今日飲んだワイン「ドメーヌ・ルー・ペール・エ・フィス ブルゴーニュ・アリゴテ」
ブルゴーニュ・アリゴテ 2021 の概要と魅力
今日飲んだワイン、今回はドメーヌ・ルー・ペール・エ・フィスのブルゴーニュ・アリゴテ 2021です。

フランス・ブルゴーニュ産の白ワインで、ブドウ品種はシャルドネではなくアリゴテ。一口飲むと青リンゴやレモンを思わせるフレッシュな風味が広がり、爽やかな酸味がカルパッチョのような前菜と抜群にマッチします。キリっと冷やして飲むと食事のスタートを飾る食前酒にもなり、重たすぎず軽快な飲み心地なので親しみやすい一本です。
また、生産者のルー・ペール・エ・フィスは5世代にわたって続くサン=トーバン村の老舗ワイナリーであり、その歴史やストーリーがこのワインに深みを与えています。ここからは、このワインやワイナリー、そして使用品種アリゴテにまつわる様々な物語をご紹介していきます。
サン=トーバン村最大の老舗ワイナリー、ルー家の歴史
ドメーヌ・ルー・ペール・エ・フィス(Domaine Roux Père et Fils)は、ブルゴーニュ地方コート・ド・ボーヌ地区のサン=トーバン村に拠点を置く家族経営のワイナリーです。

その始まりは1885年までさかのぼり、初代ルイ・ルー氏がサン=トーバンに小さなブドウ畑を持ったところからスタートしました。当初は所有畑が1ヘクタールにも満たない本当に小規模なブドウ農家でしたが、代を重ねるごとに少しずつ畑を拡大していきます。大きな転機が訪れたのは1960年代、3代目のマルセル・ルー氏の時代です。マルセル氏は銀行から融資を受け、大胆にも未開墾の土地や当時あまり栽培されていなかった区画にも目をつけて所有者と交渉し、どんどん畑を買い増していきました。そして1972年、マルセル氏とその弟によって「ドメーヌ・ルー・ペール・エ・フィス」が正式に設立されます。その後はマルセル氏の息子たち(4代目)がワイン造りに加わり、所有畑面積と生産量は年々増加しました。1990年頃までに畑は約25ヘクタールに拡大し、サン=トーバン村でも有数の生産者へと成長します。
現在ワイナリーを切り盛りするのは、5代目となるセバスチャン・ルー氏とマテュー・ルー氏の兄弟です。彼らは2000年代初頭から家業に参画し、ブルゴーニュ各地で品質の高いワイン造りに挑戦してきました。その結果、ルー家が所有する畑はコート・ド・ニュイやコート・シャロネーズなども含めブルゴーニュ24の村にまたがり、合計70ヘクタール以上にもなっています。これは銘醸地ブルゴーニュでは異例ともいえる大規模さで、生み出されるキュヴェ(銘柄)は100種類を超える豊富さです。
もともと自社畑のブドウで造る「ドメーヌもの」だけでなく、優れた栽培農家からブドウや果汁を買い付けてワインを仕込むネゴシアンとしての顔も持ち、ルー家の親戚が所有する畑のブドウも「ファミーユ・ルー」名義で手掛けています。こうした柔軟な経営で規模を拡大しつつも、家族経営の情熱は5世代にわたり受け継がれ、近年はオーガニック農法の導入や区画ごとのきめ細かな醸造など品質向上への取り組みも積極的です。実際、ルー・ペール・エ・フィスのワインは有名ワイン評価誌で高得点を獲得したり、フランスや日本の星付きレストランのソムリエにも信頼される存在となっています。サン=トーバン村最大の老舗として培った伝統に加え、新世代のチャレンジ精神がこのワインにも息づいているのです。
ブルゴーニュの名脇役アリゴテ – シャルドネの陰に隠れた白ブドウ品種
