見出し画像

3-9-② 超春満月②

*注意*
本作は『ジョジョの奇妙な冒険』および『クレイジー・Dの悪霊的失恋』をもとにした非公式の二次創作です。
原作および出版社とは一切関係ありません
おもいっきりネタバレしています!!!

目次  前書き&注意点  前の話(3-9-① 超春満月①)


白からピンクに色を変えていく満月を、皆が見上げた。

「これが……」
「スーパーピンクムーンってやつか……」
「……超春満月……」
「きれい……」

乙女が頬を染めるように淡い桜色に色を変えていく満月は、今の状況を忘れて見惚れるほどに、美しかった。

「時はきたッ! 
見よ、花京院典明、この月をッ! 
我らの祖先が、姉と弟が、都を追い出された時もこの超春満月が輝いていたのだ!
今こそ! 今こそ、千年前の雪辱を晴らすときッ! 
儀式の始まりじゃあッ!!」
すっかり元通りになった大仁が、立ち上がって両手を月に掲げている。
一樹は大仁の横で無表情に月を見上げた。

辺縁から変わった色が中央に到達し、満月が全部ピンク色に色を変え、桜色の月光が降り注ぎ、一面の白い雪をピンクに変え、冬山の山頂は、桜の花びらが敷き詰められたようになった。

サンタナが手にもち掲げたアクリドルの水晶が、月光を吸収して桜色に色を変え、さらに輝き始めた。
「なが……かった……。やっと……」

「なんか、やべえッ!」
「エメラルドスプラッシュッ!」
異変を感じたホル・ホースと花京院典明が、エンペラーの弾丸とエメラルドの宝石をサンタナに打ち込んだが、サンタナの体から体を覆い隠すように黄色の粘液が溢れ出し、弾丸と宝石を食い止め、そのまま吸収してしまった。
「ちッ!」
「イエローテンパランスッ! スタンドも吸収、本体も……!」
「はーーーーッはっはっはっ!後悔してももう遅いわッ!この世はサンタナ様の、そして闇の一族となる儂らのものじゃあッ!」

サンタナの手のアクリドルの水晶は、満月を凌ぐほどに眩しいピンクの光を放ち、あたり一面を明るく照らし出した。

「これで……俺の血で……一族は蘇る……」

サンタナはアクリドルの水晶を口元に持っていって、飲み込んだ。

「飲んだ……」
ずっと黙ってみていたボインゴがボソッとつぶやいた。
「儀式って、なんだよ、た、球を飲むだけかよ」
仗助も重い空気を払拭しようとやや軽い口調で言ってみたが、効果はなかった。むしろ悪化していったようだった。
「愚か者めが。十分に後悔すると良い」
ボロボロの僧衣で腕組みをした大仁が仗助たちを指さして嗤う。

サンタナに飲み込まれた石は、飲み込まれた後も体の中からピンクの光を放っていた。サンタナの腹部分がピンクに輝いていた。
そのピンクの輝きは上下に広がっていき、赤い髪に大理石のような肌のサンタナは、全身をピンク色に変えた。

「……何だ……これは……」
サンタナは自分の手を見た。
ピンクだった胴体の一部が黄色になり、イエローテンパランスの粘液を纏った触手が飛び出した。足から、背中から、肩から、手から、頭から。
ピンクに変わったサンタナの体内を、黄色い大きなナメクジが蠢き、その触手を体のあちこちから突き出しているようだった。

「サンタナ様……?いかがなされましたか?」
嗤っていた大仁が一転不安そうな表情になり、サンタナを見つめるが、答える代わりに、口から黄色い触手が長すぎる舌となって飛び出した。

「……おかしい……こんな……」
ピンクと黄色がマーブル模様に混ざりあり、たくさん飛び出た触手は、タコの足のようでもあり、ヒトデの手のようでもあったが、そのうち何本かが人の手のようになり、足のようになった。ラバーソールの体からサンタナが出てきた時のように、サンタナから何かが出てこようとしているようだ。

「これは……this... this is a Stand... a soul... Nein―mehr wie... ein Vi―Vi―Virus... urgh... ahhh............⊙≻ʘ↯χϞ............⩫⫷ꙮ҉∇ᛟ.........⩢⟁☍............」

次々と言語が移り変わり、最後は人間の言葉でない獣のような叫びになっていった。

今度は、体から、人の頭が突き出した。
ラバーソールの頭だった。

「H-Help me… Hol Horse…help me…」

こっちを見てしゃべった、ように見えた。聞こえた。

「「「ッ!」」」

次には、髪を綺麗になでつけた真面目そうな中年男の頭が突き出た。
「N-No, stop! You mustn’t interfere with him! If you do―Santana, the Pillar Man, will awaken!」
若い軍人のような男が、「Major Stroheim! Er... er ist es! Santana…!」
短い髪の男が、「GUUUAAAAAH! Dich... fressen!!」

