ねこま先生の日本昔話研究 「狼報恩・鶏報恩」編
こんばんは!🐯
日本の昔話を研究して
もうすぐ50年!
日本昔話研究家・ねこま先生です。
アナタは、日本昔話は好きかな?
同じ昔話だけど、地方によって、
お話が違うことがあるんだけど、
そういう経験ってあるかな?
大好評をいただいたので、
今夜も、同じ昔話だけど、
地方によって異なる内容を
ご紹介していこうと思います。
このシリーズは、
以下の本を、引用と参考にさせていただいております。
なお、古い本なので、現在では無い・変更された
地名もありますが、ご了承くださいね。
『日本昔話大成 第6巻 本格昔話5(1978)』
関敬吾(著)
「報恩(ほうおん)」とは、
読んで字のごとく、
「恩に報いる(むくいる)」という意味です。
『日本昔話大成 第6巻』
では、「動物報恩」という項目がありまして、
前々回、アナタにご紹介しました
『猫檀家』も、この中にありました。
「動物報恩」の項目全体でいいますと、
結構長いので、タイトルにもあります通り、
今回は ――
『狼報恩』と『鶏報恩』
の中から、それぞれいくつかの
地方のお話をご紹介していこうと思います。
なお、8回目にして今更で申し訳ないのですが、
タイトル表記は、本に従って漢字ですが、
本編が始まって以降は、動物の名前は
漢字で使う時もあるかもしれませんが、
なるべくカタカナ表記にしたいと思いますので、
タイトルの狼や鶏も、
カタカナになりますことを、
ご承知おきくださいますと幸いです。
それでは、本編スタートです!
『オオカミ報恩』
かつて、日本の美しい山々には、
「山の神様」、「山の神様の使い」として
深く信仰され、崇められた(あがめられた)存在、
ニホンオオカミ
田んぼや畑を荒らす、イノシシやシカを追い払うので、
益獣(えきじゅう)と呼ばれ称えられて(たたえられて)いました。
農村の人々は、「田の神」「作神」と崇められて、
「真(まこと)の神」と呼ばれて、
稲荷信仰と共に、オオカミ信仰も大変盛んになりました。
オオカミの遠吠えが、魔除けや盗賊除けになるとして、
災いを遠ざけてくれる護符も、持つ人が多かったです。
そんなニホンオオカミは、明治以降、
西洋人の持ち込んだ、西洋犬による
狂犬病やジステンバーで多く減り、
家畜を襲うので”害獣”として、
人間による、罠や射殺などの駆除により激減して、
1905年(明治38年)1月23日。
奈良県吉野郡東吉野村鷲家口で、
地元の漁師が罠にかかった若いオオカミを捕獲。
誤解されやすい点ではありますが、
この時点で死亡しております。
毛皮と骨格は、アメリカの動物学者マルコム・アンダーソンに売却。
標本はイギリスに持ち帰られ、
大英博物館(現在は自然史博物館)に収蔵されております。
最後のニホンオオカミが、日本にないのは実に寂しいものですが・・・
この若いニホンオオカミの死をもって、
日本における、ニホンオオカミは絶滅したといわれています。
その後も、目撃情報は現在まで多数ありますが。
ニホンオオカミは、
西洋人の持ち込んだ西洋犬の
狂犬病やジステンバー、
そして、人間による駆除が原因で滅びますが、
―― ボクはこう思います。
ニホンオオカミは、西洋の価値観で
絶滅したのではないかと ――
詳しくお話すると長くなるので
この辺りにしたいと思います。
ニホンオオカミは、かつて日本の生態系の
頂点捕食者(トッププレデター)でした。
最近は、クマによる被害が深刻ですが、
それよりも深刻な被害を出しているのは、
「シカ」です。
東京戸張によると、
2025年版の鳥獣被害額ランキングで
シカが1位、クマは4位となっています。
また、林野庁によりますと、
シカによる被害は、
森林被害全体の約7割を占め、
深刻な状況となっています。
