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【治療日記53】「延命」の意味をはっきりと理解した

ガンの再発の治療は、基本的に「根治」ではなく「延命」を目指す。最初からそう言われていたし、心のどこかにいつもその覚悟はあったけれど、最近は「延命」という言葉の意味を身をもって理解するようになった。

私は2024年3月から「キイトルーダとレンビマの併用療法」という治療を受けている。この【治療日記】はそのスタートからの経緯を記録してきたので、私がどのように治療と向き合い、回復し、時にはつまずきながらもなんとか続けてきたことを見てきてくれた人も多いと思う。

早いもので、開始から丸2年が過ぎた。
最初の頃はさまざまな副作用に苦しめられ、副作用で死にかけて緊急入院したこともあった。副作用とは別に、腫瘍が尿路をふさいだために尿管ステントを入れる手術をしたり、尿路感染症で1週間入院したり、薬疹で体中に発疹ができたりしたこともあった。
一方、レンビマの副作用で腎機能や甲状腺機能が落ちたため、レンビマの量は20mgから14mgへ、14mgから10mgへ、10mgから8mgへと徐々に減らしていかねばならず、腎機能の数値が悪くなるたびに休薬もしなければならなかった。
そして、8mgを週休2日で続けることさえも難しくなり、今はもう「休薬」が基本で、痛みが強い時だけ8mg飲んでなんとかやり過ごす、ということになった。
さらに、キイトルーダは35回しか受けることができないので、残り1回となってしまった。今月末に受けたら、それでキイトルーダは終了だ。

世の中には「終わってうれしい治療」もあるだろうが、私の場合、治療が命綱なので、終わると困る。
でも、キイトルーダはあと1回、レンビマはほとんど飲めない、という最悪の状況に陥っている。
キイトルーダとレンビマでなんとか2年とちょっと生き延びたんだな、と思うと、改めて「延命」という言葉が重く響いた。

2024年の3月にこの治療を始めていなければ、おそらく今、私はこの世にいない。だから、治療は受けて本当によかったと思っているし、すべての人に効くわけでもないのに、私にはよく効いたので、幸運だったとも思っている。890もあった腫瘍マーカーが基準値内の32に下がった時は奇跡だと思ったし、これからもっとよくなっていくんだという希望にも満ち溢れていた。

だが、再び先が見えなくなった。
先述したように、先月からレンビマをほとんど飲めていないので、体調は悪くなる一方だ。それによって困っていることは大きく2つある。

まず1つめは、ガンの進行。
ほぼ治療していないのと同じなので、また進行が早まってきた。CTを見る限りでは、3カ月で1㎝くらい大きくなっている。今週の血液検査では腫瘍マーカーも270以上あった。ついこの間まで2桁だったのに、上がるのはあっと言う間だ。
それに、これまではお腹に散らばっているガンが主体で、他に転移しているところは、米粒のような小さなものだったのだが、左鎖骨上窩リンパ節に転移していたガンが急に大きくなった。鎖骨の上あたりを触ると、自分でもわかるくらいの大きな固いシコリがある。うつむくと喉が閉まる感じがして違和感もある。CTで見たら、やはり目に見えて大きくなっていた。

2つ目の困りごとは、痛みだ。
私はものすごくレンビマが効く体質だったようで(だからわずか半年でガンを半分くらいの大きさに縮小でき、数値も基準値まで下げられたのだが)、痛みの緩和にもレンビマが役立っている。どんな痛み止め薬を飲むよりもレンビマを飲んでいるほうが痛みが少ないのだ。
だが、今はほとんど飲めない。となると、必然的に痛みが襲ってくる。
レンビマを飲んでいる時は痛みがあっても10段階で2~3程度で、痛み止めの薬を飲めば0にまで落とすことができる。でも、レンビマを飲んでいない時は、この痛みは一気に5~8まで上がる。そして、いくら痛み止めを飲んでも2~3くらいにしか落ちない。
7や8の痛みになると、ほとんど獣だ。理性が吹っ飛ぶくらい、気が狂うほどの痛みで、わんわん呻きながら、のたうち回るだけ。勝手に涙も出てくる。息苦しくてはぁはぁ言うのも止められないし、じっとしていることもできない。寝ていたらマシとか、そういうレベルではない。「もうこんなに痛いなら殺してくれ!」とまで思う。

