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3-4-② 日本の山、エジプトの呼吸②

*注意*
本作は『ジョジョの奇妙な冒険』および『クレイジー・Dの悪霊的失恋』をもとにした非公式の二次創作です。
原作および出版社とは一切関係ありません
おもいっきりネタバレしています!!!

目次  前書き&注意点  前の話(3-4-① 日本の山、エジプトの呼吸①)


「いてえ……」
仗助は体のあちこちが痛かった。

ダウンを脱いで汚れを払い、ブーツの紐を緩め、まくったズボンを戻すと、詰襟のボタンを外し、インナーをまくって自分の体を見た。あちこち血が出たり傷だらけだったが、特に左の脇腹に紫色の大きなあざができていて、仗助は顔をしかめた。
「くっそ、あいつ、ガキ相手だと思って……こりゃ……ヒビでも入っちまったかな……」
セト神のスタンド能力は溶けたが、子供になっていた間に受けた傷が治るわけではなかった。
(うーん、おれのスタンド、自分は治せねえからなあ……)

上から、キューイと声がして仗助が顔をあげると、サルジュがバサバサと翼をはためかせ、その背後にスタンド・イシス女神も浮かび上がっていた。
イシス女神は、映画のフィルムが巻かれたリールのような丸い束が重なってできた鳥の形のスタンドだ。リールから伸びたパイプのような両足に、リュックとライトを下げている。
「ありがとう、サルジュ。もう一度お願い」
涼子がリュックとライトを受け取ると、サルジュはスタンドを後ろに従えながら、また夜空に飛び立っていった。仗助が尋ねると、車に荷物を取りに行ってもらったのだという。

リュックから涼子が取り出したハンドタオルを受け取ると、仗助はまず自分の髪を拭いて整え始めた。
「そっち?傷を拭いてもらおうと思ったのに」
「傷は後で拭くけど、まずは頭っス」
とはいえ、鏡がないのでよく見えない。なんとか両手の感覚に集中して整えていく。
リュックからペットボトルも出てきた。賢い鸚鵡に感謝しつついただいていると、本鳥が戻ってきた。イシス女神は今度は両足にビニール袋を下げている。
涼子は、コンロを取り出して火をつけた。さらに袋からコップと水の入ったペットボトルを取り出し、コップに水を入れて火にかけ始めた。

「それからこれ救急用品……傷はどうかしら?」
「あー全然ー平気っスよ、これぐらい……」
涼子は、消毒液を取り出し、仗助の顔の傷にかけた。
「ッ!」
たまらず仗助が自分の顔を覆うと、涼子はインナーを捲り、脇腹のあざを見て手で押した。
「がッ!」

痛がる仗助を見て涼子は顔をしかめ、
「ひどい……これ、骨が折れてるんじゃあないの?」
「……い、いや、そんな……おれキズ治るの早えし……」
涼子は、あたたまり始めたコップを仗助に渡した。どんどん渋い顔になっていく。
「冷えた体があったまりそうっスね。お湯……いただきまーす」
受け取ったお湯を仗助が飲みながら伺うと、涼子は、もう一つのコップに水を入れて再び火にかけはじめた。じっと火を見つめ何か考えているようだった。
(……おれの怪我に責任とか感じちゃってんのかなー)

涼子はしばらく火を見つめていたが、バーナーを止めるとコップを持ち上げて、一気にお湯になった水を飲み干した。
ダンッと音を立ててコップを置き、くるりと仗助に向き直ると、膝立ちになってガシッと両手を仗助の肩に置いて、真剣な眼差しで仗助を見つめた。
「仗助くん!」
「な、なんスか、先輩」
まっすぐ見つめられて、なぜか少しドキドキしながら仗助は答えた。
「私、一つ提案があるのッ!やってみましょう!」
「そ、それ、おれ、断れるやつっスか?」
引き攣った笑いを浮かべた仗助だったが、次の涼子のセリフで真顔になった。
「波紋を……あなたのお父さん、ジョセフ・ジョースターさんの波紋を再現しましょう」
「波紋?おれの、父親、の……?」

