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ねこま先生の日本昔話研究            「猿神退治」編




こんばんは!🐯



日本の昔話を研究して50年!



日本昔話研究家・ねこま先生です。




アナタは、日本昔話は好きかな?
同じ昔話だけど、地方によって、
お話が違うことがあるんだけど

そういう経験ってあるかな?



大好評をいただいたので、
今夜も、同じ昔話だけど、
地方によって異なる内容

ご紹介していこうと思います。



このシリーズは、
以下の本を、引用と参考にさせていただいております。
なお、古い本なので、現在では無い・変更された
地名もありますが、ご了承くださいね。



※タイトル表記は、本に従って漢字ですが、
 本編が始まって以降は、動物の名前は
 漢字で使う時もあるかもしれませんが、
 なるべくカタカナ表記にしたいと思います。










『日本昔話大成 第7巻 本格昔話6 (1979)』

           角川書店 関敬吾(著)








会社や学校、スポーツの世界などでは、


『白羽の矢が立つ』



なんていいますと、



「次期プロジェクトの責任者として、
 彼に白羽の矢が立った。」



みたいないい方で、
大勢の中から選ばれるといった、
名誉ある、おめでたい意味で使われます。



・・・しかし、
この、むかし話の舞台であります、
古い古い時代においては、
まったく逆でございました。



この時代では、
あらがえない「死の宣告」として、
ある日、突然、屋根の上に、
この白羽の矢が立つわけです。


古事記に出てきます
ヤマタノオロチにも、
人身御供(ひとみごくう)
意味としては、いけにえですが、
娘を差し出すのに、
この白羽の矢が立てらました。



ヤマタノオロチ以外にも、
むかし話の世界では、
人身御供に捧げる
たいがい娘ですが、
娘を選ぶのに使われます。



橋を建てる時にもありました。
水神様、龍神様に、



「川に氾濫(はんらん)が起きませんように」


などの理由で、人を柱に縛りつけたりなどします。
人柱(ひとばしら)なんていいますね。
この時も、人身御供を選ぶのにも、
この白羽の矢が立てられました。


現在だと、白羽の矢を立てるのは、
人間なんですが、
むかし話の時代ですと、


”神様”



ですので逆らうことができません。
じゃあ、その神様が”偽りの神様”だとしたら・・・
というのが、今夜のお話でございます。



ちょっと寄り道ですが、
じゃあね、いつ頃から、
白羽の矢の意味が逆転したのかといいますと・・・



辞書や言葉の研究書(『日本国語大辞典』など)によりますと、
明治時代まではまだ「犠牲に選ばれる」という
ネガティブな意味が主流でした。



大正・昭和初期には、 多くの候補者の中から
「特に優れた者」を抜擢することを、
比喩的に「白羽の矢を立てる」と表現する使い方が
新聞や文学作品で増え始めました。



戦後、民主主義になりましたので、
「神への生贄」という概念が完全に消えたことで、
本来の恐ろしい語源が忘れられ、
単純に「多くの人の中から選ばれる」という
「選抜・抜擢」の意味だけが定着しました。



簡単に今と昔を比較してみますと・・・



: 共同体のために個人が犠牲になるのは、
   怖ろしいが「避けられない宿命」だった。

        選ばれる = 命を落とす(最悪の特別)

    


: 個人の尊重が当たり前になり、
   古い言葉の意味も「名誉」へと書き換えられた。

       
       選ばれる = 才能を認められる、大役に抜擢される(最高の特別)

    



という感じになるんじゃないかと思います。



ちょっと前置きが長くなりましたが・・・



こんばんは、先日、
五十歳をむかえた
ねこま先生です。🐯



五十年目のねこま先生も、
変わらず愛してくださいね。💗



今夜のむかし話は、
タイトルにもあります通り、
こちらになっております。









『猿神退治』





というお話です。
他のタイトルでも有名なので、
お話自体は、どこかで聞いたことのある、
メジャーのむかし話かなと思いますので、
今回は、派生のみご紹介します。



早速、行ってみましょう!




アナタの屋根の上に、白羽の矢が立ってないか、
朝になったらご覧になったほうがいいですよ。(ムフフ。)
🐯




(補足)



むかし話の頃には、「白羽の矢が立つ」が、
完全にネガティブな意味で使われたと書きましたが、



室町時代(14世紀から16世紀)の
能曲『賀茂』「白羽の矢」が賀茂川を流れて少女の家に止まり、
少女が懐妊して神の子を産むという正の象徴として描かれています。

ここでは矢が神の恵みや選ばれし運命を表すものとして扱われ、
すでに負のイメージだけではないニュアンスが見られます。



また、大正時代から変わってきたと書きましたが、
小説などにおいては、

「白羽の矢が立ったなんて不幸だ」


というようなものもみられる一方で、
同じ時期の雑誌『太陽』(大正期、25年7月号)では、


「蔵相(大蔵大臣)の適材を求むる場合、誰に白羽の矢が立つか」



という完全にポジティブな文脈で使われています。
大正時代は、ネガティブとポジティブが、
まだ混在していた時期
だということですね。🤔









(広島県 比婆郡 )



―― むかし、備中と申しますのは、
岡山の西にあたる地域ですが、
その備中の下小路というところに、



”鉄砲二平”(てっぽうにへい)



と呼ばれている、
鉄砲の名人がおりました。



遠くに出かけ、日暮れになったので、
宿を求めて歩いていたところ、
村で一番大きい屋敷の前で、
泊めてもらおうと門の前で
声をかけたのですが・・・



二平「おや・・・」



家の者が泣いていて、
二平が呼びかけても気づかない。
困ってしまい、隣の家に行って
事情を聞いてみた。



二平「なるほど・・・」



隣の家で聞いた話では、
この村では、大晦日の晩になると、
氏神様(地域の守り神)に、
娘を人身御供に捧げる風習がありました。



二平「確かにある。」



二平は、かぶっていた笠を上げると、
屋根の上に立てられた白羽の矢を目にしました。



今年は、庄屋の家の屋根
つまり、二平が宿を求めた屋敷の屋根に、
氏神様が選んだ証拠である
”白羽の矢が立った”ので、
娘のみならず、庄屋も使用人までも、
今日が大晦日なので、家中で泣いているということです。



