InDesign|先頭にページを追加したいけどうまくいかない?…というお話
ちょと前の話になりますが、InDesignのページ操作について動画を1つアップしました。見開きページの前方に、片ページを追加する手順の作例動画です。
「ファイルの先頭にページを追加したいんですけど、やり方が分からないです……」という質問が思いのほか多いので、InDesign教室の参考資料をかねて作ってみました。
WordやPowerPointのような1ページ綴りのファイルと違い、見開きページのレイアウトを崩さずに、前方へ1ページ挿入するには少し手間がかかります。
見開きページでレイアウトできるアプリケーション自体が少ないこともあって、口頭や文面ではイメージが伝わりづらいこともしばしば……。ということで、実際に操作の様子を収録して動画にしたものです。
今回はこの動画について、補足をしようと思います。
先頭にページを追加するのはどんな時?
そもそも「ファイルの先頭にページを追加する」というシチュエーション自体、少し特殊かもしれず、どちらかと言えばマニアックなケースなのかもしれません。ネットを検索してもこういう話はあんまり出てこないみたい。
この動画のような操作は、どういう時に必要なんでしょうか。いくつか例を考えてみました。
表紙と本文を別々に作っていたけれど、本文ファイルの先頭に表紙を加えることになった!
雑誌の記事を見開きで作っていたけど、諸々の都合で先頭にページを追加することになった、しかも片ページ始まりで!
まず(1)は、例えば次の【図1】のように、別々に作っていたレイアウトを、やっぱり1つのファイルにまとめたいというケース。
この図のような印刷仕様の確認不足だったりすると大変困りますが、そもそもの仕様が諸事情で急遽変更になってしまった!……なんてこともあるかもしれません。様々なケースがありえるんじゃないかと思います。

また(2)は、雑誌制作で起こりそうなケースかも。
雑誌の場合、記事ごとに進み具合が違いますから、ファイルを分けて進行することが多いと思います。例えば、次の【図2】のように見開き2ページの記事を1ファイルで作るイメージです。
こうしたファイルに、「関連広告が急遽決定、ページを追加!」……ということが、たまにあります。雑誌の規模やジャンル、進行状況にもよるでしょうが、少なくとも私が関わった月刊誌では、割とこういうことがありました。
売上が増えるんですから万々歳ですが、その分ページの調整が必要です。

逆に広告を見込んでページを空けておいたものの、残念ながら成約に至らない……、ということも儘ありましょう。
広告に限らず、新規の速報記事が加わったり、逆に諸事情で掲載できなくなる記事が出てきたりと、雑誌制作の進行ではイレギュラーなことが色々発生しそうです。
こんな風に様々な媒体で、様々な事情から、ページ調整が必要なケースは起こりえるのかなと思います。中には進行方法に難がある案件もあるかもしれませんが、順調に進んでいても想定外の事態は起こるものです。
InDesignのページ操作に慣れない頃にこうしたケースに遭遇すると、どうすればよいか困ってしまうかもしれません。そんなこともあって作ってみたのが冒頭の動画になります。
最近はPDF入稿で済むケースもあるし、必ずしもInDesignファイルを合体しなくても良さそうですが、ネイティブデータで印刷会社に入稿する場合や、データ管理の都合などで、1つのファイルにまとめておきたいケースもあるようです。
(まあ、ネイティブデータ入稿であっても、判形が揃っていて掲載順も判別できれば印刷会社で面付け(めんづけ/めんつけ)できるので、ファイルが分かれていても問題ないかもなあ……と、個人的には思いますけれど……。「面付け」のことは別の機会に……)
地味にコツがいる前方へのページ追加
色々なところで紹介されているように、InDesignでページを追加すること自体は、そんなに難しくありません。
ですが冒頭の動画で紹介しているような……、
先頭ページの前方に新しいページを追加!
ただし現在の見開きはそのままキープ!
……という条件を満たすには、少しコツがあります。
◉先頭ページの「ページ番号設定」
まずポイントになるのは「先頭ページのページ番号設定」です。
InDesignの前提として、ドキュメントの先頭が片起こしになるか、見開き起こしになるかは、先頭ページに設定するページ番号の数値次第です。次の図のようにページ番号の値が……、
奇数番号から始まる時は、片起こし【図3】
偶数番号から始まる時は、見開き起こし【図4】
……になります。 *偶数には2桁以上の下一桁「0」の値も含みます(10, 20, 30……等)



