試し読み『立体の設計』
今月発売の新刊『立体の設計 ファッション、建築、グラフィックデザインのための3次元の考え方』より、書籍の序文をご紹介します。
本書は、世界中で折りや幾何学のテクニックを教えるポール・ジャクソン執筆によるもので、『箱の設計』『〈折り〉の設計』『幾何学パターンづくりのすべて』に連なる一冊となりました。
この本では、グラフィックデザイン、建築、3DCG、ファッション、プロダクトデザイン、手工芸など、多岐にわたる分野で活かすことのできる、3次元の思考についての普遍的なレッスンを提供しています。折り紙の展開図をもとに、手を動かしながら立体物の構成や応用を学ぶことで、3次元に対する理解を深めることができるガイドブックです。
はじめに
あたりを見まわしてみよう。幅・奥行き・高さのある空間にいるはずだ。左右、前後、上下へと視線を向けることができる。この3つの次元があるのはあまりに当たり前のことなので、日常生活を送るうえで意識することはほとんどない。幅も奥行きも高さもなければ、もはや異世界だろう。
人がデザインして作り出すものはすべて、この3次元空間のどこかに存在することになる。さて、ここが大きな論点なのだが……なぜ人は、3次元で「思考する」「デザインする」ということを、これほどまでにしないのだろうか? 「どういうこと?」と、あなたは軽蔑まじりにボヤくかもしれない。身の回りにある、デザインされた3次元のオブジェクトの数々に視線を向けながら「もちろん3次元で思考してデザインしているさ!」と。しかしながら、私は主張したい。ほとんどの場合、私たちは平面、すなわち「2次元」で思考してデザインしている。
私はおよそ40年にわたり、ヨーロッパそして北米やアジアにおいて、ファッションから建築、ジュエリーから陶芸まで多岐にわたるデザイン分野の学生たち、またプロの実務家たちに向けて教鞭をとってきた。驚いたことに、ほとんどの人は3次元のオブジェクトを1つの立体としてデザインするのではなく、正面・背面・上面・側面から見た、平面的な画像の連なりとしてデザインしているのだ。
そこで私は、生徒たちに秘密裏に実験台となってもらい、3次元で思考してデザインする力を測るための折り紙演習を考案した。案の定、彼らの当初の能力は総じて未熟だった。しかし、オブジェクトの正面と、上面・左側面・底面・右側面のそれぞれを3次元に結びつける実践課題によって、3次元で思考してデザインする力は劇的に向上した。3次元の対称性を活用することが鍵だった。すなわち、X軸で起こることはY軸とZ軸でも必ず起こる、ということだ。
こうした演習を生徒たちと検証して、とくに役立ったものを厳選したのが本書である。なるべく多くの事例を実際に作りながら読み進めれば、3次元で思考してデザインする力が向上するだろう。
このように3次元で思考することの利点は、文字どおり、デザインにおいて新たな次元を拓くことにある。もはや「平面図」や「側立面図」といった概念は意味を持たなくなる。オブジェクトは複数の図面の寄せ集めではなく、3次元的に構想される。作品には立体感が増して視覚的にいっそう豊かで興味深いものとなり、あなたの個性がさらに際立つようになる。要するに、より優れたデザイナーになれるということだ。
不思議なことに、この方法で構想されたオブジェクトは、単一のカメラ位置だけで構造が伝わるように撮影するのがとても難しい──立体的な概念を平面的な画像を通じて表現しようとするからだろう。本書ではその解決策として、構造体がターンテーブル上で回転するショート動画を視聴できるように、QRコードを随所に掲載した。回転している状態を見てこそ、こういった構造体の3次元性を十分に理解できるはずだ。
本書の演習に丁寧に取り組めば、3次元で思考してデザインする力を会得することができる。あなたの作品はさらに洗練されて、視覚的により魅力なものとなるだろう。中にはパズルのような作例もある。「このユニットがここなら、2つ目はあそこに違いない……すると3つ目はどこにはまるんだ?」などと思わず呟くことになるかもしれない。けれども、やがて難問を解くのも速くなるだろう。3次元で考える力が向上していくのだから。
本書はまた、初等教育から大学まで、3次元幾何学や基本形態(形状)、そしてクラフト/デザイン/テクノロジー系カリキュラムを担当する教員にとっても優れた入門書である。シンプルで創意工夫にあふれ、美しく、安価で、なおかつ手早く取り入れられるアイデアに満ちている。
本書を楽しんでもらえることを願っている。そして、つくって、作って、作り続けた先に、3次元で思考してデザインするという新しいスキルを存分に解き放ってくれることを。



本書は
Part1 2次元思考と3次元思考
Part2 回転対称
Part3 X・Y・Z軸における対称性
Part4 XYZ対称のより広い概念の探求
といった4部構成からなり、約80点の写真と、手順についての300以上の丁寧な図解を収録しています。数学的要素を省いたやさしい解説のため、小学生から大人まで、図形や幾何学・ものづくりに興味のある人にお読みいただける内容です。
ソフトウェアが進化し、誰でも簡単にCGを扱える時代だからこそ身につけたい「立体的に考える力」。春休みや新学期に何か新しいことを始めたい方、頭で考えるだけでなく手を動かしてリフレッシュしながら3次元の思考力を身につけたい方におすすめしたい一冊です。