―― 二平は愛用の火縄銃を握り直し、
下唇を軽くかんだ。



二平

「庄屋さま、わしを娘さんの代わりに、
 氏神様に捧げる箱の中に入れてくれ。


―― それからな。
箱の真ん中に、わしの手が入るくらいの
穴を開けておいてくれんかな。」



―― その晩、庄屋の娘の代わりに、
人身御供になった二平。
古びた境内の前に置かれた箱の中で、
じっと氏神様を名乗る者が来るのを
息を殺して待っていました。



”ザワザワザワ・・・”



さきまで弱い風しか吹いていなかったのですが、
急に強い風になり、あたりの木々が騒がしく揺れ出しました。



二平


「・・・来たか!」



二平は火縄銃に火をつけて、
いつでも撃てる状態で構えました。



―― しばらくすると箱の前を巨大な影が覆い、
突如、強烈な獣の臭いがして、
二平は意識を失いそうになりました。




二平

「―― 今だ!」




強烈な獣の臭いの中でも、
二平は、箱に手を伸ばして来る
大きな何者かの気配を感じとって、
穴から銃口をそちらに向け引き金を引いた。




”ズトーン!”




轟音(ごうおん)がとどろき、
暗闇に閃光と煙が舞いました。




”グオオオオオオオ~~~!”




山が揺れるほどの大きな
聞いたこともない獣のの声とともに、
得たいの知れぬ巨大な気配が遠のき、
先まであった強烈な獣の臭いも消えました。




箱は人身御供になった娘が逃げ出さぬように、
外から頑丈な鍵がしてあったので、
二平は外に出ることが出来ぬまま、
元旦の初日の出を、箱の中で拝むこととなりました。



―― しばらくすると、
村の男たちが駆けつけて、
箱の鍵を開けますと、
二平が無事だったので、
村の男たちは驚き、そして喜びました。



二平が、村の男たちに昨夜のことを話し、
血の跡を見つけたので、
二平と村の男たちは、跡をつけていきますと、
洞穴(ほらあな)にたどり着きました。



二平

「村の衆、引き釣り出してくれ!」




洞穴の近くに来ると、
昨夜、二平が嗅いだ(かいだ)、
強烈な獣の臭いがしました。



洞穴の中を、二平と村の男たちがのぞきますと、
見たこともない巨大な猿が、
血まみれで、息も絶え絶えで苦しんでいました。



二平

「冥途(めいど)で己が喰った
 若い娘たちに、しかと詫びろよ。
 南無阿弥陀仏・・・」



二平は、「南無阿弥陀仏」と
唱え終わると、ためらうことなく
引き金を引いた。



”ズドーン!”




村の男たちが、
巨大な猿を洞穴から
引き釣り出すと、
二平の火縄銃が火を吹き、
猿の息の根を止めました。




―― 村に戻った二平に、
大喜びの庄屋は、
一生暮らせるほどの金を渡しました。




二平によって、
氏神様を名乗っていた者の正体が、
巨大な猿だとわかる
と、
大晦日に娘を差し出す風習は、
なくなったそうです。




めでたし、めでたし。








(山形県 東置賜郡 )



―― 和銅年間(708年から715年)の頃のお話です。
和銅年間といわれても、ピンとこないアナタも多いと思います。
”奈良時代の幕開け”の頃です。



「和同開珎(わどうかいちん)」という、
日本最古の貨幣が流通したり、
都が「平城京」に移った時代です。



それと、712年に「古事記」が完成しました。
だいたい、どんな頃の日本かイメージできたかと思います。
こういった時代に、今からアナタをお連れします。





ある修行僧が、
この地域に来た時のことです。
すっかり日も暮れてしまったので、
無人の荒れ果てた古寺の、
本堂で寝ることにしました。



―― しばらくすると
なにやら大勢の話し声が外からして、
異様な獣臭さが鼻を突きました。
「なんだ?」と思い外を見ますと・・・




修行僧

「なんじゃ!あの狸どもは。」



外には大勢の狸(たぬき)と、その親分と思われる
大きな古狸(ふるだぬき)が酒を飲んで、歌や踊りの
宴会が開かれていました。



どのタヌキも人間のように、
立って歩いていました。
そして、人間の言葉をしゃべっていましたので、
修行僧は大変驚きましたが、
じっとタヌキたちの会話に耳をすませます。




子分の狸

「ちょうど1か月後くらいですかあ。
 春秋と年2回、村の娘を人身御供として
 差し出させて、親分が食べておられますが、
 秋の人身御供は、庄屋の13歳になる娘に決めて、
 今日、白羽の矢を立てて来ました。」



大きな古ダヌキの親分は、
ガブガブと大きな盃で酒を飲みながら、



古狸の親分


「そうかあ、庄屋の娘かあ。
 暑い夏も終わりかけて、
 秋を感じ始める頃 ――



 
 13になる若い娘を喰って、
 さらに妖力をつけて元気になると思うと、
 この1か月が、毎年長く感じるよな。」




子分の狸たちは、
酒を飲むのをやめて、
古狸の親分の話を聞いています。



古狸の親分


「お前たち!
 くれぐれもこのことは、


 
 甲斐の国にいる、

 
 
 三毛犬(みけいぬ)・四毛犬(しけいぬ)には、
 くれぐれも知らせるんじゃねえぞ!




