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【治療日記54】久しぶりに希望が持てた日

「なんかちょっと良くなってるね」
主治医が意外そうに言った。
「そうなんです!」
婦人科の前に腎臓内科で結果を聞いていたので、私はすでに興奮状態だった。
それが6月29日のこと。
これまで腎臓関連の数値が悪く、クレアチニンの値がじわじわと上がってきていたのだが、それがぐっと下がっていたのだ。1.7から1.25まで。

レンビマの副作用で腎機能が衰えていくのは避けられないと思っていた。もちろんレンビマの量を減らしてはいるが、それでも悪くなっていくばかりだったのに、初めて数値が良くなっていた!
こんなこともあるんだと驚いたし、希望が持てた。
腎臓内科の先生も「いい調子ですね。これならレンビマも今のペースで続けていいと思います」と言ってくれた。
まだ尿蛋白は多いが、よくなっていることは確かだったので、ホッとした。

婦人科では、鎖骨のリンパ節にある腫瘍について相談した。
左だけだったのに右にも腫瘍ができ、左はかなり大きくなっている。もう目で見てわかるほどだし、固いしこりになっている。
そのせいで、喉が圧迫されて声が出しにくく、すぐかれてしまう。痰もからみやすい。下を向くと喉に違和感がある。
人としゃべる時間が少なくて声帯が弱っているのだと思っていたが、そうではなかったようだ。左右から喉が圧迫されて、声が出にくかったのだ。
それを話すと、「そこだけ放射線治療してみる?」と主治医が提案してくれた。
もちろん「やります!」と即答した。できる治療があるならなんだってやりたい。
実は、パネル検査も結果はダメだったのだ。治験など何もできるものがなく、新薬ができて保険適用になるまで待つしかない状態だった。
腎臓のことがあるので、レンビマもいつストップさせられるかわからない。そんな中、鎖骨のところだけでも放射線治療ができるというのはありがたい提案だった。
主治医はすぐに放射線科につないでくれて、予約も入れてくれた。この日はCTを撮って帰った。
腎機能も良くなっていたし、放射線治療も受けられることになったし、久しぶりに何か「成果」のようなものを感じた受診で、帰りも気分がよかった。

そして、7月8日にまず婦人科でCTの結果を聞いた。やはり全体的に「やや増大」していたが、そこまで落ち込むような結果ではなかった。
採血・採尿も、前回と同じく腎機能の低下は抑えられていた。クレアチニンは前回より少し上がって1.3だったが、尿蛋白が減っていて、クレアチニン値/尿蛋白比がかなりよくなっていた。腫瘍マーカーも上がっていたが、微増というくらいで、これもまたホッとした。

その後、初めての放射線科へ。夫にもついてきてもらった。
先生は若い女性で、感動するくらい優しい人だった。
CT画像を見ながらいろいろ説明してくれて、私にも症状を質問するのだが、ずっと私の目を見ながら話してくれる。その目に「本気のいたわり」を感じた。うん、うんとうなずきながら、言葉には出さないが、「それは辛かったね、痛いよね、嫌だよね、しんどいよね、不安だよね」と、そう言ってくれているような目だった。心から信頼できる先生だと思えた。
私は人を疑わず、すぐに騙されるタイプだけど、後で夫に聞いたら、夫も同じ感想を持っていたので、私が感じた印象は間違いないと思う。
いい先生にあたった!

「たぶん放射線の効果はあると思いますよ」と言ってくれたし(つまり、鎖骨まわりの腫瘍はなくなるということ)、お腹周りの腫瘍についても、鎖骨まわりが終わった後、放射線を当てられそうな箇所は治療してもいいかもしれないと言ってくれたのも嬉しかった。
再発患者、特に私のように臓器ではなく、リンパ節や腹膜播種の患者は、積極的に放射線治療はしてもらえない。腫瘍の数が多いこともあるが、「取ってもまた再発するから」だ。取ってもできる、取ってもできると、いたちごっこのようになるので、部分的に腫瘍を取るということはあまりしない。体全体に薬がいきわたるような化学治療(抗がん剤)のみを推奨される。
でも、今はもうその化学治療がすべて尽きた状態ということもあり、できるところだけでも放射線治療をしてくれるようだ。ありがたい。
お腹まわりはあきらめているけれど、鎖骨まわりはこの治療で全部なくなるかもしれない。なくなるといい。いや、なくすんだ。