結果的に、そこまできたら、痛み止めの代わりにレンビマを飲むことにした。不思議なもので、レンビマを飲むと30分もしないうちに落ち着いてくる。まだ痛みは続くが、気を確かに持てないほどではなく、ようやく人として会話が成り立つくらいにはなる。さらに痛み止めも追加すれば、徐々に効いてきて、2、3時間後にはケロッとして普通に歩いている。
主治医にもその話をして、今はレンビマを「2日休薬、1日飲む」というペースにしてよいことになった。それで、ひどい痛みからは逃れることができるようになった。
また、痛み止めの医療用麻薬も量を増やしてもらった。レスキュー薬のオキノームは、これまで2.5mgだったが、主治医が「7.5mgまで一気に飲んでいいよ」と言ってくれたので、5~8の痛みが出た時はオキノームを一気にたくさん飲むことにした。
これを決めたのは一昨日の月曜日の話で、幸いまだそこまで強い痛みは出ていないから一気飲みはしていないが、それならなんとか効くような気がする。これで痛み対策はなんとかなるかなと安心した。

とはいえ、先の話に戻るが、キイトルーダはあと1回だし、レンビマも痛み止め的に飲んでいるだけなので、ガンの進行を抑えるほどの効力はない。
一番いいのは、少々副作用が強くてしんどくても、治療を始めた頃のように、レンビマ14mgをほぼ毎日飲むことだと、私も主治医もわかっている。私は「効く」体質なのだから、それさえできれば、またガンの進行を抑えて延命できるのだ。
なぜできないか?
それは腎機能が低下するからだ。今回の受診で主治医にいろいろ尋ねてみたのだが、レンビマを長く続けている人でも腎機能が低下しない人もいるらしい。
「えっ、みんな低下するわけじゃないんですか?」
「うん。まあ、こんなに長くレンビマ飲み続けてる人がほとんどいないから、ちゃんとしたデータがあるわけじゃないけど、長く続けてる人でも腎臓は大丈夫っていう人もいるよ」
それを聞いてショックだった。みんながそうなるなら仕方ないと思っていたけど、そうじゃないんだ。私も腎機能さえ守れればもっとレンビマの量を増やせるし、ガンの進行も抑えられるのに……。

私は同じ病院の腎臓内科にも通っているのだが、そこの先生は「もしかしたらレンビマの副作用ではなく、別の腎臓の病気かもしれないから、調べるために生検してみますか?」と勧めてくる。
血液や尿検査でわかるならすぐにやるが、生検なので腎臓の細胞を抜き取らなければならない。開腹まではしないだろうが、麻酔して手術みたいなことをして数日間入院もしなければならないので、結構なおおごとだ。
気軽に「はーい、やりまーす」と言うわけにもいかない。むしろ避けたい。
でも、もし今の腎機能の低下の原因がレンビマの副作用ではなかったら? そして、何らかの方法で腎機能を上げることができたら、レンビマを続けることができるかもしれない。そう考えると、生検も今後の1つの選択肢として考えておかなければならない。
「やれることはなんでもやろう。後悔だけはしたくないから」と主治医も言ってくれた。私もそう思う。

一昨日は受診に夫も付いてきてくれて、久しぶりに主治医と私たち3人で顔を見合わせ、頭を抱えた。
「打つ手がない」
この現実を前にして、主治医は「あ~、悔しいなぁ」と本気で嘆いてくれた。それだけで少し救われた。この先生で本当によかったと思う。