もはや原型をとどめていないサンタナの肉体から、次から次へと人間の頭が突き出して、最期の叫びをあげていく。

「ひ、ひいいいいいいーーーーッ!」
「いやあああーーーッ!」
耐えきれなくなったボインゴが、涼子が、悲鳴を上げる。
キュイイイイイーーーッと、サルジュは鳴き声をあげて飛び立って逃げていった。

「な……何が儀式だ、化け物じゃあねえかよ、まるっきりよ!」
ホル・ホースはエンペラーを向けたが、その手はガタガタと震えていた。

「な、なぜじゃッ! アステカの言い伝えの通りに儀式を行ったのに! こんな、こんなバカなッなぜ、なぜ……あ?」
ふと大仁は、その手に紫の霞を浮かべた。
「ま……まさか、スタンドか? 当時なかったスタンドを混ぜてしまったからか? スタンドと闇の一族の力は反発してしまうのか?」

サンタナの体はピンクと黄色のマーブル色のまま、さまざまな人間と吸血鬼の頭を、手を足を、大きな触手を次々に突き出していった。すでに人型ではなく、まるでマリモかウニのようになって、どんどん大きくなっていった。
そして、
弾けた。

どろりと平たくなって地面に泥のように広がると、腹を空かせた巨大なアメーバのように、四方八方に体を広げ始めた。
オレンジがかった灰色の巨大なアメーバは、すべてのものを吸収し始めた。
研究所の建物が飲み込まれ中に消えていった。
次に近くの低木がアメーバが伸びた仮足に巻き取られて引き抜かれ、バキバキと中に吸い込まれていった。

「や、やべえ!」
「逃げろッ!」

一斉に皆が走って逃げ始めた。

「お、お鎮まりくだされ!サンタナ様ーーーッ!」
「お祖父様ッ!もう儀式は失敗ですッ!あの化け物にはぼくらの声は届かないッ!最初っから……届いてなんかいなかったッ!逃げましょう!」
一樹が大仁を引っ張って走り始めた。

仗助はふーっと波紋の呼吸を始めた。
右手に波紋を出現させ、それをスタンドに纏わせる。

「ドラッ」
波紋を纏った拳で巨大なアメーバを殴ると、その部分は飛び散ってなくなった。
「よっしゃ!波紋は効いた!効いた……が……」
仗助の波紋では巨大なアメーバのほんの一部分しか破壊できなかった。
「くっそッ!でけえ!」

アメーバは周囲の植物を吸収してどんどん大きくなっていく。
仮足を手のように伸ばし、虫もモグラも蛇も、飛んで逃げようとする鳥も捕まえて、飲み込んだ。
嶺冥山の頂の雪も木も生き物も、アメーバに塗り変わっていった。

典明が涼子をハイエロファントの腕で抱きかかえながら、木の頂上を飛び移って移動し、巨大なサンタナ・アメーバから逃げていく。
「の……典明お兄ちゃん」
「黙ってッ!しっかり捕まってッ!」

その姿を見た大仁と一樹が真似をして、木の上に飛び乗り、飛び移っていったが、ハイエロファントの射程距離ほど跳ぶことはできなかった。
二人の乗った木の根元にアメーバの仮足が到達し、木を引き抜き、大仁と一樹はアメーバの中に落ちていった。
「さ、サンタナ様あああーーーッ!」
「お祖父様ッ!」
アメーバの中から歩いて逃げ出そうとするが、アメーバは徐々に深さを増していった。
「は……放せ。」
底なし沼のように足を取られて引き抜こうとしても抜けず、足から腰、胸と、アメーバの沼はどんどん深くなっていき、ついに大仁は頭まで覆われた。
それを見た一樹も肩まで覆われながら、
「嫌だーッ!死にたくない、死にたくないーーッ!お祖父様ッ助けて、お祖父様ッ!!」
と叫んで手を伸ばし、沼の中から顔を典明に向け、
「助けて……の……」
飲み込まれた。

花京院典明は顔を背けた。

「わああああーーー、ホル・ホーーーースーーーッ!」
ボインゴが泥に足を取られ引き摺られていく。
ホル・ホースがボインゴの手を引っ張るが、ホル・ホースの足にもアメーバの手がかかった。
「ち……ちくしょおおおおーーーッ」

「ホル・ホースッ!ボインゴッ!」
典明がハイエロファントグリーンの触手を伸ばし、ホル・ホースの腕に巻き付けるが、灰色のアメーバの手はその触手を引きちぎり、2人を泥の中へ引き摺り込んでいった。
「く……くそッ……」

