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幕間1 炎の追憶

*注意*
本作は『ジョジョの奇妙な冒険』および『クレイジー・Dの悪霊的失恋』をもとにした非公式の二次創作です。
原作および出版社とは一切関係ありません
おもいっきりネタバレしています!!!

目次  前書き&注意点  前の話(1-6 黄昏時、町は黄金色に)


モハメド・アヴドゥルは、夜も更けた人気のないホテルの廊下をゆっくりと進み、ある部屋の前で立ち止まって、ドアをノックした。

「入っていいか、花京院」
声をかけると、「どうぞ」と中から返事があった。
下を見ると、ドアの下の隙間から緑色に煌めく触手がスルスルと部屋の中へ滑り込んでいく。
それを見届けてから、アヴドゥルはドアを開けた。
部屋の中には、赤茶色の髪の少年が立っていた。濡れた髪をタオルで乾かしながら、軽くうなづいた。
彼──花京院典明が着ているのは縦縞のパジャマ。ジョセフが買ってあげたものだ。
少し大きかったようで、手足の袖を折り返している。
195cmのジョセフや承太郎をはじめ、同行者が皆190前後の大柄な男たちばかりだ。その中にあって花京院は一回り小柄に見えてしまう。だが、178cmという身長は、日本人の中では高身長の部類に入る。

「入浴中だったか、失礼した」
いえ、上がったところだったので──と、流暢な英語で彼は答えた。

そんな彼は、まだ17歳だという。
ジョセフ・ジョースターの孫である空条承太郎と同じ歳の、日本人の高校生だ。

エジプトに生まれ育ったアヴドゥルは、占い師の仕事をする中で、多くの国の人と出会い、多くの国を訪れてきた。
日本人が占いに来るのは稀で、日本を訪れるのも今回初めてだった。
だから、日本人と親しく交流し行動を共にしたのも初めてだった。

噂に聞いていたサムライの国の人々は、礼儀正しいがいつもヘラヘラして何を考えているかわからないというものだった。
確かに、ジョセフをはじめとして今までアヴドゥルが親しくしてきた友人たちに比べると、日本人は感情の表出が控えめで、承太郎も花京院も常に冷静で口数も少なく、リアクションや表情の変化で感情の機微を読み取ることは難しかった。

とはいえ、アヴドゥルは占い師だ。
占い師とは、人間を観察するものである。
見るのではなくて、観る。聞くのではなくて、聴く。
そして、相手の悩みを解き明かし、希望を推測し、導くのが仕事だった。

よく観てみれば、2人は異なっている点も多かった。日本人だからとまとめてしまうのは偏見というものだろう。

思春期という年頃のせいか威圧的な対応の目立つ承太郎に対し、花京院はジョセフをはじめ目上を立てて礼儀正しく、女性には紳士的だった。
決して口数が多いわけではないが、必要があれば論理的かつ饒舌に話をする。
控えめではあるが、気が弱いわけではない。主張すべきことはきちんと主張し、反対すべきときはきちんと反対する。
スタンド使いは精神的に強いものが多くなるものだが、花京院も例外ではなく、芯の強さを持っていた。戦いでは慎重かつ迅速に、そして容赦なく敵を倒した。
出会って10日ほどだが、アブドゥルは花京院典明を好ましく感じていた。10歳下の少年ながら、旅の仲間として、そして共に戦うスタンド使いの戦士として、信頼するようになっていた。
だからこそ、昼間、花京院が裏切り者だと聞いた時は、心底驚いた。
だが、それは敵のイエローテンパランスが化けた偽物で、真実を知った時には胸を撫で下ろした。
偽物が承太郎たちと出かけている間、彼は日光浴をしていたそうだ。制服姿のままで。
そういえば、船の上でも承太郎と2人、ビーチチェアの上でくつろいでいた時も、やはりあの制服を着ていた。
──サムライの国の男子教育というのは、やはり一味違うらしい。

