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ねこま先生の辻説法シリーズ         「ライオンを助けたキツネ」      「天下の3愚人」



(ナレーション)



心の荒廃の進むnote村。
村の寄合所広場において
霊験あらたかな榛名山で修行した修験者、
ねこま先生の辻説法が行われました ――







修験者 ねこま先生




(以下、ねこま先生の語り。)







さあ、さあ、
御用とお急ぎでない方は、
よってらっしゃい、みてらっしゃい。



上州は榛名山で、修行を積んだ拙僧(せっそう)が、
争いや憎しみの絶えぬ、note村のみなさんに、
御仏のありがたい説話を聞かせてしんぜよう。



拙僧の説話を聞いて、
仏の教えを学び、
明るくて笑顔の絶えない、
note村になって欲しい。



―― そんな願いから、
この辻説法を始めた次第だ。
なになに、拙僧もまだまだ修行中の身。
語りながら、村の衆たちとともに、
一緒に学んでいこうと思うので、

ひとつ、よろしくお願い申す。



あとは聞き終わったら、
適当に帰ってちょーだーよ。
シリーズ本格始動なので、
挨拶はこれくらいにな。ムフフ。



では、だいぶ前置きが長くなりましたが、
ありがたい、御仏の説話を始めたいと思うので、
各自、リラックスして聞くのじゃぞ。




なお、若者やお子様もおられるので、
説話語り中は、今と違う語りになるが、
つまらぬツッコミなど、入れぬようお願いいたす。




―― では、第3回目
『ねこま先生の辻説法』を
始めるぞよ。カッカッカッ。







「ねこま先生の辻説法」スタートじゃ!








『ライオンを助けたキツネ』


               (鼻奈耶第五<びなや だいご>より)




”ドンッ!”




「大変だ~~~!!
 

 王さまが井戸に落ちたぞ~~~!!」




「大変だ!どうしょう!

     どうしたらいいんだ・・・」




―― たった今、年老いた目の見えぬ王さまが、
あやまって空(から)の井戸に落ちてしまいました。



これからするお話は、
現在のインド、サヘート・マヘート周辺に、
かつて、舎衛国(しゃえいこく)と呼ばれた国がありました。



お釈迦さまが、なんと25年という
最も長い間、滞在した国
として知られています。


有名な祇園精舎(ぎおんしょうじゃ)があり、
お釈迦さまが弟子たち以外にも、
たくさんの人たちに説法をされていた頃のお話です。



―― ヒマラヤ山の麓(ふもと)に、
いつも500匹の家来(けらい)を連れていた、



ライオンの王さま
がいました。🦁



かつて、若くて立派だった王さまも、
今では、年老いてしまい、
ほとんど見えませんでした。



ある日のことです。


いつものように、
年老いたライオンの王さまが、
500匹の家来を連れて
歩いていたところ ――




あやまって空(から)の井戸に落ちてしまいました。




―― そうです。先ほど、空の井戸に落ちたのは、
目もほとんど見えなくなってしまった、
年老いたライオンの王さま
だったのです。




彼の500匹の家来たちは、
しばらく騒いだ後、
結局は、自分たちの王さまを見捨てて、
そのまま去って行ってしまいました。




空の井戸の底にいる年老いた王さまは、
何もいいませんでした。




井戸の奥底で年老いた王さまは、
ほとんど見えない目で
出口を見上げた後、
かすかに感じる風の香りをかぎ、
今踏んでいる土の感触を確かめると、
静かに身を伏せるのでした。




キツネ

「なんだ?あんなに大勢で慌(あわ)てて。」




ちょうどその時、井戸の近くに住むキツネが、
たくさんのライオンたちが去って行くのを見て、
「なんだろう?」と井戸をのぞきました・・・




キツネ

「ややっ!こいつあ大変だ!🦊」




キツネが井戸をのぞくと、
そこには、ライオンの王さまが
落ちていたものですから、
キツネは、大変驚きました。




キツネ

「ライオンの王さま!
 どうしてこんなことに・・・
 おいたわしや。

 
 
 カァ~~~!!
 あんなに大勢いたのに、
 どいつもこいつも薄情者ばかりで。

 
 
 あっしは、王さまには、
 食べ物のない時に、何度もわけていただきました。
 あの時のご恩は、忘れたことはございません。

 


 王さま~~!!


