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🌌🍵 あと二つ 〜 世界に3碗だけの国宝を巡る旅

はじめに

徳川家康が所蔵し、後に水戸徳川家に伝わった曜変天目茶碗 (藤田美術館所蔵)を2019年に奈良国立博物館まで観に行ったことがある。

奈良国立博物館
「国宝の殿堂 藤田美術館展
曜変天目茶碗と仏教美術のきらめき」
2019年4月13日〜6月9日

初めて生で観た曜変天目茶碗は思っていたより小さかったが、その内側には吸い込まれるような紺青の宇宙が拡がっていた。

詳細は後述するが国宝 曜変天目茶碗は3つ現存しているので、生きている間にあと2つも観てみたいなと思ったり。

なお、曜変天目茶碗のレプリカは出来の悪い気軽に使える安価なレプリカが存在する故宮博物院のチキンカップ (後述の関連note「🐓🍵 チキンカップ(鶏缸杯)が欲しい」参照)とは違って、本物を再現しようとした大変高価なものしか販売されていない。

このため、たとえレプリカといえども曜変天目茶碗でお茶を飲むのは大変難しい (笑)

曜変天目茶碗とは

世界に3つしか現存せず、その3つは全てが日本に存在し、かつ国宝指定されている茶碗。

今となっては失われた手法 (焼き方)により茶碗の内側に宇宙を思わせる紋様が現れている。

曜変天目茶碗「稲葉天目」 (静嘉堂文庫美術館)
曜変天目茶碗 「水戸天目」(藤田美術館)
曜変天目茶碗「龍光院天目」 (大徳寺龍光院蔵)

所蔵施設

国宝指定されている曜変天目茶碗は以下の施設が所蔵しているが、常設展示とは限らない。

また、他の美術館に貸し出される場合もあるため観に行く時は注意すること。

東京:静嘉堂文庫美術館

所在地:東京都千代田区丸の内

静嘉堂文庫美術館Instagram

大阪:藤田美術館

所在地:大阪府大阪市都島区

藤田美術館Instagram

京都:大徳寺龍光院

大徳寺の塔頭寺院である龍光院が所蔵しており基本非公開 (美術館への貸し出し展示のみ)。

基本非公開で3つの中で鑑賞する機会が最も少ないので、チャンスがあれば最優先に観るべき曜変天目茶碗。

曜変天目はあと五つあった?

大正10年 (1921年)に茶人 高橋箒庵(そうあん)が編纂した茶道具の名品集「大正名器鑑 」という茶人のための大名物図鑑がある。

https://www.nezu-muse.or.jp/jp/press/pdf/press_taisyomeikikan_1.pdf

LEC会計大学院紀要 第9号に掲載されている「世界に3つの曜変天目」/斎藤淳 著を読むと、その図鑑の中では以降に示す①〜⑥の六点が曜変天目茶碗とされている。

https://www.jstage.jst.go.jp/article/lecgsa/9/0/9_KJ00007558740/_pdf/-char/ja

ただし、高橋箒庵はこの六点を一つ一つ解説しながら、④〜⑥については以下のような感想を実見記の欄に記していることに留意。
簡単に言うと①〜③と④〜⑥はテイストが違う。

・「稲葉家若くは水戸家のとは相違せり」

→現代語訳:④〜⑥は①の稲葉家あるいは②の水戸家が所蔵しているもの(曜変天目)とは、また趣きが異なるものである

・「大体油滴手なれども、内側に小星紋あるに依りて、曜変の部類に加えられたる者なるべし」

→現代語訳:④〜⑥は全体としては油滴(ゆてき)の手法によりつくられたものだが、器の内側に小さな星のような紋様(星紋)が現れているため、曜変(ようへん)の部類に組み入れられたものであろう

・「油滴に非ずやと思はれしが(中略)曜変にも亦此種類ある事を会得せり」

→現代語訳:(一見したところ)油滴天目ではないかと思われたのだが(中略)曜変天目の中にも、またこのような種類(油滴天目に近い特徴を持つもの)が存在することを会得した。
(会得=物事の意味、本質などを理解し悟ること)

①「小野哲郎蔵」

 徳川宗家~小田原藩主稲葉美濃守正則・稲葉家代々~小野哲郎~男爵岩崎小弥太
→静嘉堂文庫美術館「稲葉天目」 (国宝)

②「藤田平太郎蔵」

 徳川家康~水戸徳川頼房・水戸家代々~藤田伝三郎〜男爵藤田平太郎(伝三郎長男)
→藤田美術館 「水戸天目」(国宝)

③「大徳寺龍光院蔵」

 天王寺屋宗久〜江月宗玩〜大徳寺龍光院
→大徳寺龍光院「龍光院天目」 (国宝)