今回のワインに使われているアリゴテ(Aligoté)は、ブルゴーニュを代表するもう一つの白ブドウ品種です。白ワイン用ブドウといえば世界的なスター品種であるシャルドネが同じ土地で栽培されていますが、実はこのアリゴテもシャルドネと遠い親戚(古代のブドウ品種の自然交配で生まれた兄弟品種)にあたります。しかしその知名度や評価は長らくシャルドネの陰に隠れ、「地味な脇役」という立ち位置でした。ブルゴーニュ全体での栽培面積もシャルドネのわずか10分の1程度しかなく、生産者もまずは高値で売れるシャルドネやピノ・ノワールに注力するため、アリゴテは後回しにされがちだったのです。実際に一昔前のアリゴテワインといえば、「薄くて酸っぱい安ワインでしょ?」というイメージを持つ人が多かったかもしれません。
この背景には歴史的な理由があります。アリゴテのブドウやワインは、市場でシャルドネよりはるかに安い価格しか付かなかったため、昔のブルゴーニュでは「ブドウが完熟しにくい寒い土地」や「肥沃ではない痩せた区画」など条件の良くない畑に植えられる傾向がありました。当然そこでできるブドウは酸味が強く薄い味わいになりがちで、生産者も高値で売れないならと量産志向になってしまう──そんな悪循環で、質より量の細身なアリゴテが大量生産され、市場の評価も低迷していたのです。さらに時代を遡ると、アリゴテは19世紀末以降に東ヨーロッパや旧ソ連圏へも広まりました。耐寒性が高く収量も稼げる品種なので、ソ連時代には安価な大衆ワイン用ブドウとして大規模に栽培された経緯があります。こうしたこともあり「安い辛口ワイン」のイメージが長年定着してしまいました。
しかし近年、このアリゴテが再評価されつつあることをご存知でしょうか。2010年代の終わり頃からブルゴーニュ本国でアリゴテに注目が集まり始め、品質向上に情熱を傾ける生産者が増えてきました。栽培方法を工夫して低収量で凝縮感のあるブドウを収穫したり、ステンレスタンクだけでなく敢えて樽発酵・樽熟成してコクを出したりと、アリゴテの潜在能力を引き出す試みが各地で見られます。
またブルゴーニュでは唯一アリゴテに特化したAOC(原産地呼称)としてブーズロン(Bouzeron)村があります。コート・シャロネーズ地区に位置するこの村は昔から良質なアリゴテの産地として知られ、1970年代に「ブルゴーニュ・アリゴテ・ブーズロン」という地域名付きAOCが認められました。さらに1998年には格上げされてシンプルに「ブーズロン」という村名AOCとなり、法定収量も引き下げられたことでより高品質なアリゴテワインが生み出されています。
実際、ドメーヌ・ルー・ペール・エ・フィスも最近ブーズロンの畑を取得し、この地のアリゴテ造りに参入しているようです。気候変動でブルゴーニュの気温が上がったことも追い風となり、以前は酸っぱすぎた冷涼地のアリゴテが今やちょうど良い酸味を保ちながら熟度を増すケースも出てきました。こうした流れから、アリゴテは「キール用の脇役」から食中酒としても楽しめる個性的な白ワインへと地位を向上させつつあります。
戦後ブルゴーニュを救った伝説のカクテル「キール」とアリゴテの物語
アリゴテというブドウの名前を聞いたとき、ワインそのものよりカクテルの「キール」を思い浮かべる方もいるかもしれません。キール(Kir)とは、白ワインに黒スグリのリキュール(クレーム・ド・カシス)を少量加えたシンプルなカクテルで、ブルゴーニュ地方の伝統的な食前酒です。