 
 待っててくだせえよ!



 今、あっしが何とか助け出しますからね!」





キツネは、この近くに大きな河(かわ)があるのを思い出します。




キツネは、この河の水を引き入れようと、
穴を掘って、さらに掘って、
ライオンの王さまのために、頑張ります。




キツネ

「待っててくだせえよ!
 あっしが、助けて差し上げますからね!」

 


キツネは、ライオンの王さまのために、
掘り続けます・・・



”ジャァァァ~~~!!”




キツネ

「やった!!王さま!やりましたよ!」




キツネの頑張りのおかげで、
ようやく、河の水を井戸に引くことができました。



―― やがて、水が井戸いっぱいになると、
ライオンの王さまを浮かせて、助け出すことができたのでした!




キツネ

「やった~~~!!🦊」




キツネは、ライオンの王さまを助けることができ、
飛び上がって喜んでいます。




”よくやった!キツネよ!”




なんと、この光景を見ていた
山の神が、キツネのしたことを褒(ほ)めました。



山の神


「人々よ、この光景をとくと見るがよい。
 交わる友の、強い、弱いは関係ないぞ。
 

 小さなキツネですら、
 深き井戸よりライオンの王を助け出したのだ。
 

 本当に大切にすべきは、
 交わる友の、誠実さと知恵深さであることを、
 ゆめゆめ忘れるでないぞ。」

 




―― お釈迦さまの話を聞いていた人たちは、
みな、大きく何度もうなずいたのでした。







お・わ・り









『天下の3愚人(さんぐじん)』


                    (六度経第三より)




―― 遠いむかしのことです。



あるところに、
「孔雀の王」と呼ばれる王さまがいました。



孔雀の王は、この世のどの鳥よりも、
大変美しいことで有名でした。



人間でいうなら、大変な美男子だったわけですから、
孔雀の王には、妻や側室を合わせると、
総勢500面(めん)ものメス(女性)の孔雀を、
いつも従えていました。




ちなみにですが、鳥であっても、
孔雀だけは、飾り羽を広げた時の状態が・・・


• 放射状に広がる
• 一枚の大きな“面”になる
• 目玉模様が一面に並ぶ
• 扇子のように扇形になる



この形がまさに、扇子(扇)そのものなので、
日本においては、扇子の数え方、
1面、2面に倣(なら)って、
孔雀も、1羽、2羽ではなくて、
1面、2面と数えるようになりました。



実際には、飾り羽を広げるのは、”オスだけ”ですが、
数える時は、オス・メス関係なく、面で数えます。



お話に戻ります。



しかし、こんなに大勢のメスの孔雀に囲まれても、
孔雀の王が、心から愛したメスは、
誰もいませんでした。




そんな孔雀の王でしたが、
やがて、心から愛したメスを妻とします。



―― それは、孔雀のメスではありませんでした。
若くて美しいスズメのメスでした。



妻になった美しいスズメは、
甘い果物が大好きでした。
孔雀の王は、毎日、毎日、
彼女のために、果物を探し回ります。



―― ちょうど、その頃です。
この国の王妃(人間)が、
重い病気になりました。



王妃は、ある夢を見ました。
それを王さまに伝えると、
王さまは、王妃に許可を出します。



王妃が見た夢とは・・・



”孔雀の王の肉を食べれば、病気が治るという夢でした。”



王妃は、猟師たちを集めると、
こういいました。



王妃


「誰でも、孔雀の王を捕えた者には、
 金子(きんす)100斤(きん)を授けよう。

 
 それだけではないぞよ!

 
 末娘の婿(むこ)にも、
 してやろう!

