ねこま先生の日本昔話研究 「笠地蔵」編
こんばんは!🐯
日本の昔話を研究して50年!
日本昔話研究家・ねこま先生です。
アナタは、日本昔話は好きかな?
同じ昔話だけど、地方によって、
お話が違うことがあるんだけど、
そういう経験ってあるかな?
大好評をいただいたので、
今夜も、同じ昔話だけど、
地方によって異なる内容を
ご紹介していこうと思います。
このシリーズは、
以下の本を、引用と参考にさせていただいております。
なお、古い本なので、現在では無い・変更された
地名もありますが、ご了承くださいね。
※タイトル表記は、本に従って漢字ですが、
本編が始まって以降は、動物の名前は
漢字で使う時もあるかもしれませんが、
なるべくカタカナ表記にしたいと思います。
『日本昔話大成 第4巻 本格昔話4 (1978)』
角川書店 関敬吾(著)
仏教では、人が死んだ後に、
生まれ変わりを繰り返す世界を、
六道(りくどう・ろくどう)
といいます。
「六道輪廻(りくどう(ろくどう)りんね)」
なんて、少し難しい言葉でいいます。
死んで生まれ変わる時に、
生前の行いによって、
6つの迷い世界のどこかに生まれます。
そして、これを永遠に繰り返します。
少し余談ですが、この繰り返しの輪の中から
抜け出すことを、「解脱(げだつ)」といいます。
6つの世界は、次のようになっております。
(下位から上位の世界になります。)
1.地獄道(じごくどう):最も重い苦しみの世界。
2.餓鬼道(がきどう):欲望が満たされず、
飢えと渇きに苦しむ世界。
3.畜生道
(ちくしょうどう):本能のままに生き、
弱肉強食の理(ことわり)に支配された世界。
(弱いものが強いものに食べられる世界。)
4.修羅道(しゅらどう):怒りに囚われ、絶えず争い続ける世界。
5.人道(にんどう):我々がいま生きている、
苦しみも楽しみもある人間の世界。
6.天道(てんどう):快楽に満ちているが、
そこもまた迷いの世界であり、
いつかは寿命が尽きる世界

―― 6体のお地蔵さまが、それぞれの世界を担当している。
わかりやすくいいますと、こんな感じです。
お地蔵さまの正式な名前は、「 地蔵菩薩(じぞうぼさつ)」。
困ってる人がどこにいても、けっして見捨てない菩薩さまです。
まずは、今夜の昔話を紹介します。
日本昔話大成でも同じ、
『笠地蔵(かさじぞう)』です。
『笠地蔵』でも、6体セットで描かれています。
お寺の入り口などでも、だいたい6体セットですね。
6つの世界、どこにアナタがいても、
必ず見守って、そして助けてくださいます。
地蔵菩薩さまは、本来ひとつの存在ですが、
「人々を救うために 無数に姿を分ける 」とされています。
忍者みたいに、”分身の術”を使うんだね。
だから、道端(みちばた)から険しい山の中まで、
1体であっても、本体とつながっていて、
この場所、広くいえばこの世界を、
救う力を持っています。
できましたら、お地蔵さまの像の前で。
―― もし像がない時でも大丈夫です。
心の中で、お地蔵さまの像を描いてください。
そのお地蔵さまの前で、
この言葉を唱(とな)えてみてください、
「南無地蔵菩薩(なむじぞうぼさつ)」
”お地蔵さまを信じ、おすがりします。”
という意味です。
アナタが、どこにいても見守ってくださり、
アナタが、困っていたなら必ず助けてくださいます。
『笠地蔵』、地域によっては、
「かさこ地蔵」など、いろいろないい方があります。
どんな派生ヴァージョンが、あるんでしょうかね。
早速、行ってみまSHOW!🐯
(高知県 安芸郡 )
爺さんが、薪(まき)を売った帰りのことです。
帰り道に一体のお地蔵さまの前を通りがかりました。
雨が降っていたので、自分のかぶっていた笠を、
お地蔵さまにかぶせて帰りました。
―― その夜のことです。
爺さんが、何やら枕元に気配を感じました。
ふと起きて見ますと、そこには、
笠をかぶせたお地蔵さまが立っていました。
”ボトッ・・・ボトッ・・・ボトッ・・・”
爺さん
「ぜ・・・銭(ぜに)だ~~~!!」
なんと、お地蔵さまの
ヘソから次から次へと、
一文銭が出てきました。
一文銭は、山になっていました。
爺さんは、次から次にたまる銭に、
うれしくなる反面、もっと早く銭を出さないかと、
イライラしてきて ――
”グサッ!”
