干物とバナナボート
バナナボート。なんて古臭いのに小気味の良いネーミングなんだ。
れっきとした洋菓子の名前だ。
生クリームに埋もれたバナナをほぼ丸ごと1本、薄いスポンジケーキで包んだ姿からそんなネーミングになったのだろう。
俺はこれが一番好きなんだ。と、自分が大好きなバナナボートを近くの洋菓子屋で2人分買ってきてくれる。
これ食べたら新港に行こうぜ。そろそろ日が沈む頃だしな、と。
今は肥薩おれんじ鉄道となったローカル線の阿久根駅から西に向かうと新港は近い。
駅の東側にある友人の実家からは、ぶらぶらと歩いても30分程度のところにある。
あれっ、今日は平日じゃないか。試験前なのに二人してサボったってことだよな。
甘い匂いが潮風に消されて、干物と生魚の匂いが新港が近いと教えてくれる。
面倒と干物はくさいに決まっている。
堤防に腰掛けて、阿久根大島の向こうに沈む夕陽を横目に弾む恋ばな。

今年、ここが舞台の映画が公開になった。
ハノイからの電話が最期になるなんて早すぎるだろう。折角なのに。
海老と豚で儲けて、パトロンになってくれるはずだっただろ。まったく。
もう、欲もなくなったよ。なんて言うから。
今も絵を描いている根底には、こんな原風景があるのだろうな。
松田靜心 筆

