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ケニアで「ガソリンが届かない」現実|燃料が過去最高水準の高騰で、EV市場が注目!

ナイロビで暮らしていて、ここ数週間、逆に気になっていることがあります。ガソリンが足りないはずなのに、この街がまだ「普通」に動いていることです。

新聞ではその影響を報じたり、地方ではすでにガソリンスタンドに長い行列ができ始めたりとじわじわと影響は広がっています。

一方で、ナイロビのスタンドはまだ普通に営業しているところがほとんどで、小さなデモはあれど燃料不足を訴える声は大きくありません。

しかし、この静けさがかえって不気味に感じられます。なぜなら、数字はすでに危機を示しているからです。

つい昨日のガソリン価格は206KES(約247円)/リットルと高騰してきました。先月は178KES(約213円)だったことを考えると15%も値上がりしています。


原因は中東情勢の悪化

原因は、中東情勢の急速な悪化です。2026年3月以降、イランを巡る軍事的緊張がホルムズ海峡の通航に影響を及ぼし、世界の原油供給が逼迫しました。

石油のすべてを輸入に頼るケニアは、そのあおりを正面から受けています。

4月2日、ムバディ財務長官はテレビ報道の中で、国内の燃料在庫がガソリン16日分、ディーゼル19日分、ジェット燃料49日分しかないことを公表しました。

ケニアの石油規制では輸入業者に最低21日分の備蓄を義務付けていますが、ガソリンとディーゼルはすでにその基準を下回っています。

政府は「入荷予定の船が来れば47日分まで回復する」と説明していますが、その船がいつ着くのかは、ホルムズ海峡の情勢次第です。

ケニア政府はパニックを抑えるためか、大々的な報道を控えているようにも見えます。

ナイロビの日常がまだ「普通」であることと、在庫が法定基準を割り込んでいるという事実——この落差が、現場にいる者としてはもっとも怖いところです。

静かに進む「燃料がない社会」への備え

この燃料危機は、じわじわと生活の隅々に影響を及ぼしています。

地方ではすでに深刻だそうです。ムランガ、メル、ニエリ、キリニャガといった中央州の県では、ガソリンスタンドが一時閉鎖に追い込まれています。

ナクルでは燃料不足によりマタツ(乗合バス)の運賃が跳ね上がり、通勤者の家計を直撃しています。

ケニア競争規制当局(CAK)は石油販売会社に対して「買い占め・価格操作」の警告を発し、エネルギー省の高官が逮捕・辞任するという異例の事態にも発展しました。

ケニア航空も例外ではありません。ジェット燃料の確保が困難になり、4月のフライトスケジュールへの影響が報じられています。

私自身、5月に日本への一時帰国を予定していますが、そのとき本当にフライトが飛ぶのか——これは冗談ではなく、ナイロビに住む外国人の間でリアルに交わされている会話です。

一方で、あまり大々的に報道されていないものの、在ケニアの国際機関や企業は独自に対応を始めています。

燃料危機の裏で加速するEVシフト

一方、この燃料危機を機に、EVバイクを中心としたEV市場への関心が目に見えて高まっています。

私自身、もしガソリンが手に入らなくなったら、UberやBoltでEVバイクを呼ぶことを真剣に検討し始めました。実はこれ、すでに現実的な選択肢になっています。

Bolt(配車アプリ)では、2026年初頭の時点でケニアのバイクライダーの40%以上が電動バイクに移行しています。

1,700人以上のライダーがファイナンスプログラムを通じてEVバイクに乗り換え、燃料費とメンテナンス費が合わせて約75%削減されたと報告されています。Uberも3,000台の電動バイクをケニアに投入済みです。

この流れは、燃料危機が起きる前から着実に進んでいました。

ケニアのEV登録台数は2022年の1,378台から2025年には39,324台へと、わずか3年で約28倍に急増しています。電動バイクが新車販売の15%を占めるまでになり、バッテリー交換式のステーションも増えています。

ナイロビを中心に展開するChecheは12カ所のバッテリースワップステーションを設置し、約1,200個のバッテリーで500台のバイクを支えるネットワークを構築しました。