 
 
 ウソではないぞ!
 王さまは、しかと約束された。😏

 
 
 どうじゃ!褒美が欲しいじゃろ?
 だったら、すぐに孔雀の王を捕まえてきなさい!」

 



猟師たちの目の色が変わりました。
金子ばかりでなく、
王女の婿になれると聞いては、
われ先にと、孔雀の王を捕まえに出かけました。



その中のひとりが、
ついに、孔雀の王と妻のスズメが、
一緒にいるのを見つけました。




「麦こがし」と呼ばれる、炒(い)った麦の粉があります。
香ばしくて、昔はおやつとして食べられていました。
きな粉に似ていますが、もっと香ばしいです。



猟師は、麦こがしを近くの樹々に塗って、
孔雀の王たちを誘います。



罠(わな)とも知らずに、
「美味しいね。美味しいね。」と、
美しい妻のスズメが微笑むので、
孔雀の王も、喜んで一緒に味わっています。



―― しかし、その先には、
自分の体に麦こがしを塗って
うずくまっている猟師がいる
のを、
孔雀の王も、妻のスズメも知りません。




孔雀の王

「あっ!!」



バタバタバタバタ!!



孔雀の王が気づいた時には、
もう猟師に捕まっていました。
美しい妻のスズメは、
驚いて飛んで逃げてしまいました。



孔雀の王は、
恐怖で震えながらいいました。



孔雀の王

「猟師よ。聞いておくれ。
 私を助けてくれるなら・・・
 お前には、黄金の山と無尽の宝庫が
 ある場所を教えよう!
 どうだ?悪い話ではあるまい。」



しかし、猟師は首を横に振りながら・・・


猟師

「なにいってんだべ!
 王さまは、オラに
 金子100斤と、
 王女さまをくださるのだ。


 お前を逃がすわけないだろ!」



こういうと、孔雀の王を縛り上げて、
王さまに献上しました。



―― 王さまの前で、
孔雀の王は、
丁寧で控えめに、こういいました。



孔雀の王

「思いやりと命を慈(いつく)しむことに優れた王よ!
 どうぞ、私の言葉をお聞きください。

 
 
 目の前に置かれた器いっぱいの水。
 もちろん、ただの水ですが、
 私の不思議な霊力を使って念を込めます。


 
 今、念を込めますから、
 ちょっとお待ちくださいよ・・・」

 
  


王さまは、まるで怪しいものを、
みるような目つきで見ています。



孔雀の王

「ハイッ!おまたせしました。
 なんと、私が念を込めた水。
 

 実は、どんな病気でも、
 たちどころに治してしまいます。


 ―― そういえば、王さま。
 王妃さまが、ご病気だとか。
 ぜひ、この水をお試しください。



 万が一、何の効果もなければ、
 その時は、私を殺して、
 私の肉を王妃さまに差し上げても構いません。」

 
 



王さまは、少し考えていました。


王さま


「ん~、インチキくさいのお。
 でも、王妃の病が治るのなら・・・


 
 よしっ!王妃を呼べ!
 この水を飲ませるのじゃ。


 
 孔雀の王よ、もしウソであったなら、
 その時は肉になってもらうぞ。」
 
 


すぐに王妃が呼ばれ、
この水を飲みました。



すると・・・



王妃の病は、たちどころに治りました。
そればかりか、以前より元気になった
ので、
王さまは、大変喜びました。



王さま

「わしも飲んだぞ。
 孔雀の王よ。宮中のみなにも飲ませたい。
 この大きな器いっぱいの水も頼むぞ。」



孔雀の王

「お任せくださいませ。」
 



こうして、宮中の人々も、
この水を飲んで病が治りました。



このことが、国中の人たちに伝わると、
慈悲深い王さまが、孔雀の王の命を助けたことと、
王妃の病が治ったことを、喜び称(たた)えました。



それから、しばらくたったある日のことです。
孔雀の王は、大きい湖の前で、
王さまに向かって、こういったのでした。



孔雀の王


「王さま!
 私がこの湖に入りましたなら、
 体から不思議なエキスが出ます。」



王さま

「えっ・・・😅
 人体に有害なものでは、
 なかろうな。怪しいのお。」



孔雀の王


「なにをおっしゃいますか。
 私の美しい体から出るエキスは、
 有害どころか、有益なんですよ。

 
 なんと!驚くなかれ。
 私のエキスが入った湖に入ると、
 どんな病もたちどころに治ります!


