGTQ+コミュニティのサポートを見事に形にするという、近年稀に見るような、シーン全体が納得できる結果だったんじゃないでしょうか。自分はこれでちょっとゆっくりブログ執筆その他にかかれるってことで、またまた入院中の病室から今週のこのブログを書いてます(笑)。さて今週末はチーフスの3連覇がかかったスーパーボウル。ハーフタイムショーに出演予定のケンドリック、ここでも「Not Like Us」で凱旋パフォーマンス、やるんでしょうか。ドレイクが既に訴訟提起してるだけに微妙かもですね。注目しましょう。

今週の全米アルバムチャート、2月8日付のBillboard 200は、まだまだ117,000ポイント(うち実売2,500枚)と10万ポイントを割らずに粘るバッド・バニー『Debí Tirar Más Fotos』が予想どおり3週目の首位をキープしてます。ただバッド・バニーの天下も今週がおそらく最後で、来週はグラミー授賞式でサプライズ・パフォーマンスを見せてくれたあのアーティストがまあ間違いなくブッチギリの首位でしょうね。
今回のアルバムでバッド・バニーは4作続けて全米ナンバーワンアルバムを達成したわけですが、先々週お伝えした全米全土でのラテンジャンル音楽消費のここ数年の伸びをチャート上で強烈に体現しているのは、今のところバッド・バニーだけ、言わばバッド・バニーの一人勝ち状態なのは何故か、というのも興味のあるところ。バッド・バニーに近いレベルのチャート上の成功を見せているのは今のところカロルGくらいなんで、これからもっといろんなアーティストがチャートで躍進して来るのかもしれません。

4位にはグラミー賞受賞式でデッカイバラをあしらった派手なガウンをまとって2024年年間ナンバーワンヒット「Lose Control」を熱唱していたテディ・スウィムズのセカンド・アルバム『I’ve Tried Everything But Therapy (Part 2)』が50,000ポイント(うち実売26,000枚で今週のアルバムセールスチャート1位)で初登場してます。残念ながら新人賞は取れなかったけど例年は新人賞ノミニーだから、ということでパフォーマンスの機会は与えられてなかったから、ああやってパフォーマンスできて良かったな、と思いましたね。
既にチャートインしてヒットしている「Bad Dreams」(今週Hot 100 42位上昇中)を収録してる今回のアルバムでは、前作がヒットしていろんなドアが開いたんでしょう、ケイシー・マスグレイヴスの『Deeper Well』のプロデュースで、先日のグラミーでもプロデューサー部門にノミネートされてたイアン・フィチャックとダニエル・タシアンが「Northern Lights」をプロデュースしてたり、ギヴィオンをフィーチャーした「Are You Even Real」やマニー・ロングをフィーチャーした「Black & White」など、アルバムづくりも豪華になってますね。いいことです。彼のような良質な実力派シンガーソングライターには是非もっと成功して欲しいもんです。

続いて7位にはこちらも実力派のカントリー・シンガーソングライター、ケイン・ブラウンの4作目『The High Road』が40,000ポイント(うち実売19,000枚)で初登場、4作連続全米トップ10を決めています。あのマシュメロとコラボしたEDM風カントリー・チューンとでも言うべき先行シングル「Miles On It」はダンス/エレクトロニックソング・チャートで今週も38週1位を独走中です。
ケインといえば前作からの、匂い立つような奥様ケイトリンとのデュエット・ヒット「Thank God」(2022年13位)が個人的には強く印象に残ってますが、今回も2曲奥様とのデュエットやってます。一方マルチ・レイシャル(白人の母とチェロキーの血を引く黒人の父)ということもあり、今のオルタナティブなカントリーのスタイルの盛り上がりを象徴するアーティストなだけに、マシュメロとのヒットとか、以前にもスウェイ・リー共々コラボして「Be Like That」(2020年19位)をヒットさせたカリードをフィーチャーした「Rescue」など、多様性あふれる内容が魅力的な作品になってますね。マシュメロとカリードは過去他の曲でも一緒にやってますのでまあお馴染みということになります。この間のグラミー賞授賞式の放送でも大和田先生が言っていた「オルタナティブな今盛り上がっているカントリー」に興味がある方は是非一聴を。

今週もう1枚のトップ10初登場は、37,000ポイント(うち実売10,000枚)で9位に入ってきたUKのラッパー、セントラル・シーのデビュー・アルバム『Can’t Rush Greatness』。本国の人気を反映して今週UK1位初登場ですが、USでもここまで上位で飛び込んで来るとは思いませんでした。UKラッパーでは初の全米トップ10、ということになります。やはりここまでドレイク、キッドLAROI、J.コール、アイス・スパイスらとのコラボシングル、そして先日スマッシュヒットになったリル・ベイビーとの「BAND4BAND」(2024年18位)といった先行ヒットを積み重ねたのがいい下地になったんでしょうね。
今回のデビュー・アルバムには「BAND4BAND」以外のこれまでのヒットトラックは収録されてないけど、比較的滑舌のはっきりしたクリスプなセントラル・シーのフロウがいかんなく発揮されたテンションの高い、勢いのあるトラックが満載なので、なかなか快感ですね。21サヴェージとの「GBP」、叙情的なトラックがいいリル・ダークとの「Truth In The Lies」とかもいいけど、ピンでの「Top Freestyle」なんかも結構カッコいい。UKアクセントのラップもかなり新鮮なんで結構これクセになるかもです。