繰り返しになりますが、ページ番号が「奇数」か「偶数」かで、先頭ページのレイアウトが変わるというのが、InDesignの基本的な仕様なんですね。
正確には「冊子制作の一般的なルールに則っている」ということになるのですが、その話はまた別の機会に……。
◉前方に「1ページだけ」挿入するとレイアウトが崩れてしまう
さてこのページ番号ですが、先頭ページに関しては「ドキュメントの先頭に固定的に適用」されます。
つまり先頭より前方にページを追加すると、新しく挿入されたページが先頭ページになり、ページ番号も継承されるということですね。
当たり前といえば当たり前のことですが、【図5】のように、前方に1ページだけ挿入すると、見開きが崩れてしまうのはこの特性が理由なんです。


◉あえて「2ページ」挿入して、当初の見開きをキープ!
【図5】を見れば分かるように、見開きが崩れてしまった原因は、「1ページのみ」を挿入したことです。
挿入するページ数を「2ページ」にすれば、当初の見開きが崩れることはありません。【図6】


このように2ページ単位で挿入すれば、当初の見開きを保ったまま、新しいページを追加できます。
ここでは見開きを例にしていますが、片起こしから始まる時も考え方は同じです。2ページ単位で挿入することで、既存の見開きやレイアウトを保ちながら新規ページを追加できるでしょう。
片起こしにするための工夫
2ページ単位で挿入すれば、見開きを崩さずにページを追加できることは分かりました。でも作例で求めているのは見開きではなく、片起こしから始まるファイルにすることです。
とはいえ、この状態から単純に先頭のページを削除しても、【図7】のように、後ろのページが前方に送られるだけで、片ページにはなりません。
先頭を片起こしにするには、もうひと工夫必要です。


◉もう1つのポイント「開始セクション設定」
ここでもう1つのポイントになるのが「開始セクション」の設定です。
「ページパネル」で先頭ページのアイコンを見ると、楔のような「▼」の印が付いています【図8】。これが「開始セクション」です。

「開始セクション」は「ここからページ番号が始まるよ!」という目印です。デフォルトはドキュメントの先頭に設定されていて、「ページ番号とセクションの設定」の画面で確認できます。
ただし先頭ページに関しては、グレーアウトしていて設定を変更できなくなっています【図9】。前述のように「ドキュメントの先頭にあるページ」には、無条件かつ固定的に「開始セクション」が適用されるようですね。

この「開始セクション」を利用することで、見開きページから片起こしに調整することができます。冒頭動画の内容と重なりますが、以下に解説しておきます。
◉「開始セクション」は1つのドキュメントに複数設定できる
まず先頭ページでは設定できなかった「開始セクション」ですが、他のページであれば設定できます。
つまり先頭ページ以外でもページ番号を開始できるということです。
【図10】のように「ページパネル」で「p.3」を選択してから「ページ番号とセクションの設定」を表示すると、「開始セクション」を設定できるのが分かります。


この図のように「開始セクション」をON、「ページ番号割り当て開始」を奇数に設定し直すことで、選択していたページに「開始セクション」が設定され、新しいページ番号が始まります【図11】。


◉強力な機能でもある「開始セクション」
ここまで見てきたように、InDesignのドキュメントは複数の「開始セクション」を設定できます。
それだけでなく、【図11】で設定された「新p.1」 から新しいセクションが始まったことで、このページは片起こしとして固定されました。
このため、先頭の「旧p.2」を削除しても、「新p.1」は片起こしのまま保たれます【図12】。

