【第63話】「孤独という名の拷問」
崩れた壁。
剥き出しのコンクリート。
錆びた鉄格子。
一歩踏み入れた瞬間、息をのんだ。
そこは、まるで"100年前に放置された廃墟"のようだった。
人を入れる建物じゃない。
しかし、そこが“独房”だった。
📅2021年4月3日、私は17番ゾナ308号室から、独房に移送された。
中に入ると、コンクリートで仕切られた空間がいくつもあり、
それぞれが牢屋になっていた。
私が入れられたのは、
2段ベッドが2基、最大4人部屋の独房。
でも、そこにいたのは――
私ひとりだけ。
音がない。
誰の声も、足音も、外の気配もない。
窓は小さく、光はほとんど入らない。
床は砂と石とガレキだらけ。
トイレは壊れていて、水も出なかった。
飲み水は、トイレ横にあるちっちゃな手洗い場の水だけ。
しかもそのとき、風邪で体調は最悪だった。
クラクラする頭。
止まらない悪寒。
とにかく寒い。
だけど、文句も言えない。
どうしようもない。
私はただ、ベッドに倒れ込むしかなかった。
ふと見上げると、天井に監視カメラがあった。
「独房」だからこそ、自殺監視用のカメラがついていた。
そのせいで――
部屋の電気は24時間つけっぱなし。
しかも、その光が
異常なほど眩しかった。
うまく眠れない。
身体はだるく、力が入らない。
目を閉じても、まぶたの裏に光が刺さって、なかなか眠れなかった。
病んだ体。
止まない悪寒。
光。孤独。沈黙。
ここの全てが、精神と体力を削ってくる。
でも、あの時――
どうにかして2時間ほど眠ることができた。
どれだけ寒くても、
どれだけしんどくても、
限界がくれば、眠るしかない。
どれくらい時間が経ったのかは分からない。
でも目が覚めたとき、牢屋の前に看守が来ていた。
その姿を見たとき、
ほんの少しだけホッとした。
“見捨てられてなかった”
彼は無言のまま、私の様子を見て、
食べ物を差し入れてくれた。
一発目の食事は、豆だった。
それも、ドロドロに煮られた、ぬるい豆。
味も見た目も最悪。
でも、その時の私には、それで十分だった。
どんなにひどい食事でも、食べてる間は「生きてる」感覚が、少し戻る。
でも、食べ終わっても、
やることなんかひとつもなかった。
テレビも、本も、紙もペンも、もちろんない。
独房の中には、“時間を潰すもの”が何ひとつない。
あるのは、
ボロボロの2段ベッド。
壊れたトイレ。
ちっちゃな窓。
砂と岩が転がる床。
そして、
無限に続く“沈黙”。
だから私は、また横になって、寝た。
そしてまた、2時間後くらいに起きた。
時計なんてない。
窓からは、時間の変化もわからない。
でも、身体の感覚だけが、
“少しの経過”を教えてくれる。
それ以外には、何もない。
ただ――
時間が通り過ぎるだけの場所。
そんな部屋だった。
「まぁ、長くても3日くらいだろう」
何も知らない私は、それくらいに甘く考えていた。
続く
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