シカが増えすぎるということは、
クマのエサまで食べてしまうので、
現在のクマ問題における
原因のひとつではないかと思います。
―― 今こそ、日本には、
生態系の頂点に君臨する、
自然の猟師たる、
―― オオカミが必要なのではないかと、
アメリカのイエローストーン公園の例を紹介します。
1926年に、イエローストーンにおける
最後のオオカミが殺され、絶滅しました。
それから、1990年代まで、
天敵不在で”エルク(アメリカアカシカ)”が急増して、
植生が食い尽くされ生態系が崩壊してしまいました。
長年に渡り、大変深刻な問題となっていましたが、
元々、そこにいたハイイロオオカミは絶滅したので、
別亜種なのですが ――
1995年、カナダから捕獲した
ハイイロオオカミ(亜種:Canis lupus occidentalis)
を、イエローストーンとアイダホ州に再導入しました。
再導入後は、エルクの個体数や行動が変化し、
ヤナギやヤマナラシなどの樹木が回復しました。
ビーバーや鳥類も戻り、川や森の環境が改善したということです。
人を襲うなど、一長一短あると思いますが、
高齢化で猟師不足も深刻な今こそ、
日本の山々に、オオカミが必要なのではないか?
そんなことを思った次第であります。
なんかうまいこと、
クローン復元みたいなので、
ニホンオオカミが、山に戻ればいいなと思います。
以下のURLは、「東大農学部」と「オランダ・ライデン自然史博物館」
にあります、ニホンオオカミのはく製です。
↓「東大農学部のはく製」
↓ 「オランダ・ライデン自然史博物館のはく製」
西洋のオオカミと比べるとシャープな感じで、
しょうゆ顔です。よかったら、
一度、ご覧になってください。
東大農学部には、このような表記があります。
「多様性生物希少標本ネットワーク様」より引用します。
東京大学大学院
農学生命科学研究科
収蔵
ネコ目 イヌ科
ニホンオオカミ 学名 Canis lupus hodophilax
採取地 岩手県 全長100cm(参考) ♀
東京大学大学院農学生命科学研究科 収蔵標本
「ネコ目」ってあったので、
アナタは驚かれたかと思いますが、
ラテン語では Carnivora。
肉食性の哺乳類をまとめたグループで、
日本語では「ネコ目」と呼ばれています。
名前にネコってついてるけど、
実際にはイヌもクマもアライグマも、みんなここに入ります。
分類の階層は、こんな感じです。
・ 哺乳綱(人間やクジラも含む大きなグループ)
・ネコ目(食肉目) Carnivora
・イヌ科 Canidae(オオカミ・イヌ・キツネなど)
・ネコ科 Felidae(ライオン・トラ・ネコなど)
・クマ科 Ursidae(ヒグマ・パンダなど)
・イタチ科 Mustelidae(テン・カワウソなど)
ざっとこんな感じです。
昔話を読みに来たのに
何見せられてるのかなって、
アナタが迷惑そうなお顔をしていますので、
この辺りで終わりにしたいと思います。🤣
だいぶ前置きが長くなっちゃいましたね。😅
こういうの始めると、ボクは熱くなっちゃうんだよな。(笑)
ニワトリまで出来るかわかりませんが、😂
そういったニホンオオカミがいた時代の
背景を想いつつ、これから昔話をスタートします。
今回は、どれが定型か派生か、
両方とも区別がつかなかったので、
定型なしで始めたいと思います。
(岡山県 阿哲郡 )
―― 今からずっと、ずっとむかし。
ある村に、太郎作という若者と母親が住んでおりました。
仲の良い母と息子でしたが、母親が病気になってしまいました。
困った太郎作は、隣の婆さまに相談したところ ――
「犬神山にある、金の夕顔を有明月夜の晩に、
取りに行って飲ませると病を治すことができる。」
そう教えてもらいました。