 ―― わかったな!野郎ども!」

 
  



子分の狸たちは、
みな大きくうなずきますと、
夜明けが近づいてきたので、
狸たちは、帰り始めました。







甲斐の国というのは、
現在の山梨県にあたる所です。



三毛犬・四毛犬は、
聞き慣れないと思いますので、
お話の途中ですが、
少しお時間をいただきます。



まずは、ざっとご覧ください。
 



三毛犬(みけいぬ / さんけいぬ)


 白地に虎毛(甲斐犬のしましま模様)が入った
3色っぽい毛色の犬。
昔の甲斐犬のバリエーションの一つです。




四毛犬(しけいぬ / よんけいぬ)


白地+虎毛+もう1色(別の単色斑)が入って
4色に見えるパターンです。
これも甲斐犬の古い毛色バリエーションになります。




戦前まではいたのですが、
戦後になって、日本犬保存会が
甲斐犬のスタンダードを決めた時に、



「虎毛(黒虎・赤虎・中虎)以外はダメ!」



となってしまいまして、
現在では、ほぼ絶滅した毛色の系統となっております。



戦前でも、虎毛(黒虎・赤虎・中虎)が
主流にあって、三毛犬・四毛犬は、
稀(まれ)で珍しい毛色の系統であったといえます。



稀で珍しいということは、
滅多になくて、霊力がある霊犬とされ、
特別な犬だと信じられていました。



ですので、古狸の親分が恐れたのも
わかりますよね。



では、お話に戻りたいと思います。






修行僧


「ハァ・・・ハァ・・・・
 間に合うかのお・・・
 甲斐ですぐに見つかるといいのだが・・・」




修行僧は甲斐の国を目指しています。
いつもより景色が速く流れるのを感じながら ――



古狸の親分の話を聞いた後、
屋根に白羽の矢が立つ
庄屋の家に行き、
見て来たことをすべて話しました。




1か月後の晩に間に合うよう、
修行僧は犬を連れて帰ると約束しました。
庄屋も、それを信じて待つということになり、
修行僧は甲斐の国を目指しています。



―― 甲斐の国に着きました。
すぐに、三毛犬・四毛犬を探します。
村々を回り聞きますが、
珍しいのか、手掛かりひとつ掴め(つかめ)ません。



修行僧は、錫杖(しゃくじょう)
呼ばれる杖を握りしめながら、
「どうしたものか」と困っていた時です。




”お坊さん。お待ちしてましたよ。
今からいう通りに来てください。”




突然、修行僧の心に直接、
話しかけてくる優しい声
がしました。



修行僧は戸惑いながらも、
声が案内する通りに歩きました。



すると ――



修行僧


「おおっ!あれぞまさしく


 探していた三毛犬・四毛犬だ!」




声の通りに歩いていると、
一軒の農家にたどり着きました。
庭には、大きな三毛犬・四毛犬がいました。



修行僧


「この家の主か?
 すまんが話を聞いて欲しい・・・」



修行僧は、家の者に事情を話すと、
三毛犬・四毛犬を借りることができました。



―― 休む間もなく、来た道を帰ります。




修行僧

「拙僧の心に呼びかけたのは
 おぬしたちのどちらか?」



前を行く、2頭の大きな犬の
背に呼びかけます。



すると、三毛犬が歩きながら
こちらを向きました。


三毛犬


「私です。お坊さんが来ることも、
 古狸を倒しに行くことも、
 すべて観音様から聞いていました。」



修行僧は、今度はハッキリと、
人間のような言葉で犬がしゃべったのに驚き、



修行僧


「さすがに霊犬。
 心の中だけかと思ったら、
 こうして、普通にひとの言葉もしゃべる。


 さらに、すべて観音様より聞いて知っていたとは、
 三毛犬・四毛犬を古狸が恐れるのもわかる。


 ―― なら話は早い。
 おぬしらは、あの大きな古狸の親分を倒せるか?」



修行僧の問いに、
今度は、四毛犬が振り返って答えました。



四毛犬


「勝てるかどうかまでは、
 観音様は教えてくれなかったな。

 

 古狸はボクたちで相手をするけど、
 子分の狸までは、
 無理だと思う。

 

 ―― それはお坊さんがやってよ。
 その杖の中に仕込んだ物騒な物でね。」

 



四毛犬は、そう含みのあるいい方をして、
すぐに前を向き直しました。



修行僧


「さすがに四毛犬。
 何でもお見通しか・・・
 

 この錫杖に細身の片刃が
 仕込んであるのもバレていたか。」




”カチッ”
 

 


修行僧は、そういうと
錫杖を少しずらして
犬たちに見せました。



修行僧


「戦でたくさんの人間を殺してきた。
 ある日、そんな生き方に嫌気がさし、
 修行僧となり旅を続けているが、
 刀だけは、こうして未だに捨てることもできずにいる。」

 

 


三毛犬が振り返って、



三毛犬

 


「この時のために、
 捨てる必要がなかったと考えれば
 それでいいじゃないですか。」

 



修行僧は、長年悩んでいた
頭の中の霧が晴れたようで、
少し足取りが軽くなった気がしました。



四毛犬


「それはそれとして、
 あの古狸相手だと、
 よくて相打ちだからさ。

 
 
 万が一の時には、
 ボクたちのこと、
 ちゃんと供養して欲しいから。

 
 
 お坊さんは、子分の狸たちに
 やられないようしてよね。」

 



―― 三毛犬・四毛犬との
道すがらの会話もあってか、
娘を差し出す前日には、
庄屋の家に戻って来ることができました。



修行僧

「―― 古びておるが良い刀だな。
 庄屋どの、この三振り(みふり)
 すべて借りて行くぞ。よいな。」



修行僧は、さすがに大勢の狸相手に、
仕込み杖の刀だけでは心もとないので、
庄屋の蔵から、この時代特有の
直刀(反りのない刀)、三振り借りました。




厳密にいますと、
このお話の時代。
奈良、そして平安時代には、
庄屋という呼び方は一般的でなく、
地方有力者は「田堵(たど)」「負名(ふみょう)」
「長者」などと呼ばれていましたが、
馴染みの深い、<庄屋>とさせていただいてます。




―― いよいよ、秋の人身御供を捧げる日の晩。
娘が入るはずであった大きな箱に、
修行僧と三毛犬・四毛犬が入り、
いつかの古寺の前に置かれ、
大きな古狸の親分が開けるのを、
息を殺してじっとまっていました。



―― やがて、強烈な獣の臭いがすると、
あの晩のように、狸たちがやってきました。



暗い箱の中で、
修行僧と三毛犬・四毛犬は、
互いを見つめ合い、うなずぎます。



古狸の親分


「13歳の娘とはたまりませんな。(グヘヘ。)


 さぞ柔らかい肉であろうから、
 味わって喰わないとな。


 春秋に若い娘を喰って、
 妖力をさらに高めて強くならんとな。


 さてさて・・・どんなかわいい娘かな・・・」

 

 


”ギィィィ~~~・・・”




木の箱を開けた途端(とたん)、
三毛犬・四毛犬が勢いよく飛び出し、
大きな古狸の親分の体に噛みつきました。



古狸の親分


「な・・・なんじゃあ~~~!
 痛ええええ~~~!

