【第16話】「15年か6年か — 選ばされた地獄の二択」
私が逮捕されたのは、
2020年6月23日のことだった。
初公判はその48時間後、6月25日。
2回目の裁判は7月26日に行われ、
3回目の裁判は8月26日に予定されていたが、原因不明のまま9月16日へ延期。その当日も再延期され、私の精神は、先の見えない状態に削られていた。
裁判が延期されるときも、決して「今日は中止」と軽く告げられるわけではない。
早朝に例の地下室へ連れて行かれ、何も知らされぬまま半日以上をそこで待たされる。
そしてようやく放たれた一言は、
「今日のお前の裁判は延期になった。」
じゃあ、次はいつなんだ?と聞いても、返ってくるのはたった一言。
「アラヴィツィ(知るか)。」
終わりが見えない苦しみというのは、想像をはるかに超える。
未来の見えない暗闇の中で、私はただ、生きのびるだけで精一杯だった。
そんな私のもとへ、何人かの人間が訪ねてきた。
ジョージア在住の友人に紹介された弁護士は、テレビやメディアにも出ている地元では有名な腕利きだった。
契約料も、平均的な弁護士の2〜3倍はした。
大使館の職員も何度か顔を見せた。
そして、誰もが口を揃えてこう言った。
「君の罪状は、大麻の大量保管と栽培、それと売買に関することになるだろう。
でも、コカインやヘロインじゃなくて大麻だからね。そんなに心配しなくてもいい。
罰金を払えばすぐに出られるよ。長くても1〜2年くらいだろう。」
……そんな言葉を聞くたびに、私は心の中で叫んでいた。
「こんな所に、1〜2年も入っていなきゃいけないのか?
きつすぎる。この苦しみから解放されるなら、いっそ今すぐ死んでしまいたい……」
もちろん、本気で死ぬわけではない。
でも、その選択肢が頭をよぎるほど、現実は過酷すぎた。
激しい皮膚の痒み。
鉄製ベッドが生み出す腰・肩・首の痛み。
隣人の叫び声や悲鳴。
暴れる音。
他人の体臭やワキガ。
24時間、五感のすべてが拷問を受けているような毎日。
逃げ場はどこにもなかった。
どんなに苦しくても、我慢し続けるしかない。
肉体的にも、精神的にも、もう限界だった。
そんな状態で、私はついに3回目の裁判に臨むことになる。
日時は10月16日。
いつも通り、早朝から地下室に移され、裁判が始まったのは夕方16時だった。
裁判官は起訴状を読み上げ始めた。
「トビリシのアパートにて乾燥大麻が5000g、
根を除いた植物が2本、3000gが発見されたこと。
80gの大麻を知人に販売したこと……」
オンラインでつながっていた日本語通訳者のレベルは最低で、内容はほとんど理解できなかった。
私にできることといえば、弁護士の指示に従って、少しでも刑を軽くするよう努めることだけ。
そして、裁判官は起訴状の読み上げを終えると、こう言い放った。
「もし君が判決に不服で、裁判の延期を希望するなら、15年の有罪判決が下される。
もし罪を認めるなら、6年の有罪判決だ。答えは次回の裁判で伺う。」
……私は自分の耳を疑った。
「15年⁉ マジで……ちょっと待ってくれ……」
あまりにも話が違いすぎた。
これまで聞かされてきた希望は、音を立てて崩れ去った。
けれど、どうしようもない。
現実は、受け入れる以外に道はなかった。
裁判官の言葉に打ちのめされた私は、まるで風に飛ばされる枯れ葉のように、
無力に、ただB-150号室へ連れ戻されていくだけだった。
続く。
いいなと思ったら応援しよう!
あなたは本当に素晴らしい方です!!ありがとうございます。