夜が“明”けても、まだ空に“有”る月
そういったところから、
「有明月夜(ありあけつきよ)」
と呼ばれております。
”夜が明けてもまだ空に残っている月”という意味です。
そういう日の晩に取りに行きなさいよ、ということです。
―― 有明月夜の晩まで待って、
太郎作は、犬神山に行きました。
しばらくすると、どこからともなく、
一匹のオオカミが、後ろからついて来ました。
太郎作が振り返って、次のようにいいました。
太郎作
「オマエは何だ。
何で付いてくるんだ。
オレを食うつもりか?」
そう、太郎作がオオカミにいいますと、
オオカミは、太郎作に近づいてきて、
口を大きく開けて座って待っています。
太郎作は、おかしなことするオオカミだ。
と、思いつつも、大きく空いている口の中を
のぞき込んでみました。
太郎作
「あっ!これかあ~。
待ってろ!すぐに抜いてやるからな。」
太郎作が見ると、のどにトゲが刺さっていました。
優しく抜いてあげると、オオカミは喜びました。
―― この晩は、むかしから1000匹のオオカミが通り抜け、
出会った者は、すべて殺されて喰われるといわれていました。
しかし、トゲを抜いてあげたお礼か、
先ほどのオオカミが、かくまってくれて助かることができました。
―― それだけではありません。
助けたオオカミは、”金の夕顔”のある場所まで
案内してくれたので、無事取ることができました。
太郎作は、それを急いで持ち帰ると、
煎じて(せんじて)、母親に飲ませると、
不思議なことに、病はたちどころに治りました。
隣の婆さまにお礼に行くと、
「イノシシの肉があれば、
もっと元気になるぞ。」
―― そういわれましたが、
家に帰った太郎作は、
イノシシを獲った(とった)ことはなく、
頼める人もいないので、困ってしまいました。
”トン、トン!”
夜になって、戸を叩く音がするので、
開けてみると・・・
太郎作
「あっ!オマエは!」
なんと!
戸を開けると、山で助けたオオカミがいます。
しかも、イノシシの肉を持ってきてくれました。
太郎作は、オオカミに礼をいうと、
すぐにイノシシの肉を母親に食べせた。
―― すると、母親はみるみるうちに元気になりました。
そして、長生きをしたそうです。
太郎作と母親は、
いつまでも元気で仲良く
暮らしましたとさ。
めでたしめでたし。
「オオカミ報恩」は、だいたいこのパターンです。
全体で2ページ半なので少ないのですが、
ひとつで終わるのも寂しいので、
この項目の最後に、少しだけ載っていましたのを
アナタにご紹介したいと思います。
『トラ報恩』
いつもとは少し違いまして、
海を飛び越えて、朝鮮半島のお話です。
―― むかしむかし、
朝鮮に住む、ある若い男が、
トラの口の中に刺さった
簪(かんざし)を取ってあげました。
それからというもの、
毎日、若い男の家に、
トラが、「薪(まき)」を
届けてくれるようになりました。
しばらくすると、
トラは、都から金持ちの娘をさらってきます。
トラは若い男に、
「この娘を連れて、娘の家に行きなさい。」
若い男は、いわれた通りに娘の家へと行きます。
家では、娘を探していた金持ちの父親が大喜びで迎えます。
父親に気に入られて、婿(むこ)になり、娘と結婚しました。
トラは、その日以来、
若い男の前に現れなくなりました。
―― 数年後のことです。
なんと、あのトラが都に突然現れて、
大暴れして、大変な騒ぎとなりました。
王様は、
「都で大暴れしているトラを
捕らえた者には、賞金を与えるぞ。」
そう、命令を国中に出しました。
その命令が出た、立て札を読んだ直後に、
家に帰りますと、あのトラが待っていました。
トラは、若い男にこういいます。
トラ
「私を退治して、王様に届けなさい。」
若い男は、何度も断りますが、
トラの意志は固く、いう通りにしました。