爺さん
「えええ~~い!まどろっこしい!!
地蔵さま、もっと銭出してくれ!」
待ちきれない爺さんは、
包丁で地蔵さまのへそを刺しました。😅
地蔵さま
「コラッ~~~!!😡😡😡
なんてことをするんじゃ。
お前みたいな欲深いやつには、
一文もやらん!わしは帰る! 」
怒ったお地蔵さまは、
出したお金をヘソにすべて戻すと、
そのまま帰ってしまったということです。
―― なんでも、欲深いのはいけませんね。
読んでくれているアナタも、お気をつけあそばせ。🤭
おしまい。
( 徳島県 三好郡 )
正月の25日に、7人の正月神が笠を借りにきました。
爺さんと婆さんは、蓑(みの)と笠を4つ、傘を2本、
合羽(かっぱ)を1枚探して貸してあげました。
―― その年の大晦日のことです。
7人の正月神が、爺さんと婆さんの家に訪れました。
「金と米が欲しい。」
というと、「打ち出の小槌(こづち)」をくれました。
他の神たちは帰り、合羽を借りた神だけが残りました。
合羽を借りた神は、”まだ何か欲しいものはあるか?”と聞きます。
「子どもが欲しいんですが・・・」
爺さんと婆さんが、控えめにお願いしました。
まさか、子どもまでは無理だと思っていたので・・・
合羽を借りた神は、何もいわずにうなずくと、
そのまま帰ってしまいました。
―― 次の日の朝のことです。
「婆さん!婆さん!」
爺さんの大声で目覚めた婆さん。
爺さんにわけを聞くと、
婆さんも大声で驚きました。
―― 何が起きたと思いますか?
なんと驚くべきことに・・・
爺さんと婆さんは、
17歳から18歳くらいの、
若い男女になっていました。
若返った爺さんと婆さんは、
それから・・・いやいや、
野暮なお話はやめましょう。うふふ💗
―― 間もなく、子どもをふたりも授かったそうです。
爺さんと婆さんは、
米も金も、そして子どもも。
望むものすべてを手に入れ、
末永く豊かでしあわせにくらしましたとさ。
―― めでたし、めでたし。
( 長野県 小県郡 )
爺さんが、婆さんの織った反物(たんもの)を、
町に売りに行きましたが、
ひとつも売れませんでした。
雪の中を帰っていると、
雪にぬれた6地蔵がありました。
爺さんは、慌(あわ)てて町に引き返します。
持っていた反物と、
6つの蓑と笠を交換しました。
そして、先ほどの6地蔵にかぶせてあげました。
―― 家に帰ったら、婆さんの雷が落ちます。
爺さんは、婆さんにひどく怒られました。😅
爺さん
「婆さん、今日もキレイだから、
怒らんでくりよ~。イヒヒ。😁」
その夜のことです。
この家に、6人の旅人が泊めて欲しいときました。
爺さんは泊めてあげようとしましたが、
すかさず、婆さんが怒ります。😡
婆さん
「うちは、お前さんたちに食わす米はねえ。
米だって、最近は高いんだ。
だめだだめだ、よそへ行ってくれ。」
しかし、旅人たちは、
「爺さん婆さんが、満足されるお礼はします。」
といったので、婆さんは泊めることにしました。
旅人は婆さんに、米5合(約0.75キログラム)を渡します。
婆さんは、4升(しょう)(約6キログラム)炊きの釜で炊きます。
すると、不思議なことに釜いっぱいの米が炊けました。
爺さんも婆さんも、たいそう驚きました。
翌朝、6人の旅人たちは、
米2升(約3キログラム)を、
お礼に婆さんに渡します。
不思議なことに、この米は、
どれだけ食べても減らず、
爺さん婆さんは、
一生食べることに困りませんでした。
旅人たちが帰った後には、
6人分の蓑(みの)と笠が、
残されていたそうです。
おしまい。
今夜も残念ながら、最後のお話となりました。
どんなお話でしょうかね・・・
( 新潟県 佐波郡 )
この地域では、新年を迎えるときに、
新しい帷子(かたびら)を着る習(なら)わしがありました。
帷子とは、麻や木綿で作る、普段着にもなる薄い着物です。
そこで婆さんは、麻や木綿で帷子を織り、
爺さんがそれを町へ売りに行くことになりました。
帷子を売って、年越しのための、
米や塩を買うためです。
”ザァァァァ~~~!!”