イシス女神の能力は、サルジュの記憶している過去の記憶の感覚動きを再現体感させることができるものだ。ジョセフが波紋を使っている時の記憶を仗助に再現させれば、今仗助が波紋を扱っているのと同じことになり、怪我が改善するのではないか──と涼子は続けた。
山に向かう途中の車の中で「波紋は、”特殊な呼吸法により血液の流れを生命エネルギーに変える”。そのエネルギーによって、骨折ぐらいなら治すことができる」と花京院典明は言った。
その時はスタンドがあるから波紋なんて必要ない、と仗助は突っぱねた。

(ジョセフ・ジョースター……おれの……父親……お袋におれをはらませて、アメリカに帰って顔も見せない、おれのことなんて知りもしない……そんな男の……)
仗助は知らずに自分の拳を握りしめていた。
(あんな……父親の力なんて……)
奥歯を噛み締めて黙っている仗助の目を、涼子はまっすぐに見つめて続けた。
「ねえ……やってみましょう、仗助くん」
涼子の真剣な眼差しから目を逸らすと、痛む脇腹を抑え、
「……っス」
と呟くように返した。

キイイイイイイイイーーー

サルジュの鳴き声が聞こえ、気がつくと仗助は、嶺冥山の山の中から、建物の屋根の上にいた。
正確には嶺冥山の山の風景に、二重写に別の風景が写っている。イシス女神のスタンド能力が仗助に記憶を見せ始めたのだ。

しかし、感じる空気は、寒い湿った日本の山の中から、暖かく乾燥した空気に変わっていった。
立っている場所は平らな屋根に石造の建物で、日本のものではなかった。
すぐ近くに時計台が見えた。仗助はこの時計台は見覚えがあった。旧校舎で見た記憶に写っていた。その時は遠くに見えるだけだったが、今は手が触れるほどそばに大きく写っていた。
その文字盤は、5時15分を指して一部が破壊されていた。

その時計塔の横に長身の男がいた。尖った靴、黄色いズボンにボレロのような黄色い上着。金の髪をなびかせ、赤い瞳でこっちを見据えている。DIOだ。DIOは今にも仗助に、いや、仗助が体感している、ジョセフ・ジョースターに襲い掛かろうとしていた。

ジョセフ・ジョースターの顔は見えない。仗助は今、ジョセフと一体化しているような状態だからだ。しかし、仗助より高い目線は180近い仗助よりずっと高かった。190は超えているだろう。力の入った肉体は逞しさを感じたが左手の先には感覚がなく、義手がついているとわかった。
(……こいつが、おれの、父親……?)
仗助の入ったジョセフ・ジョースターは、右手を差し出し「Harmit Purple!」と叫んだ。
すると手袋をはめた右手から、紫のイバラのようなスタンドが出現して伸び、DIOに巻きついた。
「Take this! Solar energy──Hamon!!」

体が熱くなった。

胸郭が膨らんではしぼみ、今まで吸い込んだことのないような量の空気が外から肺に入ってきては出ていく。それに合わせて血液が身体中、頭のてっぺんから指の先まで、全身組まなく巡り続けるのを感じる。身体中に循環した血液がエネルギーとなって、体内を周り、そのエネルギーが一気に右手の先から黄色い光となって出ていった。
仗助は今まで経験したことのない体感に驚愕した。
(な……なんだこれッ! 熱い……体が……でも嫌な暑さじゃあねえ。満たされてく感じっつーか、溜まった汚いものが体の中からなくなってキレーなもんに置き換わってくっつー感じがする……)