このように「開始セクション」の機能は単に新しいページ番号を開始するだけではありません。設定したページの位置を保持するという側面を持つ、とても強力な機能でもあるのです。
そしてここまでの操作を行うことで、当初の希望通り見開き(黄色のページ)を保ったまま、先頭にページを追加することができます。
本のページ数を調整する時は、2ページ単位で考えると整理しやすいかもしれない
というわけで、動画の内容を振り返りながら、ページを追加する手順を見てきました。
先頭ページの前方に挿入する作例でしたが、先頭だけでなく、途中のページに新しいページを挿入する時にも応用できる手順だと思います。
いくつかポイントがありましたが、一番のポイントは「2ページ単位」で考えるということでしょう。
ちょっと話が飛ぶようですけれど、そもそも「本のページ」というものは「1ページ」では成立しません。紙の本に「1ページ追加する」ということは、「紙を1枚追加する」ということになるからです。
紙の最低単位は1枚ですが、1枚の紙をページとして捉えると、必ず表裏の2ページがセットになっていることに気がつきます。
つまり1ページ増やすということは、必然的に2ページ増えるということになるわけです。ページを増やしたり減らしたりする時は、「2ページ単位で考える」と述べたのはそういう背景があります【図13】。

極端な表現をすれば、たった1枚であっても、単なるペラペラの紙ではなく、表裏2面=2ページ分の情報を持つ1つのメディアであると言えるでしょう。
パソコンの画面でバーチャルにレイアウトしていると感覚的に掴みづらいかもしれませんが、印刷される本は実際に形のある物質で、ページには必ず表裏があります。このイメージを常に意識していると、ページ数やレイアウトを調整する時の手がかりになるんじゃないかと思います。
厳密に言えば、製本方法によって最低ページ数が変わるため、「2ページ単位」というのは最低限の考え方になります。興味のある方は後述の補足「面付け、折、台割」もご覧ください。
おわりに
というわけで、「先頭ページの前方」にページを追加する手順を振り返ってみました。
最後はちょっぴり話が飛躍しましたが、冊子を作り始めると、ページサイズやページ数、全体のページ構成等々、「ページ」に関して考えることがたくさん出てきます。
InDesignのページ操作は意外に難しく感じてしまうケースもあるので、冒頭動画とこの記事がページ調整で困ったときのヒントになればと思います。
少しでもお役に立てていれば幸いです。
最後までお読みくださりありがとうございました。
補足
◉ページの基本的操作のオススメ動画
ネットや本で調べると、ページの基本的な操作について色々な資料が出てきます。中でも『InDesignの勉強部屋』の森祐司氏の動画が、すごく分かりやすいのでオススメです。
InDesignの勉強部屋のYoutubeチャンネルには、他にも基本操作に関する動画が紹介されていますから、ご興味ありましたらぜひご覧ください。
◉表紙と本文を別々に作る時
【図1】で「表紙と本文を別々に作っていたけど合体する」……という例を図解しました。そのことについて補足しておきます。
お気づきの方もいらっしゃるかもしれませんが、【図1】は「中綴じ冊子」の事例になります。「無線綴じ冊子」では、【図1】のように表紙を本文と合体するようなことはまずありません。無線綴じ冊子の表紙には背表紙が入りますから、表紙専用のデータが必要になるからです。
(表紙作りについてご興味がありましたら、下記関連記事もご覧ください)
一方、中綴じ冊子の場合、表紙と本文を同じ用紙で印刷するのであれば、ひとつのファイルにまとめてしまうことも珍しくありません。「【図1】は中綴じの事例」と述べたのは、そういうわけなんです。
というわけで、中綴じ冊子の前提で【図1】の状況を考えてみましょう。
【図1】では「表紙は別進行!」という前提で本文の制作が進んでいましたよね。ですがよく見ると、表紙の次のページ「p.2」にも本文がレイアウトされています。もしかすると、この状況に違和感を感じた方もいらっしゃるんじゃないでしょうか。
というのも、表紙の次に「p.2」を掲載するなら、「p.2」は表紙の裏面に印刷するはずです。にもかかわらず「p.2」の前に入るはずの表紙を、本文の制作に考慮しなくてよいという指示は不自然です。
つまり何が言いたいかというと、本文ファイルの先頭に表紙が加わることは、制作段階で予測できたんじゃなかろうか?……ということです。
もちろん中綴じ冊子であっても、表紙と本文を別々に印刷することはあります。本文と異なる加工がある時は別進行になるからです(表紙の紙を本文よりも厚い用紙にしたり、表面保護のPP加工を表紙に施したり等々)。
ただその場合も、やっぱり表紙に続く「p.2」と「本文の最終ページ」の印刷がネックになります。
本文と表紙を分けて印刷するということは、表紙のウラに印刷される「p.2」と、裏表紙の裏面にあたる「本文の最終ページ」も、本文と分けて印刷されるということになるからです。つまり表紙だけでなく「表紙裏面の印刷用データ」が、本文とは別に必要になるはずなんですね。【図A】

