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オレの相棒(あいぼう)第5回





成岡「おらんじゃないか~~~~!」




相変わらず、ハチの消息は、
つかめないでいる・・・


捜索中の成岡たちに、
地元の中国人農家たちから、

”さきほど、畑でヒョウを見た。”

との、情報が寄せられた。
山の東側にある、
段々畑だったというから、
成岡たちは、現在、
その周辺を探している・・・



成岡「みんな~

   ハチいたか~?

   こっちには、
   いないぞ~~!」



”ガサガサ”



成岡は、近くの雑木林を
探していた・・・
突如、茂みがざわめいた



成岡「おっ!!ハチか!!
   ハチ!どこ行ってた!

   心配させおって!!
   怒らんから、出てこい!
   ハチ!!
   オレだぞ!帰るぞ!!」




パッと、茂みから出現したのは・・・







残念でした~♡(写真AC様)




”野ジカだった・・・”



成岡「カワイイけど~~!!

   お前じゃない~~~~~!!

   ハチ~~~~~~!!

   山に帰ってしまったのか~~~!!

   オレのハチ~~~~~~~!!」




”バタン!”




隊員たち「小隊長~~~!!」

    「どうしたんですか!」 

    「しっかりして下さい~~!」



隊員たちは、急いで小隊長を背負い、
兵舎へと、帰って行った・・・



成岡は今、
薄れゆく意識の中、
ハチとの、思い出の世界にいる・・・


(兵舎内 風呂場)


任務を終えた成岡が、
入浴の準備を浴場でしている。
支度をしている成岡に気づいたハチ、

寝転んでいた姿勢から、
パッと起きて、成岡より先に、
浴場の前に行き、到着を待つ。

脱衣場で、成岡が着ている物を、
脱ぎだすと、不思議そうな顔をして、
みつめるハチ・・・

裸になった成岡に近づき、
なめ回そうとするが・・・


成岡「ヒャッホ~~~!」


”バチャ~~~~~~ン!”


成岡は、勢いよく
湯舟に飛び込む。


”ガタン”


相手にされないハチは、
成岡が脱いだばかりの衣服を、
脱衣カゴから、次々に、
引っ張りだして遊んでいる。


成岡「ハチ!ダメだぞ!」


体をビクン!とさせて
驚いた顔で、
成岡を見つめるハチ。


湯舟から出て、
風呂椅子に座る成岡のもとへ、
申し訳なさそうに、
ご機嫌取りに行くハチ・・・


”ペロッ、ペロッ!”


前足で、成岡を抱き寄せると、
長い特徴的な顔から始まり、
首筋・・背中・・・
所構わず、なめ回すハチ。


成岡「ハチ・・・くん・・・

   気持ちはわかった・・・

   わかったから・・

   痛いんだけど・・・

   特に背中やめて・・・

   ほんと・・・痛いから・・」



ハチの精一杯の愛情表現も、
ネコ科特有の、ザラザラした舌は、
成岡のヒフをはがされるような
苦痛であったが、

これも、ハチの愛と思い、
成岡は、うれし涙で耐えるのであったが・・


耐えきれず、成岡が逃げようとすると、
爪を引っ込めた、ハチの前足が、
成岡を引き釣り戻して、
更にいたる所を、なめ回すハチ。


成岡「負けんぞ~~ハチ~~!」


石けん箱まで、手をなんとか伸ばし、
石けんを素早く手に取ると、
湯をつけて、ハチの体にこすりつけ
泡立てると・・・


ハチ「!?」


泡立った所をなめたハチが、
たじろいだスキに、
成岡は、抜け出して
ハチの首や背中、尾など、
石けんで、ゴシゴシと
泡立てるのでした。


成岡「ハチ~~~!
   匂いぞ!匂うぞ!

   お前さんも、
   我が隊の一員だから、
   清潔にせんと、
   いかんぞ!!

   小隊長命令であ~~る!」



”ブルブルブル”

  

ハチが、全身についた
泡を吹き飛ばす。


成岡「やったな~~!ハチ!」




「小隊長どの!

  小隊長どの!

    小隊長どの!」




成岡「ん~・・・ハチ・・・・」



隊員「小隊長どの!!
   起きて下さい!
   大丈夫ですか!」


成岡「ん~~~・・・・

   ハッ!

