弥生|芽吹きの風 ― 四季綴
春の入口――苔と光と、芽吹きを数える風。
苔の島がひかり、石の小道はやわらかく目を覚ます。
桜はまだ三分。竹の葉がこすれ、空気の粒がゆっくり増えていく。
風が返事をする。澄夜は若い風の向きを撫で、光の粉を道すじへ並べた。
音が集まる。澄香は滴の拍に耳を澄まし、浅い流れのさざめきと
蕾の息づかいをそっと重ねる。

見えない力が土の底でぬくもりを運ぶ。雷雅は根の奥に
小さな雷鳴を置き、芽吹きだけを押し上げる。
静けさが輪郭を持つ。澪音が立つと水は丸く、鳥居の影まで
薄桃の音が転がっていった。
弥生、芽吹きの風。
季節は歩幅をひとつ広げる