若い男は、大勢の人が行きかう
大通りにいますと、
トラがやってきて、
これを見事に退治しました。
若い男は、
王様から賞金を褒美として授かり
裕福な一生を送りましたとさ。
お・わ・り
『ニワトリ報恩』
ボクは、小学校低学年の頃まで
毎週日曜日になると、
家の近くの歩いて行ける距離にある、
「習字教室」に通っていました。
習字教室が終わって
家に帰りますと、
庭に、普通のニワトリよりも大きい
―― いや、もしかするとボクが小さかったので、
本当は、普通のニワトリだったのかもしれませんが、
庭の真ん中に、その大きなニワトリがいました。
そいつは、近所で放し飼いなのか、小屋から脱走してきたのか、
とにかく、たまにボクの家の庭に来ると、
外にいる人間を追いかけ回し、突っついてくる
大変、凶暴なニワトリでありました。
その日も、案の定、
逃げても、逃げても、
そいつはボクを追いかけて来て、
何度も何度も、突っついて来て、
泣きながら、何とか家の中に
逃げ込んだ思い出があります。
ある時期まで、そいつのせいで、
ニワトリが苦手で仕方ありませんでした。
そんなむかし話を、
書いていて、ふと思い出しました。
たまごを食べたり、
お肉を食べたりで、
何かしら、ニワトリのお世話になってる
ボクたちですが、
そんなニワトリさんにも、
こんな、むかし話があります。
よかったら、
今夜の最後にお読みください。
(岡山県 阿哲郡)#偶然にも『オオカミ報恩』と同じ地域
―― 妻が夫の朝飯(あさめし)を作りますと、
毎朝、毎朝、ニワトリが蹴とばすので、
夫は、いつも朝飯が食べられません。
そんなことが続くので、
夫が、とうとう怒ってしまいました。
ニワトリを捕まえると、
ワラに包んで川に捨ててしまいました。
ニワトリは流されながら、
「庄兵衛(夫)が殺される!
庄兵衛の女房をネコが取る!」
何度も何度も、流されながらもこう叫んでいました。
そこへ、偶然通りがかった旅の坊さんが、
これを聞いて、ニワトリを助け出しました。
すると、ニワトリは家へ帰って行ったので、
慌てて(あわてて)、坊さんもついて行くと、
ちょうど、夫がいたので事情を話します。
ニワトリが、「ついて来い」といわんばかりに、
裏の竹やぶまで、夫と坊さんを案内します。
竹やぶに行ってみると、
そこには、切った竹の中に、
「毒草」が入れてありました。
これを見て、夫は坊さんに相談します。
すると、翌朝になったら、
朝飯の前にここに来て、
何が起こるのか見張っていた方がいい。
そういわれたので、
翌朝、まだ暗いうちから、
切った竹の近くで隠れて見張っていると・・・
昨日の坊さんがやってきて、
後ろから夫の肩を叩いて
一緒に、しばらく切った竹を見張っていました。
”カサカサッ!”
枯れ葉を踏みしめる音が聞こえて、
何者かが切った竹の前に来ました。
―― そこにやってきたのは、
夫の家で、15年以上飼っている、
老いた爺さんネコでした。
くたびれた白い毛並みで、
弱弱(よわよわ)しく歩いている。
爺さんネコは、
竹の中に入った毒草の汁を
しっぽにたっぷりつけます。
夫は坊さんと顔を見合わせると、
爺さんネコの後を気づかれぬよう
静かに後を付けました。
後をつけた先は、夫の家でした。
夫の家では、いつも通り
妻が朝飯を作っていました。
開いていた戸から、
爺さんネコは、
何食わぬ顔で妻のそばに行きます。
用意された夫用の膳(ぜん)には、
飯やみそ汁が、それぞれの椀(わん)に、
皿には焼いた魚が用意されて、
小皿には、漬物(つけもの)まで盛られていた。
膳とは、個人用の小さなテーブルだと、
思っていただけると、想像しやすいと思います。
夫と坊さんが、外から気づかれぬように
家の中を見ていますと・・・
”シュッ!シュッ!”