「今日は私が同室になった」
荷物を置きながらアヴドゥルは花京院に話しはじめた。
何かあったのかという視線を向けた花京院に、ジョセフが日本に電話をかけるのに承太郎を同室にしたいと希望した、と伝えた。
それを聞いた花京院は、わずかに気遣わしげな表情を浮かべた。
日本で床にふせるホリィを二人が電話で励まそうとしている、と花京院は察した。そして、アブドゥルは彼の微妙な表情変化でそれに気づいた。
「そうですか……」と視線を伏せた花京院は、冷蔵庫からペリエを2本取り出し、1本をアヴドゥルに渡した。
受け取ったアヴドゥルはソファーに座り、首にタオルを下げた花京院が向かいのソファーに腰掛けて、水分をとった。

3年前、当時雇われていた富豪に連れられて参加したパーティーで、アヴドゥルはジョセフ・ジョースターと知り合った。アヴドゥルが自らのスタンド・マジシャンズレッドを発動させて、暖炉に火をつけようとした時、彼がスタンドの手が見えたのがきっかけだった。
スタンドは通常スタンド使いにしか見えないものだ。スタンドが見えるだけ、聞こえるだけという人間はたまにいて、霊感が強い人などと言われていたりする。そういった人々は大抵、そのまま生涯を終えたり、また見えなくなったりする。ごく稀に、スタンドを”発現しかける”ものもいる。しかし、力を引き出せず、50日間にわたる高熱に苦しみ、命を落とす。
幼少期にスタンドパワーが小さく成長してから形づくるパターンもなくはないが、多くのスタンド使いは生まれつきなのだ。

しかし、ジョセフは、60代半ばにして、ハーミットパープルというスタンドを発現し、スタンド使いとなった。
これはとても例外的なことで、アヴドゥルも初めての経験だったが、DIOという吸血鬼がスタンド使いになったことが原因と、後ほど判明した。
100年前、ジョセフの祖父・ジョナサンが吸血鬼となったディオという男と戦い、海に沈んで亡くなった。しかし4年前、ディオはジョナサンの体を乗っ取って海の底から復活し、DIOになった。
祖父の体をもったディオがスタンド使いになった影響で、ジョセフもスタンドを発動したと思われた。なんでも、ジョースターの一族は血族の関係がとても強く、不思議な結びつきをしていて、お互いの存在を感じ取ることもできるらしい。
吸血鬼、とは信じがたい存在だ。だが、DIOは人の生き血を啜り、肉の芽と名付けた細胞の一部を人間に埋め込んで、操ることもできた。実際にアヴドゥルは、肉の芽を埋め込まれたDIOの手下に襲われたことがあった。捕縛後、肉の芽に脳を食い破られて、手下は死んだ。
アヴドゥルも、DIOに出会って肉の芽を埋め込まれそうになり、大慌てで逃げた。それからエジプトには帰っていない。

ホリィは、日本に嫁いだジョセフの一人娘だ。
彼女の息子の空条承太郎のことで困っていると連絡を受けたジョセフは、娘や孫にDIOの影響が出たのではないかと危惧し、アヴドゥルに同行を頼んだ。
同行したアヴドゥルは、空条承太郎がスタンドを発現したことを確認した。
ホリィには当初異常はないと判断されていたが、スタンドを”発現しかける”状態となり、高熱で倒れてしまった。
ジョセフ、承太郎、アヴドゥルは、ホリィを助けるために50日以内にDIOを討つ決意を固めた。
DIOに肉の芽を埋め込まれ操られて承太郎を襲ってきた花京院は、肉の芽を引き抜かれて仲間になった。
そして4人はエジプトに向けて旅をし、今はシンガポールのホテルにいる。

ジョセフは、高熱にうなされ病と戦う娘を、息子の声をかけで励ましたいのだろう。
無口な承太郎がどう励ますかは見物だが、声を聞くだけでもきっとホリィは喜ぶだろう。
会話できる状態ならば。

静かな部屋に飲み物を飲む音だけが続いた。

少しは何か話したほうが良いかと思い、アヴドゥルは花京院に話しかけた。
「花京院。君のスタンド、ハイエロファントグリーンは、生まれつきのものだね」
どこか遠くを見ていた花京院はこちらを向いて答えた。
「ええ、記憶にある限りはいたので、そうだと思います」
「近くにスタンド使いの人間はいなかったんだな」
「ええ……スタンド使いは僕一人でした」
少し逸らした視線に、幼い花京院の苦労と寂しさが見えた。
「私もだ……」

