【詩小説】紫陽花の街の中で。(3つのお題に空想のひらめきを)
1.「透明な長靴」

それは淡い『群青の夜』の 、10歳の私のお話しです。
(早く乗って、終電にのって────────)
そんな内なる声で・・・・・・
私の目が覚めたのは
ほんの少し前のこと。
〈グレーの雲のベッド〉から飛び起きて
その部屋を出ると
辺り一面が
〈紫陽花〉(あじさい)で埋め尽くされていました。
私は一人で歩き回りました。
でも不思議と寂しくはありません。
なぜなら紫陽花さん達が
優しく見守ってくれているからです。
しばらく歩いていると
カエルさんに出会いました。
「ここは『紫陽花タウン』、一年中が梅雨の街なのさ」
彼はそう言って去って行ったの。
(早く乗って、終電に乗って────────)
それから半日ほど歩き続けてるけど
全然誰とも会わないし、建物も全く見えません。
と!?
「そこのあなた!!」
紫陽花の葉っぱにいたカタツムリさんが
私に話しかけてきます。
「君、長靴を履いてないじゃないか。」
「え?」
「透明の長靴だよ!」
「??」
「紫陽花の茂みの中を探してごらん
履くと色んな物が見えるはずだよ!!」
私は無限に咲き誇る紫陽花の中に入り
注意深く足元を探し回りました。
そして───────────
(あった・・・)
そこには確かに
「透明な長靴」が───────
周りの雨粒を眩しく反射して
七色に美しく光輝いているのでした。
2.「雨宿り喫茶店「しずく」」

私は長靴に・・・・・・
そっと足を踏み入れました。
!?
突然 目の前に「建物」が現れます!?
「雨宿り喫茶『しずく』」!?
開かれた扉の中で
一匹の黒猫が・・・
私を手招きしています。
私はその黒猫の指示に従い
「予約席」につきます。
そのテーブルには
「あじさいパフェ」
「雨上がりのケーキ」
「雲のクリームソーダ」
そして
「しずくブレンド」が置いて在ります。
(早く乗って、終電に────────)ウチなる声が叫ぶ。
目の前の黒猫が
徐に口を開きます。
「やあ、ボクはノア、君を守りに来たよ。」
美味しいケーキを食べて
ソーダを飲み干し
私は束の間の幸せを堪能します。
と!?
(早く乗って、終電に乗って─────────)
私はそのウチなる声に
心を掻き立てられて
いてもたってもいられズに・・・・・・
「私、行かなきゃ!!」
ノアが止めるのも聴かず、
私は外へと
ダッシュするのでした───────────
3.「紫陽花駅の終電」

(早く乗って、終電に────────)
私はウチなる心が命じるままに
喫茶店を後にして
「紫陽花駅の終電」めざして走り続けます。
(あ 駅が見えてきた!?)
電車は止まっていますが
もう直ぐにでも発車しそう・・・
じりりりりりり・・・
「あ、早くしないと!?」
私は急ぎ電車に近づこうと──────────
ニャアアアァァァ!?
「いやっ!?」
ノアが突然、顔に襲いかかり
私は思わず
その場にしゃがみ込みました!?
プワ───────────
終電は去っていきました。
「ふふ・・・良かった。任務完了」 ノアが安堵します。
─────────と同時に
私は一気に気を失い
そのまま暗闇へと倒れこんだのです───────────!?
4.全ての終わりに────────。

「ノスタルゼア」
2180年頃から世界中で蔓延し始めた────────────
《幼い記憶》が精神から乖離し
そのまま死に到るという不治の病。
私は知らぬ間に罹患してしまい
その〈幼き記憶〉が・・・体から離れようとした瞬間を
助けられたようだ。
それがあの終電であり
ノアの強襲だった。
あのウチなる声は「病の症状」。
従って「終電」に乗っていれば───────────
今此処に私はいない。
私は目を覚まし
改めて
頭の中を整理する。
乖離しようとする・・・
【記憶を捕まえる】治療法が確立されて早2年。
治療スタッフは─────────
「透明の長靴」
「喫茶『しずく』」
「黒猫ノア」
──────────に姿を変え、
私の幼き《10歳の記憶の中》で
私を必死に守ろうとしてくれた。
終電に乗らないように
時間稼ぎをしてくれていたのだ
もしあの時、
「終電」に乗っていたら
もう私は死んでいた。
けどノアが守ってくれた。
幼き私の記憶は
こうやって守られたのだ。
「ありがとう。」
そんな想いを
心いっぱいに噛みしめ────────
60歳の私は青空に向って
そっと
優しく微笑んだ。
( 了 )
★今回のこの「お話し」も───────────
元々はKeiさんへのコメントから生まれたもので
Keiさんにぜひ発表して下さいとの
お声掛けをして頂いて発表の運びとなりました。
Keiさん 誠に ありがとうございます。
★片桐みかん様、
非常に遅れに遅れ、
さらに遅れてしまい
申し訳ございません。
「3つのお題」が仕上がりましたので
提出させて頂きます。
何卒よろしくお願い致します。 朔太」
★片桐みかん様、マガジンに収録くださり ありがとうございます。
