3-1-③ ボインゴは山へ遠足に③
*注意*
本作は『ジョジョの奇妙な冒険』および『クレイジー・Dの悪霊的失恋』をもとにした非公式の二次創作です。
原作および出版社とは一切関係ありません。
おもいっきりネタバレしています!!!
目次 前書き&注意点 前の話(3-1-② ボインゴは山へ遠足に②)
「先輩?!」
「涼子ちゃん?!」
「おい、嬢ちゃん、大丈夫か!」
すぐさま仗助のスタンド──筋肉質のピンク色の亡霊が現れた。
スタンドは壊れた車と壁を直すと、車を壁から少し離した。
仗助がランクルのドアを開けて、「大丈夫スか?先輩」と手を引いて、涼子を下ろした。
礼を言いながら涼子は仗助の手を取って、車から降りてきた。車の中から飛んできた白い鸚鵡が彼女の肩に停まった。
涼子の服装を見た4人は一瞬黙った。
昨日の制服を脱いでいるのは当然としても、かといって山登りに向いた服装というわけでもなかった。
伸ばしていた一部の前髪を鸚鵡に食われてしまったためか、少し茶色がかかったストレートの前髪は眉で切り揃えられ、昨日お団子にしていた後ろ髪は、ポニーテールにまとめられて長く降ろされ風にたなびいていた。
ふわふわに毛が伸びた暖かそうな淡いピンク色のコートに、中には胴衣のような白にインナーに黒のトックリセーターを着ていた。
下は足首近くまである紅色の袴で、靴は黒い長く編み上げブーツ。
そして首に、乾燥ニンニクを数珠繋ぎにしたものと、銀の十字架のネックレスを下げ、右手に薙刀を握っていた。
寺の生まれの割には、不良の巫女か和風エクソシストといった出立である。
なんでそんな格好できたのか、と喉元まできた発言をボインゴは飲み込んだが、
「いやー先輩かっこいーい。はいからさんが通るって感じで、吸血鬼もイチコロっスね」
「改めて見ると本当に綺麗になったね、涼子ちゃん。自慢の従姉妹だよ」
「昨日の制服も悪くねえけど、やっぱり日本美人はこうじゃあなくっちゃなあ~長い黒髪はいいよな~」
と3人は口々に褒め称え、ボインゴはポカンと開いた口が閉じなくなってしまった。
「そうかしら」
と言いつつ、涼子は嬉しそうにはにかんで薙刀を握りしめ、仗助と典明は、そうっスよ、などと褒め続けた。
ポカンとしているボインゴに、横からホル・ホースが「なんだ気が利かねえなあ、おめえも何かいえよ」と促した。
ボインゴは意味がわからず「え?山に行くのにあの格好はおかしいです」と言い返すと、ホル・ホースは眉を顰めて呆れた顔になって舌打ちすると、屈んでボインゴに耳打ちした。
「バカだなーおめえは。女が服を着替えて髪を変えたら、何着てようがどんなヘンテコだろうが、まず綺麗だね、素敵だねって褒めるんだよ。レーギでコミュニケーションで、世界のジョーシキってやつだぜ。モテるモテない以前の問題だ。」
そういうものなんだろうか、確かにホル・ホースは女を見かけては綺麗だ可愛いだ言っているとは思う。……兄は、どうだっただろうか。
ふと見上げると涼子と目が合った。
「……あ、あの……き……」
「そう、ボインゴくん。あなたにも持ってきたの」
と涼子はランドクルーザーの後部に回ってガラスハッチを持ち上げると、薙刀を中へしまい、代わりに棒のようなものを取り出した。
日本刀だった。
鞘に紐が括り付けられている。
「うちにあったものよ。あなたのスタンドの能力は、予言で戦闘には向いていないって聞いたから、護身用にって」と涼子がボインゴに渡した。
護身用、というには長く、1メートル近くある。
片手で持つとしっかりと重さを感じた。
柄と鞘を持ちひき抜くと、シュと微かな音がして、静かに刃が現れた。
磨かれた鋼にボインゴの顔が写り、研ぎ澄まされた刃が日の光を浴び銀色に輝いた。
「ひやーーマジもんっスか、これ?テレビの時代劇とかではよく見るけどよー」
「これがジャパンのカタナかーきれいなもんだなあ。武器なのに神秘的な感じもするぜ」
仗助とホル・ホースもしげしげと眺めた。
