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暗殺


暗殺

著者

柴田哲孝

出版社

幻冬舎

発行

2024年6月20日 第1刷
2024年7月27日 第8刷

感想

 本には読みたくなるタイミングと言うものがある。発行当初は興味が無かった本であっても、何かのタイミングやきっかけで読みたくなることがあるのだ。本書もそんな1冊で、昨年、発刊されたことは知っていたが、発刊当時話題にもなっていたが食指は動かなかった。
 それを今回、読んでみようと思ったのは私が参加している視覚障害者向けの音訳ボランティア活動。そこで作成している音訳マガジンの「新刊と話題の本」のコーナーで紹介されているのを聴いているうちに、なぜか読んでみたくなり手にした。(音訳自体は普通の紹介だと思うのだが。音訳者が上手いのか…)

 物語は2022年(令和4年)7月に奈良県大和西大寺で発生した元首相銃撃事件をモチーフにしたミステリー小説である。実際に発生した事件でネット上などで語られているいくつかの不審な点を題材に、元首相はある宗教団体に恨みを抱く元自衛官に殺されたのではなく、もっと大きな陰謀によって殺されたという流れで展開していく。

 私としては下山事件赤報隊事件を絡めていることで陰謀論に偏った印象が強いものの、フィクションであると割り切って読むことができたが、この点は単なる陰謀論であるという人もいれば、これに近いことは現在進行形で行われていると思う人もいて評価は分かれるだろうと思う。

 本作では元首相を銃撃した元自衛官はオズワルドであって、真の狙撃者は他にいることになっている。オズワルドとはケネディ大統領を狙撃したリー・ハーベイ・オズワルドのことで、本当の狙撃犯は他にいると言われている。オズワルド自身、移送中にジャック・ルビーに狙撃されて命を落としている。そのジャック・ルビーも拘置中に癌で死亡しており、ケネディ大統領暗殺事件は米国史上最大の謎となっている。

 そして真の狙撃犯は政界のフィクサーと呼ばれる人物に雇われて、元首相を狙撃したことになっている。しかし、本当に日本の憲政史上最長の期間、首相を務め、首相を退いてからも国民に絶大な人気を誇る首相を暗殺できるような人物が本当にいるのだろうか。更に世間の目を宗教団体に向けさせることもしている。
 勿論、かつてロッキード事件で有名になった小佐野賢治や児玉誉士夫、ホテルニュージャパンの横井英樹、日本船舶振興会の笹川良一などフィクサーと呼ばれる人はいた。しかし私の印象では彼らは保守(右)に寄っている、政界に顔が利く実業家というイメージしかない。本作の登場人物のように公安や警察を抑えることができ、官僚を意のままに操ることができ、なおかつマスゴミまで操ることができる、そこまでの権力を持っていたとは思えない。

 物語ではそのフィクサーの逆鱗に触れたため元首相は元自衛官に撃たれたように見せかけて暗殺されたことになっている。サスペンスとしては面白かったが、現実にはあり得ないと思う。
 その理由は昨今の左傾化した政界を見ると、このフィクサーが激怒しないはずがないと思うからである。媚中外交を繰り広げる外務大臣、選挙で3連敗しているにも関わらず責任を他になすりつけ、権力の座にしがみつこうとする総理大臣。
 保守層がどんどん離反しているにも関わらず、背景情報を無視したマスゴミの偏向報道、印象操作に踊らされて自分は世論の支持率が高いと居直る始末である。本当に世論の支持率が高ければ選挙で3連敗なんてあり得ないだろう。もし巨大な権力を持ったフィクサーが本当に存在するのであれば、恐らくそんな首相はいつまでも首相を続けられないと思う。

 一方で事件に謎が多いのも事実である。例えば元自衛官の公判手続が遅々として進んでいないことや、元首相の遺体の状況(何が致命傷になったかなど)や元自衛官は自作とは言え散弾銃をぶっ放しているのに、元首相以外死者はおろかけが人すら出ていないこと。そして世間の批判の矛先がいつの間にか元自衛官でなく宗教団体に向いていることなどである。

 少なくともマスゴミは私たちよりは情報を掴んでいるだろう。それらが提供されるだけでも真相に近付くと思うのだが。ただ、日本のマスゴミお得意の報道しない自由を発動させてこれらの疑問について報じるどころか、元首相を批判する新聞社さえ出てくる酷い状況である。
 そして普段は憲法を守れだの、自由を尊重しろだの言っている連中が、信教の自由を犯すように某宗教団体を解散させるべきだという世論を形成し、実際に解散命令が出された。誤解されると困るが私は某宗教団体を庇う気は全く無いし、あくどい商売(霊感商法)をしていたことを是とする気も毛頭無い。
 ただ、霊感商法であっても購入者がその価値を認めて納得して購入しているのであれば商取引としては有効だろう。クーリングオフなどの制度もあるし、錯誤による契約無効も制度としてはあるのだから。
 この世論形成によって左寄りの訳の分からない評論家もどきが多数出現したのはマスゴミの罪の一つだと思う。

 マスゴミが情報を提供する気が無い以上、公安や警察、政界、官僚組織が情報を出すことは無いと思われるので、現実の事件はこのまま元自衛官の単独犯で真相は闇に葬られるのだろう。
 不謹慎かもしれないが本書を読みながら色々想像(素人推理)をしてみるのもいいかもしれない。

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