夜間低血糖で悩む人へ。直し方は、2つの型で決まる
目覚ましが鳴なって、止める。
体を起こそうとして、起きない。
「7時間、寝たはず…」
「夜中に目が覚めた記憶もないのに」
それ、夜のあいだに血糖値が落ちているのかもしれません。
しかも、目が覚めないタイプの低血糖です。
「疲れが溜まってるんじゃない?」で片づけて、
寝具を変えて、寝る時間を早めて、それでも変わらなくて。
最後は「年のせい」ということにして、話を終わらせる。
でも、順番が逆かもしれないんです。
眠れていないんじゃない。
眠っているあいだ、体のほうが残業していた。
今日は、夜の低血糖を2つの型に分けて、
どちらに手を打てばいいのかまで書きます。
自分がどっちなのかは、グラフの形か、朝の体で分かります。
まず、もう1つの低血糖
「低血糖」という言葉には、まったく別のものが2つ入っています。先に、片方を外しておきます。
私は以前、コーラ(600ml)を一気飲みする検証をしました。そのときのリブレのグラフが、これ。


急激に上がって、急激に落ちて、戻る。
いわゆる反応性低血糖の形です。これは、分かりやすいんですよ。犯人がその場にいるので。飲んだものが原因で、インスリンが一気に出たと考えられます。対処もはっきりしています。液体の糖を単独で入れない。それだけで形が変わります。
今日話したいのは、こっちじゃない方です。
食べた直後でもない。
目も覚めない。健康診断、もしくはリブレのような機器を付けなければ、気づかない。
犯人が、現場にいないんです。
でも朝の体には、ちゃんと残っている。そういう夜の低血糖のことです。
数字の線を、3本引きます
「低血糖」という言葉は、便利すぎて雑です。40mgまで落ちる人と、65mgで朝を迎える人が、同じひとことでくくられています。
なので、線を引きます。
米国糖尿病学会の診療基準(2026年版)では、70mg未満かつ54mg以上をレベル1、54mg未満を「臨床的に意味のある低血糖」としています。
そして70mgという値は、糖尿病のない人でアドレナリン系の反応が始まる目安として認識されている、と書かれています。
※この記事では血糖値の単位を「mg」と表記します。健診の結果票にある「mg/dL」と同じものです。
ここに、もう一本足します。
健常者を対象に、1時間かけて血糖を約40mgまで落とした研究(Diabetes誌、2007年、健常者16名の介入試験)では、睡眠後期は16名全員が、睡眠初期でも10名が目を覚ましました。
健康な体は、40mg台まで落ちれば、起こしにきます。
整理すると、こうです。
・40mg前後まで:目が覚める。動悸・発汗・震え
・およそ50〜70mg:目が覚めない。でも体は反応している ← 今日の話
・70〜100mg:一般的な空腹時の範囲
夜中に目が覚めるほどの動悸や震えが、繰り返し起きている。そういう方は、この記事の範囲ではありません。それは主治医と話すべきことです。
今日スポットライトを当てたいのは、真ん中の帯。
はっきり「異常」とは言われない。
でも、何かがおかしい。
いちばん相談しづらい場所にいる人たちです。

高血糖でも低血糖…?
「私は血糖値が高いほうだから、低血糖の話は関係ないなぁ」
……待ってください。
ここ、今日いちばん伝えたいところかもしれません。
臨床の世界には、相対的低血糖という定義があります。
典型的な低血糖症状が出ていて、本人も低血糖だと感じている。でも測ってみると70mgを超えている。そういう状態です。
製薬企業の臨床試験では、これを独立した項目として集計しています。
なぜ、そんなことが起きるのか。
警報が鳴る血糖値は、固定されていないからです。
糖尿病のない人と1型糖尿病の人で値を比べた系統的レビュー(Diabetologia誌、2022年)によると、糖尿病のない人の場合、ホルモンが動き出すのが中央値約68mg、症状が出るのが約61mg。そしてこの値は、状態によって上下することが知られています。普段の血糖が高いところで安定している人では、症状の出る値がもっと高い側にずれる、という報告が、1988年のNEJM誌にあります。
つまり。
平均140mgで暮らしている体にとって、90mgは「急に低いところ」になるということです。

数字は正常。
体感は低血糖。
だから健診では何も出ないし、相談しても低血糖には関係ないでしょう、で終わる。
でも、あなたは何かを感じている。
それは、気のせいではないかもしれません。
❌ 「血糖が高いから、低血糖は関係ない」
⭕️ 「血糖が高い人は、低血糖にならないまま、低血糖の症状だけが出ることがある」
数字だけでは決まらない、というのはそういう意味です。
先に、ブレーキを踏ませてください
ここまで読んで、不安になった方がいると思います。
落ち着いてください。
糖尿病のない1,000人以上を対象にしたCGMの大規模コホート(JCEM誌、2025年、平均年齢58.5歳・女性64.5%)では、血糖が正常な群でも、54mg未満で過ごした時間が0.19%、54〜70mgが0.72%ありました。
最低値の分布は39〜104mg。
そして、正常群の19.9%に「低」の判定が出ています。
別の健常者153名の研究(JCEM誌、2019年)でも、70mg未満の時間は中央値1.1%、1日15分ほど。年齢層も性別の比率も、この記事を読んでくださっている方に近いデータです。
つまり健康な人でも、夜には少し下がる。5人に1人は「低」が出る。
グラフの谷が見えるたびに心臓が冷える、みたいな読み方はしなくて大丈夫です。
そのうえで、本物の谷を作っている人は、たしかにいます。
そして夜の落ち方には、形が2つしかありません。
血糖が高めの人ほど、そのうちの片方に当てはまります。
ここからが、本題です。
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