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なぜ事業は課題を見誤るのか?

事業の課題分析と戦略づくり【第1回】
なぜ事業は課題を見誤るのか?

 「事業戦略」という言葉を聞くと、立派なプレゼン資料や、横文字が飛び交う会議を連想する人もいるだろう。けれど、本質的に考えると、これは単純な話である。「自分たちは何をやって、誰に何を売っているのか」を明確に理解しているかどうか、それだけだ。

 だが現実はいつも皮肉だ。自らの事業を最もよく理解しているはずの当事者こそが、「課題」を見誤る。それはなぜか。おそらく、多くの企業は真実を知りたいのではなく、「自分が聞きたい話」を聞きたいからだ。

 かつてとある企業の経営会議に出席したとき、興味深い場面を目撃した。業績が低迷している理由を議論する場で、責任者たちは各部署の報告を聞いていた。その報告は、どれもこれも綺麗に整理され、都合よく「外部環境の変化」「競合他社の激しい動き」などに原因を押し付けていた。どの報告書にも、「自分たちの怠慢」や「戦略のミス」という言葉は出てこない。まるで、どこかの見えない敵と戦っているかのようだ。

 人間とは、自分に都合の悪い現実から目を背けたがる生き物だ。
 事業の課題を正しく把握するためには、まずその現実から逃げない勇気が必要になる。自分たちの真の姿を受け入れるところからしか、本当の戦略は始まらない。

 もう一つ、課題を見誤る大きな理由がある。
 それは、「問題」と「課題」の区別がついていないことだ。

 例えば、売上が下がっているとする。これは確かに「問題」だが、それ自体が課題ではない。課題とは、その問題を引き起こしている原因であり、さらにその原因を改善するために何をすべきかまで考え抜くことだ。つまり、課題とは「次にやるべきこと」なのだ。

 だが現実には、「売上が下がった」こと自体を課題と誤解し、「売上を上げろ」と命じる経営者が少なくない。これはまるで、熱が出た患者に「体温を下げろ」と命じる医者のようなものだ。体温が高いこと自体は病気の症状に過ぎず、根本的な治療なくして体温だけ下げても患者は治らない。

 問題が問題のままなのは、表面的な症状だけを見て、根本の原因を深掘りしないからだ。だが、根本原因を直視するのは誰にとっても痛い。だからこそ、組織は無意識にその「痛み」を避け、見せかけの解決策に飛びついてしまう。こうして本質的な課題はいつも見失われる。

  このような悪循環から抜け出すために何をすべきか。その鍵は実はシンプルだ。「本当に正しい課題を見つける」という決意を、組織全体で共有することから始めればよい。

 例えば、「5回なぜを問う」だけでもいい。売上が落ちた。「なぜか?」客足が減った。「なぜ客足が減った?」商品が魅力的ではない。「なぜ魅力的ではない?」市場の変化に対応できていない。「なぜ対応できない?」現場の声が届いていない。……というように、ただシンプルな問いを繰り返すだけで、課題の本質が見えてくる。

 次回以降の連載では、この「課題」をどう分析し、戦略に落とし込むべきかを順に解説することにしよう。事業の課題を正しく捉えること、それがすべてのスタート地点であることを忘れてはいけない。


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