見出し画像

(思考整理)地下アイドルは「成長している実感」で応援されているのかもしれない

東京転勤してから、3年近く通っている地下アイドルグループがある。

昨今の地下アイドルシーンでは少し特殊なグループで、基本的にライブは専用劇場のみ。たまに大きなところで単独ライブ。
対バンは以前こそ多少出ていたものの、ここ1〜2年はほとんど見なくなった。

いわゆる“ホーム”中心の文化。
自分は何だかんだで10年近く地下アイドルを見ているので、この文化自体は理解しているつもりだ。

通いやすいし、フロアの雰囲気も安定している。毎回知らない現場へ行く疲労感もない。ホームで完結するアイドルには、確かにその良さがある。

ただ最近、ちょっと引っかかってることがある。
少し前にグループから「3年後に武道館へ」という目標が発表された。一方で、活動スタイルそのものは大きく変わっていないようにも見える。

もちろん、外へ向けた試み自体は色々やっている。大手YouTuberとのコラボだったり、外国人スタッフを入れてみたり。

ただ、入口を広げる施策は増えているのに、ライブスタイルそのものはかなり“内向き”なままなので、見ている側としては時々、「このグループはどんな成長ストーリーを描こうとしているんだろう」と感じることがある。

もちろん、全部に意味はあるのだと思う。経営側にしか見えていない景色や、長期的な戦略もあるはずだ。

ただ、アイドルを長く追っていると、単純に“夢”そのものより、“夢へ向かう過程”を見ている感覚が強くなる。

どんな順番で階段を上がっていくのか。
どんな景色を見せてくれるのか。
どんな変化を経ていくのか。

実はヲタクは、その“成長のナラティブ”にかなり感情移入していることも多い。

だから、ロードマップが見えなかったり、「このグループは今どこに向かっているのか」が掴みにくい状態が続くと、ヲタクは熱量の置き場を失いやすいのかもしれない。


熱量の高いヲタクほど、実は“成長を見届けたい”気持ちが強いと思う。
毎回来る。チェキも積む。最前も張る。

でも、その熱量が高いからこそ、「この先どんな景色を見せてくれるんだろう」という期待も大きくなる。

そんな中で他現場を知ると、別のグループの“成長のナラティブ”が見えてしまう。

例えば、少しずつ大きなフェスやイベントへ出演したり、ワンマンライブの箱が大きくなっていったり。
可視化されれば、ヲタクは応援しがいが出てくる。



私自身、10年近く追っている別のグループがある。
そのグループは、いわゆるローカルアイドルなのだが、まず歴史があるグループなので、グループ自体が非常に安定しており、「ホーム感」がある。

ただ、そこで停滞感を見せるわけではなく、メンバーが定期的に入れ替わったり加入するため、メンバー個人の成長を見守り、応援することができる。
積極的に海外ライブに挑戦したり、メンバー個人個人が活動範囲を少しずつ広げたりしていて「成長のナラティブ」がずっと可視化されている。

言い換えれば、ホーム的な安定感と成長のナラティブのバランスがとても良いと感じる。
そのため新規についたヲタクが、アイドル側の理由だけではあまり離脱しないように思う。少なくとも私は10年飽きていない。


アイドルヲタクは、グループそのものを応援しているというより、“成長していく物語”を追っていく感覚に近いのかもしれない。

地下アイドルにとって、成長のナラティブの見せ方のひとつが、対バンライブや大型フェス・サーキットなのでは?と考える。

外の空気に触れること。
他グループと比較されること。
自分達の立ち位置を知ること。

そういう経験の積み重ね自体が、ヲタクにとっては「このグループは今ここにいる、成長できている」という実感になると思う。

これはアイドルにとっても単なる新規獲得以上の意味があると思う。


もちろん、ホーム中心の文化を否定したいわけではない。安定して楽しめる場は貴重だし大事。

ただ、閉じた空間でヲタクの熱量を維持させ続けるには、“成長している実感”や“物語の更新”が以前より重要になっている気がする。

実際、YouTuberコラボなどをきっかけに新しく現場へ来る人は増えているように見える。ただ、その人たちが長期的に定着するかどうかは、また別の話なのだと思う。

ライブが楽しい、曲が良い、メンバーが可愛い。それだけでも現場へ通う理由には十分ある。
でも、地下アイドルという文化は、ある種“長期連載”のような側面もある。

今後どんな景色を見せてくれるのか。
グループやメンバーがどう変化していくのか。
自分はその物語をどう見届けたいのか。

そういった「成長のナラティブ」が見えることで、ヲタクは長く熱量を持ち続けられるのかもしれない。

逆に言えば、どれだけ新規ファンが増えても、その“物語の続き”が見えづらい状態だと、熱量の置き場所を失ってしまう人も出てくる。

繰り返しになるかもしれないが、そういう観点でも対バンライブや大型フェス・サーキット等への出演には、新規獲得以上の意味があるのではないかと思う。

外の世界と接続すること。

他グループとの比較の中で、自分達の現在地を知ること。

「前より少しでも前へ進んでいる」という感覚をアイドルとヲタクが共有すること。

それ自体が、グループにとってもヲタクにとっても、“成長の可視化”になる。

ヲタクは案外、“完成された強さ”より、“成長していく途中”に惹かれているのかもしれない。

いいなと思ったら応援しよう!