長月|虫時雨の庭 ― 四季綴
音が降り、月は低い。
露は浅く、夜は澄んでいく。
夜露が苔の縁を丸くなぞり、虫時雨が庭に降った。
竹の影は細く、川筋は浅く光る。

風が返事をする。澄夜は草を撫で、音の向きを整える。
音が集まる。澄香は水面の拍に耳を澄まし、ちり、ちり、と秋の拍を数えた。
遠くで、夏の名残がひとつだけ低く鳴る。雷雅は土の鼓動を確かめ、熱の糸をそっと寝かせる。
静けさが形を持つ。澪音が立てば庭は丸く落ち着き、声は雨のように均(なら)されていった。
虫時雨の庭。
季節は音の衣を着替え、ゆっくりと――秋へ深まる。

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