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2-5-① アクリドルの水晶①

*注意*
本作は『ジョジョの奇妙な冒険』および『クレイジー・Dの悪霊的失恋』をもとにした非公式の二次創作です。
原作および出版社とは一切関係ありません
おもいっきりネタバレしています!!!

目次  前書き&注意点  前の話(2-4 スタンド越しの抱擁)


「あーーやっぱりきまんねえなあ」
仗助は、制服からクシを取り出し、鏡を見ながらリーゼントを整えた。

東方家では、祖父が警察官で稀に緊急招集かかることがあるため、電話が鳴ったら必ず出ることになっていた。
1階で電話が鳴った時、仗助は2階の自室で布団の中に入っていたが、いつもより大分早く布団に入ってまだ寝ていなかったし、良平が酔い潰れてしまったこともあったので、布団から這い出して下まで降りて電話に出た。
電話の主は仗助も顔見知りの警官だったが、緊急招集ではなかった。ボインゴから良平か仗助に急ぎの連絡が交番に入っているというので、繋いでもらった。

「……あ、あの、仗助くん……大変なんです、よ、予言が……ホル・ホースと、さっきの……花京院……」

ボインゴは日本語は上手なのだが、とにかく話下手で、仗助は辛抱強く電話で話を聞いた。
ボインゴの話によると、花京院涼子から返してもらった漫画本、はボインゴのスタンドなんだそうだ。名前をトト神と言う。
スタンドの中でも珍しい一般人にも見えて触れるタイプで、能力は未来予知。的中率は100%なんだそうだ。涼子はそれを読んで鸚鵡を手に入れようと行動したらしい。花京院典明の過去を知るために。
そのトト神は、漫画形式で予言をしてくるのだが、さっき新しい漫画のコマで予言がでた。今ホル・ホースが訪れている花京院邸に賊が押し入って、花京院の両親とホル・ホースが襲われるというものだった。

「それを先に言ってくださいよおおおお!」
そこまで聞いて急いで電話を切った仗助は、洗面所に飛び込んで大慌てで干しておいた制服を着直し、整髪料を大量に髪に振りかけてクシと一緒に制服のポケットに突っ込み、髪を整えながら自分の部屋に2段飛ばしで駆け上がった。
「おいッ!」
事情を知った典明は、東方家にきた時と逆の道順で、仗助を抱えて屋根を伝って戻っていった。ただし、来た時とは段違いの速さであっという間に到着し、仗助は2人の侵入者をなぎ倒した。しかし、ホル・ホースによればまだ賊の仲間がいるらしく、男2人を引きずって広い花京院邸内を移動し、この蔵までやってきたのだ。

仗助が覗く鏡は、年代物で松の綺麗な細工が施された引き出しの上に丸く置かれた鏡台だ。花京院家の蔵にある工芸品の1つだ。
蔵の中には、掛け軸に水墨画、大小の壺に瓶、絵柄のついた和箪笥、仏像に観音像、刀や鎧、中に皿だか器だかの入っている木箱、ガラスケースにはいったガラス細工の花瓶……といった、様々な美術品工芸品伝統品が、所狭しと、しかしきちんと並べられていた。
そんじょそこらの美術館や博物館、民俗館では比較にならないだろうが、仗助は美術館にも博物館にも民俗館にもいかないので、比較できなかった。

蔵は、分厚い扉を開けて入り閉めてしまうと上の方に明かり取りの小さな窓があるだけだった。壁は分厚い漆喰で、テレビでよく見るいわゆる蔵だった。古そうな電球が天井からいくつかぶら下がっていて電気がつくため、中の様子はわかるが隅の方は暗かった。
蔵のなかに入るなり、典明がハイエロファントグリーンの触手を隅々に張り巡らせ、仗助もぐるっと一周して見回ったが何者かが隠れている様子はなかった。

典明に引き続き周辺を探ってもらうように言い、仗助は拘束した賊2名に尋問を開始した。

仗助は、典明にホル・ホースと同じ匂いを感じていた。
女好きな風来坊のカウボーイと、良家の跡取り息子。
共通点といえば、もちろん、スタンド使いという点だ。
だが、仗助が感じた匂いはそれではなかった。

命のやり取りをしてきた匂い。
もっと言えば、
人殺しの匂いだった。

仗助はスタンドで他人を傷つけることは基本的にしない。
この格好だから、色々絡まれることは多いが、冗談にしたり謝ったりしてしのぐのがいつもだった。
自分の能力の力は自分がよく知っている。この力なら簡単に人を壊せる。殺せる。
でも嫌だった。
髪型を揶揄われてブチ切れた時でさえ、自分でつけた傷を自分で直した。まあたまに元に戻らない時はあったが。

