自分自身への『いいね』を
SNSに投稿した瞬間、無意識に画面を更新してしまう。
誰が反応してくれたのか、どれだけの「いいね」がついたのか。数字が増えるたびに胸が弾む一方で、思ったほど伸びなければ、心はひそかに沈んでしまう。
「あの人の投稿はすぐに100件のいいねがつくのに、どうして私のは…」
――そんな比較のため息をついた夜が、誰にでもあるだろう。
けれど考えてみてほしい。そもそも「いいね」とは何だろう。
ほんの一瞬のタップでつく、軽やかな合図。相手の心に深く残るものではない。数字として並んだその印は、たしかに一時の高揚をくれるけれど、翌日にはもう消えている。なのに私たちは、まるでそれが自分の価値を示す証拠であるかのように一喜一憂してしまう。
本当に必要なのは、他人の「いいね」よりも、自分の「いいね」ではないだろうか。
今日一日を振り返って「よくやった」と自分に頷ける瞬間。
小さなミスをしても、誠実に対応できたこと。疲れていたけれど、帰り道に花の香りを感じられたこと。誰に見せるわけでもない、ひとりの時間の中で心に押す「いいね」こそが、私たちを支える力になる。
心理学者カール・ロジャーズは「自己一致」という概念を語った。
自分が感じていることと、実際の行動が一致しているとき、人は最も充実感を覚える。つまり「人にどう見られるか」ではなく「自分が納得できるか」が、本当の満足を生み出すのだ。
もちろん、他人からの承認をすべて否定する必要はない。
誰かに認められることは嬉しいし、励みになる。だが、それを自分の価値の基準にしてしまった瞬間、私たちは数字に縛られる。どれだけ「いいね」を集めても、もっと欲しくなってしまうのはそのせいだ。
大切なのは順番を入れ替えること。
まずは自分が自分に「いいね」と言えるかどうか。そこに軸を置いたとき、他人からの反応はただのスパイスになる。多くても少なくても、自分の価値は揺らがない。
だれかの「いいね」を追いかけて疲れてしまった夜、自分の心に問いかけてみてほしい。
「今日は私に、いいねを押せるだろうか」と。
その答えが「はい」であれば、それだけで十分だ。
本当の幸せは、数字では測れない。
外の世界から届く評価よりも、自分が自分を認められる瞬間こそが幸せの核になる。画面に映る数字よりも、心に残る小さな頷きの方がはるかに重い。
そのことに気づけたとき、他人の「いいね」に振り回されず、自分の人生を選び取る力が生まれるのだろう。
前回の #数字では測れないシリーズ は…
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