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ショート) 時短マン

「時短を始めたんだよ」
飲み会の席で会社の先輩が言い出した。
ー今更ですか?
とは思ったが、どんな時短をしているのか
社交辞令で訊ねてみる。

「先ず毎食食べるのが勿体ない
だから昨日一生分の食事をし終えた」
確かに先輩の席前には何も置かれていない
しかし、一生分等とは子供じみている。
絶対明日には空腹になるはずだ。

「あと一生分のトイレをし終えた」
いやいや、生理現象だ。
夜には普通にトイレに行く。
でないと、お漏らしだ。

「あと、もう生きすぎた。
今日で終わりだ。ありがとうな」
そう言い終わると先輩はすくっと立ち上がり
店を出ていった。

直後、けたたましいブレーキ音と
叫声が店内まで響き渡った。
『事故!事故!先輩が轢かれた』
見に行った同僚が血相を変えて
戻ってきた。

私は時短の話を聞いていたので
案外すんなり受け入れた。
驚いたのは
先輩を轢いた青年は通り魔で
大通りの通行人を
轢きに行く手前だったという。

それを先輩のせいでジャマされた。
先輩は他人の悪行も
時短で終わらせた。

先輩はいなくなってしまったが
会社には先輩への弔いで
「時短マン』の銅像が建てられている。
時短を謳っていた先輩だけに
顔が右半分だけの銅像だ。

事故を想起させると、気持ち悪がり
多くの職員が退職した。
結果、会社は潰れた。

会社の命すら時短にした。
その弊害で路頭に迷った私の人生も
今から終わりを迎える。

高架橋の上に立った私の腕には
会社から無理矢理押し付けられた
右半分だけの顔の銅像が抱えられている。
勇気を持って飛び降りろ!と笑いかけてくる。

何故か急に嫌悪感を覚えて
銅像の方を先に高架下に投げ捨てた。

投げたタイミングが悪かった。
銅像は偶然高架に滑り込んできた
電車の屋根にバウンドし
撥ね返されて私の顔に直撃した。

結果、私は絶命した。
私の命を時短にしたのにも腹が立ったが
一番許せないのは
私の失われた顔の右半分に
先輩の銅像の顔の右半分がピタッと
重なり合った事だ。

不気味さも伴い、親族を配慮して
私の葬式も時短で終わった。



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