 湖の水を、ゴクゴクと飲んでも、
 内側から病が治って、それもまたいいですぞ。 

 
 治っちゃうんです!ホントにホントですよ!」

 
 


王さまは、まだ怪しんでいます。


王さま


「ウソ偽りであったのなら、厳しく罰するぞ。
 しかし、王妃たちの病を治した実績もあるしな。🤔

 

 ―― よしっ!いいだろう。
 この湖に入ることで、わが国の民から、
 本当に消えたのなら、お前を自由にしよう!


 しかし、ウソであったのなら、
 お前の足を折るぞ・・・よいな!」

 
 



孔雀の王


「ははっ!おまかせください。😏」




孔雀の王は、自信満々の返事をして、
湖に入ると、なにやら祈り始めました。




見た目には、湖はなにも変わってませんが、
さあ、どうなったと思いますか?



このあと、
「病のある者は、この湖に集まるように。」
と、王さまが命令しました。



国中から、病気の人たちが、
この湖にきて入りました。



目の見えない人、耳の聞こえない人。
ケガをした人。苦しい病を抱えてる人。
そんな人が、この湖の水を飲んだり、
この湖に入ったとたん、
たちどころに、どんな病も治りました。



―― やがて、この国から病という病はなくなりました。




王さまは、たいそう喜んで、
約束通り、孔雀の王を自由にしました。



孔雀の王は、王さまに深々と礼をすると、
うれしそうに、大空に飛んで行きました。



―― しかし、孔雀の王は、
まるで忘れ物でもしたかのように、
王さまのところへ、戻ってきてました。



孔雀の王は、美しい翼を広げたまま、
王さまの頭上高くにいて、
こんなことをいいました。



孔雀の王


「王さま~~~!!
 大事なことを、
 お伝えするのを忘れました。

 
 もしよろしかったら、
 お伝えしてもよろしいでしょうか?」



王さまは、機嫌よく答えました。



王さま

「なんだ?遠慮なく申すがよい。」



王さまの許しが出ると、
孔雀の王は、王さまと普通の声で
会話ができるくらいまで、降りてきました。
それでも、王さまが見上げるかたちになります。



孔雀の王


「天下には、3人の愚者がいます。」



王さま


「ほぅ・・・それは誰のことだ?」



王さまは、不思議そうにたずねます。



孔雀の王


「まず、1人目は誰あろう、私めにございます。
 その理由の前に・・・


 
 すべての仏さまが、深くいましめられてることに、
 

 
 ”色欲(しきよく)”


 
 があります。
 色欲、すなわち男女の情欲は、
 わが身を焼き尽くし、
 命を落とす危険な火だと説かれています。」




王さまは、黙ってうなずきます。



孔雀の王


「私は、500面もの妻と側室がありながら捨てました。
 そして、たった1羽の若く美しいスズメを愛し妻にしました。

 
 
 彼女に喜んでもらおうと、好物の果物を
 まるで家来のように毎日探し回り、
 ついには猟師に捕まって
 自分の命を失うところでした。


 これが、1人目の愚者に選んだ理由です。」



王さまは、なんどもうなずいています。



王さま


「なるほど、わかった。
 では、2人めの愚者とは、
 どこの誰じゃ?
 いうてみよ。」


 

 

孔雀の王は、
王さまの周りにいる家来や王妃を
見回すと、こう答えました。



孔雀の王


「2人目は、そこにいる
 私を捕まえた猟師です。」



孔雀の冷たい視線は、
己を捕まえた猟師に向けられると、
静かに止まりました。



猟師

「オ・・・オラが?」



王さまは、
猟師を横目で見ると、
「フンッ」と鼻で笑いました。



王さま

「よし聞こう!
 お前を捕まえた猟師が、
 どうして、2人目の愚か者なのかを・・・」



孔雀の王は、表情を変えることなく、
そのまま言葉を続けます。



孔雀の王

「そこにいる猟師は、
 私のウソ偽りのない言葉を、
 信じませんでした。

 
 そのため、黄金の山、
 そして、無尽蔵の宝庫のどちらも
 手に入れることなく、失うことになりました。


 
 ―― そればかりか、王妃の偽りの言葉を信じて、
 王女の婿(むこ)になろうとしました。」

 

 



猟師の顔が青ざめました。



猟師

「はっ?王妃さまの言葉が偽り?
 どういうことだ?


