オオカミに弟子入りした子羊の話~やなせたかしの哲学~
小さい時に見た絵本やアニメを、後から見返して、気づいたこと、学んだことがある。
そんな経験をしたことがないでしょうか。
悲しいストーリーでありながら、小さい時に何度も繰り返し見ていた『チリンのすず』は、私にとってそんなアニメの一つです。
この『チリンのすず』は、哲学の要素が満載で、そしてジブリで言うと『もののけ姫』の要素も入っているような、自然界の掟、厳しさ、生きることを教えてくれるアニメです。
ストーリーを簡単に紹介します。
~チリンのすず~
オオカミに母親を殺された「チリン」という子羊が、強くなって復讐するためにそのオオカミに弟子入りする話👇
主人公の子羊「チリン」のお母さんは、ある日牧場を襲ってきたオオカミから逃げ遅れたチリンを守って死んでしまいます。
お母さんの仇を打つために、宿敵であるオオカミが住む山へ向かい、オオカミに「弟子にしてくれ」と頼みます。

最初は相手にしなかったオオカミも、しつこく粘り強くついてくるチリンをだんだんと気にかけるようになり、自然の厳しさや、強くなるために必要なことを教え始めます。
ある日、ヘビに襲われそうになる鳥を救うことができず、「どうして、弱いものは死んじゃうんだ」と悔し涙を流すチリン。
そんなチリンを見て、オオカミは、自然界は誰かが生きるために誰かが死ぬ、戦いの世界だと説く。
「生きることは悲しみを知ること。その悲しみで心の牙をとぐのだ。」

オオカミとの激しい特訓の中、もはや羊には見えない獣に成長したチリンは、自分を強くさせてくれたオオカミを師として尊敬するようになりますが、ある出来事をきっかけに、幼いころに持っていた羊の心がよみがえり、するどい角でオオカミを突いてしまいます。
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概要はこんな感じです。
アンパンマンの生みの親である「やなせたかし」が描いたアニメだということは大人になってから知りました。
正義と悪というわかりやすい対比を描いたアンパンマンは誰もが知るロングセラーですが、絶対的な正義はなく、正義が存在するには悪がいなくてはいけないし、悪人の中にも正義がある、とやなせたかしは言います。
そんな『正義』についてのやなせたかしの哲学が形作られた背景には彼が戦争を経験したことにもあるようです。
悪者は最初から最後まで完全に悪いわけではありません。
世の中にはある程度の悪がいつも必要なのです。現実の社会はそういうところが厳しい。ぼくはみなさんが社会に出る厳しさを思うと、そういう絵本も読んだ方がいいのではないかと思って『チリンのすず』を書きました。
世の中には、どちらかというとハッピーエンドで終わるような物語が多いように感じる。
それは私がそういうものを好んで見てきたからそう感じるのかもしれない。
ハッピーエンドなストーリーは夢や希望を与えてくれる。見る側もそういうストーリーを期待する人は多く、描く側もそういうストーリーで勇気づけたいと思う人は多いのではと思う。
一方で、人が求めている幸せなストーリーを書こうとするのではなくて、子どもが将来直面するであろう社会の厳しさをアニメの中でのぞかせて見せるのは、やなせたかしの愛だなと感じた。
❁競争社会の中で、強くなりすぎても孤独を生む
❁羊はオオカミにはなれない、自分も他者にはなることはできない
❁正義と悪は同時に存在し、立場によっては逆転する
❁悲しさや厳しい経験を乗り越えようとするところに精神的な成長がある
そんなことを考えるやなせたかしの名作『チリンのすず』でした。