 
 
 
 この犬の毛並みは・・・


 

 ぎゃああああ~~~!



 

 甲斐の三毛犬・四毛犬じゃねえか!!」

 




古狸の親分は、
自分に噛みついて来た
犬の毛並みを見て、
恐れていた、甲斐の国にいる
三毛犬・四毛犬だとわかり、
半狂乱になって逃れようとしています。




子分の狸たちも、
三毛犬・四毛犬だと知ったので、
みな混乱した状態になりました。



修行僧


「三毛犬・四毛犬! 
 そっちは任せたぞ!

 

  ―― 子分たち、覚悟せい!」





ザシュッ! ザシュッ!


 

ズアッ! ドシュッ!




子分の狸



「ぎゃあああ~~~~!!」



「親分助けて~~~!」



「うぎゃあああ~~~!」




古狸の親分の悲鳴、
三毛犬・四毛犬の吠える声を背に、
修行僧は目に入る子分の狸たちを、
斬って、斬って、斬りまくりました。



修行僧


「ハァ・・・ハァ・・・ハァ・・・」




最初は逃げ惑って
混乱していた子分の狸たちも、
次第に落ち着きを取り戻し、
修行僧に次々と襲い掛かってきました。




シュパシュパシュパッ! ザザザザンッ!!




いつ終わるとも知らぬ、
子分の狸との死闘が終わったのは ――



庄屋に借りた三振りの直刀が
すべてダメになり、
着ている法衣が、
子分の狸たちの返り血で、
真っ赤に染まった頃でありました。



修行僧

「なんとか持ちこたえたぞ。

 ゼェ・・・ゼェ・・・ゼェ・・・


 三毛犬・四毛犬は・・・」

 



ダメになった直刀を無造作に投げ捨て、
いつもの錫杖を拾い上げると、
息絶えた子分の狸たちの周りに広がる
血の池を音もなく踏みしめながら、
古狸の親分と死闘を繰り広げている、
三毛犬・四毛犬のもとへと急ぎました。



”ダッダッダッダッ・・・”


 


修行僧


「なっ!・・・なんと・・・」




修行僧の目の前に広がる光景は凄まじかった。
双方の霊力と妖力がぶつかり合いが、
どれだけ凄かったのかは、
辺りの風景から、すぐにわかりました。



双方ともかなりの深手を負っていました。
特に2頭の霊犬に関しては、
地面に横たわり、やっと息をしている状態でした。



―― 一方、古狸の親分は、
かなりの深手ではありましたが、
ヒザをつくこともなく
荒い呼吸をしながらも、
なんとか立っていました。



三毛犬


「ハァ・・・ハァ・・・・
 お坊さん・・・・


 古狸の親分は、
 私たちとの闘いで、
 かなりの妖力を消耗しました。


 今なら・・・
 お坊さんの刀でも、
 ハァ・・・ハァ・・・
 倒せ・・・ます・・・」

 

 


修行僧は、下端を握り、静かに引き抜くと、
錫杖の芯から冷たい片刃が滑り出ました。




古狸の親分


「ハァ・・・ハァ・・・
 三毛犬・四毛犬を
 何とか倒したと思ったら、


 今度は、刀を持ってる坊さんだと。
 やめとけ、やめとけ。



 ―― わしには、そんなもん効かねえよ。」




修行僧は、その言葉に反応することなく、
間合いを一気に詰めて、
大きな古狸の親分に斬りかかりました。




”スッ!スッ!”





修行僧

「な・・・なぜだ!」




ところが、
何度斬りかかっても
修行僧の片刃は、
古狸の親分の体を、
まるで避けるように当たらないのです。




古狸の親分


「何度やってもムダだよ。
 娘は喰えなかったが、
 坊さんでも喰えば
 少しは妖力が高まるかな。


 ―― あきらめて、
 わしに喰われなさい。


 
 なあに、痛くしないから安心しな。(グヘヘ。)」

 
 



困った修行僧は、
古狸の親分の妖力が回復したと思い、
三毛犬・四毛犬に助けを求めました。



四毛犬

「ハァ・・・ハァ・・・
 あいつの妖力は、
 回復してないはずだけど・・・


 あいつの周りには、
 今まで食べられてきた娘さんたちの魂が、
 成仏できないでいるんだ。 

 

 
 ボクたちが、最後の力を振り絞って、
 お坊さんが娘さんたちを話せるようにするから、
 あとは、お坊さんに任せるよ。


 
 ―― ボクたちは絶命しちゃうけど、
 ちゃんと供養してよね・・・」

 

 



三毛犬・四毛犬は、
最後の力を出し尽くし、
今まで人身御供として
犠牲になった娘たちの浮かばれぬ魂を、
修行僧の前に出現させて絶命しました。



修行僧

「すまぬ・・・三毛犬・四毛犬よ。
 おぬしたちの供養、しかとするぞ。

 

 ―― おおっ!見える!見えるぞ!
 悲しみや悔しさのあまり、
 未だ成仏できぬ、無数の若い娘の魂が。」
 



若い娘たちの魂が、
修行僧の前に集まり、
古狸の親分が斬れない理由を
こう教えてくれました。



若い娘たちの魂

「お坊さん!
 古狸の親分が斬れないのは
 妖力ではありません。


 あいつの体には、
 松脂(まつやに)が塗られています。
 そのため、すべって斬れないのです。」



修行僧は、「なるほど」と、
うなずきました。 



若い娘たちの魂


「―― しかし、左のワキの下だけは、
 あいつは塗っていません。

 
 
 あいつの急所なんです。
 そこを、刀で突いてください。

 
 
 
 お坊さん。
 どうか、あいつを倒して、
 私たちを成仏させてください!



