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物流部門から「越境」する働き方。部門を超えた梱包改善の裏側

顧客や外部パートナーの体験価値を高めるために、物流部門はどこまで踏み込めるのでしょうか。

ビットキーでは、単なる「モノを運ぶ機能」にとどまらず、物流そのものを価値創出の一部ととらえ、改善を積み重ねています。スマートロックの施工現場における非効率な作業を解消するために立ち上がった「梱包改善プロジェクト」もその一つ。

このプロジェクトには、ロジスティクス部門と住宅向けにスマートロックの設置を推進する部門に加え、エンジニアやデザイナーなど多様な関係者が参画し、現場の課題解決に向けて一丸となって取り組みました。中心的な役割を担った石鍋さんと島崎さんは、「自分で動いたからこそ感じられるやりがいがある」「改善に向けて迷わずに動けるカルチャーを感じる」とそれぞれの手応えを語ります。

専門領域を越えて協働し、自ら課題を拾い上げて成果を生み出していく。ビットキーらしさあふれるプロジェクトのストーリーを、2人に語ってもらいました。

ロジスティクス部 物流チーム チームマネージャー
石鍋 実花(いしなべ・みか)

homehubプロジェクトマネジメント部 エンタープライズ プロジェクトマネジメントチーム 関東・東海 Unitリーダー
島崎 哲也(しまざき・てつや)

“ゼロイチ”で新たな価値を生み出す物流部門

──はじめに、2人が日頃担当している役割について教えてください。

島崎:私が携わるhomehub事業は、住宅向けに事業を行っており、主に住宅デベロッパー様、賃貸や分譲管理会社様を通じて生活者の皆様にスマートロックをはじめとするビットキー製品をご利用いただいています。

なかでも私の所属するユニットでは、関東や東海エリアの賃貸管理会社様へスマートロックの設置を推進しています。

スマートロックの主な利用者は入居者の方々ですが、私たちは直接的な接点を持っていません。入居者の方々がはじめて物件の扉を開けた瞬間から快適に活用いただけるよう、賃貸管理会社様向けの導入サポートに力を入れています。

石鍋:ロジスティクス部では、スマートロックなどのハードウェア製品や付属品に関して、入庫から出荷までのサプライチェーンの実行基盤を支えています。

一般的に物流部門は、製品企画や製造部門がモノのサイズや梱包をすべて決めた後に情報が共有され、そのフォーマットに沿って製品を迅速にお届けするのが基本的な業務の流れだと思います。私も前職ではそうでした。コスト削減や配送遅延防止、在庫の欠品防止といったKPIを追い、決まった枠組みの中で日々の改善を積み重ねていく。それが物流の仕事だと思っていました。

しかしビットキーのロジスティクス部門は、物流を「モノを運ぶ手段」としてだけでなく、配送品質や現場での施工効率を左右する「顧客体験の一部」ととらえているのが特徴です。

「物流に付加価値を」というスローガンを掲げ、正確な出荷業務に加えて、製品を受け取った方がポジティブな体験を得られるように、ゼロイチで新しい価値を生み出していけることを目指しています。

今回のプロジェクトはこのビットキーらしさが現れた取り組みだと思います。

「開封に2〜3時間」スマートロック設置現場の「不便」を解消するために

──今回の記事では、homehub事業部門とロジスティクス部が中心となって進められた「梱包改善プロジェクト」について聞きたいと思っています。このプロジェクトの背景や概要について教えてください。

島崎:homehub事業の案件は、新築物件1棟単位ではなく、既存の賃貸物件に一括で採用されることが多いのが特徴です。設置の件数も膨大なため、私たちのチームでは、賃貸物件へ新たにスマートロックを設置する際、提携する施工会社へ事前にスマートロック製品をお送りして現場での設置作業を委託しています。

事業開始当初は生活者の方へECサイトで直接販売するBtoCモデルが多かったため、基本的に一世帯に届く製品は1セット。梱包はこのビジネスモデルを前提に設計されていました。しかし現在は、賃貸管理会社様を通じたBtoBtoCモデルが主流になり、賃貸物件への大量設置が増えています。実際に当社のメンバーが施工現場に立ち会い、作業員の方々とコミュニケーションを重ねる中で、従来の梱包が現場のオペレーションにそぐわないという課題が見えてきました。

パートナーの負荷を減らすために、梱包の設計そのものを見直す必要があるのではないかと考え、今回のプロジェクトを立ち上げることになったんです。

──施工現場で生じていた課題とは?

