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【市役所】「財政が厳しいのに予算を使い切れ?」|蔓延する矛盾を元財政課職員が解説

こんにちは。市役所職員のボンベイです。

私は以前、財政課に5年間在籍していました。
予算の編成をする中で、事業課と財政課の攻防が繰り広げられます。

財政課「財政状況は厳しい」
事業課「予算は必ず使い切るように」

側から見たら、内部でのしょうもない争いに見えますが、この文化は結構根強いです。
この矛盾がどうして生じるのか、なかなか理解できませんでした。

「お金がないなら、無駄遣いしない方がいいじゃないか」

当たり前の感覚のようですが、行政の現場では、そう単純にはいかない“構造的な事情”があります。

この記事では、その実体験をもとに、行政の「予算をめぐる不可思議な世界」を言語化してみたいと思います。



1. 「市の財政状況は厳しい」は本当か?

財政課にいると、議会や市民に対して「財政は厳しい」と説明する機会が多くあります。
これは半分本当で、半分は“防衛的な枕詞”でもあります。

たとえば私の自治体では、当初予算で財政調整基金(市の貯金)を多い時で10億円ほど取り崩していたにもかかわらず、年度末にはほぼ同額を積み立てることができていました。

つまり、見かけ上は赤字でも、最終的には黒字に戻っているのです。

大半の人が注目するのは「当初予算」。
これは「貯金を切り崩さないと予算が組めない」という見かけ上の厳しさ。
でも、1年が終わるころにはキャッシュバックされていることが多い。

もちろん、「厳しい」の中身は単なる金欠ではなく、人件費・扶助費・公債費などの義務的経費が歳出の大半を占めていて、柔軟に使えるお金が少ないという意味も含んでいます。
(興味ある方は、「経常収支比率」で調べてみてください)

とはいえ、「査定を厳しくしたい」「事業を削る理由が欲しい」といった意図でこの言葉が使われることも少なくありません。

全体像がわからない時は、どこまでが真実で、どこからが方便なのか……現場にいると、その曖昧さに違和感を覚えることもありました。


2. 査定の現場で繰り広げられる駆け引き

私の自治体では、「一件査定」といって、すべての事業を精査して積み上げる方式で予算編成を行っています。

行政では、予算を議会に認めてもらわないとお金を使えないので、予算編成の際は、実際にかかる経費に少しマージンを持たせて予算要求をします。

財政課の査定は、
①必要な事業かどうか
②最小限必要な額+適切なマージンになっているかどうか

の2段階のフィルタで適正な額を見抜く作業です。

各課から上がってきた要求に対し、「なぜその金額が必要なのか」を問い、根拠が不十分なものや、金額が過大なものは査定(減額)します。
しかし、実際に根拠を明確に説明できる職員は多くありません。

多くが「前年と同じで」といった前年踏襲型の要求です。
異動で職員の1/3〜1/4が毎年入れ替わるため、過去の経緯を資料として残しておかないと、予算の根拠が分からなくなってしまうのです。

こうした背景から、要求側と査定側の駆け引きが常態化しています。

たとえば…

  • 要求側:「多めに見積もっておけば、多少カットされても困らない」

  • 財政側:「過去の執行率を見れば、そんなに要らないはず」

このようなやり取りのなかで、「最適な金額」は後回しにされ、交渉力の有無で予算の行方が決まることさえあります。


3. 「予算を使い切らないと減らされる」文化

最も違和感を覚えたのが、「使い切らないと来年減らされるから、なんでもいいから使え」という空気感です。

ある年、行政改革を担当する部署の所属長が、部下にこんな指示を出していたのを耳にしました。

「予算余ってるから、消耗品をまとめて買っておいて」

まさか、行政改革を掲げる部署がそんなことを…と衝撃でした。

なぜそんなことが起きるのか?

それは、予算が余った=不要と判断され、翌年度に減額される仕組みがあるからです。

現場はそれを恐れて、「無駄でも使い切る」ことを優先してしまうのです。
特に年度末になると、こうした「駆け込み消耗品購入」が常態化しています。


4. そもそも予算制度が合っていない

この問題の根本には、行政の制度設計があります。

  • 単年度主義:1年ごとに予算を使い切る前提

  • 前年度踏襲:過去の実績がそのまま次年度に影響

  • 執行率重視:使ったかどうかが評価される

私の自治体では、以下のような流れで予算編成が行われます。

  • 10月:オータムレビュー(次年度方針の整理)

  • 11月:予算要求

  • 11〜12月:ヒアリング→財政課査定→部長査定

  • 1月:市長査定・内々示

  • 2月:内示(完了)

こうして半年かけて組んだ予算も、年度が始まって社会情勢が変わると使いにくくなります。
それでも原則として補正予算での追加はあっても、柔軟な組み換えは困難。

これでは変化の激しい時代に対応した行政運営は難しいと感じます。
実際、コロナ禍以降で補正予算を組んだ回数は倍増していますし、当初予算でギリギリ査定したのは何だったのかという状況になります。


5. 企業と真逆の評価軸にある行政

この構造の最大の課題は、「使わなかったことが評価されない」点です。

民間企業では、支出を抑えて利益を出した人が評価されます。
しかし行政では、予算を使い切らないと「不要」とされ、減額されてしまいます。

議会でも、予算額と決算額の差額が大きいと、「ちゃんと事業したのか」と指摘されることも。

本来なら、予算を抑えて成果を上げた人こそ評価されるべきです。

ですが制度的にそれができず、財政課も目の前の「削減」だけに目を向けがちで、事業の意義や成果にまで目が届かないことがあります。

「どれだけ使ったか」ではなく、「どんな成果を上げたか」で評価される行政にしていく必要があります。

今はまだ少数派ですが、「使わなかったこと=優秀」と捉える動きも、一部の自治体では始まっています。

本来の行政の目的は、市民の暮らしを良くすること。
予算執行はそのための手段にすぎません。

とくに一件査定で予算を組む自治体では、「必要な事業には予算を十分与える」「支出を抑えて成果を上げたら評価する」という運用が理想だと、私は思います。

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ボンベイ@元市役所職員Webライター 記事を読んでいただきありがとうございます。 市役所を離れ、4月からWebライターとして新たな一歩を踏み出します。 いただいた応援は、執筆活動やスキルアップのために大切に活用させていただき、皆様へ還元できれば嬉しいです。 皆様の「スキ」やサポートが、私の挑戦の大きな原動力です。