   おい!ハチは、ハチは?」


成岡は、隊員に背おられて、
兵舎内に、帰ってきていた。


隊員「まだ帰っておりません・・。」


成岡「そうか・・・・
   任務中みんな
   スマンかったな。

   もう戻ってくれや。
   オレは、あの
   ”ニレの木”の所で、
   少し休んでいくからよ。

   お疲れ様。」


ニレの木に向かう、
寂しい成岡の背中に向かって、
隊員たちが、たまらず声をかける。

「ハチは、きっと帰ってきますよ!」

「腹が減ったら、すぐ炊事場に来ますよ!」

「ハチは、小隊長どのが大好きです!
  絶対!帰ってきますよ!」



元気なく右腕だけをあげる成岡。
頼りない足どりで、
兵舎内にある、
大きなニレの木まで来た。



成岡「ハチ・・・・・

   お前さん・・・

   帰っちまったのかよぉ・・・

   一言いってくれよ・・・

   さみしいじゃねえかよ・・・・」







ニレの木(写真AC様)





”ヒョイッ!”




成岡「ん!?」









ご苦労様!先に帰ってたヨ!ボク!





成岡「ハチ~~~~~~~~~!!」




成岡は、ハチに駆け寄る。


「お疲れ様でした。」


と、言わんばかりにハチは、
アゴを突き出す愛くるしい仕草で、
成岡を出迎えるのであった。


”ガバッ!”


成岡は、ハチをあらん限りの力で、
命一杯、抱きしめた。



成岡「心配させやがって!! 

   お前さんは、
   きっと帰って来ると、
   オレは、信じてたぜ!


   ハチ~~~~!!
   おかえり~~~~!」



成岡の大声を聞いて、
隊員たちが、駆け寄って来た


隊員「ハチ~!
   どこ行っていた~~!」


隊員「こらあ~!
   ハチ~~~~!」


隊員「小隊長を、
   心配させるなよ!ハチ!」



”バシ!バシ!”


隊員たちが、
成岡の後、順番に交代で、
ハチへ声をかけ、
強く抱きしめるのであった。

ハチにも、成岡や隊員たちの
愛情が伝わったのか、
抱きしめられるたびに、

長い尾で地面を叩き、


「わかったよ。わかったよ。」


とでも、返事をするかのように、
長い尾で、答えるのであった。



成岡は、
この微笑ましい光景は、
網膜に、いつまでも強い印象となって
残っていると、
自著で記している。


こうして、
「ハチ失踪事件」は、
より、ハチと成岡の絆を深めて、
その幕を、下ろしたのであった・・・



ハチ失踪事件から、
しばらく時は流れた・・・




今、成岡は悩んでいる・・・


何を?


読者は、第2回冒頭
ハチを山から連れ帰る際に、
成岡を悩ませていた

”2つの不安”

を、覚えておられるだろうか?

・上層部から、
 ハチの飼育を許可されるか?


・ハチは、成長した時に、
 親のように、
 人に危害を与えるか、どうか?


ここで、第2回と同じように、
成岡の心の中を、少しのぞいてみたい。
(以下、しばらく成岡の心の声)



戦争は、更に泥沼状態に入った。
いつ、終わるとも誰にも分からん。

オレも含めて、隊全体の連中は、
日本から遠く離れた、
この慣れない大陸にいる。

お互いに、今日一日生き残っても、
明日には、その命を奪われるかもしれん。
そんな世界に、オレたちは生きている。

大陸の色んなヤツらが、
いつ、この兵舎を襲うかもしれない
日々の兵舎警備だって、命がけだ。

それに加えて、日課である、
激しい戦闘訓練。

疲れ切って、心も寂しい
隊員たちの慰めに、
ハチの存在は、ありがたい。


猛獣のヒョウは、
人に懐かないと、言われている。

サーカスでも、ヒョウを調教し、
芸をさせた例は、ほとんどないらしい。


はっきりいって、
山から連れ帰った時は、
飼いならせるか、自信はゼロ。

親のように、人間に牙をむく
ようなら、その時は・・・
オレが、引き金をひく責任がある。


だが、奇跡的にもハチは、
オレたちの愛情を、
たっぷり受けて
人間に馴れてくれた。


隊員たちは、ハチと遊ぶ事で、
ひと時にせよ、明日、突然この世から、
消えるかもしれない、恐怖を忘れられるし、


迷い、苦しみ、悩みから、
その時は、解放される。
勇気をもらったと、
いう隊員もいた。

ハチの存在は、本当に貴重だ。
その功績はデカイし、ありがたい。


「野生の豹と共に、暮らす男」


なーんて事言われて、
戦線の各部隊に、
いつの間にか、
知れ渡ってしまって、

こっそり飼ってるのに、
ホント、まいっちまうぜ。

こうやって、
ハチがよくやってくれるので、
うれしくて、故郷に手紙を
書いたら・・・


親父どのから、
こんな返信が届いた。


(実際に、成岡に届いた手紙)




