劇場版「チェンソーマン レゼ篇」でレゼに何かを壊されろ。
たぶん私はハニートラップに掛かりやすいので気をつけます。
チェンソーマンの映画を観てきました。なんか映像と音響がすごいやつで。Dolby Cinemaというらしいです。600円ほど追加する必要があるのですが、都合のよい時間に上映しているのがこれしかなかったので仕方なく。
しかしこの選択は正解でした。この手のアップグレードは初めて且つ通常の上映を観ていないので比較は全くできないのですが、感覚として映像と音響をリッチにする価値が十二分にある作品であったと思います。疾走感のあるド派手なアクションシーンがめちゃくちゃカッコいいのなんのって。鑑賞後の余韻が全く抜けないのはアップグレードしたからなのか、この作品が私に刺さったからなのか。
私に刺さったのは対比構造の美しさですね。何かと構造の話に持ち込みがちですが、これは私の性癖なので許してほしい。この作品、至る所に大小様々な対比が散りばめられていて。今回は私なりに対比にスポットを当てた好きポイント語りをしてみようと思います。
以下、ストーリー核心に迫るネタバレしかない感想になるのでこれから何も知らずに映画を観るんだいという人は今すぐ映画館に行ってください。ちなみに私のチェンソーマン歴はアニメを齧った程度なので深くないです。
喫茶店に行く物語序盤のレゼと喫茶店に行けない物語終盤のレゼ
いきなり序盤と終盤の話をしちゃいます。募金をして白い花をもらったデンジとレゼが雨の日の電話ボックスで出会い、喫茶店で落ち合うことになり、レゼがバイトスタッフとしてルンルンで路地を駆け抜け喫茶店に入るシーン。デンジとレゼのひとときの青春の始まりのシーン。これが終盤に繰り返されます。同じシーンなのに意味が変わる始まりと終わりのテンドン大好物です。全てが終わり田舎のネズミになろうとするもデンジが気になり喫茶店へと向かうレゼ。募金をして赤い花をもらったレゼがルンルンで路地を駆け抜け喫茶店が見えてあと一歩のところでマキマが立ち塞がり、ボコボコにされて喫茶店に辿り着くことは叶いませんでした。レ、レゼぇ……。
業務的恋愛感情を貫き通すマキマと貫き通せなかったレゼ
マキマとレゼは本作におけるダブルヒロインと言ってもいいでしょう。デンジが好きになってしまった2人であり、両者とのデートシーンがそれぞれ描かれています。マキマとは朝から晩まで映画デート。レゼとは夜の学校や夏祭りデート。喫茶店通いもデートの一環と言えるかもしれません。基本はツンツン上から目線で不意に顔を胸に当てるなど距離を一気に縮めてくるマキマと、最初からデレデレと徐々に距離を縮めてくるレゼの対比も面白いです。まぁ2人とも真の狙いはチェンソーの心臓でありデンジではないのだけれど。マキマは何かしらの目的があってデンジを生かして飼い慣らしていますが、レゼのミッションは心臓を奪うことらしいので作中でも触れられていたように出会い頭に油断させて殺してしまってもよかったんですよね。それができなかったのは、そしてデンジに会うために喫茶店に戻ろうとしてしまったのは、彼をただのターゲットだとは思っていなかったことの証左であり、業務的恋愛感情を越えた感情を抱いてしまっていたようにも思えます。で、業務的恋敵であるマキマにボコボコにされてしまうのです。レ、レゼぇ……。
逃げようとレゼに言われて断るデンジと逃げようとデンジに言われて断るレゼ
バトルシーンに入る前、花火を見ながらレゼがデンジに逃亡を持ちかけます。ここでデンジが今の生活の楽しさを説き、レゼから距離を置いたことで、レゼはキスを装いデンジの舌を噛みちぎります。そしてボムに姿を変えて戦闘シーンへ。戦闘が終わった後、海岸で今度はデンジがレゼに逃亡を持ちかけます。デンジから距離を置くために、レゼはキスを装いデンジの首をへし折ります。戦闘後のデンジは本気で2人で逃避行しようと思っていたんじゃないでしょうか。戦闘前のレゼはどうだったんでしょうね。デンジが拒否しなかったとして、逃避行中の隙を見て殺していたのか、殺さず引き続き青春ごっこを楽しんでいたのか。いずれにせよ逃亡する世界線が幸せだったかと言われると、結局マキマに介入されてデンジの前でレゼがボコボコにされていたはずで、デンジがレゼの顛末を知らない今の世界線が実はいちばん幸せなのかもしれません。レ、レゼぇ……。
夜の学校でプールに沈むデンジ&レゼと夜の町で海に沈むチェンソーマン&ボム
えっち。夜の全裸プールえっち。女慣れしていないデンジには刺激が強すぎたんじゃないでしょうか。それでいてパワーの胸を揉むことにご執心だったデンジが自分に好意を向けている(フリをしている)全裸の女を前に行為に至らなかったのすごいなと思いました。それをさせない何かがあったのでしょうか。月明かりに照らされたレゼが神々しすぎたのでしょうか。デンジの中のマキマの存在が大きかったのでしょうか。ここでデンジに泳ぎを教えたことが後にチェンソーとボムの勝敗を左右することになります。反則じゃない? 強すぎじゃない?? と思われるボムの能力は水中で発動することができないのです。これもやはりボムに教わった「能力の応用」により、チェンソーのチェーンに絡め取られたボムはチェンソーと2人で抱き合う形で海に沈むことになります。泳ぎを教えていなかったとしてもドボンしていた気もしますが、綺麗な対比でした。プールでは2人で全裸で。打ち上げられた海岸では全裸のレゼにデンジの服を着せて互いに半裸で。朝チュン彼シャツ概念じゃん。レ、レゼぇ……。
