「一生銭湯に入れる権利」は本当か確かめるために「日本一小さい村」まで行ってきた話
「日本一小さい村で一生銭湯に入れる権利」
あなたは、そんなものがあるだなんて信じられるだろうか?
ここで言う「日本一小さい村」というのは、富山県の舟橋村というところだ。本当に小さくて、面積は3.47㎢しかない。
そして、その「銭湯」というのは、舟橋村の村営施設である舟橋会館の大浴場「さつきの湯」になる。
この「さつきの湯」を(施設が存続している限り)無期限で利用できるという初回買い切り型のサブスクが今年の4月末に5,000円で売り出された。
限定10口で、富山県外在住者限定。
報道によると、5月1日までに完売しているらしい。
この限定10口の権利のひとつを、僕は購入した。
購入したからには、権利を行使しなくてはいけない。
というわけで、GWも終わり観光客の動きも落ち着いたころ、舟橋村に行ってきた。
神奈川県から。一人で。このためだけに。
初富山
何はともあれ、富山県の中心地である富山市にいくことにする。
前日に仕事を終えた後、横浜駅からそのまま夜行バスに飛び乗った。
通勤着のままだし、仕事帰りにお風呂にも入っていない。
汗臭いままバスで揺られ、金曜日の早朝に富山駅に到着した。

とりあえず駅構内のカフェベローチェで朝ごはんにする。
特にやることはないのだけど、「さつきの湯」の利用開始の10時まで時間はあるので、駅周辺を散歩してみる。

ぶらぶら2kmくらい散歩して、帰りは市電にのって富山駅まで戻ってきた。
一通り歩き回って気がついたけど、富山市はずいぶんきれいな街だ。
そして歴史があるから、海運と水産の中心だった海側から街のほうまで、くまなく綺麗に開発されている。帰りにのった市電もずいぶん路線も多くて、富山駅めがけて交通網が張り巡らされている。
北陸トップのコンパクトシティなんていわれるわけである。
いざ舟橋村へ
いい時間になったので、いよいよ舟橋村に向かう。
富山駅から富山地方鉄道に乗って一路東へ。
この鉄道は黒部ダムや立山への登山ルートまで延びていて、駅には登山スタイルの乗客がたくさんいたけど、舟橋村に向かう電車は別のホームから発車する。間違えないように、念のため駅員さんに「(最寄り駅である)越中舟橋はこちらですか?」と聞いてみたら、ポケットから路線図を取り出して調べたうえで答えてくれた。地元民しか使わないからわざわざ駅員さんに聞く人なんかいないんだと思う。

ともあれ、2両編成の電車に乗って舟橋村をめざす。
さっき、富山市はコンパクトに開発されてる、っていったけど、電車で川を一つ越えたあたりから、急に民家が少なくなって、田園地帯になっていった。この前週にはクマも出没していたらしい。
「気持ちよさそうだからジョギングでいこう」とか考えなくて本当によかった(実際、考えてた)。
15分ほどで、越中舟橋駅に到着。

ついに銭湯到着

ついに「日本一小さい村」舟橋村に足を踏み入れた。
駅の改札を出ると、いきなり小ささをアピールするのだから、たまらない。しびれる。
ここから目的地である舟橋会館までは歩いて5分ほど。
この5分ほどの道中に、村役場も警察署も消防署もJAも全部あった。
さすが「日本一小さい村」である。
さっきから書いているように、富山市はコンパクトシティを謳っているけど、舟橋村のほうが断然コンパクトである。富山市も富山市で、すぐ隣に「日本一小さい」がいるというのに、よくもまあ図々しくコンパクトシティなんて名乗れるものである。
そんなことと妄想しながら歩いていると、いよいよ舟橋会館が見えてきた。

舟橋会館は浴場だけじゃなくて、体育館とかダンススタジオとか会議室とか各種施設が整っている。この日、訪問した時もヨガスクールが開催されていた。
住民以外も利用可能で、たとえば
釣り客が浴場を利用して帰ることもあるらしい。