 ―― お願いです。お坊さん。」




若い娘たちの魂は、
古狸の親分の弱点を教えると、
修行僧の前から消えて、
再び、”見えない存在”となりました。
 



修行僧 


「―― 承知した。
 すべてのことは拙僧に任せるがよい。

 
 
 そなたたちが成仏できるよう、
 古狸の親分を成敗(せいばい)いたす。

 
 
 ―― そういえば、この古寺の本堂には、
 立派な観音様の像があったな・・・」

 

 

修行僧は、先日泊った
本堂に向かって手を合わせると・・・



修行僧


「三毛犬・四毛犬を使わせし、
 慈悲深き観音様よ。

 
 

 われに、魔を調伏(ちょうぶく)
 せしめる力を授けたまえ!


 ―― 南無観世音菩薩 」

 

 


修行僧は、片刃を構えたまま
眼を閉じると、一心不乱に
「南無観世音菩薩」と何度も唱え出しました。




古狸の親分


「これから喰われるのに、
 自分の念仏を唱えるとは、
 さすがは坊さんだな。


 ―― もう充分待ってやったぞ。
 わしの胃袋に収まるがよい。

 

 ブハハハハハハ!!」




―― そう笑いながら
修行僧に左手を古狸の親分が
伸ばした時です!



”ピカーーーーン!”




古狸の親分



「なんじゃ!?


 ま・・・まぶしい!」




修行僧の構えた片刃が、
突如、昼間かと思うほど
まぶしい金色の光を発しました。



これには、古狸の親分もたまらず、
伸ばした左腕を顔まで戻すと、
まぶしい光をさえぎるように、
左手で眼を覆いました。



修行僧


「今だ!どりゃああああ~~~!」




片刃が光出すのを止めると、
修行僧は眼をカッと見開きました。



眼を覆うためにガラ空きとなった、
古狸の親分の、左ワキの下めがけ、
高く飛び上がると、
渾身(こんしん)の力で突き刺しました!



ブスウウウ!!




古狸の親分


「ぎゃあああ~~~~!!」





古狸の親分は絶叫して、
子分たちの血だまりに、
もんどりうって倒れました。



”ドッス~~~ン!”




刺された左ワキの下から、
大量の血があふれ出ていたので、
まさに、そこは”血の池”と化しました。



”ビチャ・・・ビチャ・・・”



血の池を歩くたびに、
ビチャ・・・ビチャと音がします。



観音様の御力なのか、
息絶えて横たわる
三毛犬・四毛犬のまわりは
血がよけて行くようになっていたので、
彼らが血まみれになることはありませんでした。




修行僧

「ようやってくれた・・・


 庄屋や村の者には、
 おぬしたちを祀る(まつる)よう、
 よーく頼んでおくからな。


 ―― すぐ庄屋どのに知らせて、
 おぬしたちを運ぶからな。
 

 
 すぐ来るから、少し待っておれよ。」




懐(ふところ)にあった
手ぬぐいで、三毛犬・四毛犬の
顔をきれいにふいてあげた後、
修行僧は、死闘の痛みをこらえながら、
庄屋の家へと急ぎました・・・




―― その後、村人たちによって
三毛犬・四毛犬は丁重に祀られて、



「犬の宮」




として、現在も愛犬を亡くした飼い主たちが、
拝殿正面にペットの写真を貼って供養をしています。
その写真の多さを見れば ――
現代でも、多くの人が訪れていることがわかります。




なお、別な地域の話においては、
三毛犬・四毛犬が生き残ったという伝説もあります。
この地の名前が、「高安」という地からも、
カンのいいアナタは、おわかりになったと思いますが、



生き残った三毛犬・四毛犬が、
戸川幸夫氏の『高安犬物語』の、
高安犬のルーツ
だと語られています。




めでたし、めでた・・・




―― 実はですね。



このお話はここで終わらないんです。
少し時間を戻しまして、
修行僧が古狸の親分を倒した後で、
庄屋の家に行った直後の場面まで戻ります。






修行僧が去った後、
真っ赤な血の池に横たわる
たくさんの子分狸たちの亡骸(なきがら)。



―― そして、一際大きい
古狸の親分の亡骸が横たわっています。



”ポトッ”

(手にした花を落とす音)




”イヤ~~~!


   あんた~~~!!”





”タッタッタッタッ!”




摘んだばかりの花を
手から落として、叫びながら
古狸の親分に近づく者が
ありました ――




”古狸の親分の女房(にょうぼう)です。”




名を「お紺(おこん)」といいました。
子分たちからは、「お紺姉さん」と呼ばれ、
面倒見のいい、親分女房でした。



血の池に横たわる愛する亭主の亡骸に
すがりつき泣いています・・・



お紺


「あんた~~~!
 起きとくれよ~~~!


 
 どうしちまったんだい。
 かわいい子分たちまでこんなに。


 
 返事しとくれよ~~~!



 あんた~~~!」
 



動かなくなった亭主の亡骸を
揺さぶっているうちに、
左ワキに刺さっている
修行僧の刀に眼が行きました。



お紺

「はっ!刀・・・

 
 人間かい?人間にやられたのかい?」




お紺は周りを見渡すと、
絶命して倒れている
三毛犬・四毛犬が視界に入りました。



お紺


「あの大きな2頭の犬の毛並み・・・
 あんたが恐れていた、
 甲斐の国にいる、
 三毛犬・四毛犬じゃないのかい・・・


 ―― あの犬たちが自分から
 ここに来るはずはない・・・


 ここまで連れて来た人間がいるはず!」




お紺の顔が、先までの悲しい表情から、
目つきがだんだんと変わって行き
その眼の奥には、憎悪の炎が宿っていました。



お紺


「憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い
 憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い
 憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い
 憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い
 憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い
 憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い
 憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い
 憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い」

 



”チロ・・・チロ・・・チロ・・・”




血の池に舌をのばすと
チロ、チロっと舐め始めました・・・




お紺


「あたしゃ、人間を許さないよ!」





”ゴロン・・・ゴロン・・・ゴロン・・・”




血の池に舌を伸ばし何度も舐めると、
今度は、横たわって何度も回転をしました。
体中、古狸の親分の血や子分たちの血で、
全身がだんだん真っ赤に染まって行きます。



お紺


「あんた~~~!!
 かわいい子分たち~~~!

