DXの専門家に「市場でナッツ買ってきて」と頼んでいないか
今日、AIを使いながら仕事をしていて、ふと思い出したことかある。
当時仕事を請けていた中小企業の社長から、
「木津市場でナッツ買ってきて」
と頼まれたことがある。
もちろん買いに行くことはできる。
市場へ行って、店を探して、商品を確認して、ナッツを買って帰ってくる。
でも私はその会社の買い出し担当ではない。DXやWeb、システムについて相談を受ける立場だった。
「いや、それ、私が行く仕事なんかな(笑)」
当時はそんなことを思った。
そして今日、私はAIにまったく同じことをしていた。
Codexは優秀だった
最近、Codexを使ってMVPの開発をしている。
実際に使ってみると優秀だ。
複数のファイルを調べて、関連するコードを探し、影響範囲を確認して修正してくれる。
原因の分からない不具合を調べたり、大規模なリファクタリングをしたり、セキュリティ上の問題がないか確認したり。
こういう仕事なら非常に頼もしい。
ところが私は今日、
「このメールアドレスを変更して」
「トップページにこのリンクを追加して」
という仕事までCodexに頼んでいた。
そこで、あのナッツの話を思い出した。
DXの専門家を木津市場までナッツ一袋買いに行かせるのと一緒やん、と。
仕事が小さくても、AIはちゃんと仕事をする
Codexにリンクを一つ変更してもらう。
人間から見ると、それだけの仕事だ。
でもCodexは、その場所を探すためにファイルを読み、周辺のコードを確認し、影響がないか調べてから変更することがある。
車のライトを一つ交換したいだけなのに、工場へ持っていって総点検してもらうようなものだ。
もちろん丁寧だし、安心でもある。
でも、電球の交換場所をこちらが知っているなら、自分たちで交換した方が早い。
AIでも同じなのだと思う。
もう一つ問題があった
今回、もっと大きな気づきがあった。
これまで私はChatGPTと会話しながらMVPを作ってきた。
「こんなのどうやろ?」
「ちょっと違うな」
「現場の人が毎日見たくなるようにしたい」
「数字だけじゃなく、現場の声を付箋みたいに見せたら面白いんちゃう?」
そんな会話をしながら作るので、最初に考えた仕様から完成形はどんどん変わっていく。
ChatGPTには、その過程の会話が残っている。
ところが途中からCodexに実装を任せると、今度はCodexにその背景を説明する必要が出てきた。
さらにChatGPTにも、
「Codexにどう指示したらいい?」
と相談するようになった。
すると面白いことが起きた。
ChatGPTまで、だんだん「どういうものを作りたいか」ではなく、「Codexにどうコードを書かせるか」を中心に考えるようになってきたのだ。
私は途中で、
「いや、そもそも何を作りたかったんや?」
という感覚になった。
優秀な社員が増えたら、マネジメントが必要になる
よくAIについて、
「24時間働く社員ができる」
という表現を目にする。
確かにそうなのかもしれない。
でも実際に使ってみて思った。
優秀な社員が増えたら、仕事を全部その社員に渡せばいいわけではない。
誰に何を任せるかを考える人が必要になる。
私の場合、今のところこう考えている。
作りながら考える仕事はChatGPT。
小さなコード変更もChatGPT。
一方、原因不明のデバッグ、大規模なリファクタリング、複数ファイルにまたがる調査、セキュリティチェックなどはCodex。
Codexができないからではない。
むしろ何でもできるからこそ、仕事を選んで渡した方がいい。
AI時代にも「それ、誰に頼む仕事?」は残る
DXの専門家でもナッツは買える。
でも、ナッツを買えることと、その人にナッツを買いに行かせることが合理的かどうかは別の話だ。
AIも同じだった。
「このAIには何ができるか?」
ばかり考えていたけれど、本当に考えなければならないのは、
「この仕事は、誰にやらせるのが一番いいのか?」
なのかもしれない。
AIが増えれば増えるほど、人間の仕事がなくなるという話をよく聞く。
でも今日一日AIを使い倒して感じたのは、少し違った。
優秀なAIが増えるほど、
誰に、何を、どこまで任せるかを判断する仕事が重要になる。
そんなことを考えながら、木津市場のナッツを思い出した。
まさかあの経験が、AIの使い方を考える材料になるとは思わなかった。
