見出し画像

162円が常識となる──鈍るインフレと崩れないドル円【2026年7月第4週】ドル円戦略レポート

162円

米国のインフレ指標が鈍化すれば、

本来ならドル円はもう少し深く押し戻されても不思議ではなかった。実際、先週発表された米CPIとPPIはいずれもインフレの鈍化を示し、早期利上げへの期待も大きく後退している。

それでもドル円は161円台で買い戻され、週末には再び162.40付近まで戻ってきた。

弱い数字でも崩れないという事実は、単なるドルの強さだけでは説明しにくい。日米金利差を背景とした円キャリー需要、中東情勢の緊迫化による有事のドル買い、原油高によるインフレ再燃への警戒が、米指標の弱さを打ち消している。

162円は、まだ警戒される高値なのか。
それとも、すでにマーケットの常識へ変わり始めているのか。

今週は、その境界を観測することになる。


先週の動き

弱い指標でも、161円台では終わらなかった

先週のドル円は161.75で始まり、安値161.60、高値162.55を記録したあと、162.40で週を終えた。週間では0.41%の上昇となり、大きく走らなかった一方で、下落材料にも屈しない底堅さを残している。

週初は、米国とイランの対立激化やホルムズ海峡を巡る報道を受け、有事のドル買いが優勢となった。そこへGPIFの国内投資比率を巡る報道と要人発言が重なり、ドル円は161円台後半から162円台半ばまで不安定に往復している。

14日の米CPIが予想を下回ると、今月のFOMCで利上げが行われるとの期待は急速に後退し、ドル円も一時161.65付近まで下落した。しかし、その後のウォーシュFRB議長による議会証言では、インフレ高止まりを容認しない姿勢が示され、162円台へ買い戻された。

翌日の米PPIも鈍化を示したが、下落は長く続かなかった。米国によるイランへの軍事行動や原油価格の80ドル台乗せが、次のインフレを警戒させ、有事のドル買いと円キャリー需要が161円台の下値を支えたためである。

先週のマーケットが見せたのは、強い指標に反応するドル買いではない。弱い指標が出ても、ドル円を売り続ける理由を持てなかったマーケットの迷いだった。


週足:高値圏への適応は続いている

週足終値は162.40、EMA8は161.09、EMA21は159.42

価格は短中期EMAの上を維持している。SMA50は155.64、SMA100は152.20、SMA200は148.41と、長期移動平均線もすべて下方で上向きを保っている。

構造としては、依然として明確な上昇トレンドの途中にある。先週は米CPIとPPIの鈍化というドル売り材料があったにもかかわらず、週足は陽線で終わり、EMA8を割り込むような調整にも至らなかった。

これは、マーケットが162円を恐れなくなったというより、この価格帯に少しずつ適応している状態に近い。高値警戒は残っているものの、売り材料が出れば崩れるという感覚は薄れ、下落すれば円キャリー勢や押し目買い勢が戻ってくる構造が続いている。

ただし、上昇余地が残っていることと、無条件に買えることは同じではない。163円へ近づくほど介入警戒は強まり、利益確定と逆張りの売りも入りやすくなるため、週足の強さだけを理由に高値を追う局面ではなさそうだ。

日足:160.73を越えた後の定着試験

EMA8は162.25、EMA21は161.84。
SMA50は160.55、SMA100は159.63、SMA200は157.40

となっており、短期から長期まで上昇方向の並びを維持している。

かつて介入高値として意識された160.73は、すでに日足の支持帯へ移りつつある。価格はその上で推移し、EMA21も161円台後半まで上昇しているため、日足構造が崩れるには、現在地から相応の下落が必要になる。

一方、直近の日足は162円台で実体が小さくなり、高値更新の勢いも鈍っている。上昇構造そのものは保たれているものの、買い手が163円を奪いに行くほど積極的ではなく、売り手も日足EMA21を崩すほど強くない。

日足が映しているのは上昇の完成ではない。160.73を突破したマーケットが、162円台を次の基準価格として受け入れられるのか、その定着を試している段階である。

4時間足:162.20〜162.30が支える均衡

EMA8が162.36、EMA21が162.29
SMA50が162.22、SMA100が162.07、SMA200が161.37

に位置している。価格は短期EMA帯の上を保ち、複数の移動平均線も緩やかに上向いている。

MACDはプラス圏で上昇しているものの、その勢いは弱く、ヒストグラムも小幅なプラス圏で横ばいに近い。上昇構造は維持されているが、トレンドが加速しているわけではない。

4時間足 MACD

現在の均衡を支えているのは、EMA21とSMA50が重なる162.20〜162.30付近である。ここを守る限り、押し目買い勢は162.72、さらに163.03を試す理由を維持できる。

反対に162.20を割り込み、SMA100のある162.07付近まで回復できなくなれば、短期的な上昇構造は弱まり始める。今週は163円を追う勢いよりも、この支持帯を維持できるかが先に問われそうだ。

1時間足:短期勢は先に迷い始めている

1時間足ではEMA8が162.41、EMA21が162.39付近にあり、SMA50は162.30、SMA100は162.27、SMA200は162.22に集中している。162.20〜162.40に複数の移動平均線が集まり、短期的な均衡帯を形成している。

一方、MACDはプラス圏でデッドクロスし、ヒストグラムもわずかながらマイナス圏へ入った。これは直ちに下落転換を示すものではないが、短期勢が高値を追う勢いを失い始めていることは読み取れる。

1時間足 MACD

4時間足が上昇構造を維持する一方、1時間足では勢いが鈍っている。この時間足のずれがあるため、週明けに162.40付近から飛び乗るより、162.20〜162.30で買い支えが確認できるかを待つ方が、実務的な戦略になりそうだ。