島崎:スマートロックの設置作業では、3つの製品が必要となります。従来はこれらを別々の箱で施工会社へ発送していました。

現場ではさまざまなサイズの箱をいくつも運ばなければならず、開封のための場所を広く取る必要がありました。また、各製品に付属品が分かれて同梱されており、設置に必要なものがわかりづらかったり、箱数が多いせいで廃棄に時間がかかってしまったりといった問題も発生していたんです。施工会社からは、「3つの製品を20セット開けるのに2〜3時間を要している」という話も聞いていました。

石鍋:さらには、3つの製品をそれぞれ発送することで、社内の工数や送料などのコストも膨らんでいることがわかりました。施工現場だけでなく、発送プロセス全体に改善の余地があったんですよね。

製品を安全に届けることは担保できていた一方で、施工現場での具体的な動きまで含めて設計するという視点は、十分とは言えませんでした。製品を守るために一つひとつを厳重に梱包していたので、その結果として、現場では開封や部材の確認に時間を要し、施工会社の方々に負担をかけてしまっていたのだと思います。

こうした状況を改善するため、今回のプロジェクトでは梱包や発送のあり方をすべて見直しました。それぞれの製品を一度開封した状態で緩衝材にくるみ直し、設置作業に必要なものが一つの箱にそろっている状態にしたんです。

東京オフィスで3つの製品の梱包を開封する様子(約40セット分)
(右)必要な製品を1箱に揃えた状態で施工業者に届く形に改善

専門外でも前に進める。PMとして向き合ったリアル

──このプロジェクトを担当することになったときは、率直にどんな気持ちでしたか?

島崎:プロジェクトマネージャー(PM)に指名されたときは、「自分は物流や梱包の専門家じゃないのに大丈夫かな……」という不安もありました。プロジェクトには製品開発を担うエンジニアや、パッケージデザインを担うデザイナーも参加することになって、「こんなに多くの人が関わるのか」と緊張したのを覚えています。

石鍋:島崎さんから相談を受けた当初は、設置現場での具体的な作業の流れまで十分にイメージできていませんでした。ただ、開封に時間がかかり、廃棄物も多く発生していると聞き、これは梱包そのものを見直す必要があると感じました。

まさに私たちが掲げている「物流に付加価値を」を実践できるプロジェクトだと思えたんです。

プロジェクト開始のキックオフに集まった関係者もみんな同じ気持ちで、「一緒に改善しよう!」と前向きにスタートしました。

梱包を開けた後の廃棄物(開封作業に加え、これらの処分も施工会社の作業負担になっていた)

──プロジェクトが開始してからは、苦労も多かったのでは。

島崎:PMとしては、物流・エンジニアリング・デザインと多様なメンバーが集まるなかで、設置現場の課題感を丁寧に伝えるよう心がけました。通常業務や他のプロジェクトもある中でこのプロジェクトに参加してもらうので、各部門がスムーズに取り組めるよう工夫していました。

例えば、プロジェクトに関わる他のチームのメンバーは、全員が設置作業の現場に立ち会っているわけではないので、施工会社がどんなことに困っていて、何を改善すべきなのか。そのリアルがメンバーに伝わるよう、設置現場で撮影した写真などを使ってメンバーの理解を深められるようにしました。

石鍋:私は物流の外部パートナーである倉庫会社との連携で、これまでに経験のない業務に挑戦しました。

その倉庫会社とは以前から取引があるものの、通常、倉庫会社への指示は既存のフォーマットや定型的なやり取りで完結することがほとんどで、製品ごとに専用のマニュアルを一から作るような場面はまずありません。

ただ今回は、精密機器3点を特定の順番と向きで一つの箱に収めるという、これまでにないオペレーションを倉庫会社にお願いする必要がありました。現場での「取り出しやすさ」と「輸送中の安全」を両立させるには、既存のやり方では到底対応できない。だから、専用の作業マニュアルを一から作り込むしかなかったのですが、これが想像以上に大変で……。

社内なら通じる製品名やパーツ名などの専門用語も、倉庫会社の作業担当者には伝わりません。一つひとつの用語を翻訳しながら各部品の名称を一から解説し、作業者が迷わない順序で手順を組み立てたマニュアルを作成しました。普段の物流業務とはまったく違う脳の筋肉を使いましたね。島崎さんにも倉庫へ同行してもらい、実物を見せながら丁寧に説明する機会を設けました。

広大な倉庫から様々な種類のビットキー製品が保管・出荷されている

──スマートロックの設置作業に欠かせない製品となると、輸送プロセスでの安全性を担保することも重要なテーマだったのではないでしょうか。

石鍋:そうですね。複数の製品を一つの箱にまとめるというのは、物流の視点で見ると「1箱あたりの製品価値が上がり、輸送リスクがそこに集中する」ということでもあります。配送中に破損が起きれば、現場の施工が丸ごと止まってしまいかねません。利便性を高める一方で、輸送品質に対する責任の重さを改めて感じていました。

そのため、ドライバーに気をつけてもらうための「ケアマーク」の配置にもこだわり、4面すべての左上に表示することで現場での見落としがないようにしました。

島崎:落下テストや振動テストも入念に行いましたよね。

石鍋:はい。品質保証部門のメンバーにも加わってもらい、箱の試作品に実際の製品を入れ、さまざまな高さや角度から落とすテストを何度も繰り返して箱の強度や梱包状態を確認しました。そのときに使っていた箱にはテストの結果を記していて、「よくここまでやったなぁ」と自分で思うくらい印だらけになっています(笑)。

輸送テストで使用した右側の箱には当時の検証結果のメモが書かれている

「自分たちの手で改善する」プロジェクトで得た学び

──プロジェクトの成果や手応えについても聞かせてください。

島崎:定量的な部分では、施工会社から「3つの製品を20セット開けるのに2〜3時間を要している」と聞いていた工程が、箱を一つにまとめたことで不要になりました。現場での設置にかかる時間を大幅に短縮できています。

定性面の成果は、私たち自身が大きな手応えを得られたことです。事業のKPIに直結する取り組みでもなければ、社内の業務改善の話でもない。それでもこれだけたくさんの部門が社外のパートナーの課題に一生懸命向き合う。このカルチャーに心強さを感じました。

──「手応え」という意味では、プロジェクトを通じて2人が得られた学びも多かったのでは?

