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夫が立ち会った出産、その数ヶ月後に死別ひとつの命が生まれ、         ひとつの命が消えた年。        あの日母になった私へ

あの日、母になった私へ。
あなたは知らないと思うけれど

この子が生まれた数ヶ月後、
夫は静かに旅立ちます。

ひとつの命が生まれ、
ひとつの命が消えた年。

20年後の私から、あの日のあなたへ。


妊娠中に告げられた、夫の余命

あの日、病室で赤ちゃんの泣き声を聞いたとき、
あなたは「母になった」と思ったよね。

「生まれてきてくれてありがとう」

涙が止まらなかったね。


でも、覚えていますか?

妊娠がわかった直後、
夫に「余命一年」が告げられたことを。

大きなお腹で車を運転し、
雪の中を夫の病院へ通っていたことを。

「交通事故にあいませんように」

「この子を無事に産ませてください」

毎日祈りながら、
お腹の中の赤ちゃんに話しかけていたね。


夫が残した言葉


夫は言いました。

「たぶん、生まれ変わり。僕の生まれ変わりになるよ」

死の恐怖と戦いながらも、
あなたとお腹の子を思っていた。


そして──出産の日。

夫は、一時退院して、
あなたの出産に立ち会ってくれました。

「会えたね」
「生まれてきたね」

やせ細った手で、赤ちゃんの小さな手を握っていた。

その姿は、20年経った今も、目に焼き付いています。

そして数ヶ月後、夫は旅立った

あの日のあなたは、まだ知らない。

出産の喜びも束の間、
再び夫の看病と入退院に追われる日々が始まることを。

生まれたばかりの赤ちゃんを抱えての看病が、
どれほど過酷なものかを。

そして、この子が生まれて数ヶ月後

夫は静かに息を引き取ります。


生まれたばかりの赤ちゃんを抱きながら、
あなたは途方に暮れて、毎晩泣き明かす。

それでも、あの日のあなたは誓いました。

「この子だけは、何があっても絶対に私が守る」

と。

20年後の今、伝えたいこと



あの日のあなたへ。

仕事も、お金も、先の見通しもなかったね。

それでも、立ち止まらなかった。

誰にも見せない涙を拭き、
笑顔をつくり、
母としての毎日を始めた。


そして今、20年が過ぎました。

あの子は立派に成長し、
あなたもまた、強く優しくなりました。

あのとき感じた孤独も悲しみも、
すべてが「母になった日」の延長線にある。


あの日、母になった私へ


あの日のあなたへ。

泣いてもいい。
弱音を吐いてもいい。

でもね、自分と赤ちゃんを信じて。
一人じゃないよ。


大丈夫。
何も心配しなくていい。

「生きていてよかった」と思える日が、きっとくる。

あなたが流した涙は、
すべて未来の光になるから。


この記事は、Noteお題企画「#あの日母になった私へ」に参加しています。

妊娠中に夫の末期がんが発覚し、出産の数ヶ月後に死別。
母子ふたりで歩んだ20年の記録を「ことり日記」として綴っています。

▼ ことり日記、第一話から読む

https://note.com/bold_swift2032/n/n80ed4ba02eff

    ▼ ことり日記マガジン

https://note.com/bold_swift2032/mes


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