フッと、元の日本の夜の山に戻った。

仗助は自分の手を、体をじっと見つめ直した。

「どうだった……仗助くん」
涼子が覗き込んだ。

「グ……グレート!グレートっスよ、先輩!この波紋ってやつッ!体ん中に一気にエネルギーが回ってくるっつーか、なんかすげえパワーを感じるっスよ!」
「傷は、どう?」
あ、と仗助は自分の脇腹を抑えた。
先ほどよりだいぶ痛みが減っている。
「なんか、良くなったみたいっスッ!」
「よかったッ! やっぱり効果あるのね、波紋。じゃあ、もう1回やってみる? もしかしたら仗助くんなら、記憶を使わなくても自分で波紋できるようになるかもしれないし」
「え……でも……いーんスか?」
仗助が確認した。
さっきの記憶の視界の片隅では、貯水タンクに叩きつけられた花京院典明が、今まさに息を引き取ろうとしていたのだ。
涼子は少し悲しそうな顔で俯いたが、
「うん、いいの」
と仗助をまっすぐ見ていった。

再度波紋の記憶と体感した。
胸郭を膨らませて萎ませる。血液にエネルギーを乗せて身体中を循環させる。
何度か繰り返して体感すると、仗助もその呼吸のやり方を真似できるようになり、自分だけでも少しづつ波紋の黄色いエネルギーが体から出せるようになっていった。
「すごい、仗助くん! 波紋は何年も修行しないとできるようにならないって聞いたのに」
涼子は喜んで仗助を褒め、仗助も少し調子に乗った口調で返した。
「いやー体で覚えられたっスからねー結構楽勝よーもう怪我したとこも全然痛くないっスからねー」
「やっぱり才能あるのかしらね、親子だから……」
とぼそっと言った涼子の呟きは聞こえないふりをした。

すると、サルジュが再び暗い木の奥を見て、キュウアアアアアアアアと鳴いた。
二人がそちらをみると、何かが腐ったような匂いが漂い、木の影から、黒いボロボロのマントから、長い手足を伸ばした男が現れた。真っ白な顔に大きな赤い目、横にさけるように大きな口は、人間のものではなかった。ゾンビだ。子供に戻った2人に襲いかかったやつだ。
「さっきのッ!」
「シンニュウシャ……コロス……クウ……」

襲いかかってくるゾンビの前に仗助は立ちはだかった。さっきと同じように。
「下がってくださいよー先輩ッ! 早速、スタンドと波紋の合わせ技ってやつをやってみるぜッ!」
水色の防具をつけマスクを被った筋肉質の男の守護霊──仗助のスタンドが浮かび上がる。スタンドの右腕の周囲に黄色い電気のようなエネルギーがまとわりついた。
「ドラッ!!!」
そのまま仗助のスタンドがゾンビに拳を打ち込んだ。
「ガ……」
ゾンビは拳を撃ち込まれたところからひび割れていき、跡形もなく粉々に砕け散った。

「な……」
「す、すごい……」
(ホントーだ……本当にこの波紋は、吸血鬼どもを打ち砕ける……すげえ……)

「すごい、すごいわ、仗助くん!」
喜んでいる涼子の横で、まだサルジュがキュウアと鳴いていた。
みると、木々の間に、何人もの人影が見える。
ザクザクと歩いてきて、どんどんこちらに近づいて集まってきた。

「下がってくださいよー先輩ッ! 一気にぶっ飛ばしてやるからよおーー~ーッ」

わらわらと襲ってくるゾンビたちに、仗助は波紋を纏わせたスタンドの拳を叩きつけた。

「ドララララララララララララララララララララララララララララララララララララララララララララララララララララララララララララーーーーーーーーーーッ!!!」

黄色い波が煌めき、次から次へとゾンビは跡形もなく消えていき、最後の1体がなくなった。

「すごかったわ、仗助くん。じゃあ、次の敵が来る前にみんなと合流しましょうよ」
と涼子が言ったが、仗助は動かなかった。
「仗助くん?」

仗助は一方向を見据えて、
「おいッ! そこの隠れているやつ、出てこいよ! じゃなきゃあ、こっちからいくぜ」
と怒鳴った。

木の影から、また影が現れた。


次の話(3-5-① 1人の女、2人の男①)  
目次  前の話(3-4-① 日本の山、エジプトの呼吸①)

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