電動バスの分野では、BasiGoがナイロビ首都圏に100台以上の電動バスを走らせ、都市間路線への拡大も進めています。

Roamは電動バイクのバッテリー生産とスワッピングステーションの拡大に向けて1,950万ドル(約29億円)の資金を調達しました。

電動バスや電動バイクの電力消費量は、2025年下半期だけで4.57ギガワット時に達し、前年同期比で152%増という驚異的な伸びを見せています。

なぜケニアでEVが「刺さる」3つの理由

この急成長は一時的なブームではなく、構造的な背景があります。

① 石油100%輸入国という脆弱性

ケニアは1日約10万バレルの石油を消費しますが、ほぼすべてを輸入に依存しています。今回のような中東危機が起きるたびに、国全体が揺さぶられます。

EVは、この「輸入石油への一本足依存」からの脱却手段として、エネルギー安全保障の観点から国家的に推進されています。

② 電力の9割が再生可能エネルギー

ケニアの電力網は地熱・水力・風力が中心で、再生可能エネルギー比率が約90%に達しています。

つまり、EVに切り替えれば「輸入化石燃料」から「国産クリーンエネルギー」への転換が同時に実現します。

これは石炭火力に依存する南アフリカなどとは根本的に異なるケニア独自のアドバンテージです。

③ 国家政策の本格始動——燃料危機が「追い風」に

2026年2月、ケニア政府は「国家電動モビリティ(e-Mobility)政策」を正式に発表しました。

電動バイク・電動バス・リチウムイオンバッテリーのVAT(付加価値税)をゼロ税率に設定し、物品税も免除。EV部品の製造・組立事業者への税制優遇や、充電インフラ設置に対するスタンプ税の軽減も盛り込まれました。

パイロット事業の段階を終え、国家戦略として本格的に舵を切った形です。

さらに注目すべきは、ケニア政府がこの燃料危機を「EV転換のチャンス」と捉え始めていることです。

報道によれば、政府はこれまで予定していた公用車2,500台の購入計画を見直し、代わりに3,000台の国内組立EVに切り替える方針を打ち出しました。

中東情勢がもたらすエネルギーリスクを、石油依存からの脱却を加速させる契機として活用する——ケニア政府のこの判断は、年間約50億ドル(約7,500億円)にのぼる石油輸入費が国の外貨準備を圧迫している現実を考えれば、合理的な選択といえるでしょう。

スタートアップとVCが見ている「次の景色」

ナイロビのスタートアップシーンでは、この燃料危機がEV投資の追い風になるという見方が広がっています。

Roam、BasiGo、Spiro、Arc Ride、Cheche——ケニアを拠点とするEVスタートアップは、すでにグローバルなVCから大型の資金調達を実現しています。BasiGoのシリーズAは4,250万ドル(約64億円)に達しました。

投資家が注目しているのは、EVの「トータルコストオブオーナーシップ(TCO、総保有コスト)」の優位性です。

ケニアでは電動バイクのTCOがガソリンバイクより30〜40%低いとされています。燃料費が高騰すれば、その差はさらに開きます。

今回の燃料危機は、「EVのほうが経済的に合理的だ」というメッセージを、数字ではなく体感として全国民に突きつけました。

さらに、ボダボダ(バイクタクシー)ライダーたちの口コミが強力な普及エンジンになっています。

「EVに変えたら月の燃料代が4分の1になった」——この情報は、ガソリンスタンドの行列で待っているライダー同士の会話の中で、急速に広がっています。

燃料危機は、転機でもある

ナイロビの街は、まだ「普通」に動いています。しかし、その普通がいつまで続くのか、誰にもわかりません。

5月のフライトは飛ぶのか、来月のガソリン価格はどうなるのか——ケニアに住む一人として、不安は確かにあります。

しかし同時に、この危機がEVシフトを一気に加速させる転機になりつつあることも、現場から見える景色です。

政府が公用車をEVに切り替え、スタートアップが電動バイクのネットワークを広げ、配車アプリのライダーたちが次々とガソリンから離れていく。

ナイロビの道路を静かに走り抜けていく電動バイクの数は、確実に増えています。

その光景が、ケニアの交通・エネルギーの未来を象徴しているように感じられます。

❚ 連載シリーズ"中東危機がアフリカに突きつけた3つの問い" 

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ケニアの燃料危機は、アフリカのエネルギー構造が転換点を迎えていることを浮き彫りにしています。

EVバイク・バス・バッテリースワッピング・充電インフラ——いま現地では、新しいモビリティのエコシステムが急ピッチで形成されつつあります。

アクセルアフリカは『日本とアフリカ諸国を繋ぎ、社会課題解決型ビジネスを共創することで、アフリカの持続的成長に貢献する』をビジョンに掲げ、ケニアの事務所及びコミュニティハウスを拠点にアフリカ主要国をカバーしています。

EVモビリティ・クリーンエネルギー分野の市場調査から、現地スタートアップとの事業連携支援まで、日本企業のアフリカ参入を現場の知見でサポートします。

「アフリカのEVシフトをビジネス機会に変えたい」とお考えの方は、ぜひお気軽にご相談ください。

❚ 情報参照元


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