 ―― そういわれてみると、
 金子100斤は、確かに受け取ったが、
 王女の婿の話は出なかった。
 


 王女の心の準備もあるのだろうと、
 なにもいわずに黙っていたが、
 その後、王や王妃からなにもない。



 
 ―― 王妃さま!これはどういうことだべか?」

 
 
 


猟師は、王妃を見てわけをたずねました。



王妃

「それは・・・あの・・・その・・・😅
 金子100斤はやったのだ、
 それで満足するがよい。オホホホホ。」



王さまは眉を少し動かすと、



王さま

「王女をくれるなどとは、
 私はいった覚えはないぞ!😡
 

 ―― 王妃よ、後で詳しく聞かせてもらうぞ。」
 



孔雀の王は、静かになるのを待って、
さらに言葉を続けます。




孔雀の王


「世の狂いし愚か者は、
 こうしたたぐいのものであります。


 仏の真心から生まれた教えを信じず。
 それどころか、悪魔の偽りの言葉を信じてしまい、
 酒に溺れ、淫(みだ)らな行いにふけってしまう愚者(ぐしゃ)。


 
 ついには、破門となるようなあやまちをしでかし、
 あげく、地獄の苦しみを味わうようになる。


 
 ―― その時になって、己(おのれ)の愚かさに気づき、
 ひとに戻ろうと思っても、
 それは羽のない鳥が天に戻ろうとすることと同じこと。
 


 
 万の言葉の中に、たった一つの誠も知らぬ。
 ―― そんな王妃を信じる猟師こそが、
 天下第2の愚か者といえるでしょう。」



猟師は膝をガクっと落とし、
王妃は、顔を真っ赤にすると、
ここから立ち去ってしまいました。



王さまは、去って行く王妃も見ずに、
孔雀の王に視線を定めます。



王さま

「天下第1の愚人は、
 孔雀の王、お前だ。


 天下第2の愚人は、
 お前を捕まえた猟師。


 ―― さあ、聞かせてもらうぞ。
 天下第3の愚人とは誰かを。」




孔雀の王は、軽くうなずきます。



孔雀の王


「天下の3愚人も最後となりました。
 お名前は最後に明かすとして、
 その理由から、今回は先に述べたいと思います。


 そのお方は、天医(天の医師)を授かり、
 そして、国中から病という病を消し去りました。
 

 
 その国に住む、すべての人の顔が、
 満開の花のように光輝いたというのに・・・


 愚かにも、その天医を自由に解き放とうとするのは、
 これを愚かと呼ばずして、なにを愚かといおうか。」




この言葉を聞いて、
王さまの顔から、血の気が引きました。


うつむいたまま、動きません。




―― 王さまの耳には、静かな風の音だけが届きます。




しばらくして、王さまは、青ざめた顔を上げて
孔雀の王のいる空に向かって叫びました。



王さま


「天下第3の愚人とは ――
 つまり、余だといいたいのだな。孔雀の王よ!」




王さまの見上げた先には、
もう孔雀の王はいませんでした。





―― そこには、
美しい夕焼けに染まった空だけがありました。









お・し・ま・い                                     








以上、これにて、ねこま先生の辻説法
第3回『ライオンを助けたキツネ』『天下の三愚人』
終幕と相成りましたところで、
拙僧の辻説法も終わりとなります。




さて、いかがじゃったかな。
この説話を聞いてみて、
それぞれ、感じて学ぶことがあったのでは
なかろうかと思うが ――




かの中国大陸において、
呉王夫差(ごおうふさ)は、
臥薪嘗胆(がしんしょうたん)
で有名な人ですな。
父の仇を討つまでは、
薪(まき)の上で寝て、苦い肝を舐めて、
恨みを忘れません!なんて立派だったのに、
西施(せいし)という美女に溺れ(おぼれ)
なにもかも失うことになります。