今週の経済指標

材料不足の裏で、円の弱さが試される

日付 時刻 国 経済指標・イベント 
7/24(金) 08:30 日本 6月全国消費者物価指数(CPI)
7/24(金) 23:00 アメリカ 6月新築住宅販売件数


今週は、前週の米CPIやPPIほどマーケット全体を動かす米指標は多くない。23日のECB政策金利発表とラガルド総裁の記者会見、24日の日本CPI、米PMI速報値、米新築住宅販売件数が主な注目材料となる。

特に日本CPIでは、総合指数が前年同月比1.7%、生鮮食品を除く指数が1.6%へ上昇すると予想されている。予想を上回れば日銀の政策修正を意識した円買いが入りやすくなるが、それでもドル円が162円台を維持するなら、マーケットが国内物価よりも日米金利差と円キャリー需要を優先していることになる。

反対にCPIが弱ければ、日銀の据え置き観測が強まり、円売りが再び162.72から163円方向を試す可能性がある。ただし、今週は指標そのものより、中東情勢や原油価格、米企業決算を受けた株価と米金利の変化が、突発的な方向を作りやすい。

材料が少ない週ほど、マーケットは小さな材料を大きく扱う。低ボラティリティが続いているからといって、値動きまで安全になったわけではない。


今週のモルザム戦略指令:7月第4週

エントリー候補:162.20〜162.30の押し目買い

4時間足EMA21とSMA50、1時間足SMA50・SMA100・SMA200が集中する価格帯であり、短期と中期の買い勢力が合流しやすい。価格だけで飛びつかず、1時間足で162.20を維持し、EMA8を回復する動きを確認してからの押し目買いを優先したい。

第一利確:162.72

4時間足フィボナッチ123.6%が位置するほか、直近高値162.55を越えた先で最初に強く意識される価格帯となる。7月1日高値162.84も近いため、介入警戒を意識した利益確定が入りやすく、まずは一部利確を優先する場所である。

最終利確:163.00〜163.03

4時間足フィボナッチ127.2%と心理的節目の163円が重なる。到達すれば上昇構造の継続を確認できる一方、介入への警戒や逆張り売りも急速に強まるため、強気であっても利益を持ち越したい場所ではない。

損切り:161.95割れ

4時間足SMA100の162.07を下抜け、心理的節目の162円も失う水準となる。現在の4時間足ATRが約0.23であることを考えると、162.20付近からの通常の揺れを超え、短期の押し目買い構造が崩れたと判断するラインになる。

エントリーを162.25、損切りを161.95とした場合、第一利確までの想定RR比は約1.6、最終利確までなら約2.6となる。


介入警戒

マーケットが探しているのは163円の限界点

ドル円が162円台に定着し始めたことで、介入警戒は再び現実味を帯びている。特に162.72から163.03は、フィボナッチの到達帯と7月1日高値、心理的節目が重なり、当局発言が強まりやすい領域でもある。

ただし、先週の値動きを見る限り、マーケットは介入を恐れてドルを手放しているわけではない。むしろ米インフレ指標の鈍化でも崩れなかったことで、どこまでなら当局が許容するのか、その限界を探ろうとしているようにも見える。

今週の上昇が緩やかであれば、マーケットは163円への距離を少しずつ縮める可能性がある。一方、中東情勢や原油高を材料に短時間で急騰すれば、口先介入や利益確定による急反落には注意が必要になる。

戦略総括

週足と日足は上昇構造を維持し、4時間足も162.20〜162.30を支えに高値圏で推移している。米CPIとPPIが鈍化しても161円台で買い戻された事実から、現時点では戻り売りより押し目買いが優位と考えられる。

ただし、1時間足MACDは先に弱含み、4時間足の上昇もまだ力強さを欠いている。そのため162.40付近から高値を追うのではなく、162.20〜162.30の支持確認を待ち、162.72、さらに163.03を狙う形を基本戦略としたい。

崩壊条件

162.00を明確に割り込み、その後の戻りでも162.20を回復できなくなった時、今週の押し目買い戦略は終了となる。

その場合、4時間足の短期移動平均線が作ってきた支持構造は崩れ、マーケットは163円への期待よりも、日足EMA21が位置する161.84付近、さらに先週安値161.60を警戒し始めるだろう。


高い場所に慣れたからといって、
そこが安全な場所になったわけではない。
それでも、何度押し戻されても同じ場所へ帰ってくるのなら、
この景色を見ている理由が、まだどこかに残っているのかもしれない。

モルアゥナの囁き

免責事項
本記事は、為替マーケットについて個人的見解を述べたものです。FX売買や投資を推奨するものではありません。あくまでも個人的解釈であり、内容の的確性、正確性、信頼性、最新性を保証するものではなく、読者に対しいかなる明示または黙示の担保責任を負担するものではありません。投資は自己責任となり、FX等の売買はご自身の判断に基づき行ってください。投資の結果につきましては当方では一切の責任を負いかねますので、予めご了承ください。
知的財産権等の帰属:本記事内容の知的財産権は当方に帰属します。記事内容に関して、当方の許諾なく複製、転載、転用、改変、販売、配布等を行うことを禁じます。



いいなと思ったら応援しよう!

モルアゥナ♥ブラック目醒ラボ **市場の熱狂と崩壊、 人間の欲望と静かな思想。 ブラック目醒ラボでは、FX分析と思想哲学の観測記録を発信しています。 20年生きている老猫アポロンと共に、 今日も静かに観測を続けています。 いただいたチップは、創作・分析活動のために大切に使わせていただきます。**

この記事は noteマネー にピックアップされました

noteマネーのバナー