【第37話】ゾナへの道――静かに始まっていた“狩り”
地下室に入って、いろんな奴と代わる代わる話していた。
最初は何気ない会話のやり取りだと思っていたけれど、
よく観察すると――気づいてしまった。
話している人間同士の間に、“派閥”のようなものがある。
言葉にしなくても伝わってくる、距離感と空気感。
また、何かウラがありそうなやつ。
あれは間違いなく、マフィアのグループだった。
その瞬間から、私は少し警戒しながら会話を続けた。
あとで知ることになるが、
ゾナに行くマフィアの手先やグループの人間たちは、
“使えそうな人間”――つまり、
外国人だったり、金を持っていそうだったり、鴨にできそうな奴を
自分たちのグループに引き込もうとする傾向がある。
おそらく、私もその目で“見定め”られていたのだろう。
やがて、50〜60人ほどいた受刑者が、20人ずつに分けられ、
護送バスに乗せられる段階に入った。
その前に行われたのが――
荷物検査と身体検査。
これは刑務所を出る時に必ず行われるチェックで、
危険物や規律違反の持ち出し、武器などを所持していないかを調べられる。
だが、私はそこで信じられない出来事を経験した。
医者の指示で処方箋をもらい、薬局で買ったばかりの
マルチビタミンのサプリメント(3000円相当)と痛み止めが、
何の説明もなく没収されたのだ。
「は? 医者の指示で買ったんやぞ?」と抗議すると、
「向こう(ゾナ)でもらえ」
「俺らの知ったこっちゃない」と、完全に突き放された態度。
「5ヶ月以上待って手に入れたサプリだったのに……」
だが、どうしようもない。
私は呆然としたまま、バスへと乗り込んだ。
グルダニからバスで1時間程の移送だった。
ジョージアの護送車には窓がない。
バスと言うより、バンに近い。
囚人がバスの奥から手前に詰め込まれていき、扉を閉められ、錠をかけられる。囚人と囚人は密着状態で、誰も一センチも動けないような状態で運ばれる。
着いた先は――ゾナだった。通称ルスタビのゾナ。(ルスタビは地名)
噂では聞いていたが、
実際に到着するまで、どんな場所かなんて分からなかった。
まず最初にさせられたのは、
再度の身体検査と荷物検査。
そこから、数人ずつに分けられ、
二段ベッドが置かれた小さな部屋へ入れられた。
部屋は、半分地下のような空間。
築100年は経ってそうな、崩れかけた古びた空間で、
床には砕けたガラスや石のかけらが散乱していた。
おそらく、何十年も掃除なんてされていない場所だろう。
ベッドの上も埃だらけだった。
そう、そこはまさに――
“檻”のような箱部屋。
私はその中で、4人の男たちと一緒に入れられた。
この日、2021年3月27日は土曜日だった。
「部屋の振り分けは月曜日までない。
それまでこの部屋で待て。」
看守が来て、そう言われた。
このとき、全員の荷物は一時的に取り上げられていた。
(部屋に移動する時に返却するとのことだった)
だから、タオルも下着も歯磨きもないような状態だった……
だがそんなことよりも、あと4人の男たち”が――
またしても一筋縄ではいかない連中だった。
続く。
いいなと思ったら応援しよう!
あなたは本当に素晴らしい方です!!ありがとうございます。