実は本場のキールに使われる白ワインこそ、アリゴテなのです。キールという名前はこのカクテルを世に広めた人物、ディジョン市長カノン・フェリクス・キール氏に由来しています。彼は第二次世界大戦中はレジスタンスの英雄としても名を馳せた聖職者でした。戦後フランスがまだ物資不足で苦しかった1940年代後半、ディジョン特産のカシスリキュールと手頃な地元産白ワインであるアリゴテを組み合わせたこの一杯をイベントなどで振る舞い、大いに人々を喜ばせたそうです。当時、高級赤ワインやシャンパーニュは贅沢品で手が出なかった中、このカクテルは安価な地元産ワインの販売促進策としても大成功を収めました。実際「キールのおかげで戦後低迷していたブルゴーニュワインの売上が上向いた」という逸話も残っています。
そんな歴史を持つキールは、現在でも食前酒の定番として愛されています。作り方はとても簡単で、グラスの白ワイン(本格派はアリゴテ!)に少しクレーム・ド・カシスを注ぎ、泡立たないよう優しく一混ぜするだけです。アリゴテ由来のシャープな酸味にカシスの甘みが加わり、程よい飲みやすさで食事前の口を潤すのにぴったりの味わいになります。もちろん今回のブルゴーニュ・アリゴテ 2021は、そのままストレートに飲んでも爽やかで美味しいワインです。でも「ちょっと味に変化が欲しいな」というときには、ぜひキールを試してみるのも面白いでしょう。伝統的なレシピにならって地元ブルゴーニュ産のアリゴテで作るキールは格別ですよ。当時のディジョン市長に思いを馳せながら、このワインのもう一つの楽しみ方として味わってみるのも粋な体験かもしれません。
ルー家のブルゴーニュ・アリゴテを楽しむために – おすすめのシーンと飲み方
最後に、紹介したドメーヌ・ルー・ペール・エ・フィスのブルゴーニュ・アリゴテ 2021をより楽しむためのポイントやシチュエーションについてお伝えします。このワインは比較的手頃な価格帯(ボトル1本あたり3千円前後)で手に入るフレンドリーなブルゴーニュ白です。せっかくなら、その魅力が最大限活きる場面で開けてみたいですよね。
こんなシーンで
アリゴテの持ち味である爽やかな酸と軽快な果実味は、食事のスタートを飾るアペリティフ(食前酒)にぴったりです。冷蔵庫でキンと冷やしておいて、夕食前のひとときにチーズや生ハムのおつまみと一緒に一杯…なんて最高です。また、暑い夏の日に昼下がりのブランチや週末のベランダ飲みにもマッチします。酸味がきれいなので和食とも意外に相性が良く、例えば白身魚のカルパッチョやタコのマリネ、揚げ物をさっぱりいただきたい時など、このワインが爽やかな箸休め役になってくれるでしょう。
こんな人と
気負わず楽しめるカジュアルな白なので、ワイン初心者の友人と一緒にテイスティングしてみるのもおすすめです。辛口ですがフルーティーで飲みやすく、「これがブルゴーニュの白ワインなんだ!」と驚いてもらえるかもしれません。もちろんワイン愛好家にとっても、シャルドネ主体の高価なブルゴーニュ白とは一味違う個性が新鮮で、「実はブルゴーニュにはアリゴテって品種もあってね…」なんて豆知識を語りながら盛り上がれます。家族との普段の食事にも程よい華を添えてくれるので、ホームパーティーや気の置けない仲間との食事にも最適です。爽やかな酸味が後口をスッキリと締めてくれるので、みんなでワイワイ料理を楽しむ席でも重たくならず、次の一杯に手が伸びることでしょう。
楽天市場でブルゴーニュ・アリゴテを購入
今回ご紹介したブルゴーニュ・アリゴテ 2021は、歴史あるルー家のストーリーとブルゴーニュの伝統が詰まった一本でした。5世代続く家族の情熱や、アリゴテという品種に隠された物語を感じながら味わうと、ただ美味しいだけでなくワインの背景まで含めて楽しめるはずです。ぜひ気軽なシーンでこの爽やかな一本を開けてみてください。ブルゴーニュの名脇役があなたの食卓で主役級の活躍をしてくれることでしょう。乾杯!