スタンドは精神の具現化発露であり、持ち主の精神の成長老化と共に大きさや能力が変化していく。
アヴドゥルのスタンド・マジシャンズレッドは炎を操るスタンドだ。
幼いアヴドゥルの周囲にも、スタンド使いの人間はいなかった。
スタンドが見える人間もいなかったため、スタンドを持ち操ることで、混乱や周囲の無理解に遭ってきた。

「私はとても短気な人間でね、花京院」とアヴドゥルが続けると、
「アヴドゥルさんがですか?」と花京院は眉を上げて意外そうだった。
「ああ。……スタンドはスタンド使いの精神を、心を反映する能力だ。心が怒りに支配されればスタンドは怒りのままに動き、能力を発動し、時に暴走してしまう。
小さい頃の私は、ちょっとしたことですぐカッとなる怒りっぽい子供だった。その度にスタンドが暴走し、周囲にボヤを起こしてしまっていたんだ。ひどい時は家1軒燃やしてしまってな。当時はスタンドも幼く弱かったからその程度で済んでいたが、私の成長とともにスタンドも強力になっていった。このままでは人を焼き殺してしまうと恐れていたよ」
花京院は昔を思い出すような悲しそうな表情になった。

「そんな時、他のスタンド使いに出会った。どうも周囲でよく不思議な火事が起こる子供がいると噂になっていて、それを聞きつけてやってきたそうだ。」
「他のスタンド使い……」
花京院の切れ長の目がきらりと光った。
「初めて自分のスタンド──その名前を教わったのも彼だったが──を見える人間に出会ったよ。このスタンドという能力を持つのは世界で自分だけはないと知って嬉しかった。
私は彼にスタンドについて教わった。それから、自分の感情をコントロールするように努めた。スタンドをコントロールするためにね。」
アヴドゥルは、自分の傍に自らの分身・マジシャンズレッドを現した。鳥の頭に大きな大胸筋を持つ人間の男性の上半身、炎に包まれた下半身のスタンドは、花京院な顔を見て、<カァ>と鳴いた。花京院はクスリと笑った。
「おかげで今では手足を動かすようにこいつを動かせるようになったよ」
「その、教えてくれたスタンド使いという方は今?」
「ああ……亡くなったよ。私にスタンドについて教えてくれて間も無くだった。結構な老体だったからね。彼のスタンドを私は見なかった。なんでも夜の方がでやすいもので、もう歳でスタンドを出すのも疲れてしまうからといってね。」
「そうですか……」

もう20年以上前になる。
彼は、アヴドゥルにスタンドの知識を惜しみなく教えてくれた。そして、怒りの感情を制御し、マジシャンズレッドを自在に操れるようになった姿を見届けると、静かに自国へ戻っていった。
……だが、その別れから半年もたたないうちに、人を通じてアヴドゥルを呼び寄せた。

死の床にいた彼は、アヴドゥルに懺悔をした。

──わしは死ぬのが怖い。
──若い頃からずっとスタンドを使って悪事を働いてきた。人を傷つけて殺し、金を奪い使い、欲のままに暮らしてきた。
──年老いて心をいれかえ、罪滅ぼしにスタンド使いを見つけては、スタンドの使い方を教え導いてきた。
──だが、きっと天国には行けないだろう。
──わしは、死神だから。

──頼むアヴドゥル。わしが死んだら、死体をその炎で焼いて欲しい。
──それで身も心も生まれ変われるだろう。

彼はそう最期に頼んで死んだ。

周囲は驚いたが、遺言ということもあり、彼の遺体は燃やされることになった。
棺の下にくべられた薪に火がつけられると、アブドゥルはマジシャンズレッドで炎に変えた。全てを燃やし尽くす炎で骨の形も残らず、全ては灰となって風にのって消えた。
世界には火葬する国があり、その場合骨だけ残して埋葬される、とアヴドゥルが知ったのは、後のことだった。