「正久
 やめろ、やめてくれ、
 このほかに、何も言うことはない。

 前から何度となく言っておいたように、
 お前は、手柄顔に、
 豹(ひょう)を育てている事を
 知らせてよこすが、
 
 先日の写真で見ると、

 父でさえ驚くばかり大きくなっている。
 
 普通の動物なら、末(ま)だしも、

 猛獣の中で、最も危険な豹を育て、
 もし万一のことでもあれば、
 この父は、泣いても泣ききれない。
 
 世間に顔向けも出来なくなる。

 自分だけにとどまればよいが、
 他の人々に危害を加えるような
 ことでもあれば、どうなるのだ。
 
 父は、豹の事など人に話したこともない。

 
 豹を育てる暇があるなら、

 お前の得意な銃剣術に
 一層精を出してもらいたい。
 
 それが、兵隊としての道ではないのか。

 家の者はみな、お前が立派な手柄を
 たてるのを、毎日祈っているのだ。
 
 正久

 
 家の名前を辱(はずかし)めるような事の

 起こらぬうち、豹を手放せ、
 父の願いは、ただそのことだけだ。
 兵隊としての覚悟は、十分出来ているお前だ、
 どうか不忠、不孝な子になってくれるな 」

引用元 全集日本動物誌4 成岡正久著「豹と兵隊」 P176、177


 


参っちまうぜ。親父どの。
それに、部隊内の上司も、
ヒョウを、何とかしろって、
最近、風当たりが厳しい。


弱っちまったな・・・・。


ここで、成岡の心から、
我々は、離れたい。


成岡が2つ持つ不安。
そのうち、2つめは、
とりあえず大丈夫そうだ。

問題は、1つめだ。
軍という組織に属する以上、
こればかりは、
避けて通れない。


成岡は、どうしたものかと、
可愛いハチを目の前に、
ここのところ毎日、頭を抱えている。


大陸は、梅雨の時期を迎えている。
長雨のため、兵舎内外の地形が
変わってしまう為、

大規模な補強作業が行われた。
ちょうど、その頃である、
成岡に、このような通達が、
再三届いた・・・・






「危険であるから、
  
  隊内での飼育は        

   絶対に禁ずる!!」




送り主は、亀川連隊長。


補強作業の成果と、
この1月に入った、
初年兵たちの
成長ぶりを確かめるために、

幹部たちを連れて、
”巡察”(じゅんさつ)に来る。

<巡察=巡回して事情を視察すること>




成岡「弱ったね~。
   さてと、成岡さんよ。
   連隊長を攻略しないと、

   ハチを処分しなくちゃ
   ならんぜ。
   どうするよ~。」


成岡は、アゴ下をなでる。


成岡「それにしても、
   困ったなー。
   ハチ、何かいい知恵ないか?」


足下で、
じゃれているハチに
声をかけるが、
首をかしげるだけだ。




成岡「どうすりゃいいんだよ!」







???「お困りですか?」





成岡の背後から、
男の声がした。





だれ?(イラストAC様)





成岡「あれ?
   こんな奴いたっけ?
  
   お~~い!

   ”不審者”が、兵舎内にいるぞ~~~!」



???「わぁ!ちょっと小隊長どの!!」




成岡「ん?何か聞いた事ある声・・・」



「吉村ですよ!!

  吉村重隆(よしむらしげたか) 



お忘れの読者も多いと思うが、
第2回で、名付け会の時に
いた隊員である。

声の主は、その吉村だった。



成岡「吉村か~~~!
   任務終えたのか?
   ご苦労!ご苦労!
  
   そんな恰好してるから、
   分からんよ。どうした?」



吉村「ハッ!吉村戻りました。

   実はこの衣装、
   帰りに街で買ったので、
   隊のみんなに、
   自慢してやろうかと思って、

   小隊長が、困っているみたいだから、
   思わず着ちゃったであります!」



成岡「吉村よぉ~!
   それどこじゃないんだよ!
   連隊長どのが、お見えになるんだよ。
   ハチを、どうにかしないと!」



吉村「そこで、この吉村じゃないですか!

   ”名将には、必ず名軍師ありき”

   小隊長どの、ここは中国です!

   かの、劉備玄徳には、

   どなたが、ついておられたか?」



成岡「そりゃあ、天才軍師と名高い。

   ”諸葛亮孔明”(しょかつりょう こうめい)

   しかいないだろ。」




吉村「ご名答!
   そうです!!
   ”諸葛亮孔明先生”であります!」







諸葛亮孔明先生(イラストAC様)



吉村「成岡正久には・・・・

   この!