 
 みんなの怨霊(おんりょう)が、
 まだこの辺りをさまよっているんだろ?


 みんな!あたいに憑(と)りつきな!
 


 ―― あたいに力を貸しとくれ!
 どんどん人間を喰って、
 強い妖力を手に入れて、


 人間という人間を喰い尽くしてやる!」

 



”ゴロン・・・ゴロン・・・” 



その時、血の池に横たわり
回転しているお紺に、
古狸の親分をはじめ、子分の狸たちの怨霊が、
お紺の体内に続々と入っていきました。




お紺「ぎゃあああ~~~~!!」





そうすると、お紺の姿は、
みるみるうちに変わって行きました ――












お紺は、憎悪に染まりきった
どす黒い大蛇”へと変化すると、
そのまま、夜の森の奥へと消えていきました。




―― その様子を、荒れ果てた古寺の本堂から、
観音様の像が、悲しそうな表情で見つめていました。








―― それから70年の歳月が流れました。



延暦年間(781〜805年頃)
のお話へと舞台は移ります。



高安村に住む庄屋の庄右衛門(しょうえもん)と、
その妻おみね夫婦は、代々続く家柄で、
とても信心深いと村でも評判でございました。



ザッ・・・ザッ・・・ザッ・・・



おみね

「旦那様・・・
 またすぐ死んでしまいました・・・

 どうして家は、すぐネコが死んでしまうのでしょうか・・」



涙を流しているおみねに、
庄右衛門は、埋めたネコに
土をかけながら優しくいいました。



庄右衛門

「どうして可愛がっているのに、
 次から次へと死んでしまうんだろうか。

 

 おみね、泣くのはおよし。
 観音様に一緒にまたお願いにいこうね。」




―― それからしばらくした夜のことです。



”庄右衛門・・・庄右衛門・・・”



夜、寝ていると夢の中で、
名前を呼ばれたので、
振り返ってみると・・・



なんと観音様でした!



観音様


「庄右衛門よ。


 信心深い、そちたち夫婦に、
 私からネコを授けます。


 
 いいですか。
 大事に育てるんですよ。」

 




この夢を見た翌朝 ――




”にゃ~~~ん💗”




庭先にかわいい三毛ネコが現れました。
観音様のおっしゃる通りだったと、
庄右衛門とおみねは喜んで



”タマ”



と名付けて、それはそれは
わが子のように愛情を注ぎ育てました。



おみね

「タマ~~~!


 よくやったわねー。よしよし。」



タマはよくネズミを獲ってくるので、
たいそう可愛がられました。



タマは、おみねに大変よくなつきました。
どこへ行くのにも必ずついて来ました。



―― しかし、困ったことがありました。



おみねが便所に行くのにもついて来て、
なぜか天井に向かって、
普段は聞いたこともないような
うなり声を上げるのでした。



おみねは、そんなことが続くので
薄気味悪くなって、
思い余って夫に相談しました。



庄右衛門

「ひょっとすると、
 タマは妖(あやかし)の類(たぐい)
 かもしれんな・・・」

 


―― この日も、おみねが便所に行くと
おなじように天井をにらんでうなるので、
いよいよ妖だと庄右衛門は思い、
隠し持っていた刀で
タマの首をはねました。



”スパンッ!”



庄右衛門

「ああっ!首が!」




なんと、胴体から斬り離された
タマの首がひとりでに宙を舞い、
そのまま天井裏まで飛んで行きました。



”ガブゥゥ~~~!”




”ぎゃああああ~~~!!”




この世の者ではないような
地の底が裂けるような大きな声を
聞いたのと、争うような物音もしたので、
夫婦は天井裏へと急ぎました。



庄右衛門


「なんじゃこりゃ!!
 タ・・マ・・・・」


おみね

「タマ~~~!!」



そこには首だけになったタマが、
見たこともないような、
ドス黒い大蛇の
喉元に喰らいついて離さず、
大蛇が息も絶え絶えになっている姿
でした。



―― そうです。
この大蛇こそが70年前、
憎しみのあまり大蛇に変化した
古狸の親分の女房、
お紺なのでありました。



お紺大蛇

「くそっ~~~!
 庄屋の子孫をもう少しで喰えたのに・・・」



”庄右衛門・・・庄右衛門”



庄右衛門

「この声は・・・観音様!」



夢枕で聞いた観音様の声が、
庄右衛門と、今度はおみねにも、
その優しくて温かい声が聞こえたのでした。



観音様

「庄右衛門におみね。
 よーくお聞きなさい・・・」




観音様は夫婦に、
この大蛇が70年前、
修行僧が甲斐の国より連れて来た
三毛犬・四毛犬によって倒された、
古狸の親分たちの血を舐めて変化した
親分の女房「お紺」であることを告げました。



観音様

「いつか、庄屋の子孫に復讐してやると
 天井裏に潜んでいたのです。

 

 
   ネコをお前たちが飼っても
 すぐに死ぬというのは、
 みんな、お前たちの代わりに
 お紺大蛇によって殺されてしまったのです。

 
 
   タマは私の化身でした。
 特におみねが狙われていたので、
 そばについて守っていたのですが、
 どうやら裏目に出てしまったようですね。


 体を借りていたネコの供養、
 今まで死んでいたネコたちの供養。

 

 ―― しかとたのむぞ。」
 

 

夫婦は深々とうなずき、
早合点してしまった自分たちを反省して、
観音様とタマに深々と謝りました。



観音様の優しくて温かい声は、
息も絶え絶えで苦しんでいる
お紺大蛇へと向けられました。



観音様


「お紺。久しぶりですね。

 

 ―― 実は、あなたも救いたくて、
 タマとして、この家にいたのですよ。」

 



お紺はこれにふてぶてしく答えました。



お紺大蛇

「久しぶりだ?


