終章 白金の決意<シロガネノケツイ>
*注意*
本作は『ジョジョの奇妙な冒険』および『クレイジー・Dの悪霊的失恋』をもとにした非公式の二次創作です。
原作および出版社とは一切関係ありません。
おもいっきりネタバレしています!!!
2011年11月、杜王町。
杜王駅に降り立った空条承太郎は、駅前の不動産屋に向かった。
”東方不動産”の看板が掲げられている。
年季の入った不動産の部分に比較して”東方”の部分だけ少し新しい。
この小さな不動産屋を、アメリカの大富豪・ジョースター不動産が極秘裏に援助していることは、この街の人間はもちろん、店主も知らないことだった。
入り口に立つと、自動ドアが開いてブーとブザーが鳴った。
狭い店内には年季の入ったソファーとテーブルいくつかが置かれ、壁周りには戸棚に書類が詰め込まれている。奥にはデスクが置かれ、小さな水道、脇にポット、戸棚に食器がいくつかしまわれており、その横には奥の少し高くなった畳の部屋への入り口があった。
承太郎が中に入ると、客も店員もいなかったが、奥から「はいー」と声がして、東方仗助が顔を出した。
28歳になった東方仗助は、もう学ランは来ていない。代わりにハートや錨などのプリントが入った目立つセーターにグッチのパンツを履いている。置いてある靴はフェラガモだ。髪型は学生時代から変わらずのリーゼントだった。
ぱっと見不動産屋には見えない見た目だ。が、訪問者の彼の甥も、星のマークの入った紫の帽子にアルファベットの刺繍の入った紫のコートという、どこをどう見ても学者に見えない服装だったから、どっちもどっちといったところだろう。
承太郎の顔を見た仗助は、
「あー承太郎さん? お久しぶりっス! 来るんなら連絡してくださいよー」
と笑顔になった。
承太郎は帽子のつばを持って「ああ……」と挨拶をした。
仗助は、「どうぞー茶でも入れますねー」と奥の部屋から降りて、フェラガモの隣のサンダルを履き、急須にポットから湯を注いで、茶碗と茶托とをテーブルに置いた。
「今カミさんいないんスよー今日は仕事で。お袋も仕事なんで……」と奥の部屋を指差した。
立ったままだった承太郎がそちらに目をやると畳の上に布団が敷かれている。
仗助がうなづくのを見てから見近づくと、大きな布団に小さな幼な子がスヤスヤと寝ていた。
寝ている子の前に立って見つめる承太郎の横に、仗助がそっと近づいてきた。
「こいつも大きくなったっしょ?」
小声でそう言って、仗助も隣で眠る我が子を見下ろした。
「顔とか髪とかは向こう似なんすけど、でもアザとか見ると、やっぱ、おれの子なんだなって思うんですよね。スタンドも持ってるっぽいんすよ。まだちっこいのが時々浮かぶぐらいだけど。」
仗助の言葉に応えるように、小さな幼子がゴロンと寝返りをうち、首筋に星型のアザが覗いた。
「……おれ、父親ってのがいなかったから、どんなふうにしたらいいか、正直いまだにわかんねーんすけど……でも、こいつには、親父が居ない寂しさとか、味合わせたくなくって。だからなるべく一緒にいてやりたいんすよ。……まあ自営業の特権っすね」
我が子を見つめながら、仗助は続けた。半分照れくさそうに、半分は愛おしさを滲ませて。
承太郎はじっと幼い従兄弟を見つめながら黙って聞いていた。
「あ、で、承太郎さん、なんのようっすか?」と仗助がソファーを勧めると承太郎は、
「いや……」と帽子の鍔を引いて目線を隠した。
「……ちょっと寄っただけだ。これからアメリカに行くんでな」
「そうなんすか?」
ちょっと疑わしそうに承太郎を見上げた仗助だったが、
「じゃあ、また寄ってくださいね、今度はこいつが起きてる時に」
と再び笑顔になった。
「ああ……」
空条承太郎はくるりと振り向いて不動産屋から出ると、杜王町から立ち去った。