しかし、この花京院典明は、女のような優しげな涼しげな顔をしながら、自分の敵には容赦しない、そんな空気を仗助は感じていた。場合によっては殺すことも辞さない、そう思わせた。実際に殺したこともある、そんな匂いを感じたのだ。

さらに、典明は冷静な表情を浮かべているが、内心非常に怒っている、と仗助は見ていた。
10年ぶりに戻った我が家を壊され、両親を傷つけられ、可愛がっていた従姉妹も危なかったのだ。怒って同然といえば当然だろう。

しかし、怒っているのはむしろ、自分自身に対してではないか、と仗助は考えていた。
両親に心配をかけた自分、傷つけさせた自分。
やり場のない怒りが、この2人に向かっているように思えた。
そして、スタンド使いの怒りがストレートに一般人に向かえばどうなるかは、明白だった。

(何が名門花京院の優秀な跡取り息子だよ。俺よりやべえやつじゃあねえか。スタンド使いってこんなやつばっかかよ)

そこで、仗助は男たちへの尋問をかって出た。
典明が「僕がやる」といい出す前に、穏便に奴らに吐かせたかった。男たちの安全のために。

侵入者である男2人は、ハイエロファントグリーンの触手から解放された代わりに、蔵にあった荒縄でぐるぐる巻きにされ身動きが取れない。縄の端は蔵の壁に仗助がスタンドでくっつけた。
そうして、仗助のスタンドで軽く殴られては傷を治されていた。耳や鼻の形が少し変わったのはご愛嬌だ。

「もういっちゃてくださいよーおっさんたちよお。何を目的にこの家にやってきて、お仲間は何人でどこにいるんスか?」
仗助は髪を整えながら2人の前にヤンキー座りをして聞いた。

男2人は、「な、なんだてめえ?」「ふざけんな、解けコラあッ」と凄み返したが、声は震えて腰が引けている。
2人ともスタンド使いではなく、スタンド使いでない人間にはスタンドは見えない。こいつらにしてみれば、いきなり吹っ飛ばされて気絶し、気づいたら急に首元を持ち上げられて吊り上げられ、見えないロープでぐるぐる巻きにされてここまで引きずってこられ、今は見えない拳で殴られてはその傷が治っているのだから、頑張っている方だろう。

なので仗助は2人に近づいてしゃがみ込み、声を顰めて言った、
「早くゲロったほうがいいっスよーー」
と典明を指差して、
「見てくださいよ、あの人。ここの一人息子で、花京院典明くん。高校生に見えるでしょう?でも、実は……」
と声を潜めて両手を前に垂らした。いわゆるお化けのポーズである。
「幽霊なんすよ、ユーレイッ!10年前に事故で死んじゃったのが、ばけで出ちゃったんです、お父さんとお母さんが危ないッて!よーく見て、ほら、俺たちにある影がないでしょう?」
男たちは目を見開いて典明の足元を見た。確かに仗助たちや他のものにある影が、花京院にはなかった。
「な……」

「それからー」と仗助は移動して典明の体に手を伸ばした。が、掴めずに体をすり抜けた。
「おいッ、仗助君!」
嫌そうな顔をしながら聞いていた典明だったが、たまらず仗助を咎めた。
仗助は無視して男たちの方に戻って、両手を前に垂らして下から顔を見上げ、
「幽霊に祟られてのろい殺されるっすよ。もう始まってるでしょう、ポルターガイストって奴がよおおおお。早くゲロしねーとどんどん強くなるっすよおおお~」
と脅した。
側から見ている分にはなんとも滑稽な仕草だったが、見えない力の威力を感じまくった男たちには効果満点だったようだ。
「な……なんなんだよおおお!き、聞いてねえよ、こんな化け物屋敷なんてよおおお!」
「や、やめてくれよお、祟りなんてよおお!!わかったよおお、いえばいいんだろうがよおお!!」
典明がさらに険しい顔になり、仗助はほっと安堵した。

男たちの名前は、中野と新田といい、ヤクザの下請けの下請けや他から回される細かい悪事をして暮らしている、チンピラだった。
2人は、普段”仕事”を回してもらう情報筋から、宝石を盗む仕事の依頼を受け、この家にあるだろうと強盗に入ったという。