この日は、激しい雨の日でした。
町へ行く途中のことです。
爺さんは濡れないように急ぎ足です。
すると、道ばたに6体のお地蔵さまがありました。
お堂もなく野ざらしです。
激しい雨がお地蔵さまを叩きます。
爺さんは、横目で見ながら
そのまま町へと急ぎました。
町に到着しますと、帷子は順調に売れました。
さあ、米や塩を買いに行くぞと思った矢先のことです。
先ほど見た、激しい雨に打たれている6地蔵さまのことが、
気になって仕方ありませんでした。
爺さん
「よしっ!」
気がついたら、爺さんは、
6つの笠を買っていました。
爺さん
「お地蔵さま、もう大丈夫ですよ。」
帰り道に、激しい雨の降る中、
6つのお地蔵さま、一体、一体に、
買った笠をかぶせてあげました。
爺さんは家に着くと、
婆さんに謝りました。
婆さんは、何もいわず許してくれました。
―― 大晦日になりました。
その晩のことです。
「ごめんください。
今晩泊めてもらえませんでしょうか・・・」
大晦日の晩のことです。
6人の見知らぬ老人たちがきて、
泊めて欲しいといったのです。
爺さんと婆さんは、
「何もありませんがどうぞ。」
といって、泊めてあげました。
―― 翌朝のことです。
爺さん
「ありゃ!!」
昨晩泊めた老人たちが、
なかなか起きてきません。
心配になって部屋に行きますと・・・
”6人の老人たちは白骨になっていました。”
これには、爺さんと婆さんも驚きました。
ちょうどこのあと、大家が年始の挨拶に
くることになっていました。
大家が帰るまでと、白骨を味噌桶に入れました。
―― まもなく大家がきました。
大家
「明けましておめでとうございます。
・・・ん? この味噌桶は邪魔だな。」
そういって味噌桶のフタを開けます。
大家
「な・・・なんじゃこりゃ~~~!!」
爺さんと婆さんが、
事情を説明しようと
味噌桶まできて、
中をのぞいた時です・・・
爺さん・婆さん
「ありゃあ~~~!!」
なんと!
そこには、味噌桶いっぱいの、
大判小判が入っていました。
爺さんと婆さんは、
大金持ちになって、
いつまでも仲良く暮らしたそうです。
めでたしめでたし。
―― そろそろ、お時間のようです。
今夜も、アナタと日本の昔話を、
一緒に語れたことをうれしく思います。
また次回も、地方色豊かな日本昔話の世界へ、
アナタをお連れしましょう。
数日後の夜にお迎えに参ります。
―― その時まで、さようなら。ごきげんよう。

巻末コラム:
何回か探検に行っていたりしましたので、
巻末コラムをお休みにしていました。
今回は、そのお詫びも兼ねまして、
本のページ数が少ないので、
単品では、今までご紹介できなかった
お話をしたいと思います。
『ものいう動物』
というお話をご紹介したいと思います。
派生ヴァージョンを3つご紹介します。
では、どうぞ。
( 鹿児島県 大島郡 )
子どものいない夫婦がいました。
野原に、鼻に綱(つな)が
巻き付いて動けない赤牛がいました。
夫は、ほどいてあげると、
野原まで連れて行ってあげました。
―― すると、赤牛は、
急に人間の言葉でこういいました。
赤牛
「助けてくれてありがとう。
私が殺される時には、
どこであっても行き、
私の頭を買って食べなさい。
子どもが生まれるようにしてやる。」
夫は妻には話しませんでした。
しばらくすると、赤牛は殺されました。
いわれた通り、夫は赤牛の頭を買いました。
大鍋で煮たり、塩漬けにしたりして、
夫婦で、毎日のように食べました。
やがて、妻は妊娠しました。
生まれた子どもは、
大変な有名人になったということです。
おしまい。
( 鹿児島県 鹿児島市 )
ある男の子が、農家の下男になって
牛の世話をしていました。
牛は突然、人間の言葉でしゃべり始めました。
牛
「大切にしてくれたので恩返しをしよう。
私のいう通りにしてみなさい。」
牛は、男の子にどうすればいいのか教えました。
いわれた通り村中に、
「世にも珍しい、ものをいう牛だ。」
こういってふれ回りました。
やがて、金持ちがこれを聞いて喜び、
金持ち
「もし本当だったら、
私には子がいないので、
お前を養子にして、財産もやろう。」
こうして、金持ちをはじめ、
たくさんの村人が集まり、
今か、今かと牛がしゃべるのをまっています。
村人たち
「おいっ!どうしたんだ!早くしゃべろ!」
しばらくしても、牛はしゃべりません。
村人たちが騒ぎ始めました。
男の子は、困ってしまって
牛をゆさぶりながら・・・
男の子
「ねえ!どうしてしゃべらないの!