「国包の太刀か。その薙刀と一緒に蔵から持ってきたのか?」
と典明が続けた。花京院家の持ち物らしい。
「……ニンジャ……」
というと、ボインゴは刀を鞘に収めて、背中に回し紐を体の前に回して斜めに背負うように固定した。
「おー似合うっスねえ、ボインゴさん」
「格好は勇ましいけどよお、お前に扱えるのか?」
「ニンジャ……」
典明は少し驚いたようにボインゴを見て、「日本の忍者が漫画やアニメによって外国にも伝わっていると聞いたことはあるが……あれは実は創作、フィクションだ。そのままでは刀はまず抜けないから、万一抜刀の時は、肩から下ろしてから抜くといい」とアドバイスした。
次に典明は涼子の乗ってきた車に目を向けると、「またこれにしたんだ、父さん……」と呟くようにいって、触れない車に手を伸ばした。
涼子を振り返り「せっかくだから僕がハイエロファントで運転させてもらってもいいかな?」と聞いた。
「典明お兄ちゃんが?ええ、もちろん!お願いするわ!」
と涼子は笑顔になって同意し、2列目の後部座席に乗り込んだ。
花京院典明はハイエロファントグリーンの触手を車内に伸ばして地図を取り出すと、「じゃあ、仗助君、助手席でナビを頼む」と渡し、運転席に乗り込んだ。
「へーい」と地図を受け取った仗助は助手席に乗り込んで行った。
「ほれ、何やってんだ、ボインゴ。早くのれ」とホル・ホースがボインゴをせかしてくる。刀を背負ったままのボインゴが「でも、幽霊の運転……免許とか……ホル・ホースが運転すれば……」と戸惑っていると、「大丈夫だよ、免許なくてもあいつ車の運転うめえから。嬢ちゃんより安全だ。オレは右ハンドルは苦手なんだよ」と強引に車に押し込まれた。
そして今、ボインゴは──幽霊の運転するランドクルーザーに乗って、吸血鬼の巣窟という嶺冥山に向かっているのである。
*
涼子が車に食料や飲み物や救急セットを詰め込んでいたが、仗助がつまめるものが欲しいといい、休憩がてらコンビニ・オーソンによって、菓子やジュースを大量に買い込んだ。
徐々に町中から離れるにつれて、家が減り、田んぼや畑、ビニールハウス、雑木林が広がっていった。
山が近くなるとインターの標識が見え、典明はハイエロファントで涼子と入れ替わった。インターの料金所の支払いに学生服の幽霊ではまずいということらしい。
「どうもありがとうございます」
「どうもっス~」
料金所を抜けてインターに入ると、再び典明が運転席に戻った。
しばらくナビが不要になった仗助は運転席にあぐらをかき、「すんません、ボインゴさん、さっき買ったポテチに炭酸レモン取ってもらえます?」とペットボトルのジュースを飲んで菓子をつまみ始め、おやつタイムになったのだった。
ボインゴはコアラのお菓子を食べ、ジュースを荷物置き場から取り出した。
見慣れないペットボトルの入れ物に、オレンジの果実のパッケージが巻かれていた。果実には目と口が書かれてボインゴに笑っているようだった。
キャップをこぼさないように慎重に開けて一口飲むと、とても甘いオレンジジュースが口に広がった。
(……日本のオレンジジュース……甘くて、美味しい……)
お茶を飲んでいたホル・ホースがボインゴのオレンジジュースをひょいと取り上げて一口飲んだ。
「日本のオレンジは甘いなあ。エジプトなんかだとオレンジそのまんまだからなあ」
「……あっちでは屋台で飲んだな。」
「そう!覚えてるわ。オレンジに、サトウキビに、マンゴーに……」
「へえー、いいなあ、外で生搾り。おれも飲んでみてえなあ」
「腹壊さないように気をつけろ。観光客はぼったくりも多いぞ」
「マジっスか!」
ジュースを飲み、お菓子を食べながら、4人はなんだかんだとワイワイやっている。
なんていうんだったか、こういうの日本語で。
そうだ、遠足だ。
ボインゴは思い出した。
次の話(3-2-① 始まりの石と石①)
目次 前の話(3-1-② ボインゴは山へ遠足に②)