「”アクリドルの水晶”?」
仗助が聞き返すと、ベージュの着崩したスーツにペイズリー柄のシャツの男・中野がうなづいた。「ああ、手のひらぐらいの大きさのまん丸で透明な水晶玉だ。よく占い師が使うやつよ。そいつを手に入れろって依頼だ。盗むなり買うなり手段は問わないとよお」
仗助は腕を組んで首を傾げて聞き返した。
「そんな水晶玉なんて、あっちこっちにあんじゃあねえかよお。どうやってそれがその、アクリ?だってわかんだよ」
もう一人の黒の上下に虎がらのシャツの男・新田が続けた。

「なんでもその”アクリドルの水晶”ってのは、どんな衝撃を受けても壊れねえんだとよ。似たような水晶玉を片っ端から叩きつけりゃあ、壊れなかったのがホンモンだ」
「はあああ~、ハタ迷惑な話っスねえ」
「おおよ。ああ、それからもう1つ」と中野が付け足した。もうペラペラ喋ってしまうことにしたらしい。
「月の光を浴びると光るんだとよ。新月や半月だと分かりにくいが、満月になると真っ暗な部屋で光っているのがはっきりわかるらしいぜ。」

「仗助君」
と仗助の顔の真ん前に、突然緑色したウルトラマンの顔が現れた。
「わッ!」
と仗助がのけぞったが、よくみれば、典明のスタンド・ハイエロファントグリーンが人の形を取ったものだった。
「な、なんだよ……」
と仗助が典明を振り返ろうとすると、「しッ」とハイエロファントグリーンが片手で仗助の顔を前に戻し、片手の人差し指を顔の前に出して、静かにするようにという仕草をした。

「君もスタンドを出して会話をしてほしい。連中に聞かれたくない」
「えっ……スタンドで会話?」
「スタンドの声はスタンド使いでない一般人には聞こえないんだ。」
(スタンドって話せるのか?)
と疑問に思ったが、仗助も自分のスタンドを出現させてスタンドから声を出してみた。
「こ……こうか?」
仗助は口を開けていないのに、仗助のスタンドは声を発していた。本当にスタンドを通して会話をすることができるようだ。中野と新田は見えないし聞こえてもいない。
(こんなこともできんのか、すげえなあ。兄貴の銃のやつもできんのかな?)
仗助が感心していると、ハイエロファントグリーンが続けた。
「僕は奴らのいう水晶玉を知っている。確かにこの蔵にある」
仗助は驚きを顔に出さないように、典明の方を見ないように堪え、スタンドでハイエロファントに答えた。
「まじかよ……連中ビンゴだったってことかよ」

ハイエロファントの手招きに応じて仗助もスタンドを移動させていくと、蔵の奥の方に細工のついたガラスケースがあり、なかには大きな石のついたブレスレッドや指輪など年代物の貴金属が、比較的無造作に置かれていた。その中の紫の帛紗が敷かれた台の上に透明でまん丸の水晶玉があった。
「なんかフツーのヤツに見えるけど……」
「満月は明日だし、この時間は月の光はここには届かない。ただ、夜に蔵のなかに何度かハイエロファントを入れたことがあって、その時に見たんだ、この水晶玉が満月の夜、月の光を浴びて発光していたのを。特に由来などは聞いていないが……」
「ふーん」
仗助はスタンドで、本体の近くに戻るという仕草をし、水晶玉から離れながら、
「で、どうすんだ、あれと、あいつらと」
と聞いた。

ハイエロファントグリーンは、仗助のスタンドと一緒に移動しながら腕を組んで考える仕草をし、
「連中は強盗として警察に突き出すべきだろう。一緒に水晶玉についても情報提供して保護保管を依頼しよう。盗みを指示した黒幕を探し逮捕してもらうまで。」
「まあ、それが妥当ってやつだな」
私刑するなどと言い出さなかったので仗助はほっとし、スタンドの両手を頭の後ろに回して、ハイエロファントグリーンに笑いかけた。
ハイエロファントグリーンの目はウルトラマンのような卵形でマスクもしている。なので表情はわからないが、仗助のスタンドが少し嬉しそうなのを不思議そうに見返すと、「良平さん……君のお祖父さんには悪いが、また協力してもらうこととしよう」と答えた。
「じいちゃん結構飲んでたからなあ、起きっかなあ」
「あとは、連中の仲間についてだな」

ハイエロファントグリーンの本体である花京院典明の幽霊が、中野と新田を見て口を開いた。
「水晶玉を狙って家に強盗に入ったということはわかった。あと、仲間がいたはずだが?」
中野と新田は二人で顔を見合わせたが、決心したように口を開いた。
「おれらと一緒に来たのはよお……」

すると典明がハッとしたように振り返った。

次に、
パンッ!
銃声が、響いた。



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