生まれた時から共にいる、魔術師の赤。
きっと自分が死ぬ時も傍にいるのだろう。
その次の世があるのなら、その次も、きっと。

彼は生まれ変わることができただろうか。

アヴドゥルが回想に浸っていると、花京院が何かに反応して、ドアに注意をむけた。

ドタドタと大きな音がすると、バンッと乱暴にドアが開いて、銀の髪を逆立てた逞しい長身の男が入ってきた。
「今日はこっちだって聞いたからよお~~ まいったぜ、もう~」
「ポルナレフ、戻ったか」

入ってきた男はジャン・ピエール・ポルナレフ──花京院と同様にDIOに肉の芽を埋め込まれ、ジョースター一行を襲ってきた刺客だった。香港での戦闘後、肉の芽を抜かれて仲間になり、エジプトへの旅に同行している。妹の仇を探しているという。
彼のスタンドは、シルバーチャリオッツという銀色の甲冑の騎士で、素早い剣裁きを得意としている。
ポルナレフは昼間、ホテルの部屋で襲ってきた刺客と戦闘になった。敵は倒したが、ホテルのボーイが巻き添えで死亡し、警察に呼ばれる羽目になった。
ジョセフが、SPW財団を通じて弁護士を手配し、釈放になったが、出発は明日になった。

ポルナレフは持っていた荷物入れをポンとベッドに放り投げると、シャワールームに直行し、あっという間に戻ってきた。たくましい上半身に下着姿、タオルで乾かしている髪は流石に崩れている。
そのままどっかりベッドに腰を下ろすと、花京院が冷蔵庫から取り出したペリエを受け取り、勢いよくキャップを開けた。
「飲み物もいいんだけどよお、何も食ってねえからさあ、腹減ってよお~ なんかねえかあ」
「わかった、ルームサービスを頼もう。この時間だから大したものはないと思うが」
「なんでもいいぜえ、腹が膨れればよ。敵は倒したからもう来てもらって安全だぜ。」
フランス語なまりの英語でまくしたてるポルナレフの頼みで、アヴドゥルはルームサービスを注文した。ペリエを飲んだポルナレフは警察での経過を話し始めた。

「弁護士のやつが来てうまく話をまとめようとしてくれだんだけどよお……」
警察から釈放されそうな流れになった時、巻き添えになって殺されたボーイの母親が泣きながら乱入してきたのだという。
流石のポルナレフも泣き喚く母親を無視する訳にはいかず、説得に時間がかかったらしい。
「おれも母親を小さい頃に亡くしているからなあ、どうもなあ……」
「で、どうしたんだ」
「ん? 結局奴がボーイを殺して、おれを殺そうとしたが上手くいかなくて、下のトイレで自殺した、って流れに財団の弁護士が持ってってくれそうだぜ。スタンドは一般人には見えねえからな。奴は一度ホテルのおれの部屋に現れているし、元々殺し屋だったからそれも調べればわかるだろうってな」
「そうか……」
「……アヴドゥルさん、何か?」
考え込んだ様子のアヴドゥルを見て、花京院が問いかけた。

「いや……」少し考えてからアヴドゥルは続けた。
「前ジョースターさんにも話したんだが、私は、スタンド使いではない人間にスタンドの存在を知らせないで秘密にしておいた方が良いと考えているんだ。」
「いったって信じねえだろ?」
「大抵はそうなんだが、SPW財団の人間みたいに見えなくても信じてくれる人たちもいるし、ストレングスのような目にみえて触れることもできるスタンドが現れれば、信じざるを得なくなるだろう」
「ああ、あれは驚いたな、おれのスタンドは今まで誰も見えなかったのに」
ストレングスは海の上で出会った船型のスタンドだった。スタンド使いでない船員たちも見て乗ることができ、一見本物の船と変わらなかった。
「しかし、スタンドという存在が明るみになれば、スタンド使いというある意味超能力者が世間に公表されることになる。最初はおどろかれ羨ましがられ賞賛されたもするだろう。しかし皆がもつことのできる能力でない以上、そうでないものとの間に亀裂ができて、差別や迫害の火種になるかもしれない」