④「徳川義親蔵」

 堺町衆樋口屋紹札~油屋紹佐~油屋常祐~徳川家康~尾張徳川義直代々・侯爵徳川義親
→徳川美術館「油屋天目」 (文化財指定無し)
⚠️現代の分類では油滴天目に分類される

曜変天目茶碗「油屋天目」 (徳川美術館蔵)

徳川美術館Instagram

⑤「酒井忠正蔵」

 姫路酒井家代々・伯爵酒井忠正
→大阪市立東洋陶磁美術館「酒井天目」  (国宝 油滴天目)
⚠️現代の分類では油滴天目に分類される

油滴天目茶碗「酒井天目」 (大阪東洋陶磁美術館蔵)

大阪市立東洋陶磁美術館Instagram

⑥「前田利為蔵」

 加賀前田家伝来品〜松平肥前守代々・侯爵前田利為~根津嘉一郎
→根津美術館「加賀天目」 (重要美術品)
(重要美術品は重要文化財に次ぐもの)
⚠️内箱の蓋表に「曜変」と小堀遠州の筆になる金粉字形の書付があるが、むしろ油滴と分類されるべきとの見方もある。

曜変天目茶碗「加賀天目」 (根津美術館蔵)

根津美術館Instagram

さらに「大正名器鑑」には記載が無いが、上記以外にも以下の2つの曜変天目茶碗があり (ひとつは焼失)、日本には一時期最大で8つ (国宝級は4つ)の曜変天目茶碗があったことになる。

⑦加賀前田家 (前田利常)伝来品

 前田利常・加賀前田家伝来品
→MIHO MUSEUM 曜変天目 (重要文化財)

曜変天目茶碗 (MIHO MUSEUM蔵)

MIHO MUSEUM Instagram

⑧織田信長所蔵品 (本物なら国宝級)

足利義政〜織田信長〜本能寺の変で焼失 (したはず)
→浅野宋磁コレクション

織田信長が愛用していたが、天正10年 (1582年)6月2日に本能寺の変と共に焼失したとされる。

だがしかし、真偽は不明であるが焼失したはずの曜変天目茶碗とされるものが今も現存する。

曜卞天目・芒曜天目・毫変盞

国宝3点以外にも天目茶碗に興味がある人は以下のWebサイトも参照されたし。

曜変天目の再現に取り組む現代の後継者

9代目長江惣吉 氏や土渕善亜貴 氏などの手により、曜変天目茶碗の制作過程の解析や再現が進められている。

2019年に土渕善亜貴 氏の手により、ようやく100個に1〜2個の割合で再現できるようになった。

番外編

それぞれの曜変天目茶碗を鑑賞した後に手に入れるべき物や訪れる価値のある場所をあげておく。

東京

静嘉堂文庫美術館のミュージアムショップには「ほぼ実寸の曜変天目」ぬいぐるみが売られている。

「ほぼ実寸の曜変天目ぬいぐるみ」8,800円 (2026/04/16現在)
⚠️2026/07/05から値上がり予定

手元にひとつ置いておきたいが、転売屋対策としてミュージアムショップの店頭販売のみで通販しておらず、販売数も少ないので関東から遠いところに住む人には入手しづらい。少々高価ではあるが開館時間に訪れて入手しておくとよい。

また静嘉堂文庫美術館は戦後にGHQに接収され、マッカーサー総司令も対日理事会の会議に出席したことがある重要文化財「明治生命館」1Fに位置しており、建物自体も見学する価値がある。
併設の明治安田CAFE 丸の内で建物の内装を見ながらお茶をするとより楽しめる。

さらに明治生命館のすぐ近くには、同じくGHQにより接収され、マッカーサー総司令が執務していた旧第一生命館 (第一生命日比谷ファースト)もあるので、こちらを訪れてみるのもよい。

大阪

藤田美術館の広間では「誰でも気軽にお茶の世界に触れてもらう」ことを目的に「且座喫茶」 (シャザキッサ)と名付けられた茶会が定期的に開かれており、安価かつ気軽にお茶を楽しめる。

且座喫茶Instagram

陶器絡みで東洋の陶磁を多数所蔵している大阪市立東洋陶磁美術館は一見の価値がある。

高橋箒庵が「大正名器鑑 」にて酒井忠正が所蔵する曜変天目茶碗としていた「酒井天目」  (国宝 油滴天目)もこちらの所蔵品である。

大阪市立東洋陶磁美術館を訪れるのなら、すぐ近くにある大阪市中央公会堂 (の外観)も見学されたし。

大阪中央公会堂は株取引で成功した岩本栄之助という男が明治44年 (1911年)に大阪に恩返しがしたいと寄付を発表し、大正7年 (1918年)に完成した。

なお岩本栄之助は大正5年 (1916年)に株式相場で巨額の負債を抱え、完成間近の大阪市中央公会堂が見えるオフィスで拳銃自殺した。

参考資料

「国宝・重要文化財・重要美術品の違いとは」

関連note

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