小銭が足りない─年末年始の海外旅行(中編)|ことり日記|二十話
博物館と動物園がセットになった場所へ、バスで行くことにしました。
バス停で現地の人に「ここで合っていますか?」と聞きながら、バスに乗り込みました。座席に座り、前方の料金表を見つめました。
バスが停留所に停まるたび、料金が変わります。
「いくら、いくら」
親子で小銭を数えました。次の停留所でまた料金が変わると、また数え直します。手のひらの硬貨を、子どもと一緒に確認しながら進みました。
やがて、降りる場所が近づいてきました。料金表を見ると、少し足りません。
お札は持っていました。でも、両替が必要です。
降りる時、運転手さんに小銭とお札を見せて、身振り手振りで伝えました。
「こうです。これで、なんとかしてください」
運転手さんは、小銭の方を指さして、こう言いました。
「これを入れろ。あとは、もういい、大丈夫」
英語だったか、身振り手振りだったか、はっきり覚えていません。でも、その笑顔は、今でも鮮明に覚えています。
親子で頭を下げました。運転手さんに、そして、少し時間を取らせてしまった乗客の方々にも、お辞儀をしました。
乗客の方も、笑顔でした。

着いたのは夕方で、動物園をゆっくり見る時間はありませんでした。でも、見れる範囲だけ、見ればいい。
とにかく、優しかった。
「親子で頼りなげだけど、よく来てくれた」
そんな雰囲気が、いろんな場所で伝わってきました。
この旅で、私は何かに気づいたのだと思います。
それが何だったのか、今、ようやく言葉になろうとしています。
後編に続きます。
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