次の瞬間、典明と涼子のいる木の上から、高波のような大きなアメーバの泥の手が覆い被さってきた。
「なッ!」
「きゃ……」
波は涼子をさらっていった。典明の腕から、いや、典明そのものを通り抜けて連れ去っていった。
「涼子ちゃん!」
アメーバの手に巻きつかれて引きずられて行かれる涼子の、その伸ばした手にハイエロファントの触手を巻き付けて引っ張る。
「のりあ……き……」
飲み込まれた。

「涼子ちゃん!!」

典明は地面に、いや、サンタナ・アメーバの泥の中に降り立った。スタンドを発現しない限り幽霊の典明は飲み込まれないらしい。涼子を探そうと泥の中を見るが見つからない。
「どこだッ!涼子ちゃん……どこだッ!」
後ろから声をかけられた。
「おいっ!典明!こっちッ!こっちきてくれ!早くッ!」
振り向くと仗助が手を振って呼んでいた。スタンドの拳で向かってくる泥を殴りつけていて、そこだけアメーバが消えて元の地面が広がっている。波紋の拳はサンタナ=アメーバに効果があるようだが、大きさに対して一時しのぎのようだった。
典明はハイエロファントの触手を木に伸ばし、ロープウェイのように空中を滑って、仗助を抱き上げた。
「よしッ!あっちッ!あいつが全然届いてない、遠くの方に連れてってくれッ!」
「し、しかし、涼子ちゃんが飲み込まれてしまったんだッ!ホル・ホースとボインゴも……」
「いいからッ!早くッ!!」

典明は仗助を抱えて、ひょいひょいと木から木へと飛び移ってアメーバから離れ、まだ泥の広まっていない8合目の木の間に降り立った。

そのまま助けに向かおうとする典明を、「待った待った」と仗助がスタンドで引き留めた。
「なんだッ!だから涼子ちゃんたちが」
「ジャーン」と仗助が、ポケットから何かを取り出した。
それは、長い金髪、茶色がかったウェーブ、くるくるの黒髪の、3本の髪の毛だった。

あっけに取られて見つめた花京院は、
「全く君は本当に……」
と言いかけて口をつぐんだ。

仗助は深呼吸すると精神を集中させた。

──仗助。お前の名前はばーちゃんがつけたんだよ。人をささえて助ける人になってほしいって願いを込めてな。

(そう。親父とかばあちゃんとかひいじいちゃんとかカンケーねえ。
おれは、東方仗助!
おれはおれの力で人を助ける!)

仗助が右手から髪の毛を空中に放った。
背後の出現した悪霊・仗助のピンクのスタンドが拳をふるい、髪の毛を殴りつけた。

「今度こそ、連れてきてくれよなあ! 先輩をよお!
ドララララララララララーーーーッ!」

涼子が、骨壷を抱えて飛んできた。
仗助の腕の中に。

仗助は涼子を抱きしめた。
「よーっしゃ!今度こそ先輩ゲット!」
「仗助くん、私……助かったの?」
涼子が仗助を見つめた。

「涼子ちゃん!大丈夫か!」
典明が声をかけ、
「典明お兄ちゃん……」
「よかった……」

ホル・ホースが、そしてボインゴが、続けて仗助の上に飛んできて、仗助は押し潰された。
「仗助助けてくれたんかーーー。もう死んだと思ったゼーー」
「た……助かった……」
「あ……兄貴……ボインゴさんも……よかったスよ……」

立ち上がる頃には、ミシッベキッと薙ぎ倒される木の音と、地面をはうアメーバの音が聞こえ、少し離れた木が倒れていくのが見えた。

「典明ッ!さっきの要領で3人をもっと遠くに避難させてくれッ!」
立ち上がった仗助が倒れる木の方を見ながら典明にいった。
「ああ。だが、君はどうする?」
「コツは掴んだからよー、もうちょっと頑張ってみるわ」
と右手に加えて、左手に波紋を出現させた。
典明はふっと笑みを浮かべると「頼んだ」と、再び涼子をスタンドで抱いて、ホル・ホースを触手で巻き取った。
「サルジュ!」と涼子が声をかけると空から白い鸚鵡が現れ、その鳥型のスタンド・イシス女神を現して、ボインゴの両肩を足で掴んだ。
4人と1羽は空中を飛び、あるいは跳んで5合目を目指して降りていった。

遠ざかる4人と1羽を見送った仗助はフーッと息をはいた。
泥の波が足元近くまで迫ってきていた。
「さあーーて。ちょーっといいとこ見せちゃいますかねえ」
背後にピンクのスタンドが現れ、その拳が金色に輝いた。




次の話(3-9-③ 超春満月③)  
目次  前の話(3-9-① 超春満月①)

いいなと思ったら応援しよう!