【本175】『城砦』(下)
著者:A.J. クローニン 出版社:日経BP
主人公アンドルーは、新しい土地で、医院を開業し、富裕層を取り込みどんどんと裕福になっていきます。裕福になっても、目指す目標は「さらに金」になっていきます。そんな夫の姿をみて、悲しみ孤独になっていく妻・クリスティン。
「でもあなたもわかってー、いつかきっと後悔するから」
アンドルーは、見る視野がどんどんと狭くなり、医師としての目標がかわり、つきあう人がかわり、欲しいものがかわっていきます。
でも、ある日、事件がおきます。
高名な医師だと信頼していたアイヴォリーの手術に立ち会ったアンドルーは、彼のずさんな手術を目の当たりにします。そして、その患者は手術中に亡くなってしまうのです。
医師とは何か、高名とは何か、幸せとは何かと、アンドルーは怒りにふるえながら問い始めていきます。
「幸福というものは、世俗的な財産から完全に独立した、ある純粋な心の状態だ」
この現代にあっても、さまざまなところに「城砦」はあります。
その社会にしか通用しない慣習、ルール、そして、名誉や金への異常なまでの執着。アンドルーがそうであったように、ひとたび城砦の中に入ると人は大切なことが見えにくくなってしまうものです。いま、自分がどこにいるのか、常に問う力が必要なのかもしれません。
