夢のような。。。
先日無事次男坊が高校を卒業した。
その卒業式は私が思っていた以上にすがすがしいもので、最近自分の情緒がうまくコントロールできていない私は多分涙腺崩壊するのではとびくびく臨んだけれど、そういう湿っぽい感じ全くはなし。
新しい旅立ちにみんなが胸躍らせている感じだった。

うまく伝えられないけど風船の中にいるような不思議な高揚感の中、心から卒業生へのおめでとうの気持ちと、よく頑張ったねの次男坊への温かい気持ち。とても心穏やかに、そしてにぎやかに過ごすことができた。
なにより。
いつもは時計ばかり見ている夫も、この日は自然と笑顔がこぼれ、いつもは機嫌が悪くなる家族写真にも率先して参加。とてもいい感じだった。

卒業式の翌日はバンケットと呼ばれるパーティー。
プロムと呼ばれる卒業生たちだけのダンスパーティーがこちらでは平均的。次男坊の学校はバンケットといって、家族総動員での大掛かりなパーティー。
我が家は縁あってこの学校にグレート9からお世話になっているので、4年間。でも、幼稚園から通っているご家族は13年間。入学してからずっとこのバンケットに出席する日を夢に見ていたお母さん方は多い。
準備はおよそ1年がかり。会場はダウンタウンの五つ星ホテル。
日本の大掛かりな結婚式と似ている。
夫は早々にリタイヤ。出席確認の際、
俺は外してね。
と最初から全く参加する気はなかった。でも、お祝いの席に嫌々参加するというのもどうかと思うし、なにより次男坊も夫が卒業式に来てくれればそれでいいと意思表示していたから、夫の意思は尊重された。
結局家族を代表して私と、彼女チッチが次男坊と同伴することになった。
私はここ数か月このバンケットのことを考えて溜息をついていた。カナダに来てから数十年。友人の結婚式に出席したことはあるけれど、どれもこんなにフォーマルではなかった。
次男坊の学校のご父兄を思うと胃が痛くなる。皆さん本当にこの時代に階級とかいうと笑われてしまうかもしれないけど、住む世界が違う人ばかり。一体どんなドレスをきてくるのだろう。
慌てた私はFacebookのマーケットプレイスで早速探し始めて、何となく主張の少ない露出の少ない可もなく不可もなしといったテーマのぴったりなドレスを見つけて購入。価格は15ドル。
パッとしないけど、どうしたの?ということにもならないかな?
ならないといいな。
次男坊も「いいんじゃん?」といってたし。。。
当日は次男坊一番の仲良しジェイ君(仮名)のお母さんが、リムジンサービスを経営しているというお友達からのプレセントとかで、大きなリムジンで私と次男坊を迎えに来てくれた。
夫もうれしそうに写真を撮って見送ってくれた。

それからお友達家族を拾って、更に彼女チッチの家へ。
次男坊最後の最後に彼女の友達に自分の親友ジェイ君を紹介。
その二人が付き合うことになったらしい。なんと。
なので次男坊の彼女チッチの家にはすでにジェイくんの彼女Sちゃんもチッチと仲良く待っていた。
4人で記念写真を何枚か取った後、チッチとSちゃんがリムジンに合流。チッチとSちゃんのお母さんが笑顔で見守る中、リムジンは出発、時間通り会場に到着した。

まずはオープンウェルカム。
ホテル屋上で歓談。こういうのがすこぶる苦手。どこにいたらいいのかわからない。座ることもできず、何かを眺めることもできず。。。
狭くも広くもない空間に着飾った人たちが立ち話をしている。ホテルのスタッフがお酒やらおつまみやらをトレーに乗せて歩き回って
いかがですか?
と声をかけてくれる。
次男坊はお友達と合流して私のことはすっかり忘れてるし、彼女チッチも会場内にお友達が沢山いるみたいで大忙し。
唯一知り合いのお母さん友達に
「今どこ?」
とメッセージすると。
「ごっめーん、まだ家。うちの息子まだ準備できてない。」
ということで何度かトイレに行ったり、飲み物を取りかえてみたり、ちょっと知らない人と話してみたり。いやあ、でも何度もいっちゃうけど本当にこういうのはだめだ。
人知れず悶々としていると、係の方から
会場の準備が整いました。皆さんどうぞ4階の広間へお進みください。
助かった。
パーティーはコースメニューなので、自分の名前が用意されている席へ。
希望を出しておいたので、テーブルはみんな次男坊の仲の良い友達家族。
ちょっとほっとする。
サラダから始まり食事が進む中、学長の挨拶、PTA代表の挨拶、スライドショー。会は滞りなく進んだ。

