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【掌編】永遠の夏空に ~草原に埋もれた青春~♬弾き語り付


 その場所を見つけたのは、本当に偶然だった。

 高2の夏休み、僕とユージとショータとの3人で、隣町の海岸へ海水浴に出かけた。隣町といっても平成の大合併で、同じ津市に含まれてしまったけれど。
 伊勢湾に面したそこは、白砂青松の美しい海岸が広がり、波も穏やかで、遠浅の海水も青く澄んで美しい。


津市香良洲町の海岸(2003年頃)

 
 夕方、真っ黒に日焼けしたボクらは、チャリで帰る途中、やたらと広い草原くさはらが、道の片側に延々と広がっているのに気づいた。
 その茫漠ぼうばくたる風景に、思わず自転車を停めた僕らは、何かに引き付けられるように、自転車を置いて、草原の中へ入っていった。
 オオマツヨイグサやヒメジョオンをかき分けながら、僕らはその広大な草原が、明らかに普通の空き地ではない事を感じ取っていた。

 
 しばらく進むと、草の背丈が低い広々とした場所へ出た。

「あ!ここは土がない!」
 
 最初に気付いたのはユージだった。

 ビーチサンダルで突いた草の隙間には、古い灰色のコンクリートが剥き出しになっていた。もしも草がなかったら、その平らなコンクリートの広さは、湾岸の国道なんかより、はるかに広く長い。


「おーい、そっちへ行ったら危ないぞ!」

 道を挟んだ反対側で畑仕事をしていたおじいさんが、わざわざ僕らの後を追って草原に入ってきた。

「ここは昔の海軍の基地の跡や。」
「じゃ、このコンクリートは?」
「滑走路の跡じゃろ。特攻隊の。」
「特攻隊!?」

 


 おじいさんに教えられて、僕らは歴史資料館を訪ねた。
もう閉館間近だったが、好意で入れてもらう事ができた。


津市香良洲歴史資料館


 この歴史資料館の門柱は、戦時中に使われていた三重海軍航空隊の門柱そのままだった。

 館内には、この地で特訓を受け、特攻隊として沖縄や本土近海に散った航空兵たちの遺影がずらりと並んでいた。
 そして、彼らの若さに驚いた。

 ショータが呟いた。

「オレらとおんなじ歳や!」


津市香良洲歴史資料館の展示

 
 母親や兄妹、愛する人への遺書を残し、わずか、17歳や18歳という年齢で大空に散っていった若者たち。
 僕たちが海水浴を楽しんでいた、この美しい香良洲海岸の空を、片道飛行で飛び立って行った若者たち。

 僕らは、もう一度、暮れかけた滑走路跡の草原に戻った。
灰色のコンクリートの上で、思わず空を見上げた。
 
 茜色に染まった入道雲が広がる夏空から、かすかに零戦のエンジン音が聞こえたような気がした。
 
 

     永遠の夏空に 2026.07.13.弾き語り
     Music&Words by Tatsuhiko Masuda

ヒメジョオンしげる  草野原  
隙間に見つけた  灰色の地面
ここだよ、という声に見上げたら  
夏空の遥か、あの音が聞こえた

写真立ての中、あなたの姿は  
ちょうど  僕と同じくらい若くて
透き通るような  あなたの瞳は
ちょっと  はにかんでいるように見える
  
 きっと両親や  兄妹や  恋人や 
    そんな愛する人たちを想い
  少し照れながら  少し誇らしく
    そして強い覚悟を  印画紙に残した

真っ白な入道雲が  そびえ立つ 
真っ青な夏空に  飛び立つ銀燕 
遥か遥か  南の海を  
あなたは目指し  飛んで  消えた
  
片道だけの永遠の夏
片道だけの永遠の夏空

アナログ録音の弾き語り・未修正・できればイヤフォンでお聴きください

< 了 >

お読みいただき、ありがとうございます。
このお話はフィクションですが、
三重海軍航空隊、津市香良洲歴史資料館、基地の跡地は、
実在するもので、ボク自身が体験した事実です。

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