田舎のネズミと都会のネズミ
作中で、田舎のネズミと都会のネズミのどちらがいいかという問答があります。田舎のネズミは食べ物は豊富じゃないけど安全で、都会のネズミは食べ物は豊富だけど危険という対比で、デンジは都会のネズミを望み、レゼは田舎のネズミを望んでいます。最後にレゼをボコボコにするシーンでマキマは言います。「私も田舎のネズミが好き」と。しかし理由は安全だからではありません。安全に暮らそうとするネズミが苦しむ姿を見るのが好きだというのです。マキマだけ視座が違う……。そしてそれはつまりレゼが苦しむ姿を見るのが好きと言っているのに等しくて……。レ、レゼぇ……。
蜘蛛と蝶
「私“も”田舎のネズミが好き」ということはデンジとレゼの夜の学校での会話は何らかの方法でマキマに聞かれています。たぶん夜プールもバレています。当時のレゼはマキマが逃げられない恐ろしい存在であることは認識していましたが、デンジの上司がマキマであることは認識していませんでした。夜プールのシーンの合間にたびたび蜘蛛に捕食されゆく蝶のシーンが挟まるんですよね。単純に考えればデンジがレゼの術中にまんまとハマっていることの暗喩なのですが、マキマが監視していただろう事実を知った今はレゼがマキマにロックオンされた暗喩でもあるのかなとも思います。レ、レゼぇ……。
モルモットとしてのレゼと1人の少女としてのレゼ
レゼの行動を見ていると、モルモットでありながら、殺人兵器でありながら、学校に行ってバイトをして異性と出会ってデートをするという、ごくごくありふれた少女の生活に憧れていたような気がしてなりません。電話ボックスに押しかけてから夏祭りでキスをする手前までは任務はさておき似たような境遇のデンジに部分的に共感して「叶わなかった青春」を共に楽しんでいたんじゃないでしょうか。本当に全てを捨てて逃避行するつもりだったんじゃないでしょうか。デンジからの逃避行を拒否しつつも一度味わってしまった青春の味が忘れられずに喫茶店に戻ろうとしてしまったがためにマキマに(以下略)。最後のひとことが「本当はね、私も学校行ったことなかったの」なの辛すぎる。レ、レゼぇ……。
レゼの幸せと私の幸せ
レゼは人を殺し過ぎました。情状酌量の余地はありません。それでもなんかこう、彼女にも幸せになっていい権利があるんじゃないかとついつい肩を持ってしまうのは、彼女が訓練で身につけたという好かれる技術によって私がまんまと絆されているからかもしれません。デンジの気持ちわかるよ。あれは好きになるって。彼女に幸せになってほしい。それが私の幸せです。チェンソーと同じ武器人間であるならば、おそらく不死身で十分な血液があって首のピンを抜けば再生可能であろうことが救いです。いつかまたデンジと出会える日が来るのかしら。いやわかってるよ。マキマに捕えられた時点で再会があったとしてハッピーな気はまるでしないよ。残酷な話ですが、たぶん彼女は幸せになれないことでキャラクターとして完成されるのでしょう。レ、レゼぇ……。
今の私と過去の私
チェンソーマンの映倫がPG12なのは暴力性もあるけれどレゼの誘惑で性癖が歪むからなのでは?? とも思いました。10代20代で経験の浅い時期に見たら危なかった。一緒に観ることにした保護者様におかれましては、レゼのような子に引っ掛からないよう気をつけること、好きになった子の首元にピンが付いていないかちゃんと確認することをきちんとご指導いただければと思います。冗談です。いやでも今の私でも十分に狂えそう。
全てを観た後に主題歌のMVを見ると「このカットあそこかよ……」と頭を抱えることになるなどの再発見があって面白いです。MVにもアクションシーンが贅沢に使われていますね。爆発メインの市街戦はいいものだ。これだけでもDolby Cinema映えすることはわかってもらえるんじゃないでしょうか。レゼの戦闘衣装のせいでアクションのカッコよさに集中したいのに「えっちだ……」という雑念が邪魔をするのだけれど。半裸の異形も性癖歪むって。
とんでもアクションシーンを堪能したい人、レゼに何かを壊されたい人はご都合とご興味合えば是非。円盤出たら買いたいなぁ。
余談
櫻井陽菜さんのリクエストボイスがよかった件とレゼ篇がよすぎた件が悪魔合体した結果、レゼを演じる上田麗奈さんのリクエストボイスがあったらまたクラウドファンディングに寄付したいなというよくわからないところに着地しました。レゼに上田麗奈さんをあてた人の慧眼に感謝。演技の幅が広いので、あの手の複雑で繊細な感情を持ち合わせたあざとくイカれたボス枠がたいへん様になります。
いいなと思ったら応援しよう!
頂いたサポートは、美味しいものを経て、私の血となり肉となり次の作品となる。