私もこの動けない設定のほうが逆にちゃんと話ができる。隣に座ったきれいな女の子二人は卒業生のお姉さん達。弟の話、学校の話、そして彼女たちの通う大学での話。すべてとても興味深かったし、楽しかった。
こんな風に子供たちを取り巻くご家族と触れ合うと、何だか違う一面を見られた気がして、今まで以上に親近感がわく。
みんないいご家族なんだろうなあ。

デザートがでてきて、そろそろ終わりに近づいてきたなあというタイミングで、MCをされていた主任教師がステージに戻る。
ちょっとお話をされたあと、「いよいよメインイベントです」というと
真ん中の正方形のオープンスペースにスポットライトが当たり、何がはじまるのかな?と思っていたら
ファーストダンスです。
?
結婚式のファーストダンスはわかる。これは新郎新婦が夫婦として最初に踊るダンスだ。でもこれ結婚式じゃないし。よく状況がわからずにいると、横にいたチッチが私を肘でつっつく。
メイメイいかなくちゃ!
??
ファーストダンスって、息子とお母さんが踊るもの?と周りを見てみると、ぽつぽつと息子にまたはお母さんに引っ張られて真ん中に向かう二人連れ。なるほど。
うちの息子は今どこに。
こういう時にやっぱり次男坊はお友達と夢中になって話しているのだろうなあと、他人事のように踊りだすお母さんとその息子たちを眺めていると
お母さん行くよ
と、どっかから次男坊が湧いてきた。引っ張られていったステージには見覚えのあるお母さんや子供たちで賑わいをみせる。やわらかいスポットライトの中でみんなの笑顔が本当にかがやいていて何だか胸が熱くなった。
身長165センチ、10センチヒールを履いている私が見上げる次男坊。
いつも通りなはずなのに、何だか急に大人っぽくなってしまったみたい。
急に胸がしめつけられる。
スタンドバイミーに合わせて両手を繋いで踊るとも揺れるとも言えない動きをしていた。
モミジみたいに小さくてかわいい手がいつの間にこんなに大きな手になっちゃったんだろう。
そんなことを考えていると次男坊がぎゅっとハグ。抱き合ったままただ揺れる。
ありがとう
そんな気持ちが伝わってきた。ほんの数十秒の次男坊とのダンス。
こんな時間が待っていたんだなあとじんわり心が温かくなる。
曲の最後はホッケー繋がりのお母さんや子供たちと大きく円を描くように手を繋いで一緒に踊った。
お母さんたちみんな本当に綺麗。ちょっと言ってて恥ずかしいけど、小さな女の子みたい。笑顔が輝いていた。訳もなくカンドー涙
うまく伝えられないけれど。
それぞれがそれぞれの思いを胸に、特別な時間と特別な空間を共有できたことが何だかとても素敵な気がして、私はただただ幸せの明かりに包まれ、何とも言い表しがたい高揚感に酔っていた。
その後アフターパーティーへ向かうという若者を会場に残し、ジェイくんのご家族とウーバーで帰宅。
「夢のような」時間というのはああいうことをいうんだろうなあと、次男坊と踊ったファーストダンスを振り返る。
私の無駄に心配したドレスも希望通り可もなく不可もなく全く気にならなかったし、何しろ主役の子供たちがみんな楽しそうで希望に満ち溢れていて、それだけで何だか万事オッケーに思えた。
私はこれからもきっとあの時間を思い出すんだろうなあ。
そして新しい世界へ旅立つ子供たち。たまにあの時間を振り返って懐かしく思ったり、元気になったりしてほしいなあ。
なんて思いつつ、連続二日間の興奮と熱気の波で疲れ果てた私は眠りについた。