 ハァ・・・ハァ・・

 
 あたしゃ観音様なんかに
 知り合いはいないよ!

 
 さあ!とっとと消し去ってくれ!」



観音様は
言葉を続けました・・・



観音様


「人が誰も来ぬ
 あの荒れ果てた古寺の観音像ですよ。


 人が誰も供養せずに捨て置かれた
 寺を掃除してくれましたね。


 観音像をきれいにしてくれて、
 毎日欠かさず、花を上げてくれましたね。


 ―― お紺、ありがとう。」

 
 



お紺は、「はっ!」となって、
古狸の親分が殺されたあの晩も、
摘んだ花を上げようとしていたこと。

毎日のように、観音様に人間のまねをして、
花をあげていたことを思い出しました。




お紺大蛇


「あの古寺の観音像・・・


  ・・・・観音様・・・」



大蛇となったお紺の眼に、
大粒の涙がこぼれ出しました。



すると・・・



大蛇だったお紺の姿は、
元の狸の姿に戻りました。


観音様


「お紺よ・・・

 一度でも仏に花を供えたものは、
 手を合わせたのと同じことです。

 
 毎日のように花を捧げてくれましたね。
 そして、人間のまねをして、
 夫や子分たちの無事を祈っていましたね。

 手こそ合わせなくても、
 その心にこそ、仏が宿るのですよ。

 人間でも動物でも、妖でも関係ありません。」

 



お紺と、その周囲が
優しい光に包まれました・・・



観音様


「 ”一度でも手を合わせた者は
           神仏は必ず救います。”

 
  

  神と呼ばれようと、仏と呼ばれようと、
  それはみな人間の呼び方が違うだけで
  みな同じなのですよ。
 

  
  お紺よ、
  おぬしと怨霊となった
  夫と子分たち、

  
  
  みなを救いますよ。


  ―― さあ、仏の国に行きましょう。」




観音様がそういうと、
お紺や周囲を包んでいた
優しい光は、
一瞬、強く光ったかと思うと、
そのまま消えてしまいました。



―― 夫婦はタマの亡骸や、
今まで亡くなったネコたちまで、
お堂を建てて、丁重に供養しました。



このお堂は、



”猫の宮”




として、現在も
犬の宮から近い場所にあります。



犬の宮同様に、
飼っていたネコの供養に来る人が絶えません。



犬の宮と同様に、飼っていたネコの写真が貼ってあり、
首輪などもかけてあったりなど、
飼い主が供養の願いを託しています。




―― めでたし、めでたし。




なお、このお話は、
『日本昔話大成 7巻』以外にも
山形県高畠町役場公式ウェブサイトも、
引用&参考にさせていただきました。感謝。










お し ま い







巻末コラム:   

     

    「わが愛しの”おてんば娘”
         

             ペロちゃん」 


  


今回のコラムは、むかし話ではないのですが、
ボクのむかし話をしたいと思います。


本日、1月20日はね、
ボクの大事なのひとり、ペロちゃんの命日でした。
娘といっても、ボクの布団の中で産まれたネコちゃんです。



あと少し前の、1月9日は、
ボクのともいうべき、わが家で生まれた愛犬が、
18歳で亡くなった命日でもありました。


(※ 以下の愛犬ヤマトに関することは、
   初回投稿後の1月21日、朝に追記したものです。
   せっかくなので、ヤマトたちのことも
   今後書くこともあろうかと思いますので、
   覚えていてくれる人がいるといいなと思い追記しました。)



『白い戦士 ヤマト』という漫画を知ってるかな。
『銀牙―流れ星 銀―』で有名な高橋よしひろ先生が、
銀牙の前に描いていた「闘犬」のお話です。



これが好きだったので、


ヤマト



と名付けました。
ヤマトくんは、散歩していても
グイグイと引っ張る力強い子でした。


お母さん犬が、


ムクちゃん


というのですが、
お母さん犬より長生きしまして、
18歳を過ぎて冬に入ると
寝たきりになってしまったのですが、
「一緒に年越ししような」といったことを
律儀に守ってくれまして、
1月9日の朝まで生きてくれました。



ムクちゃんは、
わが家で初めて飼った犬で、
妹のような存在です。


ヤマトくんは、
いつもそばにいてくれた
弟のような存在です。



愛すべき母子犬のことも、
今後、書くこともあるかなと思います。



よかったら、名前だけでも
覚えていてくれると、
とってもうれしいです。



そんな1月に先ほど紹介しました、
「犬の宮」「猫の宮」のお話を書けたのも
なにかのご縁なのかなと思います。



本編が長かったのですが、
ちょうど命日なので、
ペロちゃんのお話をしたいと思います。
聞いてくれるとうれしいな。



前に、母ちゃんネコの時を書いたんだけど、
その時は、名前は内緒にしてたんだけど、
ボクも50歳になったので、 
ボクがいなくなったあとでも、
彼女たちのことを、覚えていてくれる人がいると
いいなあって思って、名前付きで今回は書きます。



母ちゃんネコは、


 チビちゃん   っていいます。



チビちゃんは、近所の外人が夜逃げをして
捨てて行ったメスのシャムネコでした。
だんだんボクと遊び始め、ご飯もたまにあげて、
2階のボクの部屋の前まで来るようになります。



昼間入れてやってたら、
夜になると入れてくれとまたやって来るようになりました。
しょうがないので、布団に入れて一緒に寝ることに・・・



―― ある日、寝てたら布団が濡れてるので、
いい年してやっちまったかと😅
思っていたら、なんと赤ちゃんを産んでいました。
お腹が大きくは感じなかったので驚きました。



この時に産まれたのが、女の子ふたりと、
男の子ひとりです。



女の子のひとり目は、
チビちゃんにそっくりなシャムだけど、
母親に比べると白いというか、
クリーム色みたいな色でした。



サファイヤみたいな瞳がきれいで、
今夜のお話する主役の


ペロちゃんです。



もうひとりの女の子は、
黒色できれいな瞳をした


クロちゃん。



非常に頭のいい子でした。
戸を閉めても、自分で開けて来て、
ボクがトイレに行く時も
先の話じゃないですが、
中まで必ずついて来ました。



大人しくて
病気がちな子だったのです。
12歳の時に悲しいお別れをしました。
お葬式をした小さなお骨の前で
1か月くらい毎日泣いていましたね。
機会があれば話をすることもあるかもしれません。