おそるおそる(?)施設に入ると、すぐ横に受付があった。
通常はここで料金を払って浴場を利用するようだ。
僕は、「一生入れる権利」をNFT(電子チケット)として所有していることになるので、スマホを片手に係りの人に声をかける。
「すいません、こちらの権利は利用できますか?」
・・・
・・・・・・
・・・・・・・・・・
「電子チケットですね、使えますよ!」
よっしゃー!本当に使えた!
いや、疑って悪いけど、こんなユニークな権利、半信半疑じゃないですか。
実際、ネットをどれだけ検索しても、この権利を購入したって人が見つからないし、当然、使用報告も見られない。
職場の同僚からも「それ、ネット詐欺じゃないですか?」と疑われる始末だし、実際使えるか確認するまでは、まったく信じられないじゃないですか。
受付の職員さん(丁寧に浴場まで案内してくれた)に伺うと、開館直後ということもあり今日は他に利用者がいなくて僕が一番風呂。この権利を使う人は他にも何人か訪れているらしい。
僕が富山県に縁もゆかりもなくて神奈川県から来た、と知ると、大層喜んでくださっていた。
なんか、疑ったりして本当にすいません。
いよいよ入浴です
というわけで、ついに1回目の権利行使の入浴です。
さっきも言ったように、昨夜の仕事帰りにそのまま夜行バスに乗ったので、一晩お風呂に入っていない。
浴室は写真撮影禁止だったので、写真は施設のウェブサイトとかニュースなんかを参考にしてもらえばありがたいけど、ごく一般的な浴室でした。
お湯の温度は体感的に40度くらい?
浴槽は3畳ほどで、肩までしっかり浸かれる。
壁側からジェットバスの水流がしっかり出てる。
壁の一面が大きな窓になっていて、きれいな日本庭園を眺めながらお湯に浸かれる。
もちろん、脱衣場含めて掃除は徹底的に行き届いている。
サウナも岩盤浴もないけど、十分にリラックスできる。
僕が入ってしばらくすると、地元のおじさんと見られるお客さんが次々入ってきた。みなさん常連らしく、慣れた様子でささっとお風呂に入っていく。
壁の「忘れ物」カゴに、タオルとか帽子とかがちょっとしたものがいくつも入っているのを見ると、本当に村の人たちが日常使いしている浴室のようだ。
入浴後はすぐ隣の畳敷きの休憩室で涼むこともできた。
いやー、快適なお風呂だった。
(一生のうちに)また来ます
というわけで、「一生銭湯に入れる権利」は、日本一小さい村で本当に使うことができた。
これを確かめることができただけで今回の旅の目的は果たすことができた。
入浴後、先ほどの受付の人にお礼をいって、退出した。
係りの人がまた出てきてくれて(それどころか、館長さんっぽい人も声をかけてくれて)「一生使えるから、また来てください」と声をかけてくださった。
そもそもこの「権利」が考案されたのも「人口減少が進む中、舟橋村を継続的に訪れるきっかけとし、地域のにぎわいづくりにつなげる」ことが目的らしい。
通常の入浴料は450円なので、あと11回来場すれば、5,000円のチケットの元をとることができる。
いつになるのかわからないけど、チケットが擦り切れるほど(電子チケットだけど)入浴できたら嬉しいです、はい。
(参考)

おまけ
ところで、舟橋会館に舟橋村が日本一小さいことをPRするポスターが飾っていたのだけど、

この女の人が持っているカメラは、OLYMPUSのPEN Fというカメラだ。

このカメラは1963年に発売されたフィルムのカメラなのだけど、(理解のおよぶ限り)35mmフィルムの一眼レフのなかで日本一小さいカメラのはずだ(間違ってたらごめん)。
日本一小さい村のポスターに日本一小さいカメラをあしらうなんて、ほんとわかってる。そこにしびれるあこがれる。