アブドゥルも、周囲に恐れられたことがあった。
──あいつが来ると家が燃える。
スタンド使いでない人間と暮らしていくには、スタンドを気づかれないよう使うことが重要である。それを教わり、学び、実行してきた。
ポルナレフも花京院も同じような経験があるのだろう、二人とも真剣な表情で聞いていた。
「……中世の魔女狩りみてえなもんか」
「そういうことだ。……ジョースターさんはハーミットパープルを発現した時大喜びしてな。色んな人に見せて回ろうとしたので、私は慌てて止めたよ」
その様子を想像したのか、花京院がクスリと笑った。

「そして、スタンド使いは善人ばかりではない。自分のために、他人にはない能力を悪用し、そのためにはスタンド能力のない一般人を犠牲にしても平然としているものも多い。今回もそうだ。」
「だから、我々は飛行機を諦め、海路に陸路でエジプトに向かっているわけですね。」
花京院が続け、まあなあ、とポルナレフも同意した。
「それから、残念ながら今までに出てしまった犠牲者の家族には、スタンドのことは言わないで欲しい、できれば事故で収めてほしいと、SPW財団には頼んだんだ。」
2人がアヴドゥルをみた。
「もし自分の家族が誰かに殺されたと知ったら、復讐を考えるものもいるだろう。だが、一般人がスタンド使いに立ち向かっても、返り討ちだ」
普段騒がしいポルナレフが、黙って飲み物を飲んだ。彼も大切な妹をスタンド使いに殺され仇うちを考えているのだ。
「……その方が安全でしょうね。」
「スタンドについて知ってもらえない、理解されないのは寂しいがな」
物分かりの良い花京院の寂しさに、アヴドゥルは共感した。

「つーかよ、復讐なんて考えないように、悪いスタンド使いをぶちのめしてやりゃあいいんじゃあねえか? おれらがよお!」
寂しくなった空気を吹き飛ばすように明るい声でポルナレフが続けた。
「そうだな」
「それに加えて、今後はより、一般人を巻き込まないように注意していきましょう」
「ああ」

また花京院が何かに反応してドアに注意を向けると、「ルームサービスでーす」とドアの向こうから声がした。
「待ちわびたぜ~」
早速ポルナレフがぴょんとベッドから飛び降りて、ドアを開け、ルームサービスを受け取った。

「なんかずいぶんたくさん頼んだんじゃあねえか?アヴドゥル。こんなに食い切れるかな」
「フフッ 私も少し小腹が空いたからな。一緒にいただきたい。」
「ああ!じゃあ食べようぜ~」
ポルナレフの喜ぶ顔を見た後、アヴドゥルは花京院に行った。
「花京院、もう今夜はハイエロファントグリーンで警戒しなくていい。奴らは1人のところを狙って襲ってきているし、私もポルナレフもいればそうそう寝込みを襲われることもないだろう」
「そうそう、来ても返り討ちって奴だぜ」
ニヤリとポルナレフもいった。花京院がハイエロファントグリーンの触手を目立たないように伸ばして警戒していたことに、彼も気づいていたようだ。
少し驚いたように目を見開くと、花京院は自らの傍らにスタンドを発現させた。
キラキラと煌めく緑色のスタンド、彼のハイエロファントグリーンだ。
ふっとスタンドをおさめると「僕もいただきます」と微笑んだ。

たくさんのルームサービスの食べ物飲み物をテーブルに並べながら、「そういえば」とアヴドゥルがポルナレフに話を振った。
「先ほど花京院に、私の昔の話をしていたんだ。私のマジシャンズレッドは小さい頃はコントロールがなかなか上手くいかなくて、家を燃やしたりしていたってな。ポルナレフはどうだったんだ」
「ああーおれのチャリオッツか?おれも近所のガキと喧嘩した時によお~……」

こうしてシンガポールの夜はふけて行った。


次の話(2-1-① 血の継承、絡みつく荊①)  
目次  前の話(1-6 黄昏時、町は黄金色に)

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