ということで今週のトップ10初登場は3枚と、ようやく今年に入ってアルバムチャートらしくなってきました(笑)。一方11位以下100位までの圏外も今週は2枚初登場してきてます。まずは24位初登場、エキセントリックなスタイルとアヴァンギャルドな楽曲でシーンの評価の高いUKの女性R&Bシンガー、FKAトウィッグスの3作目になる『Eusexua』。彼女のデビュー作『LP1』(2014年30位)はその先進的なスタイルで音楽メディアの絶賛を受けたんですが、今回それを上回るチャート成績になってます。UKでも今週3位初登場で彼女の最大のヒットアルバムになってますね。
今回のアルバムでは楽曲はそれほどアヴァンギャルドさは強くなく、エレクトロ系のサウンドが強めのR&B楽曲が多いようで、全体的にはこれまでで一番とっつきやすい内容になってる気がします。スターゲイトが参加している「Perfect Stranger」や、ファン.のプロデュースで知られるジェフ・バスカーがプロデュースに参加してる飛び跳ねるようなビートの「Childlike Things」(ちなみにこの曲、途中で4小節くらい日本語で歌ってますw)など、メインストリームのスタッフも参加してるのも影響してるのかも。それでもメディアの評価は極めて高く、メタクリティックで87点を確保してます。ある意味今年前半の話題作の一つであることは間違いなさそう。要注目です。

もう1枚の初登場は、66位に入ってきたタイ・マイヤーズの『The Select』。タイはテキサス出身の若干17歳の高校生カントリー・シンガーソングライターで、既に何百ものライブをこなしながら、2023年にTikTokにアップした「Drinkin’ Alone」「But Me」といった楽曲がスポティファイで600万ストリーム再生されるなどバズってブレイクに至ったらしいです。もちろん今回がデビュー・アルバム。
その若さにもかかわらず「今盛り上がっているオルタナティブなカントリー」のスタイルではなくてオーセンティックなカントリー・ロック・スタイルのシンガーで、影響を受けたアーティストにジミヘン、スティーヴィー・レイ・ヴォーン、オーティス・レディング、クリス・ステイプルトンらを挙げてることからもわかるようにボーカルもスタイルもブルージーでソウルフルなんです。所謂オールドスクールなスタイルなんで、シニアのロック・ファンとかでも楽しんで聴けるんじゃないかと。フーティー&ザ・ブロウフィッシュやザック・ブラウン・バンドあたりがハマる人はかなりハマると思います。いやあでも17歳の歌声じゃないですね。
都合今週は100位までに5枚のアルバムが初登場でした。一方Hot 100の方は、グラミーで最優秀ポップ・デュオ/グループ・パフォーマンス部門をしっかり受賞した「Die With A Smile」が5週目の1位か、と思われましたが何とトラヴィス・スコットの新曲「4x4」がいきなり初登場1位で飛び込んで来ました。ヒップホップ系には珍しく、1600万ストリームとストリーム数は少なくて(1/24付スポティファイのデイリー・チャートでは4位)、実売トラック数が167,000とセールス主導で初登場1位を果たしてます。来週はトラヴィスがキープするか、ガガ+ブルーノが復活か、はたまた今週強力な新譜をドロップしたあの人が初登場か、気になるところです。では今週のトップ10おさらいです(順位、先週順位、チャートイン週数、タイトル、アーティスト、<総ポイント数/アルバム実売枚数、*はHits Daily Double調べ>)。
1 (1) (4) Debí Tirar Más Fotos - Bad Bunny<117,000 pt/2,500枚>
2 (2) (112) SOS ▲3 - SZA <87,000 pt/2,204枚*>
3 (4) (10) GNX - Kendrick Lamar <60,000 pt/666枚*>
*4 (-) (1) I’ve Tried Everything But Therapy (Part 2) - Teddy Swims<50,000 pt/26,000枚>
*5 (8) (100) One Thing At A Time ▲7 - Morgan Wallen <41,000 pt/722枚*>
6 (6) (23) Short n’ Sweet ▲2 - Sabrina Carpenter <40,000+ pt/5,258枚*>
*7 (-) (1) The High Road - Kane Brown <40,000 pt/19,000枚>
8 (5) (32) The Secret Of Us - Gracie Abrams <37,000 pt/8,000枚>
*9 (-) (1) Can’t Rush Greatness - Central Cee<37,000 pt/10,000-枚>
10 (9) (37) Hit Me Hard And Soft ▲ - Billie Eilish <36,000 pt/4,668枚*>
久々にちょっとチャートが賑やかになってきた今週の「全米アルバムチャート事情!」いかがでしたか?いつものように最後は来週1位の予想(チャート集計対象期間:1/31~2/6)ですが、来週はもう、グラミー賞授賞式で衝撃的なパフォーマンスで登場したザ・ウィークンドの新譜がブッチギリで首位でしょうね。ではまた来週。