つまり【図1】の事例は、表紙を分けるにしろ一緒にするにしろ、そのままのデータでは印刷にまわせない状況だったかも?……ということになります。
さらに言うと、仕様の確認不足が原因だったとはいえ、製本方法を考慮すれば、【図1】のような対応になることは、事前にある程度予想できた可能性があるということでもあります。
製本方法が明らかであれば、どのようなデータを作る必要があるかを予測できる……というかむしろ、製本方法や印刷の仕様が決まらないうちは、制作をはじめることは難しいという方がよいでしょう。
まわりくどい話なので本編では省略しましたが、このように冊子のページ構成と印刷・製本の方法は密接に関わっているんですね。
まだ冊子づくりに慣れていない方にも、「こういうことがあるのかも?」ということが、なんとなくでも伝わればよいなと思います。
とはいえ、あらかじめ関係者間で合意が取れていても、諸般の事情で急遽仕様が変わっちゃうことも稀にあるのですけれど、実際には……。台割(だいわり)の都合が関わってくることもありますし、本当にケースバイケースです。
何はともあれ、こうした事態になったとしても、クライアントや印刷会社とコミュニケーションを取りながら進めていきたいところです。
◉面付け、折、台割
本編に出てきた「面付け(めんつけ、めんづけ)」とは、本を作る時に覚えておきたい印刷用語のひとつです。
面付けで検索するとたくさん解説が見つかりますから詳細は省きますが、一般的な印刷会社では、1枚の大きな紙に複数のページをまとめて印刷します。大きな紙に印刷するために、一定の順番でページを並べるのですが、その工程を「面付け」と呼びます。
大きな紙にはオモテ面とウラ面の両方に印刷します。片面には8〜16ページ程度並べるので、両面で16〜32ページ程度をまとめて印刷できることになります(面付けできるページ数は本のサイズ次第です)。
このように両面に印刷したひとまとまりを「折(おり)」または「台(だい)」と呼びます。
ページ数が多くなると1つの折では足りないため、複数の「折」(台)が順番に印刷されます。それらを束ね、表紙で包むことで1冊の本が完成します。
1冊の本にどの程度の折数(台数)が必要になるかは、全体のページ数で変わります。そうした複数の折を管理するために必要なのが「台割(だいわり)」(「ページ割」とも)です。冊子の制作では、ページと折の構成を台割で管理しながら進行するのが一般的でしょう。
本編では「ページの増減は2ページ単位で考える」と述べましたが、厳密には台割の構成を考慮しながらページ数を調整することになります。
例えば中綴じ冊子の最小ページ単位は4ページなので、2ページだけ増えたり減ったりすると製本できません。
無線綴じ冊子であれば2ページ単位でも調整できますが、2ページ=1枚だけの折(ペラ丁合)となるようでは、製本上、あんまり好ましくない場合があります。無線綴じであっても、できれば4ページ単位で。理想を言えば8ページを最小単位で台割を考えたいところです。
「面付け」「折」「台割」は、ページのことに直接関わる大事な考え方です。興味のある方は調べてみてくださいね。
これについても機会を見てまとめてみたいと思っています。
気長にお付き合いいただけますと幸いです。
(「教室からのお便り」2024年12月)
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