見出し画像

お父さんに遊んでもらいたい      あしなが育英会の『つどい』で」|ことり日記|二十四話

あのつどいで、私は初めて「ひとりじゃない」と感じました。
子どもの言葉に救われたのは、私のほうだったのかもしれません

ラジオからの案内

ある日の静かな夕方でした。
台所で洗い物をしていると、ラジオから「あしなが育英会」という言葉が耳に入ってきました。

病気や事故で親を亡くした子どもたちを支援する団体。

その説明を聞いた瞬間、胸の奥がきゅっと熱くなりました。

「つどい」という、同じ境遇の子どもたちが集まる活動がある
その言葉に心が引き寄せられ、ふと「行ってみたい」と思いました。

でも同時に、怖さもありました。
子どもが小学生になった頃のことです。
私は、それまで夫のことをほとんど話題にしてこなかったからです。

それでも勇気を出して問い合わせをし、
子どもと二人、「はじめてのつどい」に参加することにしました。


はじめての「つどい」

会場には、たくさんの親子がいて、
元気な笑い声が絶えず響いていました。

会場に入った途端、スタッフの笑顔に迎えられ、
その瞬間、緊張がふっとほどけました。

「ああ、来てよかった」
自然とそう思えました。


親子が離れる時間

この集いでは、親と子どもは離れて過ごすプログラムでした。
夜も昼も、お風呂も別々。
そんな経験は初めてでした。

大丈夫かな?
泣かないかな?
ちゃんと眠れるだろうか?

そう思ったのは、きっと私のほうでした。
ずっと子どものことを考えながら生きてきたから、離れることに慣れていなかったのです。

でも、他のお母さんが
「大丈夫よ。子どもは子どもで楽しむから」
とあっけらかんと言ってくれ、少し肩の力が抜けました。

会場にはお菓子や飲み物が準備されていて、
そのお菓子を自由に口にできるだけで、胸がじんわり温かくなりました。

また来たい
心の底からそう思える場所でした。


作文の課題

最終日、作文を書く時間がありました。

私は、自分の悲しみを素直に書くことができませんでした。
自分を隠しておきたい、知られたくない。弱さを見せたら崩れ落ちてしまいそうで怖かったのです。

だから、差し障りのない言葉をつらつらと並べただけでした。

表面では笑顔を作っていても、
心は閉ざしたままだったのだと思います。


子どもの作文  その一言に泣いた

ところが、子どもたちにも、同じように作文の課題が出されていました。

読むつもりはありませんでした。
むしろ、読んではいけないものでした。

でも、ふと紙の端が目に入ってしまいました。

そこには、文字でこう書かれていました。

「お父さんが生きていたら、お父さんに遊んでもらいたい」

その一行を読んだ瞬間、
胸がぎゅっと締めつけられ、涙があふれました。

子どもは、ずっとそう思っていたのだ。

私は、子どもの「当たり前の願い」に気づいてあげられていなかった。
父親がいるということが、子どもにとってどれほど大きな意味を持つのか。
その“当たり前”を、私は忘れていたのかもしれません。

小さな頃の父親の存在の大きさを、あの一行が教えてくれました。


振り返って

子どもは、その時の感情を
素直に作文に書くことができていました。

私は、その時には素直になれなかった。
心を守るので精一杯でした。

でも、それでよかったのだと思います。
子どもには素直になれる場所があって、
同じ境遇の仲間と過ごせる時間があって。

そして私も、
あの日から少しずつ、心を開いていけるかもしれない
そう思えました。

「また来たい」
あの日、心の底からそう思ったのは、
きっと「前に進むための最初の一歩」だったのだと思います。あのつどいで、私は初めて『ひとりじゃない』と感じた。
子どもの言葉に救われたのは、私のほうだったのかもしれません。



*追記*

いただいたコメントを読みながら、
私はずっと、自分の気持ちを隠したまま歩いてきたのだと気づきました。
誰にも見せられなかった想いに、
ようやく「そのままでいいんだよ」と言ってあげられた気がします。許すというより、
やっと自分に素直になれたのだと思います。
こんなふうに感じられたのは、
言葉を届けてくださった方々のおかげです。💞
そんな変化に気づかせてくれた皆さんのお言葉に、感謝しかありません。

⭐️この記事を「ひとつぶのドロップ」という、
メルト&クリエイト🔵(M&C通信)🎈さんの
静かな想いを集めたマガジンに加えていただきました。
読んでくださった方のやさしさに触れ、胸がそっと温かくなりました。
静かに綴った言葉が、どこかで誰かの心に届いていたのだと思うと、
励まされる気持ちです。
ありがとうございます🕊️✨

⭐️心に響く発見と共感、興味が広がる日常の物語という、リコピンさんのhttps://note.com/holy_otter9030/m/mc7d33b84156aにマガジンに追加してくださり、本当にありがとうございます。
私の記事をそっと迎えていただけて、とても嬉しく思いました

⭐️頑張るあなたへ そっとエールをという
天野 雫 ✿ 占い日記 〜心のしずく〜
さんのマガジンに追加して下さりました
本当にありがとうございます😊https://note.com/proper_bonobo536/m/m6d3400fb7014



いいなと思ったら応援しよう!

ことり日記 読んでいただき、ありがとうございます。 言葉を綴ることが、誰かの心に届く灯りになりますように。 いただいたサポートは、クリエイターとしての活動費につながります。