ボクを騙(だま)したのかい?
どうしたらいいんだよう。
早く!早くしゃべっておくれよー!」
男の子は泣きながら牛をせかします。
牛
「どうしてそんなに早くいえ、いえっていうの。
私には、人間の言葉なんかしゃべれないよー。」
村人
「おおおお~~~~!!」
村人たちが、大声で驚きます。
男の子は、こうして金持ちの養子になりました。
しゃべる牛も一緒に飼うことになり、
しあわせで豊かに暮らしましたとさ。
めでたし、めでたし。
( 岡山県 後月郡 )
むかし、姫路藩の悪い家老・酒井雅樂(さかいうた)が、
百姓や町人を苦しめていました。
ある男が、この悪い家老に、
オウムを献上しました。
男
「芸を仕込んだので、
雅樂さま、おっしゃってみてください。」
そういわれたので、
雅樂は、男にいわれた言葉をいってみました。
酒井雅樂
「酒井雅樂さま姫路でござる!」
そういうと・・・
オウム
「そこで姫路は大繁盛する!」
このように鳴いたので、
酒井雅樂は、うれしくなって
お城にいる殿様の前に、
カゴに入ったオウムを連れて行きました。
「殿様!ご覧ください」とばかりに、
先ほどと同じようにやってみました。
酒井雅樂
「酒井雅樂さま、姫路でござる。」
こういいながら、得意げな顔でオウムを見ます。
オウム
「・・・・・・」
しかし、オウムは何もいいません。
殿様の顔が険しくなります。
酒井雅樂
「酒井雅樂さま、姫路でござる。」
「酒井雅樂さま、姫路でござる。」
「酒井雅樂さま、姫路でござる。」
オウム
「・・・・・・」
酒井雅樂が何度も何度も
いってみますが、オウムはしゃべりません。
殿様
「えええ~~~い!
余を愚弄(ぐろう)するのか!
酒井雅樂、この場で腹を切れ!!」
殿様はたいそうお怒りになり、
その場で、酒井雅樂に切腹を申し渡します。
”グサッ!”
オウムの入った鳥カゴを前にして、
それをにらみながら、
酒井雅樂は、刀を腹に突き刺します。
すぐ後ろには、介錯人が酒井雅樂の合図で、
首を斬る手はずになっています。
酒井雅樂
「―― 介錯を頼む!」
―― その時です!
オウム
「そこで姫路は大繁盛する!」
”バサッ!”
まるで、酒井雅樂の首が斬られる音をかき消すように、
オウムが大きな声で、突然しゃべりました。
おわり

―― いかがだったでしょうか?
アナタのお住まいの地方にしかない、
地方色豊かな昔話がありましたら、
ぜひ、記事にして教えてくださいね。
同じ昔話でも、地方が異なると、
その背後にある、地域の特色や文化、風習など、
そういったものの影響を受けて、
お話が変化していくのは、面白い現象ですね。
また機会がありましたら、
違う日本の昔話で
やってみたいなと思います。
それでは、最後までお読みいただき
ありがとうございました。
―― さようなら!🐯

※ この話は、『日本昔話大成 第5巻 本格昔話4(1978)』
角川書店 関 敬吾(著)
58ページから75ページ
「笠地蔵」より
81ページから83ページ
「ものいう動物」より
引用&参考にさせていただきました。感謝します。
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