翌日、早速、放射線治療用のCT検査と「固定具」造りがあった。
放射線治療の際に固定具を付けるのだが、自分にぴったり合うように造るのだという。どういうものなのか、何をされるのかわからず、久しぶりにドキドキした。(もういろんな治療や検査をやりすぎて、あまり緊張することもなくなっているのだが)

CT撮影室に入ると上半身裸になるように言われた。バスタオルを持っていくように言われていたのに忘れていたので、胸を隠す紙を渡された。
検査台に横になり、これからCTを撮ること、それから同時に固定具を造るので、顔からデコルテにかけて「型」をとるための熱い粘土みたいなものをかぶせると説明を受けた。「少し熱いですがびっくりしないでくださいね。型をとるので動かないように」と言われ、ますますドキドキする。
髪の毛につかないように帽子をかぶせられ、目を閉じた。
「顔に乗せますね~。ちょっと熱いですけど動かないでくださいね~」
目を閉じているからどういうものかわからないが、顔から胸の上あたりまでを覆うように、あったかい粘土みたいなものが被せられた。熱いというほどではない。
2人くらいでその粘土みたいなものを私の顔や鎖骨あたりに押し付けていく。デスマスクを造られているような気持ちになった。
それから普通にCTを撮り、粘土が冷めて固まったところで外された。
結局、それがどういうものなのか見ることはできなかったが、放射線治療の時に毎回使う固定具なので、治療の時には見られるだろう。毎回あのデスマスクみたいなのを被って放射線を受けるのか、と思う。

放射線治療は15日スタート。線量は3Gyで10日間。土日祝日は休みなので、29日が最終日となる。
1回20分程度らしいが、毎日通うのが大変だ。
放射線自体に痛みはないが、皮膚には少し影響があるようだ。跡が残ったら嫌だなと思うが、塗り薬も出してくれるというし、こすったり紫外線を当てたりしないように気を付けていれば、たぶん大丈夫だろう。
15日の初日にならないと10日間のスケジュールがわからないのだが、時間帯も選べるようなので、夫が送り迎えできる時間を選ぼうと思っている。この暑さの中、治療を受けて歩いて帰って来るのはかなり難しそうだから。

そんなわけで、15日から新しい治療を受けることになった。
ちょうど原稿も出し終わったところで、他に取材も何も入っていないのでよかった。治療に専念しよう。
治療そのものは心配していないのだが、治療を受ける日はレンビマを服用してはいけないと言われている。それがかなり怖い。レンビマを2日休むだけでもすごい痛みに襲われるのに、15~17日(3日間)、21~24日(4日間)、27~29日(3日間)と、最高4日間レンビマを休まなければならないのだ。この期間、一体どれほどの痛みがあるのかと、今から想像するだけで恐ろしい。気が狂わないだろうか。車で送り迎えがあっても、立って病院内を歩いて、20分間じっとしながら治療を受けられるのだろうか。痛みでそれどころではないかもしれない。
もちろん主治医に相談して、多めに麻薬を出してもらうが、そんなので効くのか不安だ。まあ、かなり痛みに耐える日々になることは間違いない。
土日祝があるだけまだよかった。放射線が休みの日はレンビマを飲める。10日間連続だったら絶対耐えられないだろう。

でも、とりあえず一歩前進だ。
腎機能もよくなってきているし、放射線治療が終わればまだレンビマを続けることができる。
そうやって、ねばって、ねばって、なんとか生きていたら、また新薬ができて使える日も来るだろう。
その日まで、しつこく生きてやる!
「打つ手なし」になってから、悪い想像しかできなくて、精神的にも不安定になっていたが、久しぶりに希望が持てた。
放射線治療、がんばるぞ!!

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