また、唐の玄宗(げんそう)皇帝は、
有名な楊貴妃(ようきひ)
という美女に溺れてしまいます。

とても名君だった玄宗さんも、
とたんにダメ皇帝になってしまいます。



結局は、部下に反乱を起こされ、
大好きな楊貴妃を殺すことになります。
息子に勝手に皇帝を継承されて、
なにもかも失います。




そして、拙僧も、
なにを隠そう、美女に溺れ、
なにもかも失ってしまった
悲しい男のひとりなのであります。
😂



―― ということで、
ふたつめのお話の、



『色欲』



について、
今も色欲という底なし沼に、
どっぷりハマっておる拙僧が語る
ので、
前回のビジネスより、言葉の重みが違いますぞ。🙈



お釈迦さまは、こうおっしゃっておられます。


「すべての欲望の中で、
  色欲ほど強いものはない。
   これより強いものがあれば、
    誰も道を修めることができない。」




男女関係なく、精神的なもの、
肉体的なものありますが、
「色欲」については、
みな、なにかしら苦しんだ、
苦しんでいる経験はあると思いますので、
この言葉は、うなずけるかと思いますぞ。



恋だの愛だの申しますが、
お釈迦さまは、もっとはっきりと、


「火である。」


こう、おっしゃっています。



外にある火ではございませぬぞ、
あなたの内側で、メラメラと燃えておりますぞ。
お気をつけくだされよ。




お釈迦さまは、

「色欲は苦しみの大きな原因のひとつ」


と、おっしゃっています。



この欲望自体は悪ではなく、
これが執着になると、
心が乱れ、苦しみを生む
と説かれております。


あなたにも覚えがござろう。
あの女性が、あの男性が、
好きで好きでたまらない。


なぜ?どうして?
あの女性は、あの男性は、
ボクを、私を、
好きになってくれないの?
愛してくれないの?



ボクは、私は、こんなに、
こんなに好きで、好きで、
愛しているのに!



こういったものもあります。



相手が別れたいというのに、
自分は別れたくない!
手離したくない。



肉体関係もそうです。
「もうやめよう」と思ったその足で、
また逢いに行く。


「これが最後」といいながら、
またそれを繰り返し、
結局は、底なし沼の愛欲の日々から抜けられない。



これすべて、「執着」ですぞ。
あなたは、大丈夫ですかな。



お釈迦さまは、「色欲の危険性」について、
こう、おっしゃっておられます。



色欲は、快楽を与えます。
しかし、それは一時(いっとき)のこと。



満たされなければ渇き、
満たされてもさらに強まります。



「心を肉片に群がるトンビのように、
 争いや苦しみに追い込む。」



このように、お釈迦さまは例えられております。
依存すると、家族の崩壊、不倫の苦、嫉妬、
老いや病への執着など、
さまざまな不幸を招く
と警告しておられますぞ。




―― その通り!