妻が朝飯の支度で、
後ろを向いたスキを見て、
爺さんネコは、
夫の膳の上に盛られた朝飯の上を、
まるでムチのように
自分の長いしっぽをしならせて、
切った竹の中で、たっぷりつけてきた
毒草の汁を、飯やみそ汁や魚に
まき散らします。
夫と坊さんは、
この光景を見て驚きました。
坊さんは、少し考えて
夫に次のようにいいました。
坊さん
「ネコも10年生きていれば
妖(あやかし)になるというから、
あれはもう、”猫又(ねこまた)”じゃな。」
夫は驚きました。
夫
「あ・・・あいつが猫又に。
どうして、わしだけ狙うんじゃろうか。
ニワトリは、わしを守ってくれたのか。
そんなあいつを、わしは殺すところじゃった。
―― 坊さま、わしは
どうしたらええんじゃろうか。」
坊さまは、数珠(じゅず)を手にすると、
朝陽が差し始めた空を見ながら、夫にこういった。
坊さん
「猫又がお前さんを狙う理由はわからんが、
とにかく、いつも通り膳の前に座りなさい。
―― あとは拙僧(せっそう)の法力と、
あの猫又との妖力くらべじゃな。
家の外に出すから、お前さんと嫁さんは、
家から出ないで見ていなさい。
―― 拙僧が負けたら
慌てて逃げなされよ。カッカッカッ。」
夫は、少し不安になりながらも、
家の中に入ると、自分の膳の前に座った。
”ガチャーン!”
座ったとたんに、
いつも通り、ニワトリが
膳を蹴とばした。
夫は、いつもと違い、
怒らずに最初から
妻の足元にじゃれつく
爺さんネコだけを見ていた。
ニワトリが膳を蹴散らす時に、
ふと口元を見ていたら、
「ちっ」
と、舌打ちしたように見えたのです。
爺さんネコは、すぐに背を向けて
妻から離れると、
そばに置いてあった水を飲んでいました。
”ピチャピチャピチャ”
と、飲み始めた時でした ――
”グァァアアア~~~!”
外から坊さんの声で、
お経を唱える声がしたかと思うと、
爺さんネコが、大声を上げて
苦しみ始めました。
”やめろー!やめろー!苦しい・・・”
爺さんネコが、人間のような声を出して、
もだえ苦しみ始めました。
これには、夫も妻も驚いて、
震えながら見ているばかりです。
”バタン!”
閉めてあった木戸を
どこにそんな力があるのか、
爺さんネコは、体ごと当たって突き倒し、
外に転がって出ました。
”バリバリバリバリッ”
”ザァー~~~~!”
夫が外を見ますと、
先まで、朝陽が差し始めて
穏やかな一日の始まりを
告げようとしていた光景は一転、
まるで別世界のように、
激しい雷雨に変わっていて、
その中を坊さんと爺さんネコが、
にらみ合っていました。
―― それだけではありません。
稲光に照らされた爺さんネコは、
人間と同じくらい、
それ以上の大きさになっていました。
くたびれた白い毛並みは、
妖気を帯びて、ツヤツヤになっていて、
目はギラギラとしていました。
さらに、しっぽを見ますと、
3本とも4本とも見えるほどに
太いしっぽが、まるでヘビのように
うねうねと怪しく動いていました。

坊さん
「猫又よ!
なぜ、この家の主人を殺そうとする?」
ニヤニヤしながら、爺さん猫又が答えます。
爺さん猫又
「この家の妻がな、
わしをなでるように
優しい声でかわいがるから、
わしの嫁にしようと思ってな。
ぐへへ・・・だから亭主が邪魔なのよ。
坊さん、わしの妖力に勝てると思ってるのか?」
家の中でこれを聞いた妻は、
恐ろしくて、その場にしゃがみ込んでしまった。
坊さん
「そのしっぽの数を見ると、
お主は、相当な妖力の持ち主じゃな。
拙僧は、田舎にある小さい寺の住職じゃから、
お主みたいなのに、勝てるかわからんの・・・」
相変わらず坊さんは、頼りない答えをする。
辺りが急に生臭くなって来た時でした ――
”バリバリバリバリッ~~~!”