そして、1つ提案をしてくれた。「がん遺伝子パネル検査」だ。
今できる最後の手段である。
私のがんの特徴をゲノム解析によって網羅的に調べ、がんと関連する多数の遺伝子の状態を確認することを通して、私のがんにあった適切な薬剤や治療法、参加できる臨床試験・治験の有無がわかる、というものだ。
この検査結果次第で、今使える新薬が1つあるのだ。そして、この新薬は今のところ、かなり効果が見られているという。

検査といっても、これに関しては新たに何かすることはない。これまでの手術や検査で保存されてきたものがあるので、それを使用して調べてもらうことができる。
とりあえず説明を受けて同意書にサインをした。これで検査にまわされる。

希望がつながった!
検査に通るかわからないし、新薬が効くかどうかもわからない。
でも、「打つ手なし」から1つだけ希望の光が見えた。
治療を受けられたとしても、またこれまでとは違う副作用に悩まされることもあると思うし、何より「効くかどうか」もわからないが、とにかくやってみようと思う。

もしこの新薬が使えなかったり、使っても効かなかったりしたら、その時は今と同じように、腎機能を気遣いながら少量のレンビマを飲んで、少しでも痛みと進行を抑えていくしかない。
辛い生活になると思うが、それでも1年、2年と、なんとか生き延びていけば、また新しい薬や治療法が開発され、保険適応になるはずだ。
「こっちが把握するのが追い付かないくらい、どんどん新しいものは出てるから、そのうち使えるものもあるはず」と主治医も言ってくれた。私もそう信じている。

それから、私は近所の鍼灸にもずっと通っていて、先生にもいろいろと数値が悪くて、使える薬もなくなってきて、打つ手がないという話をした。
先生は痛みを和らげたり、免疫力を上げたり、腎機能低下によるむくみをとったり、毎回あれこれ試してくれている。
鍼灸がどれくらい効果があるのかはわからないが、私が続けているのは、「自分の体を実際に手で丁寧に触ってくれて、常に体の状態を把握してくれている人がいる」ということがとても心強いからだ。そういう人がこの世に一人でもいるということが安心につながるのだと初めて知った。病院では「数値」でしか私を診てくれないから。

さらに、この鍼灸の先生は少しスピリチュアルなところがあって、時々そういう話もする。
この間も、私がこの世の終わりみたいな顔をして現状を話したら、施術を終えて帰る時に「すべてうまくいきますから」と言ってくれた。根拠はわからないが、その言葉で安心できた。

最近、人と会ったり外出したりできるのは週に1、2回だけだ。
友達と会ったり、夫と出かけたり、取材に行ったりするために、他の日はすべて体調を整えるのに使っている。
というか、動きたくても動けないことのほうが多いのだけど。常に、痛い、しんどい、眠い、の繰り返しで、たまに何も感じない時間帯があると、本当にホッとする。

体調を整えるといっても、耐えるばかりで何もできずに過ぎていく時間を、布団やソファの上でじっと眺めているだけだ。しんどい時は本を読むことすらできない。
本当は毎日noteも書きたいし、2作目の本も書きたい。
書くネタはたたき売りしたいほどあるし、時間もたっぷりある。ないのはパソコンに向かう体力と気力だけ。一番大切なものが欠けている。

だからこうして、調子がよい時間帯をねらって、一気に書けた時はうれしい。少しずつでもいいから、まだ書き続けたい。できることをやりたい。生活に楽しみを少しでも作りたい。
がんを治すことが目的の人生なんて、つまらないから。

体調は悪くなるばかりで先が見えず、この1カ月ほど落ち込んでばかりいたけれど、月曜日に主治医と話して、少しだけ光が見えた気がする。今はこのわずかな光にすがりたい。
【治療日記】も良いことが書けないから、2カ月も書かずにいた。
何も好転していないけど、今の気持ちを忘れたくないから、今日は書いた。

いろいろ書きましたが、ご心配なく。
私はまだまだ大丈夫です!

祈り」の力を信じているので、この希望の光が未来につながることを一緒にお祈りして、応援していただけるとうれしいです。

Kaori

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