  ”吉村孔明先生”が、

   
   ついております!!」



成岡「は!?」


ハチ「!?」

   






吉村孔明先生(イラストAC様)




成岡「何で!2回も出てるんだよ!
   オレなんか、まだ1回も・・・」


吉村「何を隠そう!
   この”諸葛亮孔明衣装”は、

   街中の骨とう品屋で、
   羽扇と共に、
   諸葛亮孔明が、
   実際に着ていたものと
   書いてありました!

   高かったんですよ!」
   


成岡「いや、それボッタクリだから・・」


吉村「今、この吉村には、   

   諸葛亮孔明先生の
   霊が宿っております!


   ハチを救う為に、
   この難局を打破せんと、
   私に、宿ったのであります!




成岡「まあ、いいや。
   吉村孔明先生様よ、

   ハチを救って下さるのでしょうか?
   どうか、お知恵をお貸しください!」



吉村「うむ。成岡どのよ。
   よくお聞きなさい。

   ハチの顔を、じっと見つめなさい。



成岡は、素直にハチの顔を
じっと見つめる・・・・



吉村「成岡どの、
   ハチの顔を見ていて、
   どんな言葉が出ますかな?」



成岡「そりゃ・・・・


   ”カワイイ” 

   って、すぐ出て来るけど・・」




吉村「そうです!

   ”カワイイ” 
 
   
それです!」

 
  

成岡「はぁ?」


ハチ「?」



吉村「成岡どの!

   先日、宮先生とお弟子さんたちが、

   この兵舎に来ましたよね!」



成岡「来たよ。それがどうした。」



吉村「宮先生とお弟子さんたちは、
   どうでしたか?」



成岡「そりゃ・・・・

   カワイイに、
   
   決まってるだろ。
   何、言わせんだよ!」



吉村「もし、もしですよ!

   宮先生か、お弟子さんが、

   兵舎内で、ちょっと悪い事をして、

   ”ごめんなさ~い♡”って、

   言われたら、どうしますか?」




成岡「そりゃ・・・・

   ”許しちゃう!”

   怒れるわけないだろうよ!」





吉村「そうです!それです!」

   



成岡「どういう事?」



吉村「にぶいなぁ~~~!

   いいですか!成岡どの!

   亀川連隊長だって”人の子”です!

   かわいいハチをみて・・

   さわって・・・・

   遊んだら、どうなりますか?」

  

成岡は、下あごをなでながら・・・
ニヤリ、と不敵な笑みを浮かべた。



成岡「そうゆう事かよ!!

   なるほどなあ・・・」




吉村「ここは、ハチ自身の

   ”カワイさ”に、

   全てかけましょう!


   ”カワイイ”で、

   全ての事が、許されるのです!


    名付けて、   

  『ハチ!カワイイネ 作戦』 

                     」



成岡「作戦名は、センスないが・・

   吉村孔明先生の策に、

   乗らせてもらうぜ!」




吉村「うん、うん、さすが成岡どの。」


羽扇をあおぎながら、
吉村孔明先生は、満足している。



成岡「吉村孔明先生、
   隊員全員に、この作戦を通達!

   それから、兵舎内の清掃を
   怠る(おこたる)なと、
   しっかり伝えておいてくれ!」



吉村「お任せください。
   成岡どの。ほっほっほ。」




成岡は、ハチを抱きしめると、
その愛くるしい顔を、
大きな両手で、優しく包んだ・・・




成岡「ハチ!お前さんには、
   一番がんばってもらうぞ!

   連隊長どのに、
   思いっきり、甘えて甘えて、
   甘えまくってくれ!


   連隊長どのは、
   既に、処分済みと思って、
   来られるだろうが・・・


   お前さんのカワイさで、
   どうにか、乗り越えてくれ!


   さあ、燃えてきたぜ!


   ハチは、絶対に処分させん!」




吉村「我が策に、抜かりなしです。
   ハチ、頼んだぞ。ほっほっほっ。」







ボク、がんばるゾ!






亀川連隊長が、幹部一行と共に、
巡察に来る日が、まじかに迫る中、
吉村孔明先生の”秘策”が、
ハチの運命を左右しようとしていた。

ハチと成岡の前に、
最大の試練が迫る・・・・




<第6回につづく・・・・>





「読者のみなさまへ」


本作品は、
実話を基にしていますが、
会話など脚色を加えてあります。

また、いつもと違い、
連載形式なので、
その都度で、明記する時もありますが、
作品の内容を、順番にお知り頂きたいので、
最終回に、参考文献や参考サイト様など、
まとめて明記したいと思っております。
ご了承下さいませ。




今回も、最後までご覧頂きまして、

ありがとうございました。

次回を、お楽しみに!





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