大きな稲光(いなびかり)を合図に、
坊さんは、一心不乱に聞きなれぬお経を唱え、
爺さん猫又は、体中を怪しい光で包んで、
お互いにその場からは、一歩も動かない勝負が始まったのです。
”ザァー~~~~!”
両者の法力と妖力の勝負のせいなのか、
雨脚は強くなるばかりでした。
夫と妻は、ニワトリを抱きながら
黙ってその光景を見守るしかできませんでした。
―― それから、両者動かないまま
時間だけが過ぎて行きました。
爺さん猫又の妖力が弱まって来たのか、
あんなに激しかった雷雨は止んでいて、
空は、あかね色に染まっていました。
坊さんは片膝をついて苦しそうにしていて、
かたや、爺さん猫又は普通に立っていられなくて、
その身を地面に伏せていたが、
目だけは相変わらず、ギラギラとして
坊さんをにらんでいました。
このまま夜まで行くのかと、
夫が生唾(なまつば)を、
ゴクリと飲み込んだ時でした ――
”ぎゃあああああああああ~~~!”
坊さんのお経を唱える声が
ひときわ大きくなったと思ったら、
爺さん猫又が、大地を割らんばかりの
うめき声をあげて、そのまま倒れ込み動かなくなった。
夫
「坊さんが勝ったのか・・・」
すぐに坊さんの元へ
駆け付けると、
坊さん
「ハァ・・ハァ・・・
すぐにあの猫又を
ワラに包んで縛ったら、
川に流してきなさい。
拙僧は、もう動けんわい・・・」
夫がワラをとって、
爺さん猫又の所に行くと、
元の大きさに戻っていた。
”ザッバーン!”
わらで包んで
ぐるぐるに縛った
爺さんネコを
夫は川へ投げ捨てた。
大きな水しぶきを上げ、
水面を叩く音が辺りに響く中、
爺さんネコを包んだワラは、
どんどん流されて行きましたとさ。
この爺さんネコを流した川は、
「猫淵(ねこぶち)」
と、呼ばれるようになりました。
ちなみに、このお話で、
妻が、ネコをなでるような声で、
かわいがったことから、
「ネコなで声」
というようになったそうですよ。
ニワトリにも、
ちゃんと恩返しをする心があるんですね。
めでたし、めでたし。
―― そろそろ、お時間のようです。
今夜も、アナタと日本の昔話を、
一緒に語れたことをうれしく思います。
また次回も、地方色豊かな日本昔話の世界へ、
アナタをお連れしましょう。
数日後の夜にお迎えに参ります。
―― その時まで、さようなら。ごきげんよう。

―― いかがだったでしょうか?
アナタのお住まいの地方にしかない、
地方色豊かな昔話がありましたら、
ぜひ、記事にして教えてくださいね。
同じ昔話でも、地方が異なると、
その背後にある、地域の特色や文化、風習など、
そういったものの影響を受けて、
お話が変化していくのは、面白い現象ですね。
また機会がありましたら、
違う日本の昔話で
やってみたいなと思います。
それでは、最後までお読みいただき
ありがとうございました。
―― さようなら!🐯

※ この話は、『日本昔話大成 第6巻 本格昔話5(1978)』
角川書店 関 敬吾(著)
54ページから62ページ 「狼報恩」、「鶏報恩」より、
引用&参考にさせていただきました。感謝します。
※ 前作までの第1巻は(1979)でしたが、
第6巻は(1978)となっていて謎です。
Amazonの表記と本の奥付(昭和53年)を確認しましたので、
そのまま記載しています。
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