石鍋:本当にそう思います。デザイナーやエンジニアと一緒にプロジェクトを推進する働き方は初めてでしたが、「パートナーの作業負荷削減」というゴールに向かって、それぞれの専門性をどのように組み合わせるかを追求できたことは、非常に貴重な経験でした。

こうした多職種のメンバーとの横断プロジェクトを通じて、物流という枠を越え、「事業として何が最善か」という視点で梱包を再定義することができました。物流の専門家として頼られるだけでなく、他領域の知見を学びながら事業成長に貢献できる。この環境は、物流のキャリアを積んできた人にとって、自分の可能性を広げられる場所だと感じています。

島崎:石鍋さんが物流のプロとして、コストや安全性の観点から綿密に仕様を固めてくれたことは、PMの私にとっても大きな支えでした。

当初は専門外のテーマのプロジェクトを任されて緊張していましたが、社内の専門家と連携することでプロジェクトを形にできるという実感を持てました。今回の経験を経て、今後もPMとしての幅を広げていけそうだと感じています。

「自ら改善しよう」と迷わず思えるのがビットキーらしさ

──今回のプロジェクトは、ビットキー社内だけでも5部門が関わる横断的な取り組みとなりました。チームを超えてプロジェクトを形にした今、2人はビットキーのカルチャーをどのように受け止めていますか? 

石鍋:部門横断のプロジェクトを動かそうとすると、どうしてもプロジェクトを始めるまでのハードルが高くなってしまう組織は少なくないと思います。「うちの部署にはメリットがないからやめよう」「これまでのオペレーションを変えるのは大変だからやめておこう」と判断するケースもあるのではないでしょうか。

それ自体は合理的な判断だとも思いますが、「より良くするためにどう動くか」を考えることよりも、「現状維持のためにやらない理由をどう説明するか」を考えることに費やす時間が長くなってしまうと、もどかしさを感じる場面も多くなるはずです。

今回のプロジェクトでは、どの部門も取り組みにポジティブで、関連する部門の役員も皆揃って「やろう!」と力強く言ってくれたので、心強かったですね。プロジェクトを進める上でも、部門を超えて建設的に議論し、みんな自部門の都合や利益にとらわれずに動いていたので、ストレスなく取り組めました。

島崎:目の前に課題があり、改善して誰かが助かることが見えているなら迷わずやる。ビットキーにはそんなカルチャーが根付いていると感じます。「やるか、やらないか」といった部門間調整で悩むことがないので、プロジェクトを前に進めることに集中できましたね。

私の上司である執行役員の稲熊はよく「ボールが来るのを待っていてもパスは来ない。やったほうがいいと思うなら、自らボールを取りに来てほしい」と言っています。課題を眺めているだけではいつまで経っても状況が良くならない。自ら動けば改善できる。だったらやろう──。そんなふうに迷わず思えることが、ビットキーらしさなんだと思います。

──今後に向けた2人の展望は。

島崎:私の担当領域では今後、さらに多くの賃貸物件へスマートロックを設置するプロジェクトが進む予定です。提携する施工会社の方々には、よりスムーズかつ負担なく設置を進めていただけるよう、工夫していかなければいけません。

homehub事業の目線だけでは気づけない課題もまだまだ出てくるはず。これからもロジスティクス部門や、さまざまな部門と連携し、ビットキーが提供できる価値を最大化していきたいと考えています。

石鍋:今回のプロジェクトを通じて、ロジスティクスの専門性を生かして提案できることはまだまだあると確信しました。

ビットキーのロジスティクス部門では、新製品の開発段階からラベルや梱包方法について積極的に意見を出しています。「この製品はどう使われるか」を考えながら、製品ごとに梱包や運用を提案していく。決まったフォーマットに沿って既定路線の仕事をするだけでなく、企画段階から関われるのは物流チームとしてとても珍しい環境ではないかと思います。

今後は、この越境の経験を私個人のものに留めず、物流チーム全体に展開していきたいと考えています。

メンバー一人ひとりが、他部門と連携してプロジェクトを動かしていける。そんな「事業に踏み込むロジスティクスチーム」を育てていくことが、マネージャーとしての私の挑戦です。

気持ちよく製品を受け取ることができ、開梱に手間がかからず、開梱後の廃棄物も最小限に抑えられる。そんな「人と環境に優しいロジスティクス」を実現していきたいですね。