【第28話】アムネスティってなに!?
逮捕されてから177日目、希望がテレビから降ってきた日
2020年12月16日、水曜日。
私がジョージアの刑務所に入ってから、5ヵ月と27日目の朝だった。
朝食を終え、いつものように半分思考が停止した状態で、なんとなくテレビのニュースを見ていた。
そのとき――画面に映し出された一つの話題が、刑務所全体を揺るがすことになる。
そのニュースが始まった途端、空気が変わった。
刑務所全体がザワッと揺れたような感覚があった。
「何が起きたんだ?」と私は戸惑った。
ジェリーに聞くと、ニュースの内容は「アムネスティ」についてだと言われた。
≪Amnesty(アムネスティ)とは?≫
政府や国会が行う、刑罰の軽減や釈放に関する制度。
日本語で言えば「恩赦」にあたるもので、
特定の罪を犯した受刑者に対して、以下のような措置がとられる可能性がある:
罪の一部または全部が減刑される。
条件によっては即時釈放もありうる。
主に「記念日」や「政変」など、政治的節目に合わせて実施される。
また、この時のジョージア政府によるアムネスティの発表は、実に13年ぶりの出来事だったのだ。
そんな内容が、ニュースで流れ始めた。
その瞬間、刑務所中の受刑者たちが一斉に叫び出した。
「ジズバラーーーン!」
「ヴェーーーチナ!」
「グルデヴ・シソーツクレ!!」
(マフィア万歳!ファミリー万歳!というような意味。マフィア同士のお決まりの挨拶。)
まるでジャングルの獣や鳥が、
一斉に鳴き始めたかのように、刑務所中にも叫び声が飛び交い始めた。
主にマフィア達の情報伝達であるのだが……
私は正直、最初は何が起きているのか分からず、動揺した。
「なにごとだ…」と。
そのとき、隣で見ていたジェリーとカールが、私の理解できないジョージア語を、わかるような英語で説明してくれた。
「このニュースは、俺たちにとっても希望だぞ。」
「年明け、もしこのアムネスティが通ったら――お前も早く出られるかもしれん。」
正直、まだそのときは、内容の詳細までは分からなかった。
だが、私は聞いた。
“早く出られるかもしれない”
この言葉は、稲妻のように、一瞬で私の全身を駆け巡った。
ジェリーいわく、
私の罪――大麻所持の場合、
「絶対にアムネスティの“対象外”にはならない。何かしら減刑されるだろう」とのこと。
運が良ければ、年明けすぐに出所できる。
運が悪くても、4分の1減刑。
最悪でも、1年くらいは短くなるかもしれない。
その話を聞いた瞬間、
私は、一瞬で目が覚めた。
希望は、ただの噂でも妄想でもなかった。
「生きて出られるかもしれない」という現実味が、コンクリートで固められた私の心を一気に溶かした。
エネルギーが、体の芯から湧いてきた。
「早く出れる……生きて出れるかもしれへん……」
ただその想いだけで、コンクリートと鉄しかない部屋に差し込んだ光が、まぶしく見えて仕方なかった。
続く。
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