さて、男の子は、
前にお話したことがあります、
出ていっちゃたんですが、
何年かして戻ってきたんですが、
天ぷら鍋かなにか油が入ったのを
ひっくり返して、ボクが注意したら
二度と帰ってこなかった子です。



この子も、黒色の子です。
大きな体でクマみたいだったので、
クマちゃんと名付けました。



お墓も写真もないんですが、
姉妹たちを供養する時は、
名前を呼んで一緒に手を合わせています。



今日は、ペロちゃんの命日ということで、
写真とお墓の前で、手を合わせてきました。
少しだけ、ペロちゃんを偲んで
どんな子だったかだけお話したいと思います。
深い話は、また後ですることもあるかもしれません。




ペロちゃんは、おてんばでしたね。
よくイタズラというか悪さをしました。


柱のキズもたくさんつけて、
今でも残っていて、見ると思い出します。


昼間は外に出して遊ばせていましたので、
時々ね、何か捕まえてきて、
自慢げにボクに見せるんですよね。😅



どこから捕まえて来たのか、
ヘビ、スズメ、ネズミ、セミ、
何かいろいろ捕まえて来ましたね。



「さあ、褒めてちょうだい!」



といわんばかりに、
人の前に並べるようにして持ってきます。
ボクへのプレゼントかなと思い、
思いっきり褒めてあげました。



でもね、ヘビとかみんなその後、
お墓までいかないけど、
土に埋めて手を合わせたりするので、
その後は、彼女は何もしないので困りましたね。



みんなで夜は、布団で寝るんですが
よく顔の上に乗ってくるので、
何か苦しいなと思ったらペロちゃんなんで
顔はカンベンしてくれよとかいってた
覚えがありますね。




キャットフードの影響なのか、
「尿路結石」になったくらいかな。
これも、マグネシウムの量に気をつけて、
獣医さんが紹介してくれた専用のフードに
変えたら、その後は大丈夫だったから、
それくらいで、大きな病気はしなかったかな。



クロちゃんが亡くなった後で、
夏にボクが入院したことがあって、
帰ってきて車から降りて庭に入ったら、
屋根の上でボクを見つけたペロちゃんが、
一番にすっ飛んで降りて来た時は、
すごくうれしかったの覚えています。



そんなペロちゃんですが、
15歳の冬、12月入ってからくらいか、
部屋にいて、何でもない所を
潜るっていう言い方があってるか
わかんないけど、


おかしな行動が多くなって、
かかりつけの獣医さんにみてもらったら、
「認知症」ということでした。



ネコも認知症になるかなって驚いたものです。
へんな時間に鳴いてたりなど、
いつものペロちゃんじゃないなって・・・



認知症と言われる前に、
外に出して、夜になっても帰って来ないので、
どこかに行ってしまったかと思ったら、
屋根のどこかの隙間にいて、夜中に鳴き声がして
助け出したことがありましたが、



もしかすると、もうその時に
そうだったのかなと思います。



そのあとだんだん元気がなくなって来て、
あんまり食べなくなってきました。
何度か獣医さんに往診してもらったりしたけど、
全然食べなくなって、最終的には
12年前の本日、朝亡くなりました。




今日のグンマーは、風が強くて寒かったんですが、
あの日と、次の日はお寺でお葬式をしました。
骨にしてもらったんですが、どちらも今日みたいな感じでしたね。




犬に関しては弟。
チビちゃんに関しては妹みたいな感じでした。



子どもたちに関しては、
本当の自分の子みたいな感じで、
クロちゃんも、ペロちゃんも亡くなった時は、
自分の子なんかいないけど、
なんとなく、わが子を失う悲しみみたいな
感じになりましたね。




―― ちょっと駆け足でしたが、
ボクの大切な娘、
ペロちゃんの命日だったので、
アナタにご紹介しました。
よかったら覚えてくれるとうれしいな。



今回のコラムは、ここで終わります。
ボクのむかし話にお付き合いくださり感謝。






おおい!ペロちゃん!
キミは今どこにいますか?



神様のところですか?
それとも、もう生まれ変わって
ボクの知らない姿で、
ボクの知らない名前になって、
ボクの知らない人の家族になっているかな。



どこにいても
しあわせでいてくださいね。



ボクのところに
産まれて来てくれてありがとう。



キミや、チビちゃんクロちゃん、
少ししか一緒にいられなかったけど、クマちゃんも。



みんな、ボクの家族だと思っています。
長い時間一緒にいてくれてありがとう。



つらいことばっかりだったので、
何度かそっちに行って会おうとしたけど、
まだこっちにいなさいといわれて
ボクはまだこっちにいます。



このあいだ50歳になりました。
キミといた頃は、30代だと思うから、
体も思うように行かないことが多いので、
今は、前みたいに一緒に遊べないね。



今日は、キミの命日でした。
ちゃんと覚えてるからね。



命が巡る中で、
また一緒になったらいいですね。
その時が楽しみです。



ボクの大切な娘。


おてんばなペロちゃん。



ありがとう。



―― また逢いたいね。🐯




E・N・D









―― いかがだったでしょうか?



アナタのお住まいの地方にしかない、
地方色豊かな昔話がありましたら、
ぜひ、記事にして教えてくださいね。




同じ昔話でも、地方が異なると、
その背後にある、地域の特色や文化、風習など、
そういったものの影響を受けて、
お話が変化していくのは、面白い現象ですね。



また機会がありましたら、
違う日本の昔話で
やってみたいなと思います。




それでは、最後までお読みいただき
ありがとうございました。




―― さようなら!🐯







次の昔話で、また逢いましょうね。(フフフ。)   











※ この話は、『日本昔話大成 第7巻 本格昔話6(1979)』 
  角川書店  関 敬吾(著)  




45ページから60ページ 
「猿神退治」より

引用&参考にさせていただきました。感謝します。








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