色欲に依存してしまったため、
これまで、どれだけの男女が、
なにもかも失って、
人生までも崩壊させてしまったか。



最悪の場合は、相手の命を奪ったり、
また、相手に命を奪われたり・・・



自分だけならまだしも、
愛する夫、愛する妻、
愛する子どもまで奪われる悲劇も・・・
何度も何度も繰り返されておりますぞ。




ああ~・・・恐ろしい。
本当に恐ろしい。


色欲の火は美しい。
でも、その美しさに惹(ひ)かれて
近づきすぎると、わが身を焦(こ)がし尽くされますぞ。




くれぐれもお気をつけくだされよ。
色欲だけは、他の欲とは違いますぞ。
本当に恐ろしい、恐ろしすぎますぞ。



孔雀の王を思い出してくだされ。
色欲に溺れ、若く美しいスズメを妻にしたのに、
その妻のために、毎日、好物を探し回ることになりましたな。


妻に喜んでもらいたいとは、
聞こえはいいかもしれませぬが、



「妻の奴隷になっている。」



とは見えませぬか?
今、あなたの隣にいるのが、
彼氏・夫か、彼女・妻、どなたかはわかりません。
ひょっとすると、ご自分の子かもしれませぬな・・・



―― その相手にどうであろうか。
恋や愛という名のもとで、
あなたは、相手の奴隷になっておられないだろうか?
あなたは、大丈夫ですかな。気をつけてくだされよ。




少し余談になりますが、
古代ローマにおいて愛は、


「アモール、またはアムール(Amor)」といいます。


ローマ神話においては、
「アムール(アモル)の矢」と申しまして、
愛の神・アムール(キューピット)が、
放った矢は、射られた者が理性を失い恋に落ちます。



そんなことから、古代ローマ人の愛は、
甘美でありながら、同時に破滅的な危険を孕(はら)む欲望とされ、
お釈迦さまの教えと似たような考えを持っていました。



世の東西問わず、愛(色欲)は、甘く美しいものじゃが、
同時に気をつけねばならないものなのが、
これでわかりますな。🤔



ここまで拙僧の話を聞いて、
色欲の怖さがわかったと思うのだが、
「じゃあ、どうすればいいの?」と、
お嘆(なげ)きのあなた!
お釈迦さまは、色欲からちゃんと身を守る智慧(ちえ)を
授けてくださっていますぞ。
ご安心くだされよ。



いくつか授けてくださいましたが、
ひとつだけ、あなたに教えてしんぜよう。




Q. 色欲の火がメラメラしちゃったとき、
  あなたはどうすればよいのか?



A. 欲の正体を「客観視」する(反応しない)ことです。



お釈迦さまの教えでは、
このことを、



「念(サティ)」といいます。



色欲の火は、無理に消そうとすると、
火に油を注ぐようなものです。



じゃあ、どうしたらいいのか。
まずは・・・




色欲を実況中継しましょう!😂




「性欲が湧いてきたな」「欲に反応してるな」と、
まずは「気づく」ことから始めます。
気づいたら、客観視してくだされよ。



自分の色欲を、じっくりと観察したら、
その後は、実況中継してみてください。



「おおっと!私は今、
 いやらしいことを考えております。🤤

 
 目の前を行く、ミニスカートの若い女性。
 まぶしいばかりの、白い脚にムラムラしているのであります。

 

 ちょっと待ってください。
 この女性、キレイな白い脚ばかりではありません。
 お胸のほうも大きくて、私はもっとムラムラしています・・・」



こんな風に、自分の中の色欲を、
実況中継してみてください。
😂




自分の今の状態がわかってきて、
次第に冷静になってきます。




それともうひとつは、
「反応しない」ことです。



欲とは実体のないもの
です。
湧いては消え、また湧いては消えていきます。



ですので、
「それに反応しない」ことで、
やがて去っていくものと
―― こんな風に理解してくだされよ。



それと大事なことをひとつ。
これは、お釈迦さまの教えとは離れるかも
しれませぬので、あくまで拙僧の教えですが・・・




色欲が湧いて出る自分を決して責めずに、
そんな自分を愛してくだされよ。



どんな時の自分も愛してくだされ。
自分を自分の愛で満たすことこそ、
色欲の火に身を焦がされない
一番の特効薬だと、拙僧は考えますぞ。




いつも自分自身を、
他人の愛でなく、
自分の愛で満たしてあげることこそ、
色欲で身を滅ぼされない最善の策であると、
心の片隅にでも、覚えておいてくだされ。



「愛は外の世界にはありませぬぞ。」



愛を外の世界に向かって探し求めるのは、不幸になるだけですぞ。
愛は、あなたの内側の世界にあるものなのです。



あなたは、他人に愛されたいと思わなくていいのです。
あなたは、あなたご自身を愛してあげてください。



しあわせになりたければ、
自分の愛で、自分を満たしてください。
自分の中の愛に、気づいてください。

そうすれば、あなたの愛に引き寄せられるように、
むこうから愛がやってきますぞ。




―― といったところで、
今回はここまでにしますかな。👺



また、note村に立ち寄ることがあったら、
拙僧の辻説法を開きますので、
その時は聞きに来るがよかろう。




―― さらばじゃ!

















さらばじゃ!













※ このお話は、アインブックス、野村耀昌(編集)、
  『仏教説話百選 失われたロマンのエンタテイメント(1972)』 
  105ページから、109ページの
  『獅子を助けた狐』『天下の三愚人』より、